科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

 日本共産党の参院選公約

日本共産党 http://www.jcp.or.jp/web_policy/html/2013sanin-seisaku.html

国際人権規約を生かした無償化のプログラムをつくります……日本共産党はこの事態を打開するため、「高校と大学等を段階的に無償化する」という、国際人権規約を認めることを強く主張してきました。国民の皆さんの運動とあいまって、昨年民主党政権時に、政府は無償化条項を承認しました(「留保の撤回」)。ところがその後、無償化の具体化が検討されていません。高校、大学、専門学校の無償化の目標をいつ達成するかはっきりさせ、それにむけて段階的に無償化をすすめるプログラムを策定します。

大学の「世界一の高学費」を軽減します……国公立大学の授業料標準額を段階的に引き下げ、私立大学には国立との差額を補てんするための国庫助成や私立大学生への直接助成をおこないます。国公私立の区別なく、年収400万円以下の世帯への学費免除を実施する制度をつくります。高等専門学校については、高校相当部分、高等教育相当部分それぞれの時期に即して無償化・負担軽減をおこないます。

給付制奨学金の創設など安心の奨学金制度をつくります……現在の奨学金は利子つきが主で、無理な返済取り立てに苦むなど、さながら?借金地獄?です。奨学金をすべて無利子にし、卒業後の年収が300万円以下の場合に返済を猶予するなど返済猶予・免除制度をひろげます。就学が困難な生徒・学生のため、返済不要の給付制奨学金制度を創設します。滞納者を個人信用情報機関に通報する「ブラックリスト化」を中止します。

大学と高校の入試制度の抜本的見直しに着手します……高校学区の拡大などにより、偏差値による高校の輪切りなど「選別の教育」はますます強まっています。そのことが子どもや青年をどれほど傷つけているか知れません。ヨーロッパでは基本的に高校入試を課さないなど、過度な競争から子どもの成長を守るしくみがあります。高校、大学の入試制度を抜本的に改革するための専門家、国民の検討の場をもうけ、改革に着手します。

 日本の大学入試は、大学ごと学部学科ごとに入試選抜がおこなわれるという世界に例のないような競争的な制度となっています。多くの大学が利用しているセンター入試は、短時間で多数の選択問題をこなしてその点で合否が決まる、受験科目が少なくてすめばそれ以外の科目は早くから勉強しなくなるなど、高校生たちの学習を歪める方向に作用しています。安倍政権の教育再生実行会議が、センター試験廃止の方向を打ち出した背景には、こうした制度の行きづまりがあります。しかし、それにかわって高校生に新たな全国学力テストや英語検定を課すのでは、基本的な問題は先送りしたまま、?猫の目?のように入試を替えて、高校生や教育現場を混乱させるだけです。ヨーロッパ諸国の大学入試にある、論述式の資格試験方式なども参考にしながら、?ゆきすぎた競争主義からの脱却?という立場にたった抜本改革が必要です。大学入試のあり方は、大学以下の教育のあり方を大きく規定します。日本の教育をどういう方向に向けていくのか、ひろく国民的な議論をへて、そうした抜本改革を進めます。

34、大学改革・科学・技術

社会の知的基盤としての大学の発展を応援し、科学・技術の調和のとれた振興をはかります

2013年6月

 国立大学法人化など「大学の構造改革」の開始から10年余がたちました。自公政権民主党政権も、「選択と集中」をはかるとして、大学予算をこの9年間で1700億円、東大、京大の廃止に匹敵する規模で削減し、一方で、競争的資金を増やして大学間、研究者間の過当な競争を強要してきました。世界の主要国が、9年間で大学への政府投資を4割〜10割、中国や韓国は4〜8倍へと急増させているなかで、日本はわずか0.7%増にすぎません。

 こうした結果、地方の大学や中小の大学は存立さえ危うくなり、大学教員は資金獲得や短期で成果のあがる研究におわれ、教職員数の大幅な削減と非正規雇用の増大が急速にすすむなど、大学はかつてない深刻な危機に追い込まれています。Nature誌の2010年の調査では、日本の研究者の「処遇満足度」は先進国16ヶ国で最下位です。学術論文数も唯一日本だけが減少しています。大学教員が研究時間も研究費も満足にもてず、研究の道を志す若者が減っていく、こんな国は世界でも例がありません。日本の学術は、これまで世界に誇りうる研究成果を生んできましたが、このままではその基盤を失いかねません。

