文責:横山 雅俊
科学と社会のより良い関係を考え、科学そのものの魅力や意義、負の側面や陰
の部分、科学を支える人たちの思いを多くの人たちと共にする夢舞台。、科学に
関わるあらゆる人が、垣根を超えて集う“ひろば”。毎年 11 月に東京・お台場で
開催される、科学コミュニケーションの祭典兼総合見本市「サイエンスアゴラ」
が今年もやって来ます。
会場は、いつも通りの国際研究交流大学村(日本科学未来館、東京国際交流館
プラザ平成、産業技術総合研究所臨海副都心センター、都立産業技術研究セン
ター)とフジテレビ湾岸スタジオ、プロムナード公園の一帯です。会期は、
11/3(木・祝)〜11/6(日)と、2009 年の第4回以来久々に4日間の長丁場に
なりました。
サイエンスアゴラも今年で 11 回目。議論は多々ありますし、筆者も若干の違
和感を持ちつつも、去年からイベントそのものを“年次総会”と称し、参加する
個々の企画と共に、サイエンスアゴラそのものも通年性の広がりを持たせるよう
なブランド化を図るように変容してきました。前々から課題とされてきた出展者
や企画参加者同士の相互交流や連携の推進も、少しずつ着実に形になってきた感
もあります。主催者の科学技術振興機構による大型の企画が目立つ一方で、担い
手の変遷や盛衰はありつつも、その舞台に立つ活動の担い手の幅は徐々に広がり
を見せています。
毎年恒例にはなりますが、今年も筆者が関わる企画と併せて(宣伝がてら...
であることは否定しません)、関連する企画を幾つかご紹介します。
1つめ。
今や各地で開催されるようになった、町ぐるみで科学を楽しむお祭り、科学
祭。日本全国に、その数がいくつあり、どのような方々が関わって、どのような
成果を上げてきたのでしょうか? そろそろその全貌を整理して把握すると共
に、その意義や魅力、問題点を一通りまとめるべき時期に来ています(とは言
え、それが難しい事情があることも、一面において事実です)。
東京・三鷹の国立天文台が取り敢えずのハブとなって始めた東京国際科学フェ
スティバル(TISF)もその一つ。その TISF のプロジェクトとして始めた科学祭
ネットワークの細々とした活動を、今年は JST アゴラネットワークの皆さん、
日本サイエンスコミュニケーション協会(JASC)の地域連携委員会、静岡科学館
る・く・る、名古屋大学産学連携推進本部の皆さんの大規模な連携により引き継
いでいただき、本格的なプロジェクトとして走るようになりました。
その取りまとめの企画がこの2つになります。
Aa-031(ブース出展)
広がりゆく科学のひろば
http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/program/booth/aa_031/
Ab-108(ステージ企画)
サイエンスフェスティバルの担い手たちをつなぐ対話集会
http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/program/booth/ab_108/
ブース出展のコーナーでは、各地の科学祭の様子を一覧出来るような展示を展
開し、時間帯によってはその当事者の方が会場でお待ちしています。ステージ企
画では、TISF を含めて7ヶ所(函館、仙台、千葉、東京、静岡、愛知、山口)
の事例と、海外の科学祭の事情を併せてご紹介し、科学祭の現状と魅力、意義、
課題について多くの方々と共に考えます。
ブース出展は 11/4〜6、ステージは 11/4 の 13:30 から、皆さんをお待ちし
ております。
全国各地での草の根や有志、各地の教育機関や研究機関、博物館などでの取り
組みは、随分と豊かなものになってきました。そこに一般の市民の方が担い手と
して関わる機会も、多少の盛衰はありつつも、増加傾向ではあるようです。各地
の担い手の方々も、このサイエンスアゴラには毎年数多く登場し、その豊かな中
身を作っています。今年の出展例を一部だけ挙げると、例えば以下のような感じ
です。
Aa-019(ブース出展;11/5〜6)
山に登って宇宙へ行こう〜宇宙を調べるって何だろう?(山に登って宇宙へ行こ
う実行委)
Aa-045(ブース出展;11/4〜6)
名古屋大学発、科学と市民をつなぐ科学コミュニケーション(名大学術研究・産
学官連携推進本部)
Aa-053(ブース出展;11/3〜6)
まちなかで科学体験!コロンブスの卵プロジェクト(八戸高専)
Aa-062(ブース出展;11/5〜6)
スロットカーを走らせてエネルギー変換を学ぼう(香川高専技術教育支援センター)
Aa-073(ブース出展;11/3〜4)
ぐんま☆じゅとく☆kawaii スライム×生糸をつくろう☆(樹徳高校理科部)
Aa-082(ブース出展;11/3〜6)
玉高生の科学研究活動〜地域の水族館を題材として〜(岡山県立玉野高校)
Aa-084(ブース出展;11/3〜6)
低気圧の名付け親になろう(文京区立茗台中学校)
Aa-085(ブース出展;11/5〜6)
美しい星空を取り戻そう!〜伝統的七夕ライトダウン〜(群馬県立前橋女子高校
理科部)
Da-407(ブース出展;11/5〜6)
学生の科学の伝え方とそのネットワーク(サイエンスリンク)
Da-433(ブース出展;11/5〜6)
ちば生き物科学クラブ2016-サルの仲間と私たち-活動報告(ちば生き物科学クラブ)
Da-436(ブース出展;11/5〜6)
