科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

共産党選挙政策

「国民が主人公」の新しい日本を――日本共産党の総選挙政策
http://www.jcp.or.jp/seisaku/2009/syuuin/index.html

(3)教育費負担を軽減し、経済的理由で学業をあきらめる若者をなくします

 高校入学から大学卒業にまでかかる費用は子ども一人当たり平均1045万円、教育費は年収の34%にのぼり、とくに年収200〜400万円の世帯では 55.6%に達します(日本政策金融公庫調査)。貧困と格差の広がりは、高すぎる学費のために中退せざるをえない若者を増やし、私立大学では年間1万人の学生が経済的理由で退学しています。子育て支援というなら、この重い教育費負担の軽減は避けて通れません。

 憲法は国民に「ひとしく教育を受ける権利」(第26条)を保障し、教育基本法は「すべて国民は…経済的地位…によって、教育上差別されない」(第4条)としています。

 高校授業料の無償化をすすめる…… 先進国(OECD加盟30カ国)で高校に授業料があるのは日本を含めて4カ国(韓国、イタリア、ポルトガル)にすぎません。公立高校の授業料を無償化するとともに、私立も「授業料直接助成制度」(入学金等も対象とする)を創設し、年収500万円未満の世帯は全額助成、800万円未満の世帯は半額助成にするなど、無償化をめざして負担を軽減していきます。

 給付制奨学金の創設など奨学金制度の改革で支援を強める……国の奨学金はすべて無利子に戻すとともに、返済猶予を拡大します。とくに就学が困難な生徒・学生のため、返済不要の「給付制奨学金」を創設します。給付制奨学金制度がない国は、先進国のなかで日本、メキシコ、アイスランドの3カ国だけです。

 大学の「世界一の高学費」を軽減する…… 国公立大学の授業料減免を広げ、私立大学の授業料負担を減らす「直接助成制度」をつくります。「学費の段階的無償化」を定めた国際人権規約の「留保」を撤回します。国際人権規約の第13条は、高校と大学を段階的に無償化することを定めていますが、条約加盟国160カ国中、この条項を「留保」しているのは、日本とマダガスカルの2カ国だけです。

農業者・消費者の共同を広げ、「食の安全」と地域農業の再生をめざします

 食品の産地・品質の偽装、添加物の表示違反、賞味期限の改ざん、メラミン混入など、山積する「食の安全」問題を打開するには、食品に関する検査体制をただちに強化するとともに、根本的には食料自給率を抜本的に高めることが必要です。BSE(牛海綿状脳症)対策の全頭検査を維持するなど食に関する信頼を高め、安全・安心の生産・流通の拡大など農業者と消費者の共同を広げて、「食の安全」と地域農業の再生をめざします。

自然エネルギーの活用を大幅に拡大します

 二酸化炭素の排出量の9割がエネルギー由来であり、エネルギー対策は温暖化抑制のかなめです。現在、自然エネルギー再生可能エネルギー)は1次エネルギーのわずか2%(大規模水力発電分3%を除く)に止まっています。国際的にも日本は、大きく立ち遅れ、電力供給にしめる比率でEUを下回り、太陽光発電の導入量でドイツに首位の座を奪われスペインにも抜かれました。風力発電ではアメリカ、中国からも立ち遅れています。

 自然エネルギー利用の発電を促進する固定価格買取り義務制度を導入する……2020 年までにエネルギー(一次)の20%、2030年までに30%を自然エネルギーでまかなう計画を策定し、着実に実行していきます。そのためにすでに国会で提案したように、電力会社が、太陽光だけでなく自然エネルギーによる電力全般を、10年程度で初期投資の費用を回収できる価格で、全量買い入れる「固定価格買取義務制度」に転換します。初期投資を回収したあとは余剰電力の買い取りに切り替えます。そのさい、いま電気料金に含まれ主に原発用に使われている電源開発促進税(年間3510億円)や、温室効果ガスの削減目標に達しない分の穴埋めに海外から排出権を買い取るのにも使われている石油石炭税(同5100 億円)などの使い方を見直し、ユーザーへの負担を抑制するようにします。

 自然エネルギーの普及促進のために、家庭用の太陽光発電に対する国の補助を抜本的に引き上げ、公的助成を半分まで高めます。国、自治体の施設や、一定規模以上の建物については、自然エネルギーの利用、熱効率の改善を義務づけます。

 危険な原発だのみの「環境対策」をあらためる…… 自公政権は、原子力発電を「温暖化対策の切り札」とし、長期的にも電力供給の約半分を原発でまかなおうとしています。この間、地震などの自然災害や、事故、データ捏造(ねつぞう)などによって、原発の停止が相次いでいます。しかも、事故や廃棄物による放射能汚染という環境破壊の危険も大きく、安全上も、技術的にも未確立な原発に頼った「温暖化対策」はやめるべきです。

豊かな教育条件を実現します

 OECD加盟国で最下位の教育予算を、早期に平均にまで引き上げます。教員を増員・正規化し、「教員の多忙化」を解消し、「30人以下学級」を進めます。学校耐震化の促進など教育施設を整備します。不足している特別支援教育・障害児教育を充実させます。予算削減のための学校統廃合の強制を中止します。「私学の自由」を尊重し、私学助成を増額し、公私間格差を是正します。大学を疲弊させている「基盤的経費の連続削減」を中止し、予算を増額します。図書館、公民館などの拡充、専門職員の配置をすすめます。

2009年 総選挙 《各分野政策》
http://www.jcp.or.jp/seisaku/2009/syuuin/bunya/index.html

高校授業料無償化、大学学費負担の軽減、奨学金の拡充をすすめます

 先進国(OECD加盟30ヶ国)で、高校に授業料があるのは、日本を含めて4ヶ国(韓国、イタリア、ポルトガル)にすぎません。公立高校の授業料を無償化します。私立の初年度納付金は公立の6倍に達しており、負担軽減は急務です。入学金などを対象とする「授業料直接助成制度」を創設し、年収500万円未満の世帯は全額助成、800万円未満の世帯は半額助成とします。国立大学の授業料減免を広げ、私立大学の授業料負担を減らす「直接助成制度」を創設します。国の奨学金を以前のようにすべて無利子にするとともに、返済猶予を拡大します。とくに就学が困難な生徒・学生のため、欧米では主流の返済不要の「給付制奨学金制度」を創設します。「給付制奨学金制度」がない国は、先進国では日本、メキシコ、アイスランドの3ヶ国だけです。

