科学・政策と社会ニュースクリップ

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希望の成長戦略を

行政刷新会議事業仕分けも含め、今研究現場にあるのは、言いようのない閉塞感だ。

ポスドク問題をはじめとする博士の困難な状況は、若い世代を科学研究から遠ざけているように見える。実際年々博士課程進学者は減少している。

ロールモデルとなるはずの大学教授も、膨大な雑用に追われ、とても魅力的な職業には見えない。

こんな中、仕分けがさらに閉塞感を加速した。

かねてより述べてきたように、私はおおむね仕分けで出された意見は真摯に受け止めないといけないと思っている。非効率な予算の使い方をなんとかしなさい、という声に、科学コミュニティはきちんと答えなければならない。

ただ、一点、これだけは解せないというのが、若手研究者に対する支援の資金での議論だ。

競争的資金(若手研究育成)(文部科学省)の評価コメントは、誤解に満ちている。

博士養成に関する過去の政策の失敗を繕うための政策
ポスドク生活保護のようなシステムはやめるべき。本人にとっても不幸。(本来なら別の道があったはず)。
雇用対策のようなものになっているのではないか。その為の統合的な対応が必要でないか。将来
的な雇用対策につなげることが必要ではないか。


こうした言葉が、若い大学院生や研究者たちに大きな失望を与えてしまった。

今週のAERAの記事。ニッポン科学 滅亡の道

影響を受けるのは博士課程の学生だけではない。博士号を取って常勤ポストを得るまで特別研究員でいるいわゆる博士研究員(ポスドク)はAさんのまわりにもいる。彼らに対して、仕分け人はこう発言した。
生活保護のようなシステムはやめるべき。本人にとっても不幸だ」
 その言葉を聞いて、Aさんは体から力が抜けた。
「俺たち研究者という人間は、そんなにいらない存在なのか」

もちろん、仕分け人の評価には鋭い指摘もあった。

若手研究者が安定して働き研究できる場所を見つけるための国の政策を若手にこだわらず再構
築。
若手研究者の問題は政治の問題でもあるので、十分な見直しが必要。
大学→大学院→キャリアのプランがないことは問題だが、むしろキャリア計画教育の問題。高等
教育全体にキャリア教育が不足している点と関係がある。

また、縮減といっても額を明記していない。そこにすくいはあるはずだ。

だが、言葉は独り歩きし、若手に失望が広がる。


国家戦略室は、3K(こども、雇用、環境)に加え、科学技術を成長戦略の柱とするという。


財政危機のおり、新たな予算は望めないかもしれない。けれど、一つだけ言いたいことがある。

それは、若手を含めた研究者、これからの世代の子供、学生たちに希望を持たせてほしいということだ。

科学技術が重要だと言っているのはよく理解した。それを分かりやすい言葉で語ってほしい。

希望で飯は食えないが、希望が未来の活力になる。

若手を重視するという昨日の報道だけで、若手研究者は喜んでいる。


希望の国家戦略を。

そのためには私たちも具体的提案で応援したい。

【追記】
政府が若手の声を聴くというだけで希望になる。ぜひ若手の声を定期的に聴くという道を開いてほしい。