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参院選終わって…民主党の科学技術政策に注目する

 第21回参議院議員選挙が終わった。

 大方の予想どおり、民主党の圧勝、自民党の惨敗という結果となった。これからの国会運営は、民主党の意向が大きく反映されることになるだろう。

 そこで気になるのが、民主党が科学技術政策だ。指摘のとおり*1、今回の参院選は科学技術政策が争点ではなかった。我々もほぼ同様の評価である*2

 特に民主党マニフェストでは科学技術政策に紙面をさかなかった。

 民主党の科学技術政策は、日本経団連から低評価を受けるなど*3、党首クラスの幹部に理工系出身者がいるのに、科学技術に疎い印象がぬぐえない。

 しかし、参議院第一党になった以上、民主党の科学技術政策に、今まで以上に関心を持ち注目しなければならない。

 民主党は科学技術に対しどのような政策を持っているのだろう。ここで民主党が発表した2007政策リスト300をみてみる*4

 まず知的財産戦略であるが、産学連携の強化、研究者の意欲向上につながる環境の改善といった言葉が並ぶ。

 教育政策で高等教育に関連のある部分では、高等教育の無償化、奨学金の抜本的拡充を述べる。奨学金は個人に支給するものとし、大学単位での支給は減らすとしている。

 大学政策では、学生、研究者本位の大学、創意あふれる不断の改革を現場から自発する大学、社会にひらかれ、社会と連携・協同する大学を目指すとしている。高等教育予算は学校単位ではなくプロジェクト単位の支援に転換するとしている。

 また、国立大学法人は見直すとしている。

 イノベーションに関しては、総合科学技術会議を改組し、科学技術戦略本部(仮)を置くとしている。この戦略本部では、省庁横断的に科学技術政策の基本戦略、予算方針を策定すると述べているのが目をひく。

 科学技術の人材育成については、スーパーサイエンスハイスクールの拡充、サイエンスキャンプや研究者の小中学校への派遣を行うとしている。

 また、研究者奨学金を1500億円から3000億円にするとしている。優れた外国人研究者が日本に集まる環境を作るとしている。

 以上、簡単ではあるが、環境、農業、医療などを除いた民主党の科学技術政策を概観した。

 国立大学法人の見直し、大学改革など、特徴的な箇所もある。社会にひらかれた大学という部分などは、サイエンス・コミュニケーションにもつながるので、期待がもたれる。高等教育の無償化や奨学金改革については、実現性が高まったかもしれない。

 しかし具体性にやや乏しいように思う。若手研究者の直面する問題については触れられていない。科学技術人材育成については、現政権との違いが見えにくい。研究者奨学金とはポスドクへの支援ということなのだろうか。

 科学技術を取り巻く問題は多数ある。私たちにとって関心の深い問題であるポスドク問題や、生命科学の問題、科学技術と社会の関係など、さまざまな論点が存在する。

 今後民主党の取り組みがますます重要になる。厳しい注文もつくだろう。前の低評価を乗り越えられるのか。さまざまな問題にどう取り組んでいくのか。そして、ポスドクや若手研究者の声を聞いてくれるのか。民主党の今後に注目していきたい。

*1:理系白書2007:番外編 参院選公約の科学政策 「未来像なく論戦低調」

*2:科学技術に関するマニフェスト、感想

*3:2006 年政策評価:民主党:科学技術創造立国の実現に向けた政策の推進 合致度B、取り組みC「次世代産業の創出と産業競争力強化の観点から、政府の研究開発投資を増額させるとともに、燃料電池等環境エネルギー技術、ライフサイエンス、情報通信技術、材料技術・ナノテクノロジー、製造技術などの分野に選択と集中を図る方針。ただし、具体策は不明確。」自民党は合致度A、取り組みB、達成度B http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2006/067jimin.pdf

*4:2007政策リスト300