「食の安全」と地域農業、農山漁村の再生をめざす

 近年、頻発する食の安全・安心を揺るがす事件の多くは、食の海外依存と深くかかわっており、根本的には、「安全な食料を日本の大地から」と結びついてこそ解決できます。食に関する信頼を高めるため、地産地消など農業者と消費者の共同を広げ、地域農業の再生をめざします。(→ 「14.消費者」参照)

 輸入食品の検査体制を強化し、原産国表示の徹底をはかる――膨大な輸入食品の10%にすぎない水際での検査率を50%以上に引き上げ、厳格な検疫・検査を実施します。原産国表示を徹底します。遺伝子組み換え食品の承認検査を厳密にし、遺伝・慢性毒性、環境への影響に関する厳格な調査・検証・表示を義務づけます。

 監視体制を強化し、製造年月日表示を復活する――くず米の混合品を「精米」と表示したり、生産国や産地を偽装したり、消費期限を改ざんするなど、“もうかりさえすればなんでもあり”の事態を一掃するために監視体制を強め、違反者にたいする罰則を強化します。偽装表示を抑制するため、JAS法の改正によって、直罰方式による厳罰かを全面的に導入します。また、食品に関する表示制度が各法律によって錯綜している点を一元化するため、統一的な食品表示法を制定します。製造年月日表示は復活させます。

 卸売市場の公正な運営をはかるとともに、相対取引をふくめて、大手スーパーと産地、中小小売が対等な立場で交渉できる協議会を設置するなど、公正な流通ルールの実現をめざします。

 BSE対策の全頭検査を維持する――アメリカは、わが国が同国産牛肉の輸入を「月齢20ヶ月以下」に限っている規制を撤廃するよう、執拗に迫っていますが、この圧力に屈することなく、わが国独自の対策を貫きます。米国産牛肉の輸入は、アメリカ側の安全体制が確立されないならば中止すべきです。自治体のおこなうBSE「全頭検査」への国の補助金を復活します。

 鳥インフルエンザなど各種感染症の監視体制を強め、発生の影響を最小限にとどめるよう機敏に対処します。殺処分や移動制限で打撃を受ける農家・業者への補償を万全にすすめ、感染爆発が起こったさいの医薬品等の備蓄、ワクチン緊急生産体制などの備えを抜本的に強化します。

遺伝子組み換え食品、クローン由来食品は安全性を十分に確認する―――検証する遺伝子組み換え食品・飼料のほとんどは、急性毒性とアレルギー誘発性の審査しかされず、慢性毒性や発がん性など消費者が確認を望んでいる安全性の審査としては全く不十分です。「全食料品・飼料のGM表示義務化」のために表示制度を改善します。

クローン技術は、出生率が極端に低く、安全性の検証なども不十分で、未成熟な技術です。クローン家畜由来食品の生産、流通を認めることについては、慎重でなければなりません。海外からの輸入品で、不用意に流通、消費することがないよう監視を徹底します。もし十分安全性が確認されて、生産、流通が認められるようになっても、クローンによって生産された肉などについては、当然、消費者の知る権利を保障するため、クローン由来食品として表示します。

食糧・エネルギー・環境・医療・福祉など地域経済をささえる中小企業を支援します

 地域に根ざしている中小企業は、地域住民に雇用を提供し所得を保障することで、地域経済を支えています。地域経済が発展し、住民の暮らしが向上するには、地域で生み出された付加価値が地域に還元され、再投資される経済循環が促進されることが必要です。それでこそ、地域で持続可能な社会が可能となります。最近、このことを自覚した自治体が、中小企業者や住民の要求にも応え、各地で、中小企業振興基本条例を定め、中小企業振興の取り組みをすすめています。この取り組みを支援します。地域への再投資を促進し、地域経済循環がすすむよう、地域金融機関にその役割の発揮を求めます。

 農・林・水の第一次産業の振興とむすんだ「農・商・工」連携の中小企業振興をすすめます。地元農水産物の給食材への供給や地元産の木材を使った公共施設や住宅の建設、消費者と結んだ直売所や産直センター、地元農林水産物による特産品づくりなどに力を注ぎます。

 21世紀の緊急課題となっている地球温暖化防止・持続可能な地域づくりのためにも、「地産地消」、「地産地商」の循環型の地域経済を発展させます。地球温暖化防止へ、大量生産・大量消費・大量廃棄の経済からの転換をはかる新産業政策、グリーンニューディールを推進し、これにとりくむ中小企業・中小工務店への仕事おこし、技術開発と普及を支援します。太陽光・風力・小型水力・バイオマス・地熱など再生可能エネルギーの開発と普及、静脈型産業、さらに再生医療・個人に合った福祉器具の開発などにとりくむ中小企業への支援をおこないます。

 地域の特性である自然と歴史を生かし、伝統・技術が蓄積された地元産業の発展と観光の振興をはかります。モノづくり技術の集積地や産地支援のための自治体ごとの振興計画づくりをすすめます。中小企業製品の開発・モノづくりを支援するとともに、販売への支援として、商品を広く知らせる常設展示場を各地にもうけ、インターネット上のサイトを提供します。

 ひも付きの補助金制度をあらため、地方が、生活密着型の公共事業に創意的にとりくめるようにします。公共工事入札は、中小企業の育成につながるようにします。公共事業・官公需の発注・入札は、分離分割発注、「小規模工事登録制度」など随意契約の活用、無制限の一般競争入札ではなくランク制の厳格な実施で、中小企業への発注率を高めます。最低制限価格制度を導入し、ダンピング入札をなくし、工事の品質を確保するなど、公正なルールを確立します。国や自治体の仕事を受注する企業に、人間らしく働ける賃金や下請単価、労働条件を義務づける「公契約法・条例」の制定をすすめます。

