Science巻頭言に、以下のような文章が掲載された。
著者はドイツのGerman National Academy of Sciences Leopoldinaの元トップとBerlin-Brandenburg Academy of Sciences and Humanitiesの現トップ。この二つの団体が、10年前、ドイツに若手アカデミーを作った。
なぜ若手アカデミーが必要だったのか。
著者らはこう述べる。
nurturing young scientists would be the key to rebuilding a strong and competitive scientific environment.
若手アカデミーは以下のビジョンを掲げて創設された。
to help young scientists develop a fuller view of the scientific universe; to give this view human meaning by associating it with faces and friends; to remind them that science is an endeavour of freely organized minds; and to urge them to take this spirit to the scientific community at large.
若手アカデミーのおかげで、研究分野を超えた若手の交流が進んでいるという。
また、若手アカデミーが出来たことにより、科学コミュニティの意見を効果的に社会に伝えることができるようになったという。また他の団体や諸外国の若手研究者、ビジネス界、政策担当者などとの窓口になっているという。
さらに、若手アカデミーの活動は、上であげたビジョンを超えて広がっているのだという。
It has given young academics an effective voice in the political, scientific, and public dialogue about their future career pathways. It has stimulated an awareness of and commitment to interdisciplinary working relationships, which are indispensable for tackling future challenges and needs. And it has generated a new culture of cooperation between scientists.
翻って日本。
様々な領域に「若手の会」は存在してきたが、分野を超えた組織には至っていない。
もちろん、そうした動きがなかったわけではない。
拙書「博士漂流時代」でも少しふれた「OD(オーバードクター)問題の解決をめざす若手研究者団体連絡会」は、人文社会科学系も含めた広い分野の若手研究者の集まりだった。
しかし、この会もOD問題が下火になるにつれ、アクティビティが低下していったと聞いている。
しかし、昨年の事業仕分けの時に、複数の若手の会が共同声明を出すなど、分野横断的な若手組織を模索する動きがみられはじめている。
そして、日本学術会議も、若手アカデミーの設置を検討しはじめている。
日本学術会議の若手アカデミーは、事業仕分けと直接関係があるわけではないというが、こうした動きが複数のところから出てくるというのは、ある種の時代の流れを反映しているのかもしれない。
去る2010年11月20日、サイエンスアゴラ2011にて、日本学術会議若手アカデミー委員会主催のシンポジウム
が開催され、私も発言する機会を得た。
当日の様子は、以下の記事が詳しいので参照されたい。
事業仕分けやOD問題といった危機に立ち向かう形での結びつきでは、危機が去れば終わりになってしまう。継続的に活動を行う組織が求められているのだ。
社会との相互交流も含めた、科学コミュニティの枠を超えた交流により、若手アカデミーを通して科学コミュニティの意識やあり方も変わっていくだろうし、変わらなければならないと思う。
私たちが目指す、草の根の分野横断組織も、目指す方向は重なる部分が多い。
そういう意味で、日本の若手アカデミーにエールを送りたいと思う。
参考
学術の動向 2010年8月号
http://www.h4.dion.ne.jp/~jssf/text/doukousp/2010-08.html
若手アカデミーの設立に向けて
若手研究者の活性化 / 唐木英明
http://joi.jlc.jst.go.jp/JST.JSTAGE/tits/15.8_82&lang=ja大阪シンポジウム 〜若手アカデミーの概要と論点〜 / 田中由浩
http://joi.jlc.jst.go.jp/JST.JSTAGE/tits/15.8_86&lang=jaベルリンワークショップに参加して 〜GYAの創設と課題〜 / 竹村仁美
http://joi.jlc.jst.go.jp/JST.JSTAGE/tits/15.8_89&lang=ja
同2010年9月号
http://www.h4.dion.ne.jp/~jssf/text/doukousp/2010-09.html
若手アカデミーの設立に向けて
ドイツ若手アカデミーの挑戦 / 中村征樹
http://joi.jlc.jst.go.jp/JST.JSTAGE/tits/15.9_92&lang=jaオランダのヤング・アカデミー: 成功とその理由についての一考察 / 塚原東吾
http://joi.jlc.jst.go.jp/JST.JSTAGE/tits/15.9_97&lang=ja欧州における若手アカデミーの動向 / 駒井章治
http://joi.jlc.jst.go.jp/JST.JSTAGE/tits/15.9_106&lang=ja