参院選が7月11日に投票と決まり、各党のマニフェスト、選挙公約が出そろった。
各党の公約から、科学・技術関連の部分をピックアップした。なお、これは6月20日現在公表されているものであり、その後補足などが出る可能性があるので、ご注意いただきたい。
与党
民主党
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20100617/p1
国民新党
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20100618/p5
野党
自民党
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20100617/p2
公明党
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20100618/p6
共産党
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20100618/p2
同政策集
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20100620/p1
社民党
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20100618/p7
みんなの党
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20100618/p4
たちあがれ日本
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20100618/p3
新党改革
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20100616/p1
日本創新党
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20100616/p2
まず今回は、若手研究者、女性研究者などの科学・技術人材に関する各党の政策をみてみる。
民主党だが、今回のマニフェストには、科学・技術人材に関する記載はないようだ。与党のマニフェストの場合、現政権の政策を考慮しなければ比較は困難だというものの、記載がまったくないのは残念だ。
国民新党も、奨学金について触れている以外は、科学・技術人材に関する記載はない。
与党はこの件に関して記述は乏しいが、野党は元気がいい。
自民党は「世界一の科学技術立国」をめざす「カネ」「ヒト」の確保」と題し、人材の育成強化を訴える。
科学技術予算の十分な確保及び分野を「選択」することで、その分野に対して人材・財政の投資を「集中」させ、その分野において「世界一」を目指します。さらに、研究開発に「カネ」が集まりやすくする「寄付環境」(税制等)も整備します。その際、必要な人材については、特に、将来の研究開発人材の育成を重視する観点から初等教育からの「理科系教育」の充実、大学・大学院改革を通じた「高度研究開発人材」の育成強化を行います。
また、「出入国管理ポイント制(学歴・職歴、資格、語学などを基準に在留資格の優遇を与える制度)」を導入し、高度な専門的能力を有する外国人の受け入れを拡大させ、新たなイノベーションと活力を育みます。
大学院教育の改革や、博士課程修了者のキャリアについても触れている。
単なる任期付きでない若手研究者のポストを大幅に増やすとともに、キャリアパスを多様化するため、産業界の研究職や知的財産管理等の研究支援に携わる専門職等での活躍を推進します。公的機関等における、ポスドク等を対象とした専門人材育成の取組みを支援し、活躍機会を拡大します。若手研究者が自立して研究に専念できるようにするための新たな研究資金制度として、当該研究者の名前を冠した「冠プロジェクト」を創設します。
ただ、自民党は与党時代、ポスドクを増やしてきた経緯もあり、実現性が問われる。
公明党は、「世界で活躍する人材の育成と外国人学校支援」と題し、人材の国際交流を訴えている。
●留学生政策を強化するために体制の見直しを行い、予算を拡充します。
100万人の日本人留学生を海外派遣
●グローバル化する社会で活躍する優秀な人材を育成するため、「留学支援プログラム」を策定し、今後10年間で100万人の日本人学生を留学生として海外へ派遣します。
●日本人学生の留学を支援するため、給付型奨学金の導入、奨学金対象枠の大幅な拡大、外国政府等の奨学金による海外留学の円滑実施など、公的留学制度を抜本的に拡充します。
海外留学生の受け入れ体制の強化
●2020年までに留学生受け入れ30万人をめざし、当面5年間で大幅な拡大と留学生を受け入れる環境整備を推進します。
また、ポスドクや女性研究者問題についてもふれている。
世界をリードする研究開発とイノベーションの創出
●科学技術立国の基盤を強化するため、宇宙・海洋・生命科学・脳科学など先端分野の基礎研究を強力に推進します。また研究開発力強化法に基づき研究者の養成・確保を図り、ポストドクターや女性研究者、外国人研究者などの処遇の改善を進めます。
●高校生・大学生の海外留学や海外の研究者の受け入れを進めるとともに、若手や女性の優秀な研究者が能力を発揮できるような環境整備を進めるなど、グローバルに活躍できる人材の育成と確保に取り組みます。
共産党は、先日発表された大学政策も含め、普段から若手研究者問題に関して強い関心を寄せているのは理解している。ただ、今回の選挙の「参院選公約」では科学・技術関連についてあまり触れていない。政策集のほうに「大学を疲弊させている「基盤的経費」の減額をやめ増額し、基礎研究や若手研究者支援などを拡充します」と書かれているだけなのがやや残念だ。
少し驚きだったのがたちあがれ日本だ。
我が国では、博士号をとった優秀な人材を十分に活用できていません。国、自治体が率先して博士人材を雇用していくと共に、民間雇用も拡大します。
と明記した。この点は評価したい。
また、
外国の高度人材優遇制度、留学生の就労支援、外国人の生活環境改善等を強化すると共に、海外で活躍する優秀な日本人科学者の皆さんにとって魅力的な研究拠点を国内に整備していきます。
・理系英才人材を発掘・育成するため、破格の奨学金を創設します。
とも述べるなど、科学・技術重視の姿勢を打ち出した。
このほか、日本創新党が大学院生向けの奨学金について、新党改革が留学生政策についてふれている。
以上、科学・技術人材に関する記載をとりあげてみた。
全政党がこの問題を取り上げるに至っていないという状況は、科学・技術人材に関する政策が、国民の関心事になっていないということだろう。
はやぶさ以来、国民の科学・技術への関心が高まっているように思われるが、こうした関心を科学・技術人材にも向けるには、科学コミュニティと社会との対話を強化していくことが今後の課題だと言えよう。