 ところが安倍政権は、こんな深刻な事態を生み出したこれまでの大学政策に対する責任の自覚も反省も欠いたまま、いっそうの「選択と集中」をはかろうとしています。「成長戦略」として「世界に勝てる大学改革」を断行し、経済成長をはかるというのです。しかし、その目玉は「国立8大学で1500人を世界中の優秀な研究者に置き換える」というものにすぎません。研究者を置き換えさえすれば、学術が発展するのでしょうか。大学予算の総額を世界の主要国並みにひきあげる姿勢はまったくありません。要するに、政府が「研究大学」と認める一部の大学に研究費や人件費を集中投資する一方で、大学の基盤的経費はさらに削減するものです。そして、大学が国の資金をほしいなら「ガバナンス改革」を行えといいます。財界が「大学の理事会、学長の権限を強化せよ」「教授会を諮問機関化せよ」と求めているのをうけたものです(経済同友会2012.3.26)。これでは、研究や教育がさらに深刻な打撃をうけることは明らかです。

安倍政権の「成長戦略」は、わが国の経済発展を阻害するだけでなく、日本の大学と学術を破滅に追い込む「毒矢」でしかありません。こんな毒をもった「大学改革」をすすめるのか、「学問の府」にふさわしい大学改革に転換するのかが、問われています。

大学の危機打開へ「学問の府」にふさわしい改革をすすめます

 大学は、「学術の中心」(学校教育法)であり、わが国の知的基盤として社会の知的・文化的な発展、国民生活の質の向上や地域経済などに大きな役割をはたしています。大震災からの復興でも、その教育・研究力をいかすことが期待されています。大学が担っている基礎研究は、自然や社会へのより深い理解をもたらし、学術の全体が発展する根幹となっています。

 欧州では、大学の多くが国公立で国が手厚い財政負担をしています。大学進学率も上昇し、大学が国民に開かれた教育機関として充実しています。わが国は大学への財政負担が少なく、高学費のために大学進学率は5割にとどまっています。大都市圏以外の地域の進学率や、女性の進学率は、さらに低くなっています。しかし、NHKの「日本人の意識・2008」調査によれば、国民の6〜8割がわが子に大学までの教育をうけさせたいと望んでいます。大学教育の充実は、国民の願いです。

 大学が、深刻な危機から抜けだし、社会の知的基盤としての役割を全面的に発揮することは、21世紀の社会発展にかかわる国民的な課題です。そのためには、経済効率優先の「構造改革」から抜け出し、国民の立場から「学問の府」にふさわしい改革に転換することが急務です。日本共産党は、その実現のために力をつくします。

1.大学の日常的運営に必要な経費(基盤的経費)の増額をはかり、じっくりと教育・研究できる大学へ条件整備をはかります

21世紀の日本を担う良識豊かな社会人へと成長できる大学教育に;変化する世界の中で、日本社会の発展にとっても、若い世代が新しい知識や技術、理想を身につけ、将来を築いていくためにも、大学教育の充実はきわめて重要になっています。しかし、自民党型政治によって、良識豊かな社会人を育てる根幹となる教養教育が軽視され、マスプロ授業の蔓延など劣悪な教育体制が放置されてきました。大学教育を抜本的に充実させる必要があります。

――人間形成や学問の基礎をつちかう教養教育を再構築します。学力に応じたわかりやすく学びがいある授業づくりへ、大学の改善努力を励ます支援策を強めます。

――少人数教育の本格的な導入や勉学条件の充実のために、大学予算を増やして教員の増員をはかり、非常勤講師の劣悪な待遇を改善します。

――大学がはたしている公共的な役割をさらに高めるために、大学の設置基準の緩和を見直し、設置審査を厳正な基準で行うように改善します。

国立大学の教育・研究をささえる基盤的経費を十分に確保し、教職員の給与減額を元に戻す;「震災復興のため」という名目で国立大学教職員の大幅な給与減額が強行されました。しかし、「震災復興予算」は国が責任をもつべきであり、教職員に責任を負わせるべきではありません。しかも、この予算の多くが他に流用されていることも判明しました。国による大学への給与減額の強制は、大学の労使関係への介入であり撤回すべきです。給与の減額に相当する2012年度、2013年度の運営費交付金の減額を元に戻します。