富山きときとサイエンス(サイエンスカフェとやま)
2つめ。
サイエンスアゴラと共に、今年で 11 回目を迎える、科学研究の負の側面や陰
の部分に向き合う研究問題ワークショップ「本音で語る」。手を変え品を変え毎
年細々と続けながら、多くの方々のご協力とご来場を頂いてきました。
今年のテーマは生命操作。特に医療との接点における基礎科学、技術開発とそ
の担い手、技術を運用する医療従事者、技術を適用される存在としての患者のそ
れぞれが、最先端の医療技術やその基盤となる生命科学とその使われ方に関して
どのような思いを抱くのか。また、そうしたそれぞれの思いを踏まえながら、今
後の医療や医科学をどのように作っていけば、よりよい社会につながるのかを、
本音で考えます。
Cb-351(時間枠)
第 11 回研究問題ワークショップ
本音で語る生命操作〜基礎と臨床の距離どうする?〜
http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/program/booth/cb_351/
http://stsfwgjp.seesaa.net/article/442249907.html
この話題を展開する上で、今年も最強の布陣が揃いました。
例年通り、前半がサイエンスカフェ形式のトークセッション、後半が全員参加
のワークセッションという、二部構成で行います。前半のトークでは医科学研究
の担い手として京都大学再生医科学研究所・教授の河本 宏さん、患者団体のと
りまとめを担う患医ねっと株式会社の鈴木 信行さん、問題の全体像を俯瞰する
科学社会学の立場から科学ライターの粥川 準二さんをお迎えします。そして、
それぞれの立場から思うところをお話しいただき、出てきた問題を皆で直視し、
共有します。その内容を踏まえて、後半のトークセッションでは、来場者の気付
きやひらめきを重視する手法を用いて、問題群の本質を貫く何かを見出し、その
解決に向けたイメージ作りをします。
11/5 の 13:00 から、産総研臨海副都心センター別館 11 階の多目的室にて、
皆さんをお待ちしております。
なお、去年出来なかったプレイベントを、今年は東京で開催します。
東京国際科学フェスティバル登録企画
あなたは、最先端医療を受けたいですか?(10/19 開催)
https://tokyo.sci-fest.net/2016/ja/event/event.php?eid=954
根津の小さなカフェを会場に、直前のご案内で恐縮ですが、10/19(水)の
19:00〜 にて、筆者と今回のゲストの1人・鈴木さんが、皆さんをお待ちしてお
ります。
科学技術と社会のより良い関係を考える取り組みは、絶対数としては例年少な
いながらも、流れとして脈々と続いています。早いもので5年前、あの東日本大
震災のあと、サイエンスアゴラの主催者としても科学と社会の関係のありようを
どう考えるかは議論になりました。筆者自身も、その当年(2011 年)のサイエ
ンスアゴラ企画委員を務め、事前の議論や運営には微力を注ぎました。研究機関
や学会の主催になると、どうしてもアウトリーチ的な側面が強くなり、それ自体
の意義や必要性も大いにありはします(筆者自身も複数の学会に所属し、その構
成員と交流しながら、頑張っている同世代の仲間や先輩、後輩の皆さんを応援し
たいと思っています)。なのですが、その一方で、市民目線や当事者目線での、
問題告発から解決に向けての価値協創に向けて変容しつつある、当事者側からの
地道な取り組みが、社会的には徐々に増えています。その流れはサイエンスアゴ
ラの場にも現れており、今年の参加企画でも以下のようなものがあります。
Aa-087(ブース出展;11/5)
震災5年目:若者が描く復興後の福島の未来と科学・技術(ふくしまサイエンス
プラットフォーム)
Ab-128(時間枠;11/5)
違和感が世界を変える〜科学におけるマイノリティのススメ(JST ダイバーシ
ティ推進室)
Ab-129(時間枠;11/5)
ヒト受精卵へのゲノム編集を皆で考えていくために(JST、日本科学未来館)
Ab-137(時間枠;11/5)
SSH 高校生ディベート「遺伝子組み替え食品は安全か」(岐阜県立岐阜農林高校)
Cb-354(時間枠;11/5)
南相馬市の科学教育による震災復興への取り組み(南相馬サイエンスラボ)
Cb-357(時間枠;11/6)
機能性表示色品性度が始まって1年半(くらしとバイオプラザ21)
Da-424(ブース出展;11/5〜6)
想いを結ぶ意思表示(同志社大 Share Your Value Project)
Fb-658(時間枠;11/5)
未来へのメッセージ〜震災遺構とともに生きる社会(きせきのせき坊メッセン
ジャー)
Fb-664(時間枠;11/5)
対話で作る、明るく豊かな低炭素社会シナリオ(JST-LCS)
他にも、今年のサイエンスアゴラには、ある視点で切り込むと、それなりに企
画群の繋がりを見出すことが出来る作りに仕上がっていそうです。
担い手の幅も広がっています。数年前からの国際化路線に伴い、諸外国の関係
機関の出展も増えています。出展者名の一部を挙げると、欧州製薬団体連合会
(EFPIA)、欧州連合(EU)、南アフリカ共和国大使館、Science in
Public(オーストラリアの科学コミュニケーション関連団体)、南アフリカ科学
