科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

【ひとこと編集後記】 ひっそりと公開されていた改正労働契約法への懸念の答え

★ひっそりと公開されていた重要資料〜改正労働契約法が研究現場にどのような影響をあたえるか

労働契約法改正が研究現場にどのような影響をあたえるか、不安が広まっていますが(参考:労働契約法改正は朗報か
http://scienceinjapan.org/topics/20130401.html

重要な資料が公開されていました。

●人材委員会(第59回) 配付資料
平成25年3月27日(水曜日) 10時〜12時
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu10/siryo/1335482.htm

資料6-3 改正労働契約法に関する国立大学法人等からの質問 (PDF:479KB)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu10/siryo/__icsFiles/afieldfile/2013/05/30/1335482_3.pdf

様々な質問に対する回答が掲載されています。

問4 下記の契約期間も5年の期間の計算において通算するか。
a 育児休業、介護休業や研究休職等で休業・休職していた期間
(答)
育児休業、介護休業中は労働契約は維持されているものであるため、改正労働契約
法18条1項の通算契約期間に算入される。各大学・研究機関等で休職制度を設けてい
た場合、休職期間中は、通常は労働契約関係を維持させつつ労務への従事を免除また
は禁止している場合が多いと考えられるが、そのように労働契約関係を維持させていた
場合には通算契約期間に算入される。
b プロジェクト研究に従事することを約して5年間の有期労働契約を締結していた場合に、
労働者の責による事由あるいは天災による業務停止等、使用者が責めを負わない事由
によりプロジェクトの完成が遅延したことにより超過した契約期間
(答)
5年を契約期間とする有期労働契約を締結していた場合は、従事すべきプロジェクト
研究が終了したか否かに関わらず、5年の期間満了により、有期労働契約は終了する。
契約期間満了後にさらにプロジェクト研究の終了まで雇用を継続したのであれば、有期
労働契約を更新したものと解される。したがって、設問の場合、二以上の有期労働契約
の契約期間を通算した期間が5年を超えるものとなり、労働者に無期転換の申込権が発生している

問22 任期法の適用を受ける大学の教員等についても、改正労働契約法18条の適用を受
けるのか。
(答)
大学の教員等の任期に関する法律の位置づけについて、導入当初は、国立大学・公立
大学については、定年までの継続雇用を原則とする公務員法制の例外を設けるものであっ
たが、私立大学については、「第4条第1項各号のいずれかに該当する場合には、労働契
約において任期を定めることの合理性があることを法律上明確にしたもの」として、労働法
制に対する特例法ではなく、任期を定めて教員を雇用できることを確認的に規定したに留
まるものである。法人化に伴って、国立大学法人公立大学法人と大学の教員との間の関
係は、任用ではなく労働契約であると整理されたものであるため、労働契約法の規定は適
用される。

★大学はどうなるか

「これからの大学教育等の在り方について」(第三次提言)(平成25年5月28日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/pdf/dai3_1.pdf

発表されました。果たして大学はどのように変わるでしょうか。

★予測困難な南海トラフ地震

中央防災会議が資料を公表しました。

南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg/index.html

南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)概要(PDF:161KB)
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg/pdf/20130528_gaiyou.pdf

南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)本文(PDF:581KB)
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg/pdf/20130528_honbun.pdf

【別添資料1】 南海トラフ巨大地震地震像(PDF:2,602KB)
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg/pdf/20130528_houkoku_s1.pdf

【別添資料2】 南海トラフ巨大地震で想定される被害(PDF:243KB)
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg/pdf/20130528_houkoku_s2.pdf

【別添資料3】 南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性に関する調査部会(報告)(PDF:217KB)
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg/pdf/20130528_houkoku_s3.pdf

★国連の報告書

●No Immediate Health Risks from Fukushima Nuclear Accident Says UN Expert Science Panel
http://www.unis.unvienna.org/unis/en/pressrels/2013/unisinf475.html

●Japan’s 2011 nuclear disaster ‘unlikely’ to have future health affects, says draft UN report
http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=45058&Cr=nuclear&Cr1=#.Uat0bEDOuSo

重要資料です。

サイエンスアゴラ2013企画出展の募集について
http://scienceagora.org/entry/

今年も始まりました。

★Natureが日本の科学技術政策について述べる

●Still less equal
Japan’s government must stick by its promise to help women’s careers to prosper.
http://www.nature.com/news/still-less-equal-1.13072

●Japan aims high for growth
Innovation in science is at the heart of government plans to boost the economy.
http://www.nature.com/news/japan-aims-high-for-growth-1.13082

★研究者問題と様々な問題の間に

このメルマガは研究者を取り巻く問題について取り上げていますが、研究者は社会のなかで暮らしているわけで、研究者の問題は社会の様々な問題と密接につながっています。

先週、こんなとりまとめが出ました。

「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」 とりまとめ
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000339xk.html

これは医療事故調査をどうするか、というもので、医師(病理医)として働く私には大きな影響があります。

また、このメルマガにも度々執筆していただいているみわよしこさんが追っている生活保護の問題でも大きな動きが起きています。

事実上、利用できない制度へと変わる!?
生活保護法「改正」案の驚くべき内容
http://diamond.jp/articles/-/36055

みわさんは、こう述べています。

応援したいんだけど、「だったら貧困層から奪うぞ」と言わんばかりの国の動きのもとでは、応援しづらい。#phdjp #f_o_s の皆さん、#生活保護 問題にもご注目とご関心を。>「研究の間接経費増額を」 東大など国に提言 ttp://s.nikkei.com/10KYoaq

https://twitter.com/miwa_chan/status/337179890614956034

つまり、研究者や科学コミュニティが生活保護の問題にも関心を持たないと、研究者の問題が社会のなかで重要な問題として取り上げられないのではないかと言います。


研究費の増額を願うということは、他に使われる可能性のあった予算をまわしてくれ、ということでもあります。生活保護の予算と研究予算は二項対立の問題ではないとは思いますが、「月とゲットー」という言葉があるように、政策を決定するということは、様々な利害の対立があります。

研究以外の社会問題に関心を示さず予算増額だけ主張するというのでは、社会の支持を得るのは難しいでしょう。もちろん、あらゆる問題すべてに関心を持つのは難しいわけではありますが、それは社会の側にも言えることで、皆が研究の問題に興味があるわけではないわけです。

311以降、社会の目は厳しくなっています。研究者自身が社会のなかの研究の位置づけを考えること、そして科学者でない人たちが、科学のあり方、研究のあり方を考え、それを政策の意思決定に反映させること、この両者なくして科学技術政策はうまくいかないと思っています。

このメルマガでも、科学と社会の境界領域を取り上げ続けていきたいと考えています。

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