 地域医療の確保、国保料の減額、生活保護の改善、教育費扶助の増額など医療・福祉・教育を充実し、住民が安心して生活できる地域をつくります。

 中小企業の技術革新と発展、創業に生かすために、教育・研究機関などとの産学連携・人材育成を重視します。

8 エネルギー
自然エネルギーの開発・利用を広げ、原発依存のエネルギー政策を転換します

  エネルギーは食料とともに経済・社会の存立の基盤であるにもかかわらず、日本のエネルギー自給率はわずか4%(2006年。エネルギー白書)にすぎません。

 昨年は、先物取引などによる異常な投機、イラク、イランなど中東情勢の緊張や、中国やインドなど発展を続ける途上国のエネルギー需要の増加によって、原油などエネルギー価格が高騰しました。需給ベースでは1バレル60ドル程度のはずの原油が、147ドル(08年7月11日)と史上最高値を記録し、日本の経済・社会に打撃を与えました。エネルギーの値上がりは今後も起きる可能性があると懸念されています。

 エネルギー問題は、地球の温暖化対策とも密接な関係があります。日本は、京都議定書にもとづいて、その第一約束期間内(2008〜12年)に二酸化炭素などの温暖化ガスの排出量を、1990年比で6%削減する義務があります。しかし日本の目標達成は危機的状況にあります。政府は原発の新増設を“頼みの綱 ”としていますが、原発は安全性に問題があり、原発に依存するのではなく自然エネルギーの導入に本腰を入れるべきです(→温暖化対策全般については、 2008年6月25日発表の「地球温暖化の抑止に、日本はどのようにして国際的責任をはたすべきか―――日本共産党の見解」を参照)

 省エネの徹底やエネルギー効率の引き上げによって低エネルギー社会を目指すとともに、日本の条件にあった自然エネルギーの開発・利用を計画的に拡大することで、エネルギーの自給率の引き上げをはかります。
エネルギー政策の重点を自然エネルギーの開発・利用へ転換します

 二酸化炭素の排出量の9割がエネルギー由来であることからみても、エネルギー対策は温暖化対策の要です。エネルギーの自給率を引き上げ、また地球温暖化対策をすすめるためには、エネルギー効率の徹底した向上とともに、環境に配慮した自然エネルギー源の開発・利用に本格的にとりくむ必要があります。風力や太陽光・熱、地熱、小水力、波力や、あるいは畜産や林業など地域の産業とむすんだバイオマス・エネルギーなどは、まさに地域に固有のエネルギー源です。そこから得られる電気やガスを販売することで地域に新たな収入が生まれます。事業の成果や副産物を地元に還元したり、雇用や技術、資金の流れを地元に生み出すことで、地域経済の活性化に役立ちます。

 ところが政府は、化石燃料偏重から自然エネルギー重視に転換する明確な展望ももたず、自然エネルギーの利用拡大のカギとなる自然エネルギー発電に関する固定価格買い取り制度の導入を長らく拒否してきました。そればかりか、サミット前に発表された「福田ビジョン」では、原発の新増設を今後のエネルギー対策の優先課題としています。日本の自然エネルギー利用の現状は、国際的にも大きく立ち遅れ、電力供給にしめる比率でEUを下回り、太陽光発電の導入量でドイツに首位の座を奪われスペインにも抜かれました。風力発電では、アメリカ、中国からも立ち遅れています。日本にとって、自然エネルギーの普及は急務です。原油・石炭など輸入エネルギーの需要増・高騰が予測されるもとで、経済基盤の安定のためにもエネルギー自給率の引き上げが求められているからです。

 化石燃料偏重・原発だのみから脱却し、自然エネルギー重視へと、エネルギー政策の抜本的転換が必要です。
(1) 自然エネルギーの割合を2020年までに20%とする導入目標を明らかにします

EUが2020年までに一次エネルギーの20%を自然エネルギーでまかなう目標を決定したのをはじめ、世界的に見ても、太陽光・熱、風力、小水力、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの普及が本格的な流れになっています。こうしたなかで、日本だけが自然エネルギーの普及に背をむけ、一次エネルギーのわずか2%(大規模水力発電分3%を除く)をまかなうだけにとどまっています。2020年までにエネルギー(一次)の20%、2030年までに30%を自然エネルギーでまかなう「自然エネルギー開発・利用計画」を策定し、着実に実行していきます。

自然エネルギーから得られる電気やガス、将来的には水素などを販売することで、その地域には新たな収入が生まれます。ドイツでは、自然エネルギーの普及によって年間1億トンの二酸化炭素を削減するとともに、21.4万人の雇用と年間3.7兆円の売り上げなど、雇用や技術、資金の流れを地元に生み出し、事業の成果や副産物を地元に還元しています。自然エネルギーの拡大は地域経済への波及効果も大きく、雇用創出や内需拡大にもつながります。ドイツなどでの実績に照らせば、日本でも数年間で約6万人の雇用を増やし、2030年には約70万人の雇用をもつ産業となる可能性を持っています。

(2) 自然エネルギーによる電力を固定価格で買い取る制度を早急に導入します

 自然エネルギー発電の普及には、長期的な採算の見通しが重要であるため、電力の固定価格買い取り制度の導入がカギです。固定価格買い取り制度は、再生可能エネルギーの設備を導入した時点で、その設備から供給される電力の買い上げ価格を市場まかせにせず、中長期にわたって保障する方式です。EUのなかでも固定価格買い取り制度が導入されたドイツ、デンマーク、スペインでは、自然エネルギーの普及が急速にすすみ、世界をリードしています。

