2020年3月3日~2020年3月10日
カセイケン代表 榎木英介
瀬戸際とされた二週間が過ぎ、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が見解を出しました。
★新型コロナウイルス感染症対策の見解(3月9日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00093.html
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の見解」
2020年3月9日
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000606000.pdf
2月 24 日に公表した専門家会議の見解において、我々は、「これから1-2週間が急速な拡大に 進むか、収束できるかの瀬戸際となります」と述べましたが、以上の状況を踏まえると、本日時点 での日本の状況は、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ちこたえているのではない かと考えます。
とはいえ、これからも感染拡大は続くとしています。
今回、国内での流行をいったん抑制できたとしても、しばらくは、いつ再流行し てもおかしくない状況が続くと見込まれます。また、世界的な流行が進展していることから、国外 から感染が持ち込まれる事例も、今後、繰り返されるものと予想されます。
まだまだクライシスの渦中にあると言える状態です。
こうしたなか、専門家の役割が問われています。
★新型コロナ「ハッピーバースデー2回歌う間に手を洗おう」と呼びかけた英首相の科学力とコミュ力
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200304-00165964/
科学アドバイザーがいる英国では、首相もアドバイザーに従っているようです。
日本では、外務省に科学技術顧問がいます。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/dns/isc/index.html
また、厚労省にも次官級ポストとして医務技監がいます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%BB%E5%8B%99%E6%8A%80%E7%9B%A3
しかしながら、あまり表には出てきていません。厚労省にしても、加藤大臣が会見を続けています。
★新型コロナウイルス対策で専門家の顔が見えない日本
https://webronza.asahi.com/science/articles/2020030600005.html
大阪府は独自に専門家会議を設けるようです。
★大阪府が「専門家対策会議」独自に設置へ 感染者の入院基準など協議
https://mainichi.jp/articles/20200309/k00/00m/040/187000c
★日本学術会議幹事会声明「新型コロナウイルス感染症対策に関するみなさまへのお願いと、今後の日本学術会議の対応」
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-kanji-5.pdf
第二部大規模感染症予防・制圧体制検討分科会
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/2bu/pdf/2kansensyou-setti24.pdf
日本学術会議が検討分科会を作って動き出しました。科学者の国会の助言などが、
政策に生きるのか、生かす気があるのか…。
専門家とは誰か、という問題も問われるところです。
私は普段ワイドショーなどは見ないですが、視聴率をあげている番組に出ている医師や研究者は、公衆衛生学の専門家ではありません。
病理医としてテレビやラジオに出演した私も、感染症や公衆衛生学を専門とはしていません。なるべく身の程をわきまえた発言はしたつもりですが(あくまで医師の働き方や病理学の視点から発言はしましたが)、視聴者からみれば、専門性があるように見えていたかも知れません。
専門家以外は発言するなというつもりはありません。テレビに出ている方々はコミュニケーターとして長けているのだと思います。
とはいえ、伝え聞くところによると、陰謀論や、公衆衛生学の基本から逸脱したお話をされているようでもあり、むずかしいところです。
クライシスにおけるコミュニケーションにおいて、ワイドショーが10%程度の視聴率
すなわち1000万人前後の人々に情報を伝えていると考えると、Twitterのフォロアーが数万から数十万の医師では対抗できない可能性が高いように思います。
言論の自由はあるわけで、一律に報道を禁止するというのは、言論弾圧になってしまいます。ならば、政府も含め、医療の専門家が情報を分かりやすく、そして包み隠さず発信していかなければなりません。
感染症のアウトブレイクによる危機と緊急事態におけるリスクコミュニケーション
http://mediadoctor.jp/menu/InfectiousDiseaseOutbreak.html
信頼を得る、共感を示す、敬意を示すといった点がどうも不十分のように思います。
★『コロナウイルス:最前線で人権を尊重し、対策の中心に据える必要がある』 国連人権高等弁務官
http://miyatak.hatenablog.com/entry/2020/03/09/123402
そして人権の尊重が重要になります。
いま打撃を受けている人たちは、「医療の面からも経済面からも、最も弱い立場にある人たち、社会的に無視されがちな人たち」、「低所得者、孤立した地方の住民、基礎疾患を抱える人、障害者、一人暮らしの高齢者、施設入居者など」です。
