科学・政策と社会ニュースクリップ

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研究費不正使用 もぐらたたきでは意味が無い

以下メルマガに書いた文章です。

 正直またか、という感じだ。

教授ら330人、不正経理の疑い 業者に預け金7億円超
http://www.asahi.com/national/update/0728/TKY201107280763.html

 朝日新聞のスクープに始まった、研究費不正経理問題。今までもこうした問題
は大学単位などで明らかにされてきた。今度は規模や広がりが違う。

 研究現場では「どこでもやっているんでしょ」「運が悪かっただけ」ということかもしれないが、こうした問題が市民の研究者への不信を深めるとしたら、笑って済ませる問題ではない。

 たしかにこれだけ大規模ならば、「構造的な問題」だろう。年次をまたぐことができない研究費、煩雑な手続き…

 しかし、熟議などを経て、基金化への道がひらかれつつあるなど、事態は改善
に向かいつつあったのではないか。

 そうは言ってもねえ…と言われるかも知れないが、それだけではすまされるはずがない。

 5年ほど前の、早稲田大学M教授の事件のときから、私が言いたいことは変わら
ない。

 こうした問題を自らの手で解決できないのならば、研究の自立などありえないとううことだ。文科省は膿を出し切ると言っているが、これを文科省に言わせては、研究者の自立などありえない。

 5年前の事件のときにも提案があったが、1年間は罪を問わない代わりに、今ま
でやっていたことを正直に報告してもらう、その後は厳罰を課すくらいでないと、この問題はなくならない。

 そして言い訳のように使われる使いにくい研究費の問題に対し、科学コミュニ
ティが今以上に積極的に声を出していかなければならない。

 研究費の問題に関する文科省の熟議には、他の教育問題に比べてあまり意見
が寄せられなかった。これでは、使いにくい研究費が悪いなどと言い訳はできな
い。

 このまま社会の厳しい目にさらされ続ければ、研究費の減額の理由になりかね
ない。5年前の事件以降もチラホラと明らかになってきた不正経理の問題が、事業
仕分けなどの厳しい結果の遠因になったと言ったら、言いすぎだろうか(証拠がないので、あくまで推測だが)。