国立大学の運営に必要な経費をささえる運営費交付金は、2004年法人化以降の9年間で削減された1623億円をただちに回復し、増額をはかります。交付額を減らすシーリングのしくみを廃止し、各大学の標準的な経費をもとに積算し、教育・研究費や人件費などを十分に確保するしくみに変更します。地方大学や文科系、教員養成系大学など財政力の弱い大学に厚く配分するなど大学間格差を是正する調整機能をもったしくみにします。国立大学法人の施設整備補助金を増やし、老朽施設を改修します。

私立大学への「公費負担」原則を確立し、「経常費の2分の1助成」を実現する;私立大学がはたす公共的役割にふさわしく国の支援を強め、国立との格差を是正するため、私立大学にも国公立と同様に公費を支出する「公費負担」の原則を確立します。格差是正の第一歩として、公費負担によって私大学費を国公立並みに引き下げます。

 1975年の国会決議が求めた「私立大学の経常費の2分の1を国庫補助」をすみやかに実現します。「定員割れ」の大学に国庫助成を減額・不交付する措置は直ちに廃止します。中小私大、地方私大には増額配分し、定員確保の努力を支援する助成事業を私学の自主性を尊重しつつ抜本的に拡充するなど、私立大学の二極化の是正をめざします。「経営困難」法人への指導と称して私立大学の運営に国が不当に介入することに反対します。

公立大学への国の財政支援を強める;公立大学は、学術の進歩に貢献し、住民要求にこたえた高等教育を行い、地域の文化、経済の発展に寄与しています。地方交付税の大学経費を引き上げ、公立大学に対する国庫補助制度を確立するなど、国の財政支援を強めます。

国が各大学の改革を誘導する資金を廃止し、独立した配分機関を確立する;文科省が各大学の改革に干渉し、誘導するために創設された「国立大学改革強化推進事業」や「私立大学等改革総合支援事業」を廃止します。先端的研究などの大型の研究や一部の大学・大学院に対して、多額の資金を投入する偏った予算配分のあり方を見直します。大学関係者、学術関係者を中心に独立した配分機関を確立し、審査内容の公開をはかるとともに、慎重で公正な評価にもとづいて配分するようにします。

任期制教員の無限定な導入に歯止めをかける;

大学教職員への無限定な有期雇用や成果主義賃金の導入は、教育研究や支援業務の健全な発展を妨げています。国による誘導策をやめさせ、導入に歯止めをかけます。大学教員、研究員の任期制は任期制法の廃止を含めた見直しを行い、大学においては正規雇用を基本にすべきです。昨年改正された労働契約法の実施(4月)に関して、大学における有期雇用の実態と法改正の影響について国による調査を行います。有期雇用の大学教職員、研究者、非常勤講師に契約更新5年上限を予め求めることは法改正の趣旨に反する行為であり、やめさせます。有期契約が1回以上反復されて5年経過した雇用を無期契約に転換した場合に、国が大学に対して財政支援する奨励制度をつくります。大学や研究機関が期限のある国の資金でプロジェクト研究を行う場合に、その資金で有期雇用される研究者や職員を期限終了後も雇用するための財源を国が責任をもつべきです。

大学職員を増員し、教育・研究・診療への支援体制を充実させる;大学は、教員だけでなく、技術、事務、医療などの職員によって支えられています。大学の基盤的経費を増額して職員を増員するとともに、雇用は正規が基本となるよう促します。

留学生に魅力ある環境を整備する;留学生が安心して勉学できるよう、低廉な宿舎の確保、奨学金の拡充、日本語教育の充実、就職支援などの体制を国の責任で整備します。

国立大学附属病院の基盤整備をすすめ、債務の軽減をはかる;国立大学附属病院は、医師の養成と先端医療の開発を担い、地域の高度医療のとりでとなっています。病院への交付金を法人化前の水準に直ちに戻すとともに、法人化の際に背負った病院債務を軽減します。施設整備に必要な資金は、国が責任をもって確保する体制を維持します。