「経済的にかろうじて生活を維持している人たちは、ウイルス封じ込め対策の影響でがけから突き落とされるような状態に追い込まれてしまいます。各国政府はコロナウイルス対策による意図せざる影響に対しても、様々な対応策を用意しておく必要があります。従業員への柔軟な対応も含めビジネス分野の役割も大切です」とバチェレは語る。
★新型コロナウイルスに関連した感染症対策への対応に関する緊急声明 『子どもたちが「外で遊ぶ権利」を最大限保障してください』
http://www.jsfee.jp/general/403
★「演奏できず、収入ゼロ」新型コロナでフリーランス悲鳴
https://www.asahi.com/articles/ASN34772LN34ULFA034.html
フリーランスは平時から社会保障等含め弱い立場に置かれることが多いと言えます。来月からフリーランス的な働き方をする私にとってもひとごとではありません。
★新型コロナ フリーに補償4100円 緊急対策第2弾、きょう政府公表
https://mainichi.jp/articles/20200310/ddm/002/040/077000c
政府は対策を発表するようです。
私が気になっているのが、非常勤講師で生計を立てている方々です。いまは大学は春休みに入っていると思いますが、たとえば早稲田大学が4月20日まで授業を行わないことを決定するなど、新型コロナウイルスの蔓延が続けば、非常に苦しい立場におかれる可能性があります。
2020年度授業開始日程変更について
http://www.waseda.jp/top/news/68611
クライシスは平時の問題を増幅します。非常勤講師の方々も含め、対策をしっかりと考えておかなければなりません。
★休校中の学習支援の取り組み広がる 文科省の『子供の学び応援サイト』など多数
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2020/03/20200306_01.html
子供の科学特設サイト
https://www.kodomonokagaku.com/20200305/
サイエンスチャンネルから子ども向けコンテンツを集めた「サイエンスチャンネル キッズ!」を公開しました。
https://sciencechannel.jst.go.jp/kids/
家で過ごす子供たちに「星空」をライブ配信へ
https://www.yomiuri.co.jp/science/20200309-OYT1T50171/
今こそ科学を楽しもう!サイエンスウィンドウ for KIDS
https://sciencewindow.jst.go.jp/kids/
日本学術会議若手アカデミーの本棚
https://booklog.jp/users/youngacademy-jpn
大変素晴らしいことなのですが、こうしたコンテンツに容易にアクセスできるのは、社会的に上位の階層に属する子どもたちと思われます。
学校の休みが格差をさらに増大させてしまうことへの意識は持っていなければなりません。
★新型コロナウイルス感染機構とACE2
https://aasj.jp/news/lifescience-easily/12537
Cellにでた論文を西川伸一氏が解説しています。メカニズムが分かれば突破口があります。
ただ、「面白い」という率直な感想は、研究者なら感じるところですが、それを正直に書いてしまうところが、研究者のナイーブさと言いますか、ちょっと気になりました。
★GitHub上に公開された「東京都公式 新型コロナウイルス対策サイト」は危機が生んだ日本の奇跡
https://oreno-yuigon.hatenablog.com/entry/2020/03/04/224301
「マジで胸アツ」台湾の天才IT大臣、東京都の新型コロナ対策サイトの修正に自ら参加し話題に
https://www.buzzfeed.com/jp/harunayamazaki/audrey-tokyo-covid19
台湾の大臣はいま大注目の存在です。
★台湾の「38歳」デジタル大臣から見た日本の弱点
「まだ多くを学ぶ必要があるが遅れている点も」
https://toyokeizai.net/articles/-/327954
こうした才能を生かす可能性が日本社会にもまだあるでしょうか。
★高校の文・理コース分け 労働生産性低迷の要因に
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO56523740X00C20A3CK8000/
数学を学ばぬ高校生 日本の労働生産性低迷の要因に
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56486740W0A300C2CK8000/
こうした才能を持った人は放っておいても出てくると思いますが、一般の人たちもある程度の知識と技能がなければ、高度知識社会はつくれません。
★iPS研究予算カット問題に潜む安倍政権の意思決定の危うさ
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20200306/pol/00m/010/005000c
新型コロナウイルスへの対策含め、政権の意思決定方法が問われていると言えます。
★国民の皆様へ(東日本大震災九周年に当たって)
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/discourse/20200306danwa.html
東日本大震災九周年追悼式が中止に。まだ風化するには早いです。この9年間をしっかりと振り返り、教訓を得なければなりません。
いま直面する新型コロナウイルスに対する政府の対応は、9年前の教訓を使っているのでしょうか。
★イノベーション明記 科学技術基本法改正へ
https://mainichi.jp/articles/20200304/ddm/012/040/108000c
★「博士課程教育リーディングプログラム」(平成25年度採択プログラム)事後評価結果について
