科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

科学コミュニケーションに市場原理

 休日だが、NPOがらみの仕事がたまっている。まあ、がんばらなくちゃ。

 さて、科学技術週間も終わり、世の中落ち着いてきたが、ここであらためて、科学技術週間を振り返ってみたい。

 サイエンスウォーカーから始まって、サイエンスカフェ、一家に1枚ゲノムマップなど、多彩な企画があった。私たちもサイエンスカフェに携わったから、人事ではない。

 サイエンスウォーカーに関しては、論争もまきこおった。5号館のつぶやきさんとの激しいやり取りは、科学コミュニケーションに忘れがちな、必要な情報を必要な人に届けることの難しさを考えさせられた。詳しくはこちらに書いた。

 カフェに関しては、主催者としていろいろ反省もある。立花さんがメルマガの編集後記にも書いてくれたが、さまざまな問題点も浮かび上がってきた。

 科学者の為の科学技術行政?!(科研費の広報から)の指摘は非常に手厳しいが、もっともな点も多い。

 ただ、今せっかく政府内でアウトリーチだ、科学コミュニケーションだ、と盛り上がってきているので、全面的に否定はしたくない。非常に無骨で、味気なくて、武家の商法で、突っ込みたいところは山ほどあるが、それでも政府が動き出した点は評価したい。

 それに突っ込むだけなら誰でもできるが、「じゃあ、あなただったらどうするのよ?」と問われて応えられるようでなければ、NPOをやっている意味はない。建設的な批判をしないといけないと思っている。


 では、どうすればよいか。

 武家の商法がまずいのなら、商人に任せるのが当然だ。つまり、科学コミュニケーションに、もっと市場原理を取り入れ、プロフェッショナルな力を借りたらいい。

 ただ、ここで断っておきたいのは、科学コミュニケーションの半分は、草の根、フェイストゥフェイスのNPO的活動であるべきだと思っている。そして、科学コミュニケーションには説明責任という部分もある。いやな情報も含めて市民に説明しなければならない。そういう部分を完全に市場にまかせるのは危ない。

 アウトリーチに関することについては、市場原理を取り入れるべきだということだ。

 よいものを作ろうとするインセンティブをどうすれば科学コミュニケーションにつけられるか、と言えば、やはり売れる、売れないということが重要かなと思う。サイエンスウォーカーは無料雑誌だし、売れる売れないは関係なかった。無関心層を振り向かせるという意味で、20代から30代のワカモノが読む雑誌に閉じこんだわけだが、本当に無関心層に届いたか、調べるのは難しい。

 難しいからといって、それでおわっちゃいけない。どれくらいの人が手にとって、どういう感想を持ったのかを調査すべきだろうし、多分しているのだろう。繰り返すが、あれは科学ファン向けのものではないので、コアな科学ファンの我々がどう思うかが問題じゃない。あくまで対象とする層に対しどういう効果があったのかを考えないと、評価が難しくなってしまう。

 ともかく、こういう無料誌や広報という部分は、どうしても市場原理と外れてしまうが、それでも魅力的な分かりやすいものにしないといけない。そのためには、受け手、市民が何を欲しているのかを考えないといけない。

 ドラッカーは非営利組織の経営では、「われわれの顧客は誰か」「われわれの顧客は何を価値あるものと思っているのか」などを常に問わなければならないと述べている。アウトリーチや広報にも通じる話だ。

 そのためには、アウトリーチや広報に民の力をとりいれるべきだと思う。

 どう取り入れるのかなかなか難しいが、たとえば、アウトリーチ事業はオープンなコンペティションで受託者を決めるべきだ(既にそうなっているところは多いが)。また、広報部門にサイエンスライターなどプロフェッショナルを雇うことも重要だ。

 以上放言気味だが、いろいろ書き散らかしてみた。ただ、大まかなことは言えるが、これが決め手だ、という提案をすぐに出すことは、私の能力不足もあり難しい。申し訳ない。なんとか具体的な策を考えてみたいのだが…

 具体策つくりの第一歩として、アウトリーチ関係の担当の方とライターの方など、関係者が会うような場を作ることが必要ではないかと思う。フェイストゥフェイスの関係を築き、率直に意見を言いえる場があればよいかなと思う。

 長くなったが、せっかく盛り上がった機運だから、叩き潰そうというのではなく、よりよいものにするために、関係する人たちと一緒に考えていける環境を作りたい。政府を擁護するつもりはないが、政府の担当者だって、手探りでいろいろなアイディアを考えているわけだ。こんなの駄目だ、じゃなく、こうすればよいかも、という提案を、ブロガーの人たちもどんどんしていってほしいなと思う。

 第54回総合科学技術会議議事要旨の資料に、理科教育や理解増進に関する今後の方針が書かれている。すべての大学や研究機関にアウトリーチ部門が作られるそうだ。

 これは科学が劇的に変わる可能性を秘めたことだと思う。もちろん、この可能性がどうなるかは今後次第だ。だからこそ、今提案をしていくべきなのではないかと思う。