2.大学の「生命」といえる“自治と民主主義”を保障するルールを確立し、国立大学法人制度を抜本的にみなおします

「大学の自治」を尊重するルールを確立する;世界で形成されてきた「大学改革の原則」は、「支援すれども統制せず(サポート・バット・ノットコントロール)」であり、「大学の自治」を尊重して大学への財政支援を行うことです。わが国でも、国公私立の違いを問わず、大学に資金を提供する側と、教育・研究をになう大学との関係を律する基本的なルールとして、この原則を確立すべきです。

「大学改革策定プラン」を中止し、国民の立場にたった大学改革プランを確立する;文科省が昨年6月に決定した「大学改革実行プラン」は、文科省主導で国立大学の機能別分化と統廃合をすすめ、私立大学の淘汰をはかる「大学リストラ」計画となっています。こうした計画を中止し、国民の立場からの大学改革プランを確立します。

 大学改革の基本原則として、大学を「学問の府」として充実させるにふさわしい研究・教育条件の向上をはかること、大学の「生命」というべき“自治と民主主義”を保障することを土台にすえます。そのうえで、大学の現状と問題点を分析し、改革の方向を検討すべきです。そのさい、大学関係者の意見を尊重するとともに、ひろく国民各層の意見を反映させることは当然です。

 国立大学の再編・統合に一律に反対するものではありませんが、教育・研究を充実させる見地に立って、学内合意を基礎にした大学間の自主的な話し合いと、地域の意見を尊重することを前提とし、「一県一国立大学」の原則を守ってすすめるべきです。橋下大阪市長が主導する大阪市立大学・府立大学の統合による大学リストラは中止し、大学の自主的な改革を支援すべきです。

国立大学法人制度を抜本的に見直す;国立大学が法人化されて10年目を迎え、様々な問題が噴出しています。第2期の中期目標期間の終了(2015年度)にむけて、法人化がもたらした現状と問題点を検証し、大学関係者の意見を尊重して、法改正を含む制度の抜本的見直しを行います。

 大学がどのような目標・計画をたてるかは、国が決定するのではなく、大学の自主性にゆだね、国に対しては届出制とします。国が大学の業績を評価してランクづけし予算を削減する制度を廃止し、大学評価は、すでに第三者機関が「大学の質保証」のために行っている「認証評価」に限定します。法人制度のなかで、「大学の重要事項を審議する」などの教授会の権限や、学長選考における教職員の選挙を尊重する制度を明確にします。

私立大学の公共性をさらに高める;大学の設置審査の緩和を見直し、私学のもつ公共性をさらに高めるにふさわしい基準で、設置審査を厳正に行うように改善します。安易な廃校による教職員の解雇を防止するため、私学の「募集停止」も報告事項にせず審査の対象にします。

 私立学校法で、教授会の権限や、学長選考における教職員の選挙を尊重する制度を明確にするとともに、財政公開を促進し、監事を評議員会が選任するなど財政のチェック機能を強めます。まともな教育条件を保障できない株式会社立大学の制度は廃止し、私立大学(学校法人)として再出発できる環境を整備します。

3.大学でお金の心配なく学びたい、将来に希望をもって研究したい。この願いを実現します

高等教育の段階的な無償化にふみだす;国際人権規約が定めた高校・大学の段階的無償化条項が、国民世論と運動におされて留保撤回されました。これは高等教育無償化を国際的に約束したものであり、無償化にむけた学費負担軽減の一歩を踏み出します。国公立大学の授業料標準額を段階的に引き下げ、私立大学には国立との差額を補てんするための国庫助成や私立大学生への直接助成をおこないます。

授業料減免の拡充、給付制奨学金の創設と貸与制の返済条件緩和をはかる;OECD加盟国のうち授業料があり給付制奨学金がないのは日本だけです。給付制奨学金をただちに創設します。年収400万円以下の世帯に入学料と授業料を国公私立の区別なく免除する制度をつくります。奨学金は有利子制度をすべて無利子に戻し、希望者全員が受給できるよう拡充します。昨年度から導入された「所得連動返済型奨学金」は、すでに返済義務をおっている卒業生にも適用できる制度に変更します。滞納者への制裁をつよめる「ブラックリスト化」を中止します。

