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「サイエンスアゴラ」の季節です 〜 初冬の午後、本音で語ろうデュアルユース

みわよしこ

サイエンスアゴラ」の季節です 〜 初冬の午後、本音で語ろうデュアルユース

故・横山雅俊さんがサイエンスアゴラで開催してきた「本音で語る」ワークショップシリーズを、今年も無事、開催の運びとなりました。
今年のタイトルは「本音で語るデュアルユース」です。

サイエンスアゴラ2017:「本音で語るデュアルユース」企画ページ
http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/program/booth/164/

■概要

企画提供者 榎木英介・三輪佳子・#phdjp 科学と社会ワーキンググループ
開催日 11/25(土)13:00-16:00 (開場 12:30)
会場 テレコムセンタービル 20階 会議室3

■内容
 
例年と同じく、前半(ゲストを招いてのトークセッション)・後半(来場者全員を交えてのワークセッション)の二部構成です。

■ゲスト

池内 了氏(名古屋大学名誉教授(天文学))
内村 直之氏(科学ジャーナリスト
柿崎 真沙子氏(藤田保健衛生大学講師(疫学・公衆衛生学))

お話を聴かせていただくのが、今から楽しみです。

■ワークショップ・ファシリテーター

山本 伸(多摩大学医療・介護ソリューション研究所シニアフェロー/シミックホールディングス株式会社)

山本さんの安定と安心のファシリテーションには、「本音で語る」シリーズで毎年お世話になっております。

防衛省から研究費を受け取らなければ「デュアルユースは関係ない」?

 今回の「本音で語るデュアルユース」を企画した背景は、この問題が本質的に白や黒・正や邪で割り切れず、それどころか「デュアルユース」とは何なのかを明確にすることも難しい捉えづらさを含んでいるからです。この「捉えづらさ」こそが、デュアルユース問題の本質なのかもしれません。

防衛省の「安全保障技術研究推進制度」の趣旨と募集要項を初めて見た2014年、私は「ああ、基礎研究に従事する研究者が、何に困っていて何を欲しているのか、本当に良く分かっているなあ」と感嘆しました。多くの研究費についてボヤかれる「使いづらさ」が少なく、金額は大きく、「防衛研究そのものをする必要はありません」「特定秘密にはなりません」と安心を与えてくれる説明。知的財産権の処理なども、どこまでも研究者思い。というより、まず相手を徹底的にリサーチするのは軍事の基本でしょう。さすが防衛省。皮肉でも反語でもなく、本気の賞賛です。
とはいえ、同時に「これって、軍事そのものの研究じゃなくても、軍事研究になるってことだよね……?」と悩ましくなった方も多かったことでしょう。
よく切れる包丁は、おいしい料理を作ることに役立ちますが、殺人の凶器としても優秀です。包丁を手に握った結果が、楽しい食卓と凄惨な殺人現場のどちらを実現させるかは、包丁を握った人しだいです。包丁自身が方向性を持っているわけではありません。
このように考えると、人文社会科学系の研究を含めて、「すべての研究は潜在的にデュアルユースでありうる」とも言えそうです。少なくとも、防衛省の研究費を受け取っていないからといって、「自分は、デュアルユース技術研究に加担してない」とは言い切れない気がします。

■「人道のため、軍事研究はやらない」という姿勢は、別の人道的問題を引き起こすかも

 天災が起こった際の自衛隊は、真っ先に救助にかけつけてくれる頼もしい存在です。自衛隊の駐屯地のある町で育った私にとって、幼少のころの自衛隊のイメージは「台風や集中豪雨の時に、土手に手際よく土嚢を積んでくれる、カッコよくて優しいお兄さんたち」でした。周囲の大人たちの相当数が「日本がまた戦争するためにあるんだ」と怖れている自衛隊と、災害救助のカッコよくて優しいお兄さんたちの自衛隊が同じものだと知ったのは、小学3年生のころ(1972〜73年)だったでしょうか。「え? そうだったの?」という驚きを、昨日のことのように思い出します。
ともあれ現在も、災害あれば、自衛隊員は国内外のあちこちに派遣されて救助活動を行います。激甚被災地で接する惨たらしい状況の数々は、自衛隊員にも強いストレスを与えます。PTSDを発症する自衛隊員も少なくないでしょう。もしも現状の調査・分析や治療法の研究が、「それは軍事研究だから」という理由で避けて通られるとすれば、それは人道的に問題があるのではないでしょうか。しかし「軍事研究ではない」と言い切ることもできません。

軍事や軍事研究が現実に存在する世界を生きている以上、「デュアルユース」は、この世界に生きる一人ひとりがそれぞれ、知り、考え、悩まなくてはならない問題ではないかと思います。

■故・横山雅俊さんの灯火を、掲げ続けたい

 この「本音で語る」シリーズは、2006年、サイエンスアゴラがはじめて開催された時から、故・横山雅俊さんと榎木英介さんが中心となって開催されてきました。私は2009年、「第4回:本音で語る“大学とは何か”」のツイッター中継をお手伝いしたことから、開催のお手伝いに加わるようになり、ここ数年は横山さん・榎木さんと私の3人で企画を提供してきました。といっても、企画を実現させるための実作業や交渉などのほとんどは、横山さんが一人で担い続けていました。
 3人で「次のサイエンスアゴラはデュアルユースをテーマに」とチャットで盛り上がっていた矢先の本年4月、横山さんが急逝されました。ショックから立ち直った5月23日、サイエンスアゴラの企画提供の締め切りを確認してみたら、なんと当日でした。榎木さんと相談のうえ、取るものもとりあえず企画をエントリー。そして審査を経て、無事に採択となりました。
 採択となったのは良かったものの、具体的な作業やゲストとのやりとりなど、ほとんどすべてを横山さんにお任せしてしまっていたため、何もかも手探りの中でのスタートでした。しかし、「横山