科学・政策と社会ニュースクリップ

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大学院改革の今

 メルマガでもご紹介したが、4月30日付の読売新聞に、唐突にこんな記事がでた。

“徒弟制”一掃、文科省が大学院を抜本改革へ

 なぜゴールデンウィークの初日にぽっとこんな記事が出たのか不明だ。多分予定原稿が用意してあって、事件などないときに入れてきたのだろう。

 ともかく、大学院が変わろうとしているのは、メルマガでも常々お伝えしてきたが、ここでちょっとまとめてみる。

 「大学院教育振興施策要綱」の策定についてという文書が、3月30日付で出ていた。ちょっと引用する。

 文部科学省では、大学院教育の充実・強化を図る観点から、今後の大学院教育の改革の方向性及び早急に取り組むべき重点施策を明示し、体系的かつ集中的な施策展開を図ることを目的として、このたび「大学院教育振興施策要綱」を別添(PDF:333KB)のとおり策定しましたので、お知らせいたします。
 本要綱は、大学院教育の振興に向けた初めての総合的な取組計画であり、文部科学省としては、今後本要綱に基づき各種施策を推進し、国際的に魅力ある大学院教育の実現に取り組んでいきます。

 9ページと短いが、今の段階では一番新しい大学院改革の指針だろう。おそらくこれが読売新聞のネタの元ではないかと推察する。

 これが今まで発表されてきた答申などと何が違うかというと、実施機関が平成18年から22年とはっきり明記してあることだ。これは第3期の科学技術基本計画の期間と重なる。

 つまり、達成されたかされないかが明確に評価されるわけだ。

 私たちが最も関心の深い奨学金や博士課程支援制度については、以下のように書かれている。

・特別研究員事業(フェローシップ)及びTA・RA等としても活用可能な競争的資金の充実を図る
・各大学院における奨学金や授業料免除などの経済的支援制度の状況を調査・公表する等により、各大学院の経済的支援制度の充実を促す
・大学院への進学を希望する学生等のニーズを踏まえつつ(独)日本学生支援機構、における奨学金(予約採用)の決定時期の早期化を図る
・多様な学修歴を有する学生に対する補完的な教育プログラムの策定状況を調査・公表する等により、各大学院の補完的な教育プログラムの積極的な提供を促す

 若手の支援に関しては、以下のようなことを言っている。私たちは、若手研究者の研究スペースの問題に言及したこの提案に大いに賛同したい。

国立大学法人等の施設整備に当たっては「第2次国立大学等施設緊急整備5か年、計画」に基づき、重点的・計画的な整備を推進するとともに、若手研究者等に対するスペース確保等を促進するための施設マネジメントの取組状況を事業採択時の評価の一指標とする
・私立大学については、若手教員等の教育研究環境の整備が積極的に進められるよう、研究施設・設備に対する支援の充実を図る
・若手研究者に自立性と活躍の機会を与える仕組みを導入する大学等を支援する
・科学研究費補助金による若手研究者向け研究費及び特別研究員事業の充実を図る
・若手教員等に対するスペースの確保等、その自立性や流動性を高めるための取組を競争的な支援制度の審査・評価の一指標とする

 そして、若手研究者のキャリアパスに関しては、以下のようなことを述べている。一部抜粋。

・平成18年度までに学位以外の履修証明に関する調査研究を実施し、その社会的な定着方策等について検討する
・博士号取得者が社会の多様な場で活躍するための、企業等と博士号取得者の出会いの場の創出等によるキャリア形成支援や環境整備を行う大学等を支援する
・企業内の再教育・研修等を目的とした教育プログラムなど企業等におけるキャリアに応じた各大学院におけるリカレント教育の実施状況を調査・公表する
・大学院教育の実質化や学位取得者の活用等に関し、大学側と産業側の意見交換のためのシンポジウム等を開催するとともに、定期的な協議を行う

 こうした取り組みの進達状況については、毎年公表されるという。

 この施策が実行に移されるかどうか、具体的にどのような形で実行に移されるのか、私たちも非常に関心がある。関係者への取材なども重ねながら、大学院改革の現状についてレポートしていきたい。