 政府は、太陽光発電についてのみ、自家消費分を除いた余剰電力に限定して、従来の倍の価格で電力会社が購入する制度を導入しようとしています。しかし、二酸化炭素の排出量を大幅な削減をめざして急速に自然エネルギーの普及を図るには、太陽光発電だけでは不十分です。すでに党国会議員団が国会で提案したように、電力会社が、太陽光だけでなく自然エネルギーによる電力全般を、10年程度で初期投資の費用を回収できる価格で、全量買い入れる「固定価格義務的買取制度」に転換します。初期投資を回収したあとは余剰電力の買い取りに切り替えます。そのさい、いま電気料金に含まれ主に原発用に使われている電源開発促進税(年間3510億円)や、温室効果ガスの削減目標に達しない分の穴埋めに海外から排出権を買い取るのにも使われている石油石炭税(同5100億円)などの使い方を見直し、ユーザーへの負担を抑制するようにします。

さらに、自然エネルギーの普及促進のために、家庭用の太陽光発電に対する国の補助を抜本的に引き上げ、公的助成を半分まで高めます。国、自治体の施設や、一定規模以上の建物については、自然エネルギーの利用、熱効率の改善を義務づけます。

また、排熱を熱供給に利用すること(コジェネレーション=電気・熱併給システム)で、エネルギーの利用率を40%程度から70%台まで引き上げることができます。小規模・分散型利用を促進する制度を整備し、コジェネレーションの導入を積極的に支援すべきです。
バイオ燃料は、食料と競合しない植物資源を使い、国内産・地域産の資源を優先活用します

 近年、原油価格の高騰などを背景に、世界各国でバイオエタノールの生産が急増しています。この動きは、トウモロコシの需給をひっ迫させ、国際価格をこの 1年で倍近くに高騰させました。たとえばメキシコでは庶民の食生活を直撃するなど、バイオエタノールの開発が、途上国や低所得者の食料を脅かしています。日本でも、トウモロコシの輸入価格が大幅に上昇し、飼料や多くの食品に影響が出ています。

 バイオエタノールは、地球温暖化対策に役立ちますが、原料となるサトウキビ生産の拡大やパーム油生産のためのヤシ農園の建設による熱帯林の破壊が、各国で新たな環境破壊として問題になっています。

 日本政府は、エタノールを含むバイオ燃料の利用促進を打ち出していますが、その大部分は輸入を見込んでいます。二酸化炭素の排出削減をいいながら、二酸化炭素の吸収源である森林を破壊するのでは、地球環境にやさしいエネルギー開発とはいえません。

 日本共産党は、バイオ燃料の開発・導入を自然エネルギーの重要な柱であると考えています。その具体化にあたっては、食料需要と競合しない植物資源などに限定する、国内産・地域産の資源を優先的に活用する(「地産地消」)、生産・加工・流通・消費のすべての段階で環境を悪化させない持続可能な方法を採用するなど、新たな環境破壊をひきおこさないためのガイドラインをもうけるよう政府に要求します。

プルトニウム利用をやめ、原発からの段階的な撤退をすすめます

 政府と電力会社が温暖化対策を口実に新増設を図っている原発は、十分な安全の保証がなく技術的に未確立です。磨耗した配管の破裂で死傷者を出した美浜原発の事故(2004年)にひきつづき、冷却用海水の温度データのねつ造、志賀・福島の各原発の臨界事故隠しなどが次々と発覚しました。経済産業省の指示で電力会社が行った調査の結果報告(07年3月)によれば、問題事例が全体で1万件をこえ、うち原子力関係が455件もあるという驚くべき数に上りました。その事例で明らかになった、基準や手続を無視したルール違反の横行とずさんな検査体制や経営・管理の実態は深刻です。国民の安全に責任を持つ規制行政を確立するうえで、原発を規制・監督する原子力安全・保安院を、促進官庁である経済産業省から独立させることは、国際的なルールに照らしても最低限やるべきことです。

 昨年の新潟県中越沖地震を契機に、柏崎刈羽原発や高速増殖原型炉「もんじゅ」などの地下に活断層があることが明らかとなりました。六ケ所村の核燃料サイクル施設の地下にも活断層があると指摘されています。すべての原発について活断層調査を実施し、また耐震基準の見直しを行って、原発の耐震性の総点検を実施します。東海地震の想定震源域の真上には浜岡原発があります。このような政府・電力会社による原発立地のあり方は、無謀としかいいようがありません。今の原発では他にも、放射性廃棄物の処理と万年単位の管理の問題、莫大な費用がかかる問題など、多くの問題が解決されないままです。

 こうした問題を抱えた原発からは、計画的に撤退すべきです。原発の危険性を増幅するだけのプルサーマル計画や「もんじゅ」の運転再開計画は撤回し、六ヶ所再処理工場をはじめ核燃料サイクル施設の総点検を実施し、計画は中止すべきです。原発の総点検をおこない、老朽原発をはじめ安全が危ぶまれる原発については、運転停止を含めた必要な措置をとらせます。

 政府は、自治体にプルサーマル実施の受け入れや、高レベル放射性廃棄物の最終処分場への応募をうながし、受け入れれば手厚い補助金を出すとしてきましたが、補助金と引き換えに住民に危険を押しつけるようなやり方はやめるべきです。

 自公政権は、「原子力立国」をかかげて原発の輸出や技術協力を目指していますが、国内外で、安全を軽視した原発の新増設をすすめることはやめるべきです。
エネルギー高騰を許さないため、投機規制に取り組みます

 昨年の原油高騰では、中小企業、農林漁業、運輸業などが、燃料の値上がりで深刻な打撃を受けました。

 投機マネーに関しては、国連や各国政府が今検討している投機マネー規制を強化することが重要です。「投機マネーの暴走を抑える」という強い政治的意思を打ち出して、国際社会とも協力しながら、―――(1)原油穀物など人類の生存の土台となる商品に対する投機の規制を具体化する、(2)ヘッジファンドに対して、直接の情報開示を求めるなど抜本的な規制強化にふみだす、(3)国際連帯税など、投機マネーの暴走を抑えるための適正な課税を本格的に検討する ―――こうした規制策を早急に具体化すべきです。

