科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

渡海紀三朗大臣の挨拶より

 第168回国会 文部科学委員会 第1号(平成19年10月19日(金曜日))にて、渡海文部大臣が挨拶をしています。

 そこから一部抜粋します。

 少子高齢化、人口減少、グローバル化といった劇的な社会の構造変化の中で、我が国全体が安定した成長を続けるかぎとなるのは、日本の大学が、教養に裏打ちされた、専門知識を備えた人材を育成するとともに、諸外国から優秀な人材を引きつける国際競争力のある知の拠点となることです。また、地方の再生のためには、地域の人材育成や文化、産業振興の基盤として地方の大学の役割が極めて重要です。

 このため、国立大学運営費交付金、私学助成など大学を支える基盤的経費を確実に措置するとともに、国公私を通じ、競争的な環境のもとで各大学のすぐれた教育研究の取り組みを支援します。また、世界最高水準の教育研究拠点の形成、大学間の連携強化による地域振興の核としての機能強化、第三者評価制度等を通じた質の保証と向上、留学生交流の拡充などを総合的に推進します。同時に、健全性を確保した奨学金事業の拡充などを通じ国民の学習機会の充実を図ります。また、現在喫緊の課題となっている、僻地や小児科、産科などの診療科における医師不足の深刻化を踏まえ、地域医療を担うこれらの医師の養成、確保に全力で取り組みます。

 世界的な知の大競争時代にあって、人口減少時代を迎えた我が国が豊かに発展していくためには、絶え間ないイノベーションの創出と、これを支える科学技術・学術の振興が不可欠です。科学技術創造立国の実現に向け、大学や研究機関、地域や民間の能力が最大限に発揮されるよう、科学技術政策を強力に進めてまいります。

 そのために、まず、世界を牽引する優秀な人材を養成、確保し、その能力が十分に発揮される条件を整えねばなりません。具体的には、子供が科学技術に早くから親しみ、その能力を大いに伸ばすことができるよう理数教育を推進するとともに、若手や女性、外国人など多様な人材が活躍できる研究環境の形成に努めます。また、独創的、先端的な基礎研究の推進、国立大学等の教育研究施設の整備充実、科学研究費補助金などの競争的資金の拡充、世界最高水準の研究拠点の整備、産学官連携の強化や地域の活性化に資する知的クラスターの創成等に努めてまいります。

 そして、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料、原子力、宇宙・航空、地震・防災、南極・海洋等の各分野の研究開発については、国際競争を勝ち抜くために不可欠なものや生活の安全、安心の確保のためのものなど、社会、国民のニーズに迅速に対応すべきものを、選択と集中を図りながら戦略的に取り組みます。

 我が国の基幹ロケットであるH2Aロケットは、先般の月周回衛星「かぐや」を初め、七機連続して打ち上げに成功しており、世界水準を超える九割を上回る成功率を達成しております。この宇宙輸送システムを初めとして、国家の総合的な安全保障に密接に関連する海洋地球観測探査システムや高速増殖炉サイクル技術、世界最高性能の次世代スーパーコンピューターやエックス線自由電子レーザーの開発といった五つの国家基幹技術の研究開発を着実に推進してまいります。また、エネルギー問題、防災、感染症対策等、世界が直面している共通の課題解決に向けた国際的な協力を戦略的に推進してまいります。

 目新しいところはありませんが、運営費交付金を確実に措置すると言っている点が目に付きます。

 そのほか、副大臣政務官の方も一言述べています。


松浪副大臣

副大臣として、大臣をよく補佐し、第三期科学技術基本計画を着実に推進し、活力に満ちた明るい未来を切り開くため、科学技術・学術の振興に積極的に取り組むとともに、子供の体力向上や、人々に感動や健康な生活をもたらすスポーツの振興などに全力を尽くしてまいります。

原田大臣政務官

日本は、人材立国でありますし、また科学技術立国であります。私は、政務官として、明るく豊かで活力のある日本をつくるために、科学技術の振興、そして、子供たち、国民に夢と希望を与えるためのスポーツの振興に全力で尽くしてまいりたいと思います。

代表質問から〜科学政策抜粋

 衆参両院で、福田首相の所信表明に対する代表質問が行われた。

 ここで科学政策に関連する部分を抜き出してみたい。なお、答弁内容については、日本経済新聞10月5日朝刊を参考にした。

 まず、公明党の太田代表の質問と、首相の答弁から。

太田氏 高等教育の今後の在り方と奨学金制度の拡充を

首相 地の拠点である大学の国際競争力の強化、地域での大学教育の充実、産学連携を図っていくことが重要。奨学金制度は教育の機会均等を図るため拡充措置を〇八年度より講ずる。

