ポスドク問題の解決法は、二種類ある。
一つは、「政府が責任をもって対応せよ」もう一つは「全部自己責任だから、自分でやれ」。
ブロガーを分類してみると
- 政府対応重視
労働問題としてのポスドク問題(5号館のつぶやき)
ポスドク滞留の責任は政府が取らなくはならない(ハードSFと戦争と物理学と化学と医学)
ポスドク問題:National Academyの提言を参考に(ハーバード大学医学部留学・独立日記)
- 自己責任重視
ブログでバイオ 第32回 「変わるべきは、大学と学生(含むポスドク)」(WEB2.0(っていうんですか?)ITベンチャーの社長のブログ)
ブログでバイオ 第31回 「ポスドク問題はミクロとマクロに分けて考えるべき」(Jun Seita's Web)
「過剰」なポスドクについて On 'excess' postdocs(柳田充弘の休憩時間 Intermission for M. Yanagida)
ポスドク問題の対策は、この2つの方向性のブレンドで考えるしかない。とりあえずは競争がなくなることはない。これは大前提だ。そのなかで、競争のゆがみをどうフォローしていくかで、自己責任重視か、もう少し政策が対応するかの違いがある。二つの方向の違いは180度ではなくて、60度くらいの間にあるのかもしれない。
政府が全ての職をあっせんしてくれるなんてありえないことだ。一方で、今の自分が全く一人で、自力で生きてきたなんていうものありえない。家庭環境やちょっとした運、不運、その他さまざまな要素で自分が成り立っている。
ロバを水場に連れて行っても、水を飲んでくれるとは限らない。水場の場所を教える、つまり自助努力をアシストする政策、というのが落としどころだし、博士派遣もそのなかに入るのだろう。
先に挙げたJリーグキャリアサポートセンターのような、科学コミュニティで対応するという方法もある。また、NPOや会社という方法もある。
私たちサイコムジャパンは、まずは自己責任的な対応が重要だと思い、本を出した。
理工系&バイオ系失敗しない大学院進学ガイド―偏差値にだまされない大学院選び
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なぜなら、意識を変えることが、もっとも早くできることだし、唯一自分でコントロールできる部分だからだ。
しかし、だからといって全てを意識だけで解決できるとは思っていない。
高度職業人養成か、研究者養成か、軸足が定まらない大学がこの問題を助長していると思うし、さまざまな政策もこの問題に影響を与えているだろう。
そうしたゆがみまで、「お上の決めたことだから黙って従え」なんていうつもりはない。おかしいことはおかしいといわないといけないと思う。
それと同時にできる対応(キャリアサポートのようなもの)をやっていきたい。荒野に放り出し、勝手に抜け出せ、というのではなく、ライトや地図、磁石など備品を提供したい。大学院進学ガイドは地図だ。ただ、目的地に着く乗り物までは提供できない。
ブログの意見を読むと、両極端なものが多い。しかも、ポスドクというイメージが先行して、実際にポスドクに会って話をしたり、意見を聞いたりしている人も少ないようだ。
本当にポスドクは政府の対応を待っているだけの存在なのだろうか。
イメージだけでけなしたり叩いたりしても不毛だ。まずは現場の声を数多く聞いてみないことには始まらない。
昨日書いたが、私たちのSNSなどを通じて声を聞かせてほしい。可能ならお話を伺いに行くつもりだ。