1、「消費者庁」「国民生活センター」の機能強化をはかります

消費者庁」「消費者委員会」を真に実効あるものに-――消費者団体や消費者運動の悲願のひとつであった「消費者庁」「消費者委員会」が9月にも発足します。「消費者庁」が消費者問題についての司令塔的機能を、「消費者委員会」が全省庁を監督する機能を、それぞれ効果的に発揮するために、体制や人選を適切なものにします。また、消費者被害救済の最前線で奮闘している消費生活相談員の体制を強化し、待遇を改善するために、十分な補助をおこないます。

 国民生活センターの拡充―――情報提供や相談助言活動を強化し、商品検査業務の強化・拡充、紛争処理権限の付与などで、国民生活センターの拡充をはかります。そのための人員の配置、予算の増額を求めます。

教育予算をOECD平均並みまで引き上げます……日本の教育予算の水準はGDP比3.4%でOECD諸国最下位、諸国平均の7割にも達していません。そのため日本はヨーロッパとくらべて教育条件が大きく立ち遅れています。財界が「もっと教育予算を削れ」と圧力をかけ、自公政権はその言いなりに、予算を抑制してきた結果です。いま圧倒的多数の教育関係者は一致して教育予算の増額を求めています。財界の妨害をはねのけて、教育予算についてOECD平均をめざして計画的に引き上げます。

私学助成を増額します……私学教育は公教育の大切な一翼を担っています。公私間格差を是正し、私学の教育条件をきちんと保障するため、当面、経常費2分の1助成の早期実現、授業料直接補助、施設助成の拡充をすすめます。

 私学の自主性を守ります……「私学の自由」は、国民の教育の自由を保障する上できわめて大切なものです。一昨年、自公政権が強行した「教育三法」は、私学にたいする権力統制に道をひらく危険があります。日本共産党の国会質問にたいして、政府は「私学の建学の精神尊重」を認めるとともに、教員評価・学校評価を私学助成の交付要件にすることを「考えていない」と答弁しました。こうしたことをふまえ、私学の自主性を守るために全力をあげます。

高校教育の無償化を進めます……高校は進学率97%を超えた「準義務教育」ともいうべき教育機関です。先進諸国でほとんど高校学費が無償になっているにもかかわらず、日本では高額な負担が強いられています。とくにこの間の経済不況の中で、高校から経済的な理由で排除される若者が生まれていることは、憲法と法律が禁じている「経済的な地位による教育上の差別」そのものです。

以下の無償化政策を実行に移し、経済的な理由で高校から排除される子どもを一人も出さないようにします。

《公立高校》授業料を無償とします。

《私立高校》私立の初年度納付金は公立の六倍に達し、負担軽減は急務です。私立高校授業料を減額する「直接助成制度」をつくり、年収500万円以下の世帯を授業料(入学金、施設整備費を含む)全額助成、800万円以下の世帯を授業料半額助成とします。専修学校各種学校(高校に準じるもの)も同様とします。

《共通》学費支払いが困難な場合の無保証人・無利子・返済猶予付の緊急貸し付け制度をつくります。高校通学費補助制度をつくります。高校奨学金制度を無保証人・無利子・返済猶予付とし、成績要件を撤廃します。経済的困難な高校生への給付制奨学金制度を創設します。

 大学学費の負担軽減を進めます……「世界一高い学費」は、学生とその家庭に重くのしかかっています。高校入学から大学卒業までにかかる費用は一人平均1045万円、わが子のための教育費は年収の34パーセントに達しています。しかも、「貧困と格差」の拡大の中で、学費を捻出するために毎日深夜までアルバイトをして体を壊したり、学校をあきらめる若者がふえています。ヨーロッパでは大学学費を無償としている国は少なくありません。

緊急に次の政策を実行し、経済的な理由で大学・大学院を諦める若者を一人も出さないようにします。

国公立大学》国立大学では1982年に学生比12.5%だった減免予算の枠は、いまや5.8%に削られています。国公立大学高専については国及び地方の減免予算枠を引き上げ、東京大学がはじめた「世帯年収400万以下は全員免除」などの制度を全国でおこなえるようにします。

《私立大学》私立大学にいたっては国の予算枠は学生比わずか0.1%にすぎません。私立大学の授業料負担を減らす「直接助成制度」をつくります。年収400万以下の場合に一定額が減額となるような授業料直接助成制度をつくります。

奨学金制度》国の奨学金をすべて無利子に戻し、イギリスのように一定の収入(年300万円)に達するまで返済猶予とします。欧米で主流である、返済なしの「給付制奨学金制度」を創設し、当面、経済的困難をかかえる学生に支給します。

 「学費の段階的無償化」を定めた国際人権規約への留保を撤回します……日本政府は、国際人権規約に加わりながら、無償化条項を留保したままです。そういう国は今や日本、マダガスカルの2ヶ国のみです。留保を撤回し、国の姿勢を転換し、「世界一高い学費」を計画的に引き下げるようにします。

7 大学改革、科学・技術
国民の立場から大学改革を実現し、科学・技術の調和のとれた振興をはかります
1.「構造改革」による大学再編をやめ、国民の立場からの大学改革を実現します

 自民・公明政権が、「世界最高水準の大学をつくる」といいながら、「効率化と競争」に拍車をかける「大学の構造改革」をすすめた結果、大学の教育・研究現場に深刻なゆがみと疲弊がひろがっています。