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/hakushikatei/1414007_00001.htm
★令和2年度の戦略目標及び研究開発目標の決定について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/mext_00147.html
★強毒ヒアリが春に活発化── 水際で防げるか、専門家ら挑む「決戦」
https://news.yahoo.co.jp/feature/1583
春が近づいてきました。ヒアリ封じ込めへこちらも正念場です。
★「宇宙分野における知財対策と支援の方向性 報告書(案)」に対する意見募集について(令和2年3月23日(月) 23時59分まで)
https://www8.cao.go.jp/space/public_comment/chizai_taisk_shien/chizai.html
★ 「私たちは、研究者や研究機関や政策立案者に指示を出しているわけではありません」
http://bit.ly/335jrNX
日本にもAAAS(全米科学振興協会)のような組織を、という声が大きいですが、学ぶべきはAAASをモデルに1990年代にできたEuroScienceかも知れません。
★伊達市民の被曝解析データを前規制委員長へ提供〜宮崎早野論文
http://ourplanet-tv.org/?q=node/2475#OurPlanetTV
倫理的に大きな問題です。
★韓国人受験生を全員不合格 加計学園獣医学部に「不正入試」疑惑
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200304-00036425-bunshun-soci
文科相、岡山理科大に確認要請 不正入試報道で
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO56440480V00C20A3CR8000/
不透明な点数操作は許されることではありません。
★受験料返還義務認める 東京医大入試不正で東京地裁
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56466430W0A300C2CR0000/
東京医大に判決。
★筑波大、防衛省助成に応募 「軍事研究しない」方針は?
https://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/202003/CK2020030202000130.html
茨城)防衛省の助成、筑波大の研究を採択 学内に反対も
https://www.asahi.com/articles/ASN3864PFN36UJHB002.html
★Learning to deal with dual use
https://science.sciencemag.org/content/367/6482/1057
★中国に「論文工場」? 実験せず量産、医師購入か
https://www.asahi.com/articles/ASN377FFKN33ULBJ00F.html
★UC Santa Cruz Fires Graduate Students Taking Part in Strike
https://www.the-scientist.com/news-opinion/uc-santa-cruz-fires-graduate-students-taking-part-in-strike-67207
★CRISPR treatment inserted directly into the body for first time
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00655-8
CRISPR Used Inside a Person’s Body for the First Time Ever
https://nerdist.com/article/crispr-used-inside-a-persons-body-for-the-first-time-ever/
First Patient Receives In Vivo CRISPR Editing
https://www.the-scientist.com/news-opinion/first-patient-receives-in-vivo-crispr-editing-67222
In its first use inside the human body, CRISPR genome editing tested as blindness therapy
https://www.statnews.com/2020/03/04/crispr-first-use-inside-human-body-blindness-therapy/
人体でゲノム編集が行われました。
★研究開発戦略ローンチアウト「米国における科学技術人材について」
https://scienceportal.jst.go.jp/reports/launchout/20200309_01.html
★Pentagon's social science research faces threat
https://science.sciencemag.org/content/367/6482/1065.full
★博士、高校で先生の道 公立高の教員採用試験、特別選考広がる
https://www.asahi.com/articles/DA3S14394847.html
私たちも長年注目しているキャリアパスです。
★名大 女性増員未達成で予算減へ
https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20200308/3000009383.html
残念なニュースです。