科学・政策と社会ニュースクリップ

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産業構造ビジョン

 2010年5月18日、経済産業省産業構造審議会産業競争力部会の第5回会合が開催された。

 第5回配布資料

 この部会は

経済産業省は、平成21年12月に提示された、成長戦略基本方針を踏まえ、日本産業の今後の在り方を示す「産業構造ビジョン(仮称)」を策定するために、産業構造審議会に新たに産業競争力部会を設置いたしました。

「今日の日本の産業の行き詰まりや深刻さ」を踏まえ、今後、「日本は、何で稼ぎ、雇用していくのか」、ということについて議論します。

 とのことで、第6回目がとりまとめとなる。その一回前の第5回では、産業構造ビジョン(仮称)の概要が明らかにされた。

 以下配布資料。

資料3(1) 日本の産業を支える横断的施策について(第一部)(PDF形式:2,456KB)
資料3(2) 日本の産業を支える横断的施策について(第二部)(PDF形式:3,665KB)
資料4 産業構造ビジョン骨子案(PDF形式:548KB)
資料5 産業構造ビジョン(概要)(PDF形式:3,731KB)

 非常に多岐にわたっているので、私の関心が深い教育やキャリアの部分から一部のみご紹介する。

資料3(1)

p13 グローバル高度人材の育成・呼び込み〜基本的考え方〜

立地競争力を強化し、アジアの成長市場を取り込むためには、?語学力に秀で、?海外市場獲得へと飛び込む海外指向が強く、?グローバル企業の経営を担えるだけの異文化対応力のある人材が不可欠。
○しかし、現状では、語学力と国際経験が決定的に不足。他方で、若者のグローバル意識も低下。
→ グローバル人材の育成と、徹底した高度人材の呼び込みにより、人材の国際化を進めるべき。

p14 グローバル高度人材の育成・呼び込み〜大学教育のグローバル化

大学の国際化は、グローバル人材の育成・呼び込みの促進には必須。
○欧米だけでなく、アジアと比較しても我が国の大学の国際化は極めて遅れており、また、日本人の海外への留学生も減尐傾向。
○企業ニーズを捉えた、国際化に力点を置いた新たな大学が高い評価。
→ アジア等からの留学生の受入れ促進と、日本人学生のグローバル化を推進

p17 グローバル高度人材の育成・呼び込み〜高度外国人材の受け入れ〜

高度外国人材の活用は先進国で最下位。アジアの成長を取り込むためには、日本の高度外国人材の獲得力の強化が重要。
○欧米、アジアの一部で導入されている「ポイント制」の導入を含め、入国円滑化を検討すべき。

p18 グローバル高度人材の育成・呼び込み

現在、つくばにおいて、釻独(産総研、釻独(物材機構が有する世界的な研究施設を核とするナノテク研究開発拠点の形成を、経団連、筑波大等との連携の下、産学官で推進中。
○こうした最先端設備が揃い、一線級の研究者が集積する場において次世代人材の育成を行うことは有効であり、産学官の連携により、世界的産学官拠点に世界水準の大学院機能を構築することにより、次世代の産業技術人材の育成を行う構想を推進中。

資料3(2)

p24 現場人材の育成〜産学連携によるイノベーター創出プログラム〜

高度技術人材育成の現状
■産業界: グローバル競争の激化、技術の急速な進歩により、もはや企業卖独で人材育成を行うには限界
■教育界: 産業界の実践的なニーズに対応した教育ができていない状況
■学生: 経済的に修士課程・博士課程を修了するのが困難。修了しても、就職の見込みがない。

今後の新たな取り組み
?産学一体となった教育カリキュラム・評価手法等の開発
?先駆的な教育プログラムを行う大学に対して、官民共同による経済的支援(奨学金
?優れた教育プログラムの修了者を、産業界は優先採用

p36 産学官が結集した新たな研究開発体制の構築

技術に関する「自前主義」を克服し、革新的技術の開発を促進するため、産学官が結集した新たな研究開発体制を構築する。
○つくばにおいては、日本の強みを有するナノテクノロジー分野で、産業技術総合研究所物質・材料研究機構筑波大学経済団体連合会が、「つくば・ナノテクノロジー・アリーナ構想」を推進。世界最高水準の研究開発を行うとともに、その成果の実用化、普及に必要な国際標準化や性能・安全性の評価・認証に一体的に取り組む。
○また、本構想の下で、世界水準の大学院機能を付加する計画を推進中。これにより、国内外から優れた人材を集めるとともに、高度な人材育成を行う。

p38 多様な人材の確保

理工系博士課程修了者(ポスドク)について、多様な産業分野での活躍を促進するため、公的研究機関等が一定期間雇用し、企業に派遣して共同研究に従事させる等の実践的な育成プログラムを推進する。
○若者の理工系離れによる技術人材の減尐を回避するため、教育界、産業界、国、地方等が結集した「科学技術人材育成コンソーシアム」を設立。理科教育のベストプラクティスの全国展開等を推進。


資料5 p30 我が国人材の競争力

科学・工学系博士号取得人材の数は、米国の約4分の1と尐なく、また人口が尐ない英独よりも尐ない。
• 日本における高度外国人材の国内労働市場への流入は先進国で圧倒的に低い。

 以上、経産省からみた科学技術人材問題の問題点が取り上げられている。科学・技術人材に大きな期待がよせられているようだ。もちろん、経産省だけあって、産業に直結する人材育成が強調されている。「国民を食わすための科学・技術」というところか。

 これらと文科省の政策がどのように整合性を持ち、成長戦略内に記載されるのだろうか。