大学・研究機関の人件費支出を増やし、若手研究者の採用をひろげる;大学教員にしめる35歳以下の割合は13%に低下し、将来の学術の担い手が不足しています。国立大学法人が「総人件費改革」で5年間に削減した人件費だけで、若手教員1万5千人以上の給与に相当します。国立大学や独法研究機関が削減した人件費分を回復するために、国から国立大学や独法研究機関への運営費交付金を大幅に増額し、若手教員・研究者の採用を大きくひろげます。

博士が能力をいかし活躍できる多様な場を社会にひろげる;公務員の大学院卒採用枠を新設し、学校の教師や科学に関わる行政職、司書や学芸員などに博士を積極的に採用します。博士を派遣や期間社員で雇用する企業に対して正規職への採用を促すとともに、大企業に対して博士の採用枠の設定を求めるなど、社会的責任をはたさせます。

若手研究者の待遇改善をはかる;ポスドクなどの研究者がいだく不安は、雇用の不安定です。大学や独法研究機関が、期限付きで研究者を雇用する場合に、テニュアトラック制(期限終了時の審査をへて正規職に就ける制度)をさらに発展させ、期限終了後の雇用先の確保を予め義務づける制度を確立します。そのために必要な経費は国が責任をもちます。ポスドクの賃金の引き上げ、社会保険加入の拡大をはかります。

 研究費支援では、若手研究者に一定額の研究費を国が支給する特別研究員制度を大幅に拡充します。とくに、博士課程院生には6.4%しか適用されていない現状を改善し、院生には20%まで採用を増やします。また、大学院生に給費制奨学金を創設します。

 大学非常勤講師で主な生計を立てている「専業非常勤講師」の処遇を抜本的に改善するため、専任教員との「同一労働同一賃金」の原則にもとづく賃金の引き上げ、社会保険への加入の拡大など、均等待遇の実現をはかります。また、一方的な雇い止めを禁止するなど安定した雇用を保障させます。

4.大学への公費支出を欧米並みにひきあげます

 わが国の大学がかかえる最大の問題は、大学関係予算がGDP(国内総生産)比で欧米諸国の半分の水準にすぎず、そのことが主な原因となって、教育研究条件が劣悪で、学生の負担が世界に例をみないほど重いことです。学術、教育の発展は「国家百年の計」であり、将来をみすえた大学への投資こそ、次代を担う若者を育み、21世紀の社会発展に貢献します。教育研究条件の整備をはかることは国の責任であり、欧米並みの大学予算を確保するために全力をつくします。

 その財源は、日本共産党が昨年2月に発表した「消費税大増税ストップ! 社会保障充実、財政危機打開の提言」で明らかにしています。第1段階で「大型開発や軍事費をはじめ税金のムダづかいの一掃と、富裕層・大企業優遇の不公平税制を見直すとともに、新たに富裕税、為替投機課税、環境税などを導入する」、第2段階で「負担能力に応じた負担の原則にもとづき、累進課税を強化する所得税の税制改革によってまかなう」、同時に「国民の所得を増やし、経済を内需主導で安定した成長の軌道に乗せる民主的経済改革によって税収増をうみだす」というものです。これによって、大学の漸進的無償化や教育・研究への国のとりくみの抜本的強化が可能となります。

経済効率最優先の科学技術政策から、学術発展へ調和のとれた振興策に切り替えます

 科学、技術は、国がその多面的な発展をうながす見地から、研究の自由を保障し、長期的視野からのつりあいのとれた振興をはかってこそ、社会の進歩に貢献できます。とりわけ、基礎研究は、ただちに経済的価値を生まなくとも、科学、技術の全体が発展する根幹であり、国の十分な支援が必要です。基礎研究が枯れてしまえば、政府がいうイノベーション(新しい社会的価値や技術の創造)も望むことができません。

 わが国の研究開発費(民間を含む)にしめる基礎研究の割合は14.7%と、欧米諸国に比べてもかなり低く、しかも低下傾向をつづけています。また、業績至上主義による競争を研究現場に押し付けたことから、ただちに成果のあがる研究や外部資金をとれる研究が偏重されるようになり、基礎研究の基盤が崩れるなど、少なくない分野で学問の継承さえ危ぶまれる事態がうまれています。