技術振興機構(SAASTA)、韓国科学創意振興財団(KOFAC)など。変わり種で
は、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊による、感染症対策の取り組みの紹
介もあります。
サイエンスアゴラの今年のメインテーマは、「つくろう、科学とともにある社
会」。主催者メッセージを見る限り、科学が社会のために変わるべきと云う主意
が鮮明ですが、科学を担うのも動かすのも使うのも、同じ人間。ある同じ個人
が、科学の恩恵を受ける側にも、科学に由来する害悪を受ける側にも立つ場合が
あれば、その同じ個人が恩恵や害悪の基になる知の生成に関わったり、或いは恩
恵の増大や害悪の克服に関わったりする場合もあります。そうした個々人のつな
がりが社会を作り、動かしていく上で、科学がどのように力になっていけるの
か。科学と社会が、共進化的、ないしは相互触媒的にどのように良い関係を作り
ながら発展できるのか。それを考える場が、本当のサイエンスアゴラだと筆者は
考えます。
そのための仕掛けが、秋深まりゆく東京・お台場の片隅に、4日間現れます。
その特別な舞台で、多くの皆さんとご一緒できることを、長年末席を汚してい
る一参加者として楽しみにしております。
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■ サイエンスアゴラ2016 開催のご案内 ■
サイエンスアゴラは、市民参加の科学討論やトップ科学者との対話、子ども向けの科学実験など、科学と社会の関係を深める日本最大級の科学フォーラムです。
3日(木・祝)の開幕セッションでは、南場智子氏(DeNA創業者、取締役会長)、ラッシュ・ホルト氏(米国科学振興協会(AAAS) CEO)の基調講演のほか、震災経験を持つ高校生と科学者が「震災復興5年」をテーマに語り合う特別パネル討論を開催。
また、同日午前には、世界の科学技術関係者が集まるサイエンスアゴラで、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)について議論する「いま世界が直面するSDGs等の課題解決にイノベーションは何ができるか?」と題したセッションを行い、アジア・欧・米・アフリカ等の登壇者、また参加者が様々な観点や取り組みを持ち寄り、国際的な議論につなげます。
期間中は、200以上の多様なプログラムで皆様をお待ちしています。
会 期:11月3日(木・祝)〜6日(日)
時 間:10時〜17時(最終日は一部を除き16時まで)
会 場:東京・お台場地域(日本科学未来館ほか)
費 用:入場無料(一部、実費徴収あり)
主 催:国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)
プログラムなど、詳しくはこちらをご覧ください。
http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/
http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/program/session/fb_652/(開幕セッション)
http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/program/booth/ab_143/ (SDGsセッション)
ご来場に際しては、当日受付がスムーズな事前登録をおすすめします。https://form.jst.go.jp/enquetes/scienceagora2016(事前登録サイト)
<お問い合わせ>
JST科学コミュニケーションセンター
TEL:03-5214-7493 E-mail:agora@jst.go.jp
■ JST20周年記念フォーラム 開催のご案内 ■
2016 年 10 月に設立 20 年を迎えたJST が、国内外の気鋭のリーダーを招いて“未来共創イノベーションを目指して〜とてもよい世界の作り方〜”と題したフォーラムを開催します。
梶田隆章氏(東京大学特別栄誉教授・宇宙線研究所長・教授/2015ノーベル物理学賞受賞者)、浅川智恵子氏(日本IBM株式会社 東京基礎研究所 IBMフェロー)の基調講演のほか、山根一眞氏(ノンフィクション作家)をモデレーターに、北川拓也氏(楽天株式会社 執行役員)やヌウォン・チョラクープ氏(タイ国立金属・材料技術センター(MTEC)再生可能エネルギー研究所 所長)を始めとした若手科学研究者によるパネルディスカッションを通じて、これからの 20 年の未来社会における社会と科学技術のあるべき関係を考えます。
日 時:11月4日(金)13時〜16時半
会 場:東京国際フォーラム B7ホール
費 用:入場無料
主 催:国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)
プログラムなど、詳しくはこちらをご覧ください。
http://www.jst.go.jp/20th/forum.html
ご参加に際しては、こちらから事前登録をお願いします。
https://form.jst.go.jp/enquetes/jst20thforum
<お問い合わせ>
20周年記念フォーラム運営事務局 (株式会社プライムインターナショナル内)
TEL:03-6277-0117 E-mail:jst20thforum_sec@pco-prime.com