 国立大学は、法人化によって運営費交付金が毎年1%削減され、財政ひっ迫による教育・研究基盤の弱体化、基礎研究の衰退、大学間格差の拡大と地方大学、人文系、教育系大学の経営危機をもたらすなど、極めて深刻な事態に陥っています。私立大学でも国庫助成が削減され、定員割れした私学は「不要だ」とばかりに補助金がカットされています。私立大学の経常費に対する補助割合が11%に低下し、学生の学費負担の増大、教育・研究条件の国公私間格差の拡大、中小私大・短大での経営困難をもたらしました。その一方で、政府は、競争的資金(評価によって配分する研究費)を旧帝大系大学や一部の大手私大に集中させました。まさに「弱肉強食」の大学政策です。そのもとで、「学問の自由」を保障する「大学の自治」が脅かされるとともに、多くの大学教員が研究費獲得とそのための業績競争にかりたてられ、大学で長期的視野にたって自由に、腰をすえた研究や教育にとりくむことは困難になっています。

 自公政権は、教育・研究現場のこうした現状を無視して「大学の構造改革」をさらにすすめようとしています。国立大学の運営費交付金の1%削減をつづけるとともに、教職員数に応じた配分から競争的な配分に変えることを検討しています。これでは、多くの大学で教育・研究の基盤が崩れてしまい、財政力の弱い中小の国立大学は存亡の危機にさらされます。新しい産業拠点をつくるために大学の大規模な再編統合がくわだてられていることとあわせ、国民にとって重大な問題です。私立大学の経常費補助についても、増額要求を無視する一方で、競争的な性格をいっそう強めようとしています。また、「経営困難」と評価した法人に対して、「経営指導」と称して介入を強めようとしていることは、私学の自主性を脅かすものです。

 わが国の大学・大学院は、学術の中心を担い、地域の教育、文化、産業の基盤をささえるという大事な役割をはたしている、国民の大切な共通財産です。大学改革はこうした大学の役割を尊重し、その発展を応援する方向ですすめるべきです。日本共産党は、大学の公共的役割をまもるため、大学を疲弊させる「構造改革」路線から脱却し、「学問の府」にふさわしいやり方で、国民の立場に立った大学改革をすすめます。

大学予算を大幅に増やし、基盤的経費の充実、大学間格差、国公私間格差の是正をはかります

 国立大学法人の運営費交付金を充実する……運営費交付金を毎年削減する方針を廃止し、基盤的経費として十分に保障します。法人化後に削減した720億円は直ちに復活させます。政府が検討している競争的資金化を中止し、財政力の弱い中小の大学に厚く配分するなど、大学間格差を是正する調整機能をもった算定ルールに改めます。国立大学法人の施設整備補助金を大幅に増やし、老朽施設を改修します。また、国立大学の地域貢献をきめ細かく支援するとともに、国による一方的な再編・統合に反対します。地方交付税における大学運営費を増やし、公立大学公立大学法人の予算を増額します。

 私立大学の経常費二分の一補助を実現する……私立大学が高等教育において果たす役割を重視し、私立大学への財政支援の拡大、学費負担の軽減など、国公私間の格差を是正します。私大収入の七割以上を学費にたよる経営のあり方を改善するため、年次計画をもって経常費二分の一補助を実現し、国庫負担の割合を大幅に高めます。定員割れした大学への助成金を削減するペナルティを直ちにやめるとともに、定員確保の努力を支援する助成事業を私学の自主性を尊重しつつ抜本的に拡充するなど、私立大学の二極化の是正をめざします。「経営困難」法人への指導と称して私立大学の運営に国が介入することに反対します。

 財政負担への国の責任をはたす……わが国の大学がかかえる最大の問題は、大学関係予算がGDP(国内総生産)比で欧米諸国の半分の水準にすぎず、そのことが主な原因となって、教育研究条件が劣悪で、学生の負担が世界に例をみないほど重いことです。教育研究条件の整備をはかることは国の責任であり、大学関係予算を大幅に引き上げます。

「大学の自治」を尊重するルールを確立し、大学の自主的改革を支援します

 「大学の自治」を尊重するルールを確立する……世界で形成されてきた「大学改革の原則」は、「支援すれども統制せず(サポート・バット・ノットコントロール)」であり、「大学の自治」を尊重して大学への財政支援を行うことです。わが国でも、国公私立の違いを問わず、大学に資金を提供する側と、教育・研究をになう大学との関係を律する基本的なルールとして、この原則を確立すべきです。

 国立大学法人制度を根本的に見直す……国が各大学の目標を定め、その達成度を評価し、組織を再編するなど、大学の国家統制を強めるしくみを廃止し、大学の自主性を尊重した制度に改めます。教授会を基礎にした大学運営と教職員による学長選挙を尊重する制度を確立します。

 独立した配分機関を確立する……一部の大学や大学院に多額の資金を投入するCOE(センター・オブ・エクセレンス、卓越した拠点)予算やGP(グッド・プラクティス、優れた取り組み)予算など、大学・大学院を単位に国が交付する競争的資金は、国の財政誘導による大学間競争、大学統制を強めるものです。これを見直し、大学の自主性を尊重するものへ切り替えます。そのため、大学関係者、学術関係者などからなる独立した配分機関の確立と審査内容の公開をはかり、公正に資金配分を決めるようにします。

 私立大学の公共性を高める……私立大学の設置審査を厳正な基準で行うようにし、私学のもつ公共性を高めます。安易な廃校によるリストラを防止するため、私学の「募集停止」も報告事項にせず審査の対象にします。私立大学の財政公開を促進し、教職員によるチェック機能を高めます。まともな教育条件を保障できない株式会社立大学の制度は廃止し、私立大学(学校法人)として再出発できる環境を整備します。

だれもが安心して学べる大学、じっくりと教育・研究できる大学をつくります

 世界一高い学費負担を軽減する……国際人権規約(A規約=経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)の高校と大学を段階的に無償化する条項(第 13条B、C項)の留保を撤回し、国立大学費の標準額を引き下げるなど、学費負担の軽減にふみだします。経済的理由による教育格差をなくし、だれもが安心して学べるために、(1)国公立大学の授業料減免を広げる、(2)私立大学の授業料減免への国庫補助を増額するとともに、私立大学生の授業料負担を大幅に減らす「直接助成制度」をつくる、(3)国の奨学金をすべて無利子に戻すとともに、返済滞納者の「ブラックリスト化」を中止し、返済猶予を拡大する、(4)経済的困難をかかえる生徒・学生への「給付制奨学金制度」をつくる、などの緊急策をただちに実行します。

