科学・政策と社会ニュースクリップ

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立場の違いを乗り越えて

■先週の巻頭言
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20120819/p1

にたいして、みわよしこさんからブログのコメント欄にメッセージをいただきました。

http://d.hatena.ne.jp/scicom/20120819/p2

のほうにコメントをいただいています。

ご紹介ありがとうございます。

この問題は、私自身、子どもの時から直面してきて、答えが見つからない問題ではあります。
私の通っていた福岡県の公立小学校は、同じクラスの中に非常な格差がある地域の学校で、富裕層と極貧層、大農家と小作(戦後消滅したことになっていますが、形を変えて存在していたのです)の子どもたちが同じ教室にいましたから。
時間はかかりますが、格差化の状況をせめて1980年代レベルまで戻すことが、一つの解決ではないでしょうか。
具体的には、累進課税の強化、所得再分配の強化ということです。
私は1980年に高校2年でしたが、当時はまだ「格差はあってもなんとかなるさ」という感じだったのです。
中卒・高卒での就職は、能力にリンクするとは考えられていなかったので、その場合のキャリア構築の道が狭くとも存在しました。
実業高校は、普通科に行けない中学生の行く高校ではなく、中3時点で自分の道を選択した中学生の行く学校でした。
「昔はよかった」と言い出すと年寄りの証拠ですが、社会全体の健全さを取り戻すべきだと思います。
そのために必要なのは、何よりもまず格差化や階層化の緩和ではないかと思っています。
それを目指して動く高学歴の大量の大人の存在は、貧困に置かれているお子さんたちや、不本意にも子どもたちに十分な教育を与えられない親御さんたちへの希望となるのではないでしょうか。
「江戸川中3勉強会」のようなところで、直接的に何かをすることも非常に大切ですが、誰もができるわけではありません。最終的に目指されるべきことは、そういう活動が不要になることだとも思います。
とりあえず、「選挙に行って投票する」なら、大人なら誰でもできます。その際に「自分は……と考えて○○党(氏)を選んだ」と意思表明することも、Twitterアカウントがあれば出来ることです。そういう形でも、「高学歴で恵まれた立場にある自分は、貧困問題を軽視していません」という意思表示をすることはできます。

とりとめない長文、失礼しました。

 大変貴重なご意見感謝いたします。

 「高学歴で恵まれた立場にある自分は、貧困問題を軽視していない」というメッセージが重要であるという点は、同感です。確かに直接行動はできないかも知れないですが、意思を表示することで、あるいは投票などできることをすることで、この問題に向き合うことが必要だと思います。

 しかし、気になることもあります。社会が分断されつつあるということです。

●この国は金持ちと貧乏人に分断された
新・富裕層と新・貧困層の対決が始まった!
第1部 罵り合う金持ちと貧乏人、それぞれの生活と主張
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33286

 記事を読みましたが、かつてのように、同じクラスに多様な子どもが集うこともなくなりつつあり、お互いコミュニケーションを取らないまま、互いを批判しあうという状況のようです。貧困層と裕福層が、ともにお互いを理解せず罵り合う姿に悲しさを感じます。

 もちろん、高学歴イコール裕福層ではないのは、「高学歴ワーキングプア」なる言葉が飛び交う研究者の世界をみれば明らかです。

 しかし、たとえば教授とポスドク、院生は、アカデミア内での裕福層と貧困層のようなものであり、ここにも分断が起こっているのではないかと感じています。

 たとえば先週の日経の記事

●(大学開国)学生縛る「研究室」 徒弟制度、視野広がらず 第4部 沈む大学院(2)
http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKDZO45256830S2A820C1MM8000

 に対する反応は、教授の方々とそれ以外とで分かれているように感じています。

 教授は、なんでもかんでも教授のせいにするな、悪者にするな、と不満を感じています。一方で、ポスドクや院生は、そんな教授の態度に失望しています。それは問題解決につながりません。

 他人の立場を理解し、立場の違いを乗りこえ、解決策をともに考える「第3の案」こそが今求められているのだと強く感じます。

 そのためには、想像力を働かせて、人を、社会をみること、そして多様な立場の人たちとすすんで交流することが第一歩になるのだと思います。

 それは現在の社会では簡単ではありません。ウェブから得る記事はカスタマイズされ、見たくない記事の存在をみないで済ますことができます。そして、多忙な日々の生活のなかで、たとえば地域に関わるということは時間的には簡単ではないかもしれません。研究は対象を狭く深く掘り下げねばならず、広く情報収集し、人の多様な意見を聞く暇も余裕もないという現実は理解しています。

 自分と環境も意見も異なる人たちと交流することは、かなりの緊張を強いることでもあり、「ゲーテッド・コミュニティ」に閉じこもっているほうが楽に決まっています。

 まずは自分の意見と反対の人をTwitterでフォローするといったことから始めるのもひとつの方法です。このメルマガも意識して多様な意見を集めるようにしています。

第3の案 成功者の選択

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