クリスマスイブの24日、平成23年度予算案が閣議決定された。
この中で、文教・科学技術予算のポイント (PDF5,286kb)をみてみる。
科学技術振興費については、1兆3352億円と、22年から18億円増えている。
これに関しては、菅総理の意向が直前に働いたようだ。
科学技術振興予算増額を 首相「わがまま言う」
これを菅総理の「クリスマスプレゼント」として歓迎する向きもあるが(政府、2011年度予算案を閣議決定 科学技術振興費、菅首相のツルの一声で増額に)ゴリ押しとの批判もある。
また、以下のような批判もある。
【政論】23年度予算案 これが政治主導といえるのか!?
理系出身の首相が科学技術分野にこだわるのは分かるが、それならば概算要求の段階から指示を出せば済む話だ。直後に「科学技術の面ではわがままを言わせてもらう」と自らの政治決断をアピールしたことを考えると「出来レース」ではないかと勘ぐってしまう。
科学が政局に利用されたと言えるのかもしれない。
国立大学運営費交付金は、58億円ダウンの1兆1528億円。そのかわり、大学教育研究特別整備費として58億円を新設し、減った分を埋め合わせた。
奨学金は706億円で3億円の増。大学や大学院の授業料免除は29億円増の225億円。学生個人への経済支援は充実化の方向。
事業再仕分けの俎上に載せられた「国公私立大学を通じた大学教育改革等の支援は、89億円減の496億円。
内訳は、博士課程教育リーディングプログラムは新設(39億円)されたものの、グローバルCOEは28億円減の237億円などとなっている。
科学研究関連の予算は以下のようになっている。
科研費(科学研究費補助金)は633億円増の2633億円。基金化により年度を超えた使用ができるようになる。これは大きい。
元気な日本特別復活枠で低い評価を与えたれた若手研究者関連の予算は、特別研究員(PD)が14億円増の60億円とかなり増加した。テニュアトラック普及・定着事業も新設(81億円)。
そして大きいのが、事業再仕分けでも取り上げられた競争的資金の見直し。
科学技術振興調整費は廃止。ただ、科学技術戦略推進費(仮称)が創設されるという。振興調整費との違いがまだ良く見えてこないが…
12月27日追記
以下のプレスリリースが出ていました
プレスリリース「「科学技術戦略推進費」(仮称)の創設について」(PDF)
以上、簡単に私が関心のある部分だけピックアップしてみた。みなさんそれぞれが資料を読んでみてほしい。
twitterで標葉隆馬さんは以下のように述べている。
科研費の増額なども鑑みると、全体としては、文科省の予算では、(重点分野も含めて)基礎と人材育成をしなさいって感じに見えるな。応用面については、他省庁からの予算獲得という住み分けの方向性か。
http://twitter.com/r_shineha/status/18402638945062912
文教費の中で削られている予算は、施設設備費やスクールカウンセラー、連携関係等など。他も見ても、やはり設備とか改革プログラムではなく、文科省は、よりダイレクトに人そのものの育成にお金をつけなさいって見えるな。
http://twitter.com/r_shineha/status/18403969030160385
こういう割と分かりやすいメッセージを、研究室のPIクラスの方々はどのように受け取り、そして実際の個別の研究の文脈でお金を振り分けていくのか、って所がきになるなあ。
http://twitter.com/r_shineha/status/18404447449255937
例えば、国としてはこういうこと言ってるわけだけど、例えば文科省の予算で人につけずに特許取得・産学連携にむけてお金使ったらそれは本来の趣旨とは筋違いってことになるかもしれない訳だ。
http://twitter.com/r_shineha/status/18404722205532160
人への(直接)投資という点については、民主党の「コンクリートから人へ」に象徴される政策の方向性に合致していると言えるのだろう。
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とはいうものの、事業仕分けや政策コンテストで示された科学技術関連予算への厳しい目は、こうした方針とはあまり関係がないようにみえる。
科学コミュニティは予算の増額に胸をなで下ろすだけではだめだ。首相の「ゴリ押し」が、果たして国民にどのような印象を与えたのかも気になる。
政府の方向だけを向いた陳情より、はやぶさやノーベル賞のほうが大きな効果があったかもしれないということを考えると、科学コミュニティと社会のあり方はずっと問われ続けているわけだ。
科学技術関連予算が政局にからむという現実もあり、理想論ばかり言っていられないかもしれないが、厳しい財政事情のなか、予算での優遇をうけたということを、科学コミュニティ、研究者自身はしっかりと考えないと、次の「クリスマスプレゼント」はないかもしれない。
文科省サイトに、H23予算案の詳しい情報。 http://ow.ly/3uelr 直接予算編成に全体には絡んでいないので、結果だけ見た感想をつぶやいてみよう。首相のツルの一声と報道されていたが、本当に科学技術振興費が前年度比プラスにもどるは驚いた。まさに政治主導。#f_o_s
http://twitter.com/takuya3110/status/18464816012201984
科学技術振興費(1兆3352億円、+18億、+0.1%)の各省内訳を見ると、伸びているのは文科省(+357億)とグリーンイノベのある環境省(+22億)のみ。文科省の独り勝ち。経産省の大幅減(−224億)のが気になる。
http://twitter.com/takuya3110/status/18467059734159361
文科省(+357億)の科学技術振興費のうち、科研費だけで+633億なので、科研費以外の多くを削減して、増分も含め全て科研費に積んだ形。調整時間もないのでツルの一声分はほとんど科研費に積んだのだろうけど、基金化もあわせ、強力な重点化。#f_o_s
http://twitter.com/takuya3110/status/18468307019497472
科研費大幅増の中、政策コンテストでコメント一位の大学関係費(総額は増)のうち運営費交付金は微減(−58億、新規の特別推進費を入れると前年同)。これは強いメッセージなんだと思われるなあ。#f_o_s
http://twitter.com/takuya3110/status/18470214492491776
科研費の大幅増、若手部分の基金化、若手向け人材制度の充実など、研究費からキャリアパスまで若手研究者重視も強いメッセージ。310億円(42.9%)増(724億円→1,034億円)。真に若手研究者のためになり、安心出来る環境、次世代がより入ってくる環境になるか注目。#f_o_s
http://twitter.com/takuya3110/status/18473679272808448
はやぶさの影響で増えたと言われているが、大型国家プロジェクトは軒並み大幅減。宇宙−75億、原子力−80億。南極・海洋・地震−13億。補正の前倒しを入れれば宇宙は実質プラスだが、科研費大幅増で国家プロジェクト大幅減も強いメッセージだろうな。#f_o_s
http://twitter.com/takuya3110/status/18473679272808448
関わってきたプロジェクトも無事予算計上。組織もつきました。引き続きがんばらないと。◆科学技術イノベーション政策における政策のための科学の推進【新規】 (802百万円) (続く)#f_o_s
http://twitter.com/takuya3110/status/18474442971676672
経済・社会等の状況を多面的な視点から計測・把握した上で課題解決等に向けた有効な政策を合 理的なプロセスにより立案する「客観的根拠に基づく政策形成」の実現に向け、科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」の体制・基盤の整備、研究及び人材の育成 #f_o_s
http://twitter.com/takuya3110/status/18474931431940096