科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

博士減少と若手研究者支援

2019年12月3日~2019年12月10日

カセイケン代表 榎木英介

 このメルマガが扱う内容ではないのですが、アフガニスタン中村哲医師が狙撃され死亡した事件には大きな衝撃を受けました。

 医師としての仕事を超えて水路を作ったというその行動は、同じ医師として、医師の範囲を超えてこうしたメルマガを作っている私にとっても大いなる刺激をあたえてもらっていました。

 私の場合、そこまで大きなことはできませんが、科学技術が社会に役立つように、そして博士に代表される人材がより活躍する社会を目指して、それこそ水路に匹敵するものを作っていかなければならないと強く思っています。

★若手研究者に年700万円
700人選抜 政府、最長10年間支援
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52895540T01C19A2MM8000/

40歳までの研究者に年700万円 政府支援へ
https://www.asahi.com/articles/ASMD43HS7MD4ULBJ004.html

日本の研究力低下に危機感
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52930500T01C19A2EE8000/

 40歳未満の若手研究者の支援策が見えてきました。

 選抜された七百人の若手に700万を10年間あげて、じっくりと研究してもらうというものです。

 そして、北大では若手研究者の大抜擢も。

★北大、最短5年で教授に
新制度で若手育成、研究費には補助 准教授20人採用計画 有望な人材囲い込み
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53005440V01C19A2L41000/

★最短5年で教授、北大の若手登用が「アンビシャス」に
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO53005440V01C19A2L41000

 ノーベル賞受賞者の多くが、だいたい40歳未満でノーベル賞の受賞対象となった研究をしていたというデータはありますし、40歳未満には合理性はあります。

 ただ、若手研究者の支援制度である「さきがけ」
https://www.jst.go.jp/kisoken/presto/index.html

 が「先崖」と言われるように、支援終了後に成果を出して羽ばたければよいですが、そうでない場合露頭に迷うことが懸念されます。

 そもそもポスドク制度が、オーバードクターにお金をあげて生活を安定させ、「武者修行」してもらいキャリアアップという趣旨で始まっているわけですから、これが何度目かの問題先送りにならないことを心より願います。

★「博士」生かせぬ日本企業 取得者10年で16%減
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53006550V01C19A2SHA000/

春秋
2019/12/7付
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO53075920X01C19A2MM8000/

 さきがけが「先崖」になってしまうのも、博士の就職難と呼ばれるものも、結局は企業や行政等との接続性が悪いことが原因の一つでしょう。

 企業にも合理性はあって、新卒一括採用や年功序列などの制度的な部分で、博士がイレギュラーな存在になってしまっています。

 つまり、博士が減ったのは極めて合理的で、日本企業が博士などいらない経営をしているからです。いらないならならない。単純なことだし、いらない人材が減ってだから何?という話です。

★なぜ外国人はすぐ辞めるのか? 彼らが日本企業をあきらめた、本当の理由。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/chiyo-watanabe-kamino_jp_5dccd694e4b0d43931cf2ca4

 博士だけでなく、外国人なども活用できていない日本企業の実態があります。

 しかし、だから何と言っていられなくなってきたようです。

 日経の記事で、博士が営業職になることをネガティブに捉える部分があり、気になりました。確かに博士が営業職になることは、決してネガティブに捉えるべきことではありません。

 ただ、逆は難しいわけです。逆というのは、営業職採用された人が、たとえば研究所などでその社の主力製品を開発するといったようなことです。

 テクノロジーが高度化し、現在では社員を配置転換させて数年で主力製品を開発できるほど甘いものではなありません。では日本以外ではどうするか、と言えば、人材を外から買ってくることになります。

 こうしたことが日本企業がグローバル市場で苦戦する原因の一つになっていると言われています。で、困った困った、じゃあ博士だ、ということになったわけで…。

 この話、いつも卵が先か鶏が先かになります。

★異見交論 第1回
自民党税調会長 甘利 明 氏
国立大学は「知識産業体」の自覚を
https://www.kyoikushinsha.co.jp/rensai/ikenkoron/001/index.html

 大学が悪いから企業業績が悪くなった…。

 博士人材が企業に合っていないから採用しない…。

 責任の擦り合いしている間に時はどんどんたってしまいます。

山中伸弥さんのiPS細胞研究所の一部事業助成打ち切り報道について
https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/13241722.html

 やまもといちろうさんが私の書いた記事をしかるべき方々(どんな方々か分かりませんが)に見せて、日本の研究の危機について訴えているとのことです。やまもとさんには御礼申し上げます。

