科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

STAP細胞論文撤回へ〜事実と過度な個人攻撃は分けるべき

昨日メールマガジンを発行した後、大きなニュースが入ってきました。NatureのSTAP細胞論文の共著者である若山照彦山梨大教授が、論文の撤回を呼びかけたというのです。

STAP細胞「確信なくなった」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140310/t10015868081000.html

STAP細胞「確信持てず」 共著の教授、撤回呼び掛け
http://www.asahi.com/articles/ASG3B6KBVG3BULBJ00P.html

STAP細胞「確信持てず」 共著の若山照彦・山梨大教授、撤回呼び掛け
http://www.huffingtonpost.jp/2014/03/10/stap_n_4933897.html

STAP細胞:論文の取り下げ提案…「データ再検証必要」
http://mainichi.jp/select/news/20140311k0000m040054000c.html

STAP細胞、第三者機関に分析依頼 論文撤回呼びかけの若山氏
http://sankei.jp.msn.com/science/news/140310/scn14031022080011-n1.htm

科学誌ネイチャー「調査行っている」 STAP細胞論文で
http://sankei.jp.msn.com/science/news/140310/scn14031023500012-n1.htm

STAP細胞 神戸の理研、対応追われる
http://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201403/0006770336.shtml


重要リンク
小保方晴子STAP細胞論文の疑惑
http://stapcells.blogspot.jp/2014/02/nature-article.html

kahoの日記
http://slashdot.jp/~kaho/journal

STAP NEW DATA | Knoepfler Lab Stem Cell Blog
http://www.ipscell.com/stap-new-data/

Co-author of controversial acid STAP stem cell papers in Nature requests retraction: report
http://retractionwatch.com/2014/03/10/co-author-of-controversial-acid-stap-stem-cell-papers-in-nature-requests-retraction-report/#more-19010

いろいろ論点はありますが、ここで緊急に述べておきたいのが、過度な個人バッシングは絶対にやめるべきであるということです。

理研は(結果として)小保方博士(の女性としての部分)を全面に出した広報をしてしまいました。そのために、作文がさらされたり、過去の恋愛が暴かれたりしたわけですが、今後はそれが個人を叩き潰すバッシングに向かう可能性があり、危惧しています。すでにその徴候がみられています。

#つくづく、理研の広報戦略は罪が深いと思ってしまいます…(追記:明確な広報戦略があったというより、いろいろな要因が重なって、結果として女子的な部分が強調されたようです。詳細は分かりませんが)

これが小保方博士や関係者を精神的に追い詰め、自死自傷につながったり、あるいは関係者への襲撃につながったりしないことを、心より願います。

もちろん、データ捏造の制裁は受けるべきであり、厳しく罰せられるべきであると思います。

しかし、まだ被害を受けている人はいません(追記:これは人の生命に関わる身体的な被害という意味で、捏造によって失われた研究費、実験動物の生命など、間接的な被害は生じていますし、コメント欄でご指摘のように、検証に費やされた時間が浪費されたというのは問題だと思います)。薬のデータ捏造のほうが、その点で問題がはるかに大きいわけです。

科学上の制裁は受けてしかるべき。けれど、人生の制裁はうけるべきでありません。

加藤茂明元東大教授は、現在東日本大震災の復興支援に尽力されています。研究者として加藤元教授の責任は免れえません。知人がこの事件に巻き込まれているので、とくにそう思います。けれど、その罪は償うとして、新たな場所で社会に貢献していることは評価すべきだと思います。

小保方博士や関係者が別の道で生きていくことまで妨害されるべきではないと思います。

旧石器捏造事件を引き起こした藤村新一氏は、その後追い詰められ、「右人差し指・中指を自ら切断した」そうです(wikipediaより)。どの記事か忘れましたが、私が読んだ記事では、この指が悪いんだ、と言って、オノで指を切り落としたそうです。

罪を憎んで人を憎まずとは、使い古された言葉ですが、肝に銘じるべきだと思います。