科学・政策と社会ニュースクリップ

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大卒就職は解決する?

 このブログでは、主にポスドクや博士号取得者のキャリア問題について考えることが多いのだが、先日の海洋学会の講演では、大卒就職のデータを一つだけ引用した。

 これは、リクルートワークスの調査、大卒求人倍率調査(2011年卒)の数値をもとに作った図だ。

 この数値そのものは、すでに広く知られていて、大卒就職のミスマッチとして語られている。それをグラフにしてみると、倍率というより、中小企業の求人数の多さに視覚的に驚かされる。

 単純に言ってしまえば、大卒求職者より求人数のほうが圧倒的に多いのだから、大企業志向を改めてしまえば、大卒就職問題は解決する。

 これを「大卒者の大企業志向」を批判して終われば、話は簡単だ。

 ただ、問題はそれだけではないだろう。

 中小企業の情報がなかなか伝わらないということも問題だろう。

 また、中小企業は社長のワンマンだとか、福利厚生が乏しいとか、すぐ解雇されるとか、労働環境が苛酷というイメージもあるかもしれない。

ルポ“正社員”の若者たち―就職氷河期世代を追う

ルポ“正社員”の若者たち―就職氷河期世代を追う

 などをみると、こうした企業の正社員が苛酷な状況におかれているのがわかる。

 いっぽうで

「若者はかわいそう」論のウソ (扶桑社新書)

「若者はかわいそう」論のウソ (扶桑社新書)

 などによれば、小さな企業でも正社員になってしまえば、転職などで大きな企業に就職できるから、企業の大小にはこだわるな、という意見もある。

 専門家ではないので、これ以上突っ込めないのだけれど、実際はどうなのだろう。


 なお、なんでこのデータを引用したかというと、ポスドク就職も中小企業への進出に活路があるのかなあと思ったから。

 知人にも、ベンチャー企業に就職したポスドクがいる。

 ただ、そういう就職は、数としてはわずかなので、なかなか情報が伝わらない。ときどき、ある特殊な分野、技術と限定して、誰か人を紹介してくれないか、という話をもらうことがあるのだけれど、なかなか人が見つからない。

 そういう個別な話のマッチングは、時間も手間もかかるので、商売としては成り立ちにくいという。

 難しい問題だが、誰かが取り組まないといけないと思う。