 とはいえ、希望が見えません。

 ハードランディングしかない、という話は結構聞きます。この数年以内に日本は財政破綻するから、その時が変えどきだと。

 しかし、日本の研究が焼け野原から立ち直ったとしても、今いる博士たちは生きていかなければならないのです。すでに40歳以上で、支援の対象からも外された人たちは、すでにハードランディングし、亡くなる人も出ています。

2019年12月22日放送
テレメンタリー7月クール優秀作品アンコール放送
 さまよう博士」
https://www.tv-asahi.co.jp/telementary/

 私が取材協力した番組が最優秀賞を受賞したとのことで、22日に再放送されます。

 まだ見ていない方は是非ご覧ください。

 政府や大学にはもはや何も期待できないこの世代の人たちのために何ができるか。 

 一つのかぎは徹底的に生き残る方法を提示していくことだと思っています。

★東大研究者が一本釣り漁師に転身 衰退著しい漁業を盛り上げるブルーツーリズムとは
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1911/29/news025.html

 一本釣り漁師はかなりイレギュラーですが、こうした転身された方々の生き方のなかに、ハードランディングを生き抜く術がみえてくるのではないか。

 まずはそこからやっていきます。

 ただ、それだけでは中村哲さんの水路にはなりません。

 人材を雇用し、社会に役立てカネを生み出していく…。

 リバネスのような企業は博士人材を雇っているわけで、敬服します。

 なんとかしろと政府や既存の企業に言うだけでなく、自らなんとかできないか…。

 中村哲さんの遺志をこの分野で継ぐとしたら、何をすべきか、考えなければならないと自ら言い聞かせています。

★研究力どう立て直す?科学技術計画「第6期」策定へ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52947890U9A201C1TJN000/

<キーワード> 科学技術基本法
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52998490V01C19A2TJN000/

イノベーション」連呼の先 基礎研究の軽視回避を
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53114370Z01C19A2XY0000/

 自民党の甘利さんの発言は、国立大学を企業のためのものにせよ、というものでした。

 それは一つのアイディアですが、基礎研究とイノベーションをごったに考えているから問題があるようにも思います。 上記記事中で、基礎研究の基本計画とイノベーションの基本計画を分けろという話が出ています。それもありかなと思います。

★iPS備蓄支援 科技相「当初予定通り」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53035490W9A201C1EAF000/

iPS備蓄、国の支援を継続 山中氏の批判を受け決定
https://www.asahi.com/articles/ASMD63SMCMD6ULBJ002.html

東浩紀「iPSなど再生医療の現実は、社会の欲望の受け皿にもなっていた」〈AERA
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191204-00000025-sasahi-sctch

再生医療実用化へ協働を 中辻憲夫氏
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53112200Z01C19A2SHE000/

 やまもとさんが言及していた「iPS備蓄」問題。iPSも基礎研究とイノベーション、産業政策が混ざってしまい混乱が生じているように思います。

安倍総理は令和元年第13回経済財政諮問会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201912/05keizaishimon.html

令和元年第13回経済財政諮問会議
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1205/agenda.html

議事

(1) 経済再生・財政健全化の一体的な推進強化5(社会保障2)
(2) 令和2年度予算編成の基本方針

安心と成長の未来を拓く総合経済対策(令和元年12月5日閣議決定
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1205/20191205_taisaku.pdf

令和2年度予算編成の基本方針(令和元年12月5日閣議決定
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1205/r2_yosanhensei.pdf

 Society5.0、SDGs、そして就職氷河期世代支援。

★研究現場の閉塞感を打破するには: エビデンスベースの政策立案の前提条件の共有に向けて ― NISTEP定点調査ワークショップ2019より ― [調査資料-286]の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/43333

★「AI・データの利用に関する契約ガイドライン 1.1版」を策定しました
https://www.meti.go.jp/press/2019/12/20191209001/20191209001.html

東京都府中市内におけるヒアリの確認について
https://www.env.go.jp/press/107531.html

 コンテナの中なので、定着したわけではありませんが、注意してみていく必要があります。

OECD生徒の学習到達度調査(PISA2018)
http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/index.html#PISA2018

OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)の結果公表を受けての萩生田文部科学大臣コメント
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/detail/1422960.htm

★萩生田文部科学大臣コメント(生徒の学習到達度調査(PISA)の調査結果)
http://www.mext.go.jphttp://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/detail/1422960.htm

 非常に大きく報道されました。

日本の15歳「読解力」15位に後退 デジタル活用進まず
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52905290T01C19A2CC1000/

デジタル活用、世界に遅れ OECD学習到達度18年調査
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52912410T01C19A2M13700/

科学的応用力、記述力は改善
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52912600T01C19A2M13700/