 日本の研究者が相次いでノーベル賞を受賞したことは、日本の基礎研究の国際的な水準の高さを示しています。この水準をさらに高め、わが国が「科学立国」として発展するために、日本共産党は、経済効率優先の科学技術政策を転換し、科学、技術の多面的な発展をうながすための振興策と、研究者が自由な発想でじっくりと研究にとりくめる環境づくりのために力をつくします。

1.基礎研究を重視し、科学、技術の調和のとれた発展と国民本位の利用をはかります

科学・技術の総合的な振興計画を確立する;国の科学技術関係予算の配分を全面的に見直し、人文・社会科学の役割を重視するとともに、基礎研究への支援を抜本的に強めます。また、防衛省の軍事研究費、「もんじゅ」の開発など原発推進予算、大企業への技術開発補助金など、不要・不急の予算を削減します。

 研究者が自由に使える研究費(大学・研究機関が研究者に支給する経常的な研究費)を十分に保障するとともに、任期制の導入を抑え、安定した雇用を保障する制度を確立するなど、研究者の地位を向上させ、権利を保障します。欧米に比べても極端に少ない研究支援者を増員するとともに、その劣悪な待遇を改善します。そのためにも国立大学法人・独法研究機関の人件費を増額します。

 科学技術基本計画を政府がトップダウンで策定するやり方をあらため、日本学術会議をはじめひろく学術団体の意見を尊重して、科学、技術の調和のとれた発展をはかる総合的な振興計画を確立します。

筑波研究学園都市の宿舎削減計画を見直します;政府は「国家公務員宿舎の削減計画」のなかで、つくば市の研究者むけ宿舎の約7割の削減を一方的に決め、入居者に退去通知を出しました。中心市街地のゴーストタウン化をもたらす「削減計画」は、研究所職員の生活や子どもの教育を脅かすとともに、研究活動や研究環境に深刻な影響をあたえます。国策として建設された「科学の街」を国自らの手で壊すことは許されません。

 研究所職員と地元住民の意見、要望をよく聞き、「筑波研究学園都市」の発展をはかる見地から「削減計画」を見直します。宿舎の老朽化対策、非正規の若手研究者も宿舎に入れるようにするなどの条件整備をすすめます。

科学・技術の利用は平和と「公開、自主、民主」の原則で;科学、技術の研究、開発、利用への国の支援は、「公開、自主、民主」の原則にたっておこなうとともに、大企業優遇ではなく、平和と福祉、安全、環境保全、地域振興など、ひろく国民の利益のためになされるべきです。大企業のためのイノベーションから中小企業を中心にした多面的なイノベーション、地域に密着したイノベーションに支援の力点を移すべきです。

 憲法の平和原則に反する科学、技術の軍事利用、とりわけ、宇宙基本法の具体化による宇宙の軍事利用をやめさせます。政府が検討している軍事に転用できる技術の公開制限や秘密特許の導入に反対します。原子力基本法の「安全保障」条項を削除します。

2.公正で民主的な研究費配分を行い、研究における不正行為の根絶をはかります

科学研究費補助金を大幅に増額し、配分の偏りを是正する;国が大学や研究者などに交付する競争的資金は、この10年間で倍増しましたが、大幅に増えたのは新技術に直結する研究への支援や、一部の大学への巨額の資金投入などです。一方で、基礎研究を支援する科学研究費補助金は2300億円にとどまっています。科学研究費補助金を大幅に増額し、採択率を抜本的に引きあげます。

 また、研究費の配分がより公正で民主的になるように、審査のあり方を改革します。(1)人文・社会科学を冷遇したり、旧帝大系など一部の大学に集中したりするような資金配分の偏りを是正し、研究のすそ野を思いきってひろげます。(2)業績至上主義の審査ではなく、研究計画も十分考慮した審査に改めます。(3)科学者で常勤の審査員を大幅に増員し、将来性ある研究、萌芽的な研究を見極める「目利き」のある審査、公正な審査を充実させます。