 少人数授業をふやし、教養教育を充実する……学生の人間形成や学問の基礎をつちかう教養教育の充実や、わかりやすく学びがいある授業づくりへの改善努力を励ます支援策を抜本的に強めます。少人数教育の本格的な導入や勉学条件の充実のために、教職員の増員をはかり、非常勤講師の劣悪な待遇を改善します。

 任期制教員の無限定な導入や成果主義賃金に反対する……任期制教員の無限定な導入や成果主義賃金は、じっくりと教育研究にうちこむことを妨げ、学問の発展を損なうため、導入に反対し、国による誘導策をやめさせます。大学における教育・研究の公共的役割にふさわしく、教員の安定した身分を保障します。

 留学生に魅力ある環境を整備する……留学生が安心して勉学できるよう、低廉な宿舎の確保、奨学金の拡充、日本語教育の充実、就職支援などの体制を国の責任で整備します。

2.経済効率最優先の科学技術政策から、学術発展へ調和のとれた振興策に切り替えます

 科学、技術は、その多面的な発展をうながす見地から、研究の自由を保障し、長期的視野からのつりあいのとれた振興をはかってこそ、社会の進歩に貢献できます。とりわけ、基礎研究は、ただちに経済的価値を生まなくとも、科学、技術の全体が発展する土台であり、国の十分な支援が必要です。

 ところが、自民・公明政権による科学技術政策は、大企業が求める技術開発につながる分野に重点的に投資し、それ以外の分野、とりわけ基礎科学への支援を弱めてきました。そのため、わが国の研究開発費(民間を含む)にしめる基礎研究の割合は12.7%と、欧米諸国に比べてもかなり低く、しかも低下傾向をつづけています。また、業績至上主義による競争を研究現場に押し付けたことから、ただちに成果のあがる研究や外部資金をとれる研究が偏重されようになり、基礎研究の基盤が崩れるなど、少なくない分野で学問の継承さえ危ぶまれる事態がうまれています。

 日本共産党は、こうした経済効率優先の科学技術政策を転換し、科学、技術の多面的な発展をうながすための振興策と、研究者が自由な発想でじっくりと研究にとりくめる環境づくりのために力をつくします。

基礎研究を重視し、科学、技術の調和のとれた発展と国民本位の利用をはかります

 科学・技術の総合的な振興計画を確立する…国の科学技術関係予算の配分を全面的に見直し、人文・社会科学の役割を重視するとともに、基礎研究への支援を抜本的に強めます。また、大企業への技術開発補助金防衛省の軍事研究費など、不要・不急の予算を削減します。

 研究者が自由に使える研究費(大学・研究機関が研究者に支給する経常的な研究費)を十分に保障するとともに、任期制の導入を抑え、安定した雇用を保障する制度を確立するなど、研究者の地位を向上させ、権利を保障します。欧米に比べても少ない研究支援者を増員するとともに、劣悪な待遇を改善します。国立大学法人・独法研究機関への人件費削減の義務づけをやめさせます。

 科学技術基本計画を政府がトップダウンで策定するやり方をあらため、日本学術会議をはじめひろく学術団体の意見を尊重して、科学、技術の調和のとれた発展をはかる総合的な振興計画を確立します。

 科学・技術の利用は平和と「公開、自主、民主」の原則で…科学、技術の研究、開発、利用への国の支援は、「公開、自主、民主」の原則にたっておこなうとともに、大企業優遇ではなく、平和と福祉、安全、環境保全、地域振興など、ひろく国民の利益のためになされるべきです。

 憲法の平和原則に反する科学、技術の軍事利用、とりわけ、宇宙基本法の具体化による宇宙の軍事利用をやめさせます。政府が検討している軍事に転用できる技術の公開制限や秘密特許の導入に反対します。

競争的研究費の民主的改革をすすめ、研究における不正行為の根絶をはかります

 競争的研究費の民主的改革をすすめる…個々の研究者に対して交付される各種の競争的研究費については、科学研究費補助金を大幅に増額し、採択率を抜本的に引きあげるとともに、次の方向で改革します。(1)特定分野や旧帝大系大学に集中するのでなく幅広く大学・研究機関の研究者に配分する。(2)業績至上主義の審査ではなく、研究計画も十分考慮した審査に改める。(3)そのために、科学者による専任の審査官の大幅増員や日本学術会議との連携強化をはかるなど、専門家による十分な審査体制を確立し、審査内容を公開する。

 過度の競争を是正し、研究における不正行為を根絶する…研究における不正行為は、科学への社会の信頼を裏切る行為であり、根絶をはかります。そのため、不正の温床となっている業績至上主義による過度の競争を是正するとともに、科学者としての倫理規範を確立します。大学における外部資金の管理を厳格におこなうとともに、研究機関や学術団体が不正防止への自律的機能を強めるよう支援します。

産学連携の健全な発展をうながします

 産業と学術が連携し、協力しあうことは、互いの発展にとって有益なことです。同時に、大企業の利潤追求に大学が追随するような連携では、大学本来の役割が弱められ、研究成果の秘匿や企業との癒着がうまれるなど、学術の発展に支障をきたす弊害をひろげます。

 産学連携の健全な発展のために、国からの一方的な産学連携のおしつけでなく、大学の自主性を尊重し、基礎研究や教育など大学の本来の役割が犠牲にされないようにします。また、産学連携を推進する国の事業(共同研究への補助など)は、地域や地場産業の振興にも力を入れ、中小企業の技術力向上への支援を拡充します。

 大学と企業との健全な関係をむすぶため、以下の点で国のきちんとしたガイドラインを作成します。(1)企業との共同研究の際、学会などでの研究成果の公開が原則として保障され、だれでもひろく使えるようにする。(2)共同研究や委託研究での相当額の間接経費や、共有特許での大学の「不実施補償」を、企業側が負うようにする。(3)企業から受け入れた資金は、大学の責任で管理、配分することを原則とし、研究者と企業との金銭上の癒着をつくらない。