クローズアップ:国際学力テスト 読解力急落 「PISAショック」再び
https://mainichi.jp/articles/20191204/ddm/003/100/107000c

★論文不正調査、京都府医大と関西医大が6年後に報告書
https://www.asahi.com/articles/ASMD35WF3MD3PLBJ00C.html

関西医大が論文不正調査報告放置
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20191203/2000023024.html

 研究不正調査は時間もカネもかかるので、研究機関にとってはやりたくないということがよく分かります。

★総額2億円近く 京大 霊長類研究所で研究費不正か
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191206/k10012205511000.html

京都大霊長類研究所で巨額不正経理か 同大が調査
https://www.sankei.com/west/news/191206/wst1912060009-n1.html

京大霊長研で研究費不正か 飼育施設工事、大学調査
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019120601002022.html

 次第にその様子が明らかになってきました。

★Archaeology society votes to let board ban sexual harassers from meetings
https://www.sciencemag.org/news/2019/12/archaeology-society-votes-let-board-ban-sexual-harassers-meetings

Society for American Archaeology Can Ban Harassers from Meetings
https://www.the-scientist.com/news-opinion/society-for-american-archaeology-can-ban-harassers-from-meetings-66809

 アメリカ考古学会の取り組み。

サモア、はしか大流行で62人死亡 政府機関を閉鎖
https://www.asahi.com/articles/ASMD43WFHMD4UHBI01J.html

Samoa measles: Unvaccinated families told to hang red flag on door
https://bbc.in/2rSXKlW

50 Children Dead from Measles Outbreak in Samoa
https://www.the-scientist.com/news-opinion/50-children-dead-from-measles-outbreak-in-samoa-66805

はしかで年14万人超が死亡 WHO、ワクチン接種呼び掛け
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019120601001085.html

 世界中でアウトブレイクが続く麻疹。反ワクチン運動が拡大し、非常に厳しい状況です。

The US must act now to help stop the global measles surge
https://thehill.com/opinion/healthcare/473257-the-us-must-act-now-to-help-stop-the-global-measles-surge

Anti-vaccine groups take dangerous online harassment into the real world
https://www.nbcnews.com/health/kids-health/anti-vaccine-groups-take-dangerous-harassment-offline-real-world-n1096461

 もっとも成功した運動とされる反ワクチン運動にどう対峙していくか。医療関係者としては頭がいたい問題です。

★日本の再生医療政策がもたらすもの
https://go.nature.com/2P5DeYw

 Natureの批判的記事。

★The Bio-Hacker From the Garage Next Door
https://www.calcalistech.com/ctech/articles/0,7340,L-3775257,00.html

ソフトバンク、東大とAI研究所開設へ 200億円提供
https://www.asahi.com/articles/ASMD653PPMD6ULFA018.html

東大とソフトバンクがAI研究所 後発日本で孫氏「人材や資金回る仕組みを」
https://mainichi.jp/articles/20191206/k00/00m/020/262000c

ソフトバンク、AI開発で東大と連携 200億円支援
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53039790W9A201C1000000/

ソフトバンクG孫氏「基礎研究だけでは続かない」 東大学長と対談
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53049880W9A201C1000000/

★Harvard Graduate Students on Strike
https://www.the-scientist.com/news-opinion/harvard-graduate-students-on-strike-66816

 ハーバード大学の院生がストライキ

★Getting the EPA back on track
https://science.sciencemag.org/content/366/6470/1173

Joint statement on EPA proposed rule and public availability of data (2019)
https://science.sciencemag.org/content/366/6470/eaba3197

 EPAの問題続報。

★Chinese universities with military ties classed as ‘risky’ collaborators
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03726-7

★Science publishers review ethics of research on Chinese minority groups
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03775-y

 中国の研究に関する懸念。

★Italy set to create e300 million research funding agency
https://science.sciencemag.org/content/366/6470/1178

Can Italy’s new science funding agency overcome a thin budget and worries over political meddling?
https://www.sciencemag.org/news/2019/12/can-italy-s-new-science-funding-agency-overcome-thin-budget-and-worries-over-political

 イタリアで新しいファンディングエージェンシーができますが、懸念も。

★At Japan’s Most Elite University, Just 1 in 5 Students Is a Woman
https://www.nytimes.com/2019/12/08/world/asia/tokyo-university-women-japan.html

 ニューヨークタイムズの記事。直視しなければならない問題です。

★A mother's guilt
https://science.sciencemag.org/
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03688-w

Women from some under-represented minorities are given too few talks at world’s largest Earth-science conference
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03688-w

ノーベル財団
https://www.nobelprize.org/

「ノーベル週間」始まる
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53039400W9A201C1CR0000/