科学・政策と社会ニュースクリップ

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科学技術政策提言市場を作る〜いちアイディア 榎木英介

 私たちは、科学技術政策に関して、その動向をウォッチし、提言を作ることを大きな目標として掲げている1)。

 来月開催される「サイエンスアゴラ2008」でも、政策提言に関するワークショップを開催予定だ2)。

 現在急ピッチで準備をすすめている。その中で、いろいろ考えることがあった。

 提言を私や一部の仲間で作ったとして、はたしてそれが、どの程度の正当性があるか、ということだ。

 提言が一人よがりになっていないか、その提言がどの程度の支持を誰から得ているのか…

 以前、行政の方とお話をしたときに、「政策提言とやらが、陳情とどう違うのか」と言われたことがある。確かに、一部の利益を代表した意見を「提言」するのなら、それは陳情と変わることがない。

 そして、そうした提言とも陳情ともつかない意見が、政策に取り入れられれるのは簡単ではない。

 政党はいろいろ問題は言われるが、なんだかんだ言っても選挙で国民に選ばれた議員からなっているという、はっきりとした裏付けがある。

 一方私たちのようなNPOは、有志が集まった集団だ。公益性を掲げてはいるものの、その存在基盤は泡のようにはかないものかもしれない。

 では、私たちのようなNPOが政策提言を発表する意味は何か。

 それは、行政や政治が把握できない意見を汲み取るという意義があるがある。平成16年度の科学技術白書では、「政府による一元的な判断だけでは調整が困難であり、広く社会的な合意形成が必要な政策については、国民等の各主体からの意思を的確にくみ取ることも必要」と述べ、そのためにNPOが「我が国の科学技術の方向性や社会的活動を評価し、又は、国民参加型の議論を活性化する等の役割を果たしていくことが考えられる」と、期待を述べている。

 一人よがりの陳情にならずに、多くの支持を得た政策提言を作るにはどうすればよいのか…

 いろいろ考えた結果、以下のような仕組みを思いついた。まだこなれていないが、一つのアイディアとしてお読みいただけたら幸いだ。

 それは、科学技術政策提言コンペティション(人気投票)という仕組みだ。

 まず、有志が自分が考えた提言を持ち寄る。

 それをウェブ上に掲げて、支持、不支持の投票を受け付ける。その際、属性(男女、学生かポスドクか、ポジションについているか、市民かなど)の情報も収集する。

 投票結果を表示する。そうすると、支持率が集計される。ある提言は、ポスドクには不人気だが、市民には支持があるなど、傾向が示されるかもしれない。支持率順に表示すると、わかりやすいかもしれない。

 支持率の高い提言は、しかるべき方法で行政や政治に届ける。支持率というデータがあるため、説得力がある。

 支持率の高い提言をした人は、評価される。もし政策に反映された暁には、最大限の「リスペクト」を得る。

 これは、一定期間を決めて行うのもいいが、常時政策が投稿できる仕組みがあってもいいかもしれない。

 一人よがりの提言は、支持率が低いため、次第に欄外に消えていく。支持の高い提言だけが残る。

 もちろん、問題は多々ある。多数の支持が得られる提言しかダメだというのなら、マイノリティの抱える問題が埋没してしまうかもしれない。

 しかし、ウェブの中のコメント欄などにあるさまざまな意見が埋もれていくのはもったいない。掲示板やブログで同じ問題が何度も蒸し返されるもの忍びない。この仕組みで、そうしたウェブ上のすぐれた提案を具体化するためにも、やってみたい気がする。

 まだラフなアイディアなので、ご意見をお待ちしている。

1)目指すものなどは
「科学技術政策とNPO 政策提言型科学技術NPOの現状と課題」(榎木英介、春日匠)
科学技術社会論研究 5
科学技術社会論学会編集委員会 (編さん) ¥ 3,780 (税込)  玉川大学出版部 (2008/07)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4472183056/nposciencec0d-22/

参照。抜刷をプレゼントいたしますので、下記まで送付先住所をお書きの上御一報ください。
enodon+postdoc@gmail.com(@を小文字に)

残部がなくなり次第、プレゼント終了ですので、おはやめに。

2)「日本の科学技術コミュニケーションはいかにあるべきか?:第四期科学技術基本計画に向けた提言」
11月22日(土) 13:00〜14:30 会場: 東京国際交流館 メディアホール
http://scienceportal.jp/scienceagora/agora2008/081122/2-4.html