女性研究者の地位向上、研究条件の改善をはかります

 研究者のなかで女性の比率は13.0%、大学教員では24.3%(国立大学は13.4%)と世界的にみても低く、他方で大学の専業非常勤講師のような不安定雇用では5割以上をしめるなど、女性研究者の地位向上、男女共同参画のいっそうの推進が期待されています。大学・研究機関が男女共同参画推進委員会などを設置し、教員、研究員、職員の採用、昇進にあたって女性の比率を高めるとりくみを、目標の設定、達成度の公開をふくめていっそう強めるように奨励します。民間企業の研究者における女性の比率は6.6%でとくに低く、企業に対しても男女共同参画の推進を働きかけます。

 出産・育児・介護にあたる研究者にたいする業績評価での配慮、休職・復帰支援策の拡充、大学・研究機関内保育施設の充実など、研究者としての能力を十分に発揮できる環境整備を促進します。文科省が実施している「女性研究者支援モデル育成」の採択枠を大幅に拡大し、保育所の設置・運営も経費負担に含めるなど利用条件を改善します。非常勤講師やポスドクについても出産・育児にみあって採用期間を延長し、大学院生にも出産・育児のための休学保障と奨学金制度をつくるなど、子育て支援策を強めます。

 セクシャルハラスメントアカデミックハラスメントなどの人権侵害をなくすため、大学・研究機関の相談・調査体制の充実をはかります。

3.大学院生、ポストドクターなど若手研究者の劣悪待遇と就職難の解決をはかります

 この数年来、大学院博士課程を修了しても安定した研究職につくことができない若者が急増し、パートタイムのポストドクター(以下、ポスドク)や大学非常勤講師、企業への派遣労働など不安定で劣悪な雇用状態におかれ、「高学歴難民」「高学歴ワーキング・プア」として社会問題化しています。こうした若者は 10万人を超えるとみられ、優秀な学生が研究者をめざす道を敬遠する傾向がつよまっていることとも合わせ、日本の学術の発展と社会の発展にとってきわめて深刻な事態となっています。

 この事態を生んだ要因は、何よりも自民党政治が、財界の要求をうけて1990年代以降の「大学院生の倍加」政策をすすめながら、博士の活躍できる場を大学・研究機関や民間企業など、ひろく社会につくりだす施策を怠ったことです。さらに、小泉内閣以来の「構造改革」路線が、大学・研究機関の予算削減、人件費削減と、研究費の競争的資金化を推進したことにあります。国立大学法人では、旧助手の初任給で一万人分にあたる人件費を削減し、他方で研究費によるポスドクの雇用など研究者の非正規雇用を増大させました。また、大企業が、博士課程修了者を専ら契約社員派遣社員などの非正規で働かせ、正規雇用を怠ってきた責任も厳しく問われるべきです。

 ポスドクや大学非常勤講師、派遣社員などの非正規雇用の多くは、年収300万円以下の低所得であり、社会保険にもまともに加入できないなど、劣悪な待遇を強いられています。大学院生が、高い学費負担や劣悪な研究条件のもとで、じっくりと研究に打ち込むことが困難な状況におかれていることも重大です。

 こうした若手研究者の「使い捨て」といえる事態は、学術の将来の発展をそこなうものであり、日本の社会にとっての重大な問題です。日本共産党は、国の責任で若手研究者の劣悪な待遇と深刻な就職難の解決をはかり、若手研究者が研究に夢をもてる環境を確保するために全力をつくします。

若手研究者の就職難の解決をはかります

 大学・研究機関による博士の就職支援、ポスドクの転職支援が充実するように政府の対策を抜本的に強化すべきです。文科省の「キャリアパス多様化促進事業」を継続・拡充し、人文・社会科学系にもひろげ、採択機関を増やすとともに、機関間の情報交換、連携を強化します。大学・研究機関がポスドクなどを研究費で雇用する場合に、期間終了後の就職先を確保するよううながします。博士が広く社会で活躍できるように、大学院教育を充実させるとともに、博士の社会的地位と待遇を高め、民間企業、教師、公務員などへの採用の道をひろげます。博士を派遣社員でうけいれている企業には、直接雇用へ切り替えるよう指導を強めます。

 日本の大学の本務教員1人当たりの学生数は、イギリスの1.4倍、ドイツの1.7倍であり、大学教員の増員は必要です。大学教員の多忙化や後継者不足を解消するために若手教員を増員し、研究者の非正規雇用の拡大をおさえます。

 大学院を学生定員充足率で評価することや、画一的な大学院博士課程の定員削減はやめ、大学院の定員制度の柔軟化をはかります。
若手研究者の劣悪な待遇を改善し、じっくりと研究できる環境をつくります

 院生やオーバードクターへの研究奨励制度の抜本的拡充、ポスドクの職場の社会保険への加入を促進します。日本共産党は政府に働きかけて、独立研究機関が雇用するポスドクの公務員宿舎への入居を実現しました。国立大学法人の宿舎整備をすすめ、ポスドクの入居をひろげます。

 大学非常勤講師で主な生計を立てている「専業非常勤講師」の処遇を抜本的に改善するため、専任教員との「同一労働同一賃金」の原則にもとづく賃金の引き上げ、社会保険への加入の拡大など、均等待遇の実現をはかります。また、一方的な雇い止めを禁止するなど安定した雇用を保障させます。

 大学院生が経済的理由で研究を断念しなくてすむように、無利子奨学金の拡充と返還免除枠の拡大、給付制奨学金の導入を実現します。卒業後、低賃金などの事情で返済が困難な研究者を救済するため、日本学生支援機構奨学金の返済猶予事由を弾力的に運用し、年収300万円に達しない場合に返済を猶予する期限(5年)をなくし、広く適用させます。