ノーベル経済学賞に、マサチューセッツ工科大のピーター・ダイヤモンド教授ら3名が選ばれた。
http://nobelprize.org/nobel_prizes/economics/laureates/2010/
授賞理由は「for their analysis of markets with search frictions」
報道などによれば、ダイヤモンド教授が提案した「サーチ理論」と、それに基づく失業問題、求職活動と採用活動のミスマッチの研究だという。
経済学に関しては門外漢なので、その内容に深く入ることはできないが、この「求職活動と採用活動のミスマッチ」ということから思い出されたのは、大卒就職と博士の就職にも「ミスマッチ」があるということだ。
前回エントリーでも触れたが、リクルートワークスの調査によれば、大卒就職では、従業員300人未満の企業は、求職者に対し求人が4倍以上あるという状態だ。にも関わらず、従業員5000人以上の企業には求職者が殺到している。
この結果だけをみると、なぜ学部学生たちが就職難に苦しんでいるのか分からなくなる。
またポスドクの就職もミスマッチだ。
国内にポスドクや博士がたくさんいるにも関わらず、「優秀な人材がいない」と、外国人の人材を確保しようとする企業がある。
失業(就職難)と人材不足が同時に起こっている状態が、そこかしこで起こっているということだ。
「サーチ理論」が応用され、失業を減らした国があるという*1。
イギリスでは、ブレア政権時代に「若年失業者に1人の専門家を張りつけて職業紹介を行ったし、それでも職の見つからない場合には、技能訓練を半強制的に受けさせた」という。
オランダはワークシェアリング、北欧諸国は「積極的労働市場政策」(「失業保険などで所得保障せずに、働いてもらうことによって所得保障を図る政策」)を実施した。これらによって失業率が低下した。
いずれも「職業紹介、技能訓練、雇用創出策(例えば新規開業支援や、賃金支援、公共部門による直接雇用)などを強化することによって、雇用機会を増加するもの」だという。
橘木俊詔 同志社大学教授は、日経の記事の中で、日本においても
「職業紹介機能の強化、職業訓練を徹底的に行うこと、新規開業企業への支援、賃金補助、労働時間短縮によるワークシェアリングの導入などの政策が必要である」
と述べる。
失業と大卒新卒採用はやや違うだろうが、職業紹介機能の強化、職業訓練などは、一括採用のない博士、ポスドクの就職にとって、必要とされているように思う。
ときどき非常に限定された技術、技能を持った博士人材の募集の話を聞くことがある。
こうした職を適切な人に紹介するには、手間暇がかかる。なかなか利益は上げにくい。
職業紹介などに特化したNPOなどが、きめ細やかな活動をしていくことが必要なのではないか。「ポスドクの失業対策」というのなら、こういうことを考えないといけないと思う。
以上、非常に大雑把な話になってしまい、経済学専門の方々から見たらおかしなところがあるかもしれないが…