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雇い止め問題 大学、研究機関はは文科省の依頼に答えよ

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         No.1008 2023年2月8日号 巻頭言
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【巻頭言】
★雇い止め問題 大学、研究機関はは文科省の依頼に答えよ

2022年2月1日〜2023年2月7日
カセイケン代表 榎木英介

 2月7日、大きなニュースが飛び込んできました。

 文科省が雇い止め問題に関する調査を行い、依頼文章を大学、研究機関に発出したのです。

「研究者・教員等の雇用状況等に関する調査」(令和4年度)の調査結果(主要項目)について公表します(PDF:1.1MB)
https://www.mext.go.jp/content/20230207-mxt_kiban03-000027043_1.pdf

 読売新聞の報道です。

任期付き研究者の「雇い止め」調査、無期雇用の権利発生する10年目前の契約未定41%
https://www.yomiuri.co.jp/science/20230207-OYT1T50175/

 以下調査の概要。

機関からの回答において、研究者、教員等に対する労働契約法の 特例対象者のうち、2022 年度末で通算契約期間 10 年を迎える者 (12,137 人)について、2023 年度以降も有期労働契約を継続する もしくは継続の可能性がある者(継続の場合、労働者に無期転換 申込権が発生)が 5,424 人(44.7%)、未定の者が 4,997 人 (41.2%)等であった。

 と、5千人近くの方々が困難に直面していることが分かりました。

 文科省はこれを受けて、各研究機関に以下の依頼を出しました。

大学及び研究開発法人等における無期転換ルールの適切な運用について(依頼):文部科学省

4文科科第664号
令和5年2月7日

国公立大学法人の長
大学を設置する各地方公共団体の長
文部科学大臣所轄学校法人理事長
大学を設置する各学校設置会社の代表取締役  殿
大学共同利用機関法人機構長
文部科学省所管各研究開発法人の長

文部科学省 科学技術・学術政策局長
柿田  恭良
初等中等教育局長
藤原  章夫
高等教育局長
池田  貴城
研究振興局長
森   晃憲
研究開発局長
千原  由幸
文化庁次長
杉浦  久弘

貴法人における無期転換ルールの適切な運用について(依頼)
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/mext_00067.html

 この文章の中で、文科省は以下のように書いています。

従前からお願いしておりますとおり、無期転換ルールの適用を意図的に避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇止めや契約期間中の解雇等を行うことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではないことに御留意いただき、労働者から無期転換申込があった場合の対応の準備を含め、改めて、各部局や法人内における10年特例の適切な運用に向けた対応を促していただきますようお願いいたします。

これとともに、評価すべきはキャリアサポートのことを文章内に明記したことです。

仮に契約期間の満了に伴い雇用関係を終了する場合であっても、必要に応じ、説明・相談に努めていただくとともに、下記のキャリアサポートに係る取組例(参考2)も参考にしていただきつつ、必要な対応をお願いいたします。

 参考2とされる資料は以下。

(参考2)特例対象者に対するキャリアサポートに係る取組例
 ※「研究者・教員等の雇用状況等に関する調査」回答より
・全有期労働契約者の無期転換権の発生日、発生状況及び無期転換権の申し込み状況を一元的に管理
雇用契約を終了する場合、今後のキャリアについて面談を実施
・適性適職診断の実施
・機関内のホームページにおいて他機関の公募情報を掲載
・転出支援セミナーや個別転職相談会の開催

 文科省の通知くらいで変わるわけない、と思われるかもしれませんが、昨年11月に文科省が出した通知で、いくつかの大学が無期雇用転換に応じたといいます。

貴法人における無期転換ルールの円滑な運用について(依頼)
https://tohokudai-kumiai.org/docs22/mext-tsuchi221107.pdf

 良きにつけ悪しきにつけ、大学などは文科省の方を向いています。それでいいのかという思いもありますが、今回はそれに期待します。

 これで雇い止め問題が解決の方向に動くことを心より願っています。

海外では円安直撃、国内では雇い止め 研究者の足を引っ張る過酷な環境 「科学技術立国」危うい現実:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/229221

 私のコメントが出ていますが、今年3月の雇い止め阻止はいわば出血を止めるようなものです。

 出血の原因になる病気、すなわち研究環境の改善をしなければ、これからも出血が続きます。

 そのためには、今回の雇い止めを超えて、そして立場を超えて、問題解決のため動いていかなければなりません。

医師のコロナ偽情報、責任どう問う 揺れる米国世論:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2409N0U2A221C2000000/

 偽情報を処罰するルールができても、言論の自由だと訴訟が起きているとのこと。難しい問題です。

Critics of risky virus studies launch nonprofit to push for research halt, tighter safety rules
https://www.science.org/content/article/critics-risky-virus-studies-launch-nonprofit-push-research-halt-tighter-safety-rules

 用途多義性のデュアルユース問題です。

Turkey-Syria earthquake: What scientists know
https://www.nature.com/articles/d41586-023-00364-y

 刻一刻と状況が変わってきており、死者は一万人を超えました。戦争をしている場合ではないと思うのですが…。

月面を歩ける保証はないのに2400億円を"約束"…アメリカの言いなりになるJAXAは本当に必要なのか(プレジデントオンライン) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/bb4073f8f15e9aea3f8da09e944e6d32989024a4

 月とゲットーという古くからある問題を想起させます。

九州の産官学組織、台湾に訪問団を派遣…半導体人材の育成に向け、教育システムなどを調査
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20230203-OYTNT50024/

世界の頭脳 沖縄で研究…53か国・地域から集う科学技術大学院大、論文の質ランク国内トップ:地域ニュース : 読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20230205-OYTNT50058/

