科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

【ひとこと編集後記】

■国会事故調査委員
http://www.naiic.jp/

●「福島原発事故は人災」国会事故調が最終報告書
http://scienceportal.jp/news/daily/1207/1207061.html

多数報道がなされていますし、様々な意見がウェブ上を飛び交っていますので、ここではご紹介に留めるのみにいたしますが、科学技術と社会のあり方を考える上でも重要な資料ではないかと思います。

■国家戦略室、フロンティア分科会
http://www.npu.go.jp/frontier.html

が出した報告書が話題です。

フロンティア分科会
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120706/hokoku1.pdf

概要
http://www.npu.go.jp/policy/policy04/pdf/20120706/hokoku_gaiyo1.pdf

繁栄のフロンティア分科会
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120706/hokoku2.pdf

幸福のフロンティア分科会
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120706/hokoku3.pdf

叡智のフロンティア分科会
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120706/hokoku4.pdf

平和のフロンティア分科会
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120706/hokoku5.pdf

繁栄のフロンティア分科会の報告書
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120706/hokoku2.pdf

の中には、40歳定年制という議論を呼びそうな提言があります。ちょっと長いですが引用します。

?皆が 75 歳まで働くための「40 歳定年制」
有期を基本とした上述の雇用契約が実現するまでの過渡期の段階において、全ての国民
が 75 歳まで働ける社会を形成するためには、定年制の概念も見直す必要もある。
現在、企業の定年年齢の引き上げが進んでいるが、こうした制度改正は、一つの企業内
に人材を固定化させ、企業内の新陳代謝を阻害し、企業の競争力を低下させることで、か
えって雇用の減少に繋がる恐れがある。
人生で2〜3回程度転職することが普通になる社会を目指すためには、むしろ定年を引
き下げることが必要である。具体的には、入社から 20 年目以降であれば、労使が自由に定
年年齢を設定できるようにすべきである(最速では 40 歳定年制を認める)。ただし、早期
定年制を選択した企業には、たとえば定年後1〜2年程度の所得補償を義務づけ社員の再
教育機会を保障することで、労働者の労働移転を円滑化すべきである。
もちろん、20 年目に定年になってもそれでリタイアするのではなく、再教育機会を得た
上で新たな職場に移転するあるいは同じ職場で再度雇用契約を結ぶことが想定されている。
このような制度にすることにより、新陳代謝が促進されるとともに、学び直しによって多
くの労働者が新しい環境に合った能力を身につけることが可能になる。
日本企業の競争力の一つは、長期雇用に支えられたスキル蓄積や団結力といわれている。
が、現在でも、20 年目以降は、管理職としてマネージメントを行う社員、職場内でプレー
ヤーとして活動する社員、それまでの経験を生かして転職する社員など、社員の特性に応
じてキャリアパスが複線化している。このため、20 年目を基準にすることは、現在の企業
経営とも整合的である。
一方、労働市場の流動化が実現するまでは、転職を迫られる社員のリスクが大きいため、
激変緩和措置として、企業に対して1〜2年程度の所得補償を義務づけるとともに、雇用
保険から再教育訓練給付を支給することで、スムーズな労働移転を確保すべきである。ま
た、40 歳で初めて社外に出ることは難しい可能性があり、事前準備として、入社 10 年目程
度の労働者に「所得補償付きサバティカル休暇」を取得することを権利として認め、若い
段階から社外との交流を拡大することを促進すべきある。

皆さんはこの提言に対しどのような意見をお持ちでしょうか?

批判も多いようです。

40歳定年制の法律的意味
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-e1d7.html

■東北大の大隅典子教授が

日本のアカデミア人材育成が危ない
http://nosumi.exblog.jp/16270396/

という記事をブログに書かれています。

若手教員が減少しており、このままでは日本の研究は危機的な状況に陥る(すでに陥っている?)という内容です。

拙書 

博士漂流時代  「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)

でも同種のことは触れていますが、問題はどう解決するかということです。

若手研究者を雇用する研究職を増やすことは必要です。ただ、予算が限られているなか、若手の雇用を増やすことはそれ以外の雇用を減らすこととセットになるゼロサムゲームになる可能性があります。そして、それでも現状ではすべての若手に研究職を与えることはかなり難しいでしょう。

若手研究者も、現在すでに教員の地位についている人もWin-Winになるためには、どうすればよいか…

若手もシニアも、科学界の外側に活躍の場を見つけられたらよいのではないかと思います。そうすれば、研究職になれなかった若手も、近年業績が芳しくなく、かと言って路頭に迷っては困るので簡単には職を投げ出せないシニア研究者もハッピーになれるのではないかと思うのです。

しかし、これは科学界の外側を巻き込む話であり、科学者コミュニティだけでは解決できない問題であり、上で挙げた40歳定年がよいかは難しいところがありますが、雇用が今より流動化する必要もあるのではないかと考えます。

もちろん、流動化が安易な首切りにつながる恐れがあるわけで、そのあたりはかなり注意しないといけないと思いますが、職場を転々としても苦しまない社会がないと、そもそも言われなくても流動性の高い研究者たちの活躍の場が限られてしまうように思うのです。

このほか、ポスドクを雇うPIにポスドクのキャリアに対し責任をもってもらうという方向の改革はすでに出されていますが、それだけではもちろん不十分です。

文部科学省の公的研究費により雇用される若手の博士研究員の多様なキャリアパスの支援に関する基本方針 〜雇用する公的研究機関や研究代表者に求められること〜」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu10/toushin/1317945.htm

この問題が深刻だと言われてすでに10年以上。私が「博士漂流時代」を出版して2年近く。解決のための行動フェースにとうのむかしに移っていなければならないのに、まだ足踏みしているように思われるのがもどかしいです。

E.E
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最近はFacebookに書きこむ率が高いです。
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