過度の競争を是正し、研究における不正行為を根絶する;研究における不正行為は、科学への社会の信頼を裏切る行為であり、根絶をはかります。そのため、不正の温床となっている業績至上主義による過度の競争を是正するとともに、大学・研究機関における外部資金の管理を厳格におこなうとともに、科学者としての倫理規範を確立するよう促します。

3.産学連携の健全な発展をうながします

 産業と学術が連携し、協力しあうことは、互いの発展にとって有益なことです。同時に、福島原発事故で明るみにでた原子力産業と一部大学との癒着にみられるように、大企業の利潤追求に大学が追随するような連携は、大学本来の役割が弱められ、研究成果の秘匿や企業との癒着などの弊害がうまれるため、制限すべきです。

 産学連携の健全な発展のために、国からの一方的な産学連携のおしつけでなく、大学の自主性を尊重し、基礎研究や教育など大学の本来の役割が犠牲にされないようにします。また、産学連携を推進する国の事業(共同研究への補助など)は、地域や地場産業の振興にも力を入れ、中小企業の技術力向上への支援を拡充します。

 大学と企業との健全な関係をむすぶため、以下の点で国のきちんとしたガイドラインを作成します。(1)企業との共同研究の際、学会などでの研究成果の公開が原則として保障され、だれでもひろく使えるようにする。(2)共同研究や委託研究での相当額の間接経費や、共有特許での大学の「不実施補償」を、企業側が負うようにする。(3)企業から受け入れた資金は、大学の責任で管理、配分し、公開することを原則とし、研究者と企業との金銭上の癒着をつくらない。

4.女性研究者の地位向上、研究条件の改善をはかります

 研究者のなかで女性の比率は13.8%、大学教員では21.24%(国立大学は14.03%)と世界のなかでも極めて低い水準にとどまっています。大学においては、助教、講師,准教授,教授と階層が上がるにつれて女性の割合が低くなる一方、専業非常勤講師のような不安定雇用職では女性の割合が5割を超えるなど、女性研究者は男性に比して劣悪な地位におかれています。家事・育児・介護など「家庭への責任」の大部分は女性が担っていること、出産・育児期間後の研究への復帰が困難なこと、採用・昇進などで男性が優先されやすい評価体制など、女性が研究を続ける上で不利な条件は数多くあります。これらを解決し、大学など研究者コミュニティにおいても男女共同参画を抜本的に推進することが求められています。そのために、以下の政策を推進します。

 女性差別撤廃条約が求める「家庭及び子の養育を男女及び社会全体が担うべき」という考え・意識をひろげていきます。すべての大学・研究機関が男女共同参画推進委員会などを設置し、教員、研究員、職員の採用、昇進にあたって女性の比率を高めるとりくみを、目標の設定、達成度の公開をふくめていっそう強めることを奨励・支援します。各大学・研究機関における男女格差是正のための暫定的措置(ポジティブ・アクション又はアファーマティブ・アクション)の運用を推奨し、女性研究者のキャリア形成を支援するプログラムの形成を促します。大学・研究機関が、男女共同参画の促進やセクシャルハラスメントアカデミックハラスメントなどの人権侵害を防止する専門家を専任で配置することへの支援を強めます。

 出産・育児・介護にあたる研究者にたいする業績評価での配慮、育児休業による不利益あつかいの禁止、育児支援資金の創設をはじめ休職・復帰支援策の拡充、大学・研究機関で働き・学ぶすべての者が利用できる保育施設の設置・充実など、研究者としての能力を十分に発揮できる環境整備促進に力を尽くします。文科省が実施している女性研究者支援のための補助事業を大幅増額するとともに、採択枠を文系・理系を問わずすべての分野に拡大し、保育所の設置・運営なども経費負担に含めるなど現場の実情に即して柔軟に利用できる制度に改善します。非常勤講師やポスドクについても出産・育児にみあって採用期間を延長し、大学院生に出産・育児のための休学保障などの支援策をひろげます。

 民間企業の研究者における女性の比率は6.6%でとくに低いことから、企業に対しては、研究・技術職に女性を積極的に採用すること、昇進・昇格・仕事内容において性差別をしないことなどを求めます。

 選択的夫婦別姓制度の実現をめざします。