 OIST。沖縄の地域経済に貢献していないのではないかという批判もありますが…。

 しかしペーボ教授をOIST発のノーベル賞受賞者と言うなら、ノーベル賞候補の研究者にポジションを与える中国の姿勢を批判できないのではと思ったりします。

日本学術会議問題 "改革"と対立の背景
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/479082.html

 科学アカデミーの存在意義を理解した上での解説記事。そこら辺を無視する論者が多いのでようやくという感じです。

〈独自〉学術会議改正法案の概要が判明 会員候補選考に第三者への諮問を導入
https://www.iza.ne.jp/article/20230131-LOBK5NJWORP2THEIXJU3RJUOCU/

学術会議法改正案 政府、3月上旬にも国会提出 強行なら反発必至:北海道新聞デジタル
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/796170/

 科学アカデミーの独立性という譲れない論点をどうするか。国会での論戦を期待しますが…。

Measuring societal impact: how to go beyond standard publication metrics https://www.nature.com/articles/d41586-023-00345-1

 論文が与える社会的インパクトをどう測るか。大きな問題です。

STEM人材伸ばすには 東工大学長やメルカリCEOに聞く:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD209960Q3A120C2000000/

日本分子生物学会、「研究評価に関するサンフランシスコ宣言」(DORA)に署名
https://current.ndl.go.jp/car/171952

 日本を代表する大きな学会の動き。

<揺らぐ研究 山形大不正から考える(上)恐れ>有期雇用、教授に逆らえず(河北新報) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/55c06f7594ebb569a143c75788c7d60916aee095

 有期雇用の弱い立場では逆らえないという問題。研究不正やハラスメントなど、大学が抱える大きな問題。

ファクトチェック:「岸田首相がアメリカの大学に500億円の寄付」は誤り(日本ファクトチェックセンター) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/4cedcc90d9c2f2bbfa65816300ce20d4b6e3935c

 批判はよいとしても、原文をみないままの反応はいただけません。自戒を込めて。

東京藝大が予算削減で「一部教室のピアノ撤去」 疑問の声も...総務課「練習環境に影響与えない」(J-CASTニュース) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/f087fb5c2e77c64c161a2c078a6ee2ba9f6faa34

 大学の貧困の問題でもあり、芸術を社会がどう扱うかの問題でもあります。

ダーウィンもメンデルも“キャンセル”されてしまうのか
遺伝も性別もタブー… 進化生物学者が危惧する「左派からの科学への攻撃」
https://courrier.jp/news/archives/314782/

 近年の「キャンセル」の動きが過剰にならないことを願っていますが…。

David Sabatini, biologist fired for sexual misconduct, lands millions from private donors to start new lab
https://www.science.org/content/article/sabatini-biologist-fired-sexual-misconduct-lands-millions-private-donors-start-new-lab

 こちらは性不正で解雇された研究者がヘッジファンドの資金で研究再開。

What ChatGPT and generative AI mean for science
https://www.nature.com/articles/d41586-023-00340-6

 今週も生成AIの話題でもちきり。

ある意味ChatGPT のAIを超えた Perplexity.ai 6つのポイント パープレキシティ(神田敏晶) - 個人 - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20230201-00335317

 私も使ってみましたが、参考にしたサイトが表示されるのはよい感じです。

「仕事の半分が奪われる」予測は当たったのか? AIの権威に聞く | 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20230205/k00/00m/020/081000c

 最近思うのは、ハッキング、災害、電力不足がAI普及に意外に大きく立ちはだかるのではないかということです。

データサイエンス系学部、1900人増 17大学で23年新設
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE025B90S3A200C2000000/

 かつてのポスドク問題や法科大学院の問題のようにならなければいいのですが。

強まる米国による対中半導体規制、米中双方の思惑を読み解く
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20230206-2583161/

 日本の取りうる道も難しい選択を迫られます。

Revolt against educational rankings
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adg8723

シカゴ大、ワシントン大医学部がUSニューズのランキングへ反旗
https://forbesjapan.com/articles/detail/60563

 USニュースの大学ランキングに参加しない名門大学が増えてきました。

首相が「18歳までに数学教育」の目標を設定
https://crds.jst.go.jp/dw/20230203/2023020334382/

 イギリス。既報ですが…。

<デスクの眼>「反スパイ法」改正進める中国 習近平指導部の「不安全感」強く 研究者ら懸念「拘束の恐れ」:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/228457

韓国新聞・政治-尹大統領、若い科学者たちと昼食会…「集中支援し養成していくことが重要」=韓国 /wowkorea.jp
https://www.wowkorea.jp/news/Korea/2023/0124/10380535.html

素粒子論文250本未掲載…ウクライナ研究者 露と共著反対 : 読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/science/20230206-OYT1T50011/

 これも戦争の影響。

IT技術者は11万人解雇も転職に困らず、なぜ日本は空前の技術者不足が続くのか
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00849/00098/

 ここにもメンバーシップ型雇用が。

「17歳の大学生」いまトレーラー運転手 「僕は飛び入学に救われた」|「才能」を育む|朝日新聞EduA
https://www.asahi.com/edua/article/14830930

 本人が主体的に選んで今があるのに、外野が可愛そうとかなんとかいうのは非常に良くないですよね。

Leaving academia was like losing our intellectual home. Here’s how we adjusted
https://www.science.org/content/article/leaving-academia-was-losing-our-intellectual-home-here-s-how-we-adjusted

 アカデミアを離れることを正面から取り上げた記事。ここが弱いのです。日本は。

自然科学の足を引っ張る人文・社会科学
https://agora-web.jp/archives/230201052339.html

 こうした意見がチラホラ聞かれるようになってきたし、自然科学系の研究者のなかにも増えてきた印象です。

 この溝を軽視してはいけないと思います。

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[SciCom News] No.1008 2023年2月8日号 巻頭言
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