 山崎正昭自民党参院幹事長の質問と首相の答弁。

山崎氏 京都議定書の示す目標達成への現状認識と今後の対応は

首相 〇五年度の日本の温暖化ガス排出量は基準年度と比較して七・八%増加しており、既存の目標達成計画による対策のみでは京都議定書の六%削減目標達成は極めて厳しい。今後、排出量の伸びが著しい業務部門や家庭部門などあらゆる分野で、既存対策の着実な推進と追加対策の具体化を進め、年度内に政府として目標達成計画の改定に全力を尽くす。


 以上、奨学金の拡充措置が来年度より講じられることが分かった。イノベーションや科学技術政策についてはあまり触れられていないようだ。議事録が出たらもう少し読み込んでみたい。

渡海紀三朗新文部科学大臣

 旧聞に属するが、渡海紀三朗議員が文部科学大臣に就任した。ホームページから、科学技術への接点を探る。

 渡海氏は、名門姫路西高卒で、早稲田大学理工学部建築学科を出ている。理系出身の大臣は珍しい。

 経歴をみると

1992(H4)年12月〜1993(H5)年6月 科学技術政務次官
2000(H12)年7月〜2000(H12)年12月 科学技術総括政務次官
2002(H14)年10月〜2003(H15)年9月 文部科学副大臣

2005(H17)年10月〜 自由民主党科学技術創造立国 推進調査会長
2006(H18)年03月〜 自由民主党宇宙平和利用決議等 検討小委員会顧問

 と、科学技術との関係が深い。今後科学技術にどのような姿勢をみせるのか、注目したい。


 

福田総理の所信表明演説

 福田総理の所信表明演説から、科学技術政策に関連した部分をピックアップする。

(国民の安全・安心を重視する政治への転換)
 毎日の食卓の安全・安心は、暮らしの基本です。消費者の立場に立った行政により、食品の安全・安心を守るため、正しい食品表示を徹底するとともに、輸入食品の監視体制を強化します。

(子育てを支える社会の実現)
 女性も男性もすべての個人が、喜びや責任を分かち合い、個性や能力を発揮できる「男女共同参画社会」の実現に向け、取り組みます。十分な育児休業を取り、その後も仕事を継続できるようにするなど、安心して子どもを産み育てることのできる環境を整備します。長時間労働の是正に取り組むなど、社会全体で働き方の改革を進め、仕事と家庭生活の調和を推進します。

 これは直接科学技術政策ではありませんが、女性研究者の才能を十分に発揮してもらうために不可欠ということで、取り上げた。福田首相男女共同参画に熱心との声がある。

(改革の継続と安定した成長)
 改革と安定した経済成長は、車の両輪であり、ともに進めてまいります。国内経済の環境変化に対応し、海外の経済との相互依存は今後とも高まります。内外投資の促進を図るとともに、成長著しいアジアの中にある強みを活かすアジア・ゲートウェイ構想を具体化し、観光立国の推進や金融の競争力強化に取り組みます。科学技術の発展に向け、戦略分野への集中的な投資を促進し、人材育成を充実するとともに、世界最先端を目指す知的財産戦略を推進します。

 科学技術の選択と集中という方針は不変のようです。

(これからの環境を考えた社会への転換)

 地球環境問題への取組は待ったなしです。
 従来の、大量生産、大量消費を良しとする社会から決別し、つくったものを世代を超えて長持ちさせて大事に使う「持続可能社会」へと舵を切り替えていかなければなりません。住宅の寿命を延ばす「200年住宅」に向けた取組は、廃棄物を減量し、資源を節約し、国民の住宅に対する負担を軽減するという点で、持続可能社会の実現に向けた具体的な政策の第一歩です。地球環境に優しく、国民負担も軽減できる暮らしへの転換という発想を、あらゆる部門で展開すべきです。
 持続可能社会の実現に向け、京都議定書の目標を確実に達成するために全力を尽くすのはもちろんのこと、他国に対しても率先して、温暖化の防止に向けた働きかけを行っていかなければなりません。我が国の環境・エネルギー分野における技術は世界最高水準であり、環境問題の解決に向けて、世界をリードできる立場にあります。持続可能社会という新しい経済社会のあり方を世界に示していくためにも、来年開催される北海道洞爺湖サミットなどの場を通じ、「美しい星50」において示した、2050年までに温暖化ガスの排出量を半減させるとの目標を達成するため、主要な温暖化ガス排出国がすべて参加できる枠組みづくりに向け、具体的な取組を行ってまいります。