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No.944 2021年10月27日号 巻頭言
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【巻頭言】
★社会問題としての博士号取得者キャリアパス、霊長研問題
2021年10月20日〜10月27日
カセイケン代表 榎木英介
選挙戦中です。カセイケンが実施している政策アンケートですが、まだ全政党から集まってはいません。
https://www.kaseiken.org/g-election2021-kekka/
多くの政党から集まってほしいと思っています。
選挙に関連して、研究者の苦境にも光が当たっています。
国は科学技術立国を目指すという。けれど語られるのはコロナ対策や経済ばかり。そして研究費は削られる。研究者として納得いかない【U30のまなざし 衆院選鹿児島】
https://news.yahoo.co.jp/articles/57c42941d198a7c7996454f369eeb7c9951fc491
こうした問題が選挙の争点になっているとしたら、私たちが政策比較を始めた15年前からだいぶ変わってきたかなと思い、嬉しく思います。
Brazil’s scientists face 90% budget cut
https://www.nature.com/articles/d41586-021-02882-z
Scientists reel as Brazilian government backtracks on research funds
https://www.nature.com/articles/d41586-021-02886-9
ボルソナロ大統領が強権を発動するブラジル。政治が研究に与える影響は日本以上ですが、日本も科学技術予算が政治的な問題であることが多くの研究者の間で認識されるようになりました。もはや「聖域」ではないわけです。
もともと「聖域」だったかは分からない部分もありますが…。
「大隅先生、日本の科学は死んでしまったんですか?」ノーベル賞学者に聞く、日本の科学の行方
https://www.businessinsider.jp/post-244530
大隅博士が率直に語っており、SNS上ではこの記事を研究者が好意的に捉えているようです。
ただ、ちょっと気になる表現があるのも事実です。
博士課程に学生が進学しないのは親の影響とか、博士でないと研究のことが分からないと言った表現です。
研究至上主義、博士号取得者や研究者がエリートなのだからお金をよこせ、みたいな言い方だと、人々の反感を買ってしまうのではないかと思います。
「能力主義には負の側面がある」ハーバード大学有名教授が問いかけること
https://news.yahoo.co.jp/articles/ed3444d61b39b6c534d66baa7c4d5de25b2f2007
サンデル教授が主張するように、能力主義には大きな課題があります。博士号取得者を「能力が優れた人」と強調することは、研究者の問題を解決する上で阻害要因になるかも知れません。
私たちも、博士号取得者は「使える」人材だからその能力を使ってほしいと主張してきました。
これに対しては、他の社会問題と切り離して論じても問題は解決しないよ、と厳しくも的確な批判を受けてきた経緯があります。
博士号取得者や研究者の苦しみは人々の苦しみと同じものである、と言わなければ問題はなかなか解決しないのではないでしょうか。数万人の苦しみは、数千万人の苦しみとは違う、私たちはエリートだ、能力が高いんだ、と言ったところで、人々の共感は得られません。
私が「ジョブ型」雇用に言及するのも、ポスドク問題の雇用制度としての側面が、非正規雇用労働者の問題の一部でもあり、共闘して変えていくことができるかも知れないと思っているからです。
一部の人からは、社会問題にするのは良くないとの逆側からの指摘も受け、なかなか難しいなと思ったりします。
アカデミアの考えと企業の考えにズレがあるのは洋の東西を問わない問題ですし、それはセクターが違えばギャップがあるという一般的な問題です。
そこがこの問題の肝だとしてしまうと、じゃあ「処世術」なり「意識改革」で解決してね、ということになってしまいます。
戦略を論じているのに戦略で返されるズレを感じます。
ともかく、こうしたことも含め、色々論じるのはいいのですが、論じて20年以上経っているわけで、論より証拠という段階ではあります。制度が変わるのを待っていられないので、「処世術」や「意識改革」ももちろん重要です。
あれかこれか、ではなく、あらゆることをやっていき、主張しなければならないのです。
京都大学の霊長類研究所の改編方針が京都大学から公表されました。
霊長類研究所の改編の方向性について
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2021-10-26-1
京都大、霊長類研を解体・再編へ 飼育施設めぐる不正経理など受け
https://www.asahi.com/articles/ASPBV5JDVPBTPLBJ002.html
京大霊長類研を事実上解体、名称変更へ 不正経理受け
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF26A950W1A021C2000000/
京大 霊長類研の解体発表 研究費不正問題受け
https://www.sankei.com/article/20211026-7Q7RS3RYXRJPZI44E3IV2PWYOU/
先週既報通りだったわけですが、波紋が広がっています。
「壊すのはあっという間…」 京大霊長類研、OBらが署名活動も
https://www.asahi.com/articles/ASPBV5JB4PBTPLBJ003.html
京都大学は霊長類研究所の解体をやめてください!
https://www.change.org/p/%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E7%B7%8F%E9%95%B7%E6%B9%8A%E9%95%B7%E5%8D%9A%E3%81%95%E3%81%BE-%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E3%81%AF%E9%9C%8A%E9%95%B7%E9%A1%9E%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80%E3%81%AE%E8%A7%A3%E4%BD%93%E3%82%92%E3%82%84%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84
色々な問題を投げかけています。
まず、研究費不正使用や研究不正の問題は、決して看過できる問題ではなく、京大含め日本の学術界に大きな構造的問題があります。
白楽の卓見・浅見6【大学の隠蔽体質を変えないと日本の研究者倫理事件は減らない】
https://haklak.com/page_view_1.html
論文不正が相次ぐ日本 学術界の透明性高めよ=小川祐希(くらし医療部)
https://mainichi.jp/articles/20211021/ddm/005/070/009000c
附置研究所としての独立性が、外部からの目が入らない古い体質を温存してしまったという面もあるかとは思います。2006年の早稲田大学M教授事件を経ても、何も変わっていなかったとしたら、改組も取り沙汰される深刻な問題です。
しかし、同じ京大でも有力研究者の研究不正の疑義はなかなか調査されないという状況もあり、釈然としないものもあるは事実です。
大規模研究費不正使用等、反論はできない悪質な問題です。組織的な課題もあります。
ただ、今回の改組がベストな解かというところが釈然としない理由です。
「やりがい搾取」で成り立つ日本の感染医療 10年前の指摘は生きず
https://www.asahi.com/articles/ASPBN5T8ZPBLULBJ00G.html
こうした「やりがい搾取」は、医療に限らず至る所にありますね…。
「留学生の入国制限の解除を」 米の日本研究者ら656人が署名
https://mainichi.jp/articles/20211022/k00/00m/030/159000c
日本政府に留学生受け入れ要求 米大学教授ら656人署名
https://news.yahoo.co.jp/articles/5523e4f45a8dcca35c3750765861bb4ce39cf1dc
留学生に門閉ざす日本、「評判損なわれる」 研究者が受け入れを要望
https://news.yahoo.co.jp/articles/19dbb736476bc26984016fab4fdc18defc718b12
「日本で実物見たいのに」嘆く研究者 ビザ出さぬ日本、留学生9割減
https://www.asahi.com/articles/ASPBQ5JJPPBQUHBI00G.html
留学生問題は国際問題化しており、早急に対処しなければなりません。
日本研究者の受け入れ再開へ 国際交流基金、月内に55人
https://www.tokyo-np.co.jp/article/138677
The pandemic’s slowing of research productivity may last years-especially for women and parents
https://www.science.org/content/article/pandemic-s-slowing-research-productivity-may-last-years-especially-women-and-parents
Science journalists under pressure amid COVID-19
https://www.scidev.net/global/news/science-journalists-under-pressure-amid-covid-19/
Global Science Journalism Report 2021
https://www.scidev.net/global/learning-series/global-science-journalism-report-2021-2/
NIH says grantee failed to report experiment in Wuhan that created a bat virus that made mice sicker
https://www.science.org/content/article/nih-says-grantee-failed-report-experiment-wuhan-created-bat-virus-made-mice-sicker
阿蘇山の噴火警戒レベルを3へ引上げ(気象庁)
https://www.jma.go.jp/jma/press/2110/20a/asosan211020.html?106
突如の阿蘇山噴火には驚きました。災害が日本の大きな課題であることは間違いありません。
総合科学技術・イノベーション会議
教育・人材育成ワーキンググループ(第3回)
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kyouikujinzai/3kai/3kai.html
議題
これまでの議論を踏まえた論点整理(案)
~「財源」の確保・再配分について~
委員発表(戸ケさき委員)
これまでの議論を踏まえた全体を通した議論
科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合(令和3年度) > 議事次第 令和3年10月21日
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20211021.html
議題
1.地域の中核となる大学振興パッケージについて
「他国に左右されず日本の在り方見極め」小林鷹之内閣府特命担当大臣に聞く
https://sci-news.co.jp/topics/5381/
新しい大臣。科学新聞本紙には一面で大きく出ていました。
第6次エネルギー基本計画が閣議決定されました
http://www.meti.go.jp/https://www.meti.go.jp/press/2021/10/20211022005/20211022005.html
東京港青海ふ頭におけるヒアリの確認について
https://www.env.go.jp/press/110141.html
ヒアリが見つかり続けています。
「地球温暖化対策計画」及び「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」の閣議決定並びに「日本のNDC(国が決定する貢献)」の地球温暖化対策推進本部決定について
https://www.env.go.jp/press/110060.html
COP26が迫っています。岸田総理も出席するようで、ほっとしました。
生物多様性条約第15回締約国会議、カルタヘナ議定書第10回締約国会合及び名古屋議定書第4回締約国会合第一部の結果について
https://www.env.go.jp/press/110106.html
安保技術提供、留学生は許可制に 大学からの流出懸念
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA25CVB0V21C21A0000000/
機微技術問題はしっかりやるべきです。ただ、デュアルユースは厳しすぎると問題も出ますので、加減をうまくやってほしいです。
10兆円規模「大学ファンド」、TOPIX押し上げ効果最大6%か
https://news.yahoo.co.jp/articles/c68fc34615d941c8478def1ef4b5238284e00829
道内国立3大学統合法人 理事長に前慶大塾長
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO76995510W1A021C2L41000/
企業経営者のように、大学経営者みたいな職種が出現しているのでしょうか。
Giant, free index to world's research papers released online
https://www.nature.com/articles/d41586-021-02895-8
How to make your research reproducible
https://www.nature.com/articles/d41586-021-02887-8
日文研の元助教に懲戒処分 長期にわたりSNSで不適切発言繰り返す
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/662517
誹謗中傷は処分されるべきですが、その「量刑」が果たして適正か、という指摘が出ています。
非常勤講師 契約更新せず 阪大、外国語学部の70人超 /大阪
https://mainichi.jp/articles/20211026/ddl/k27/100/301000c
業務委託契約から切り替え図、雇い止めということで、問題があるように感じています。
Predatory publishers’ latest scam: bootlegged and rebranded papers
https://www.nature.com/articles/d41586-021-02906-8
捕食ジャーナルが進化しており、その対処が不可欠です。
日本のデジタル競争力、28位で過去最低 人材など課題:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF11BOL0R11C21A0000000/
NATURE INDEX | 25 SEPTEMBER 2021
Science cities 2021
https://www.nature.com/collections/eabicabaie/
‘Politicians shouldn’t meddle’: new chief of Europe’s major research funder shares priorities
https://www.nature.com/articles/d41586-021-02885-w
全国の「モネ」たちは今 地域で活躍する気象予報士の姿を追う
https://mainichi.jp/articles/20211024/k00/00m/040/259000c
私も朝ドラ見ていますが、地域で稼ぐことの難しさや専門性をどう活かすかという点で興味深いものがあります。
When to say ‘no’
https://www.science.org/doi/abs/10.1126/science.acx9362?af=R
I felt overloaded at work-until I learned how to say ‘no’ to colleagues
https://www.science.org/content/article/i-felt-overloaded-work-until-i-learned-how-say-no-colleagues
研究 技術 計画 2021 年 36 巻 3 号
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jsrpim/36/3/_contents/-char/ja
特集 日本の大学の変容と展望
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“Science Communication News”
[SciCom News] No.944 2021年10月27日号 巻頭言
【発行】一般社団法人科学・政策と社会研究室
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