科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

若手を救い、若手を力とするために

「若手切り」という状況が起ころうとしているなか、少しだけ希望が見えてきた。

若手、外国人研究者支援てこ入れ 科学技術予算で首相表明
http://svr.sanyo.oni.co.jp/news_k/news/d/2009120901000957/

政府の総合科学技術会議が9日、首相官邸で開かれ、議長の鳩山由紀夫首相は「若手が冷遇され、外国人に狭き門となっている日本の特徴を克服しないと、科学技術で世界をリードできない」と述べ、行政刷新会議事業仕分けで予算削減を求められた若手・外国人研究者の育成、支援にてこ入れする姿勢を明らかにした。

政府も若手が苦境に陥っていることを理解している。

今ここで、ハコモノ、大型プロジェクト、旧態依然とした構造を残すのではない形で若手を救い、そして救うという後ろ向きのことだけではなく、前向きに、この国の成長戦略に乗る形で、若手を生かす具体的提案をすべきだ。

若手、というと若手以外は必要ないのか、ということを言われてしまうが、そうではないことは強調したい。他を排除する意図はない。

なぜ若手か。

これは科学技術白書からとってきた図。

平成19年版 科学技術白書 第1部 第1章 第4節 1 科学技術関係人材の育成
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa200701/014.htm

あくまでノーベル賞は象徴として扱ってほしいが、20代、30代が知的生産性が高いという事実はこれを見ればわかる。上の図では、30代、40代前半に山があるが、そこで業績をあげるためにはその前からやってないとだめ、という意味で、20代、30代が重要であると考える。

この20代、30代を苦境に陥らせるのは、非常にもったいない。この年代に創造的な仕事をしてもらわないと国はダメになる。


では、この年代に創造的な仕事をしてもらうためにどうすればよいか。

この年代に自由に研究を行ってもらうこと、そして研究だけでなく、社会の様々な場で活躍してもらうこと。

自由な研究のためには、この年代にダイレクトにお金がいくようにすることが重要だ。中間機関抜きにこの年代に渡す。そして、「100%エフォート縛り」をやめる。

若手の創造性を奪っているのが、研究資金による縛りだ。ある研究資金をもらったら、科研費に申請できない、他の研究ができない、出張も学会出席もできない。こんなバカなことはない。

自由に創造性の高いことをしてもらうべきだ。

若手を一か所に集め、そこで創造的な仕事をしてもらうという方法もある。科学飯場だ。

社会の様々な場で活躍してもらうためには、年齢制限など、移動を阻む壁を取り払う。

「持参金」をつけなくても、規制を取り払うだけで選択肢は増える。

また、研究経験者には図書館や論文情報など、知の情報を優先的に入手できる体制をつくることも、若手が社会で活躍の場を見つけるのに役立つのではないか。


目前に迫った「若手切り」を避けるためにはどうすればよいか。

研究資金の効率化を行わず、安易に若手を切る研究機関には何らかのペナルティを与える。

G-COEなど、研究機関ごとのお金から若手に行くのではなく、直接若手にわたるフェローシップを増やす。これは、私たちの公開質問状に民主党が答えた言葉が参考になる。
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20090808/p1

幅広く研究者や各研究機関の意欲を高め、研究の質の向上させていくためには、組織単位の補助金を増やすのではなく、研究内容そのものに着目し、研究者単位で資金を配分すべきである。

こうした施策を展開していく中で、若手の博士号取得者、研究者の雇用の確保、生活の向上に資する環境を整備していく。

もし解雇になったとしても、次の職場を見つけるための猶予期間を設け、その間の生活の安定を図ることは必要だ。そして次の職場を見つけるために、情報提供をしたり、マッチングをする機関を作るか、NPOや会社などを介して支援する。

「キャリアチェンジフェローシップ」というのがあるといいかもしれない。若手の活躍の場が広がれば、投資額は回収されるだろう。

まだこなれていないが、練り上げていきたい。

今は研究資金縮減反対だけでなく、ではどうすればいいのか、をいう時期だ。反対声明から一歩超えた動きを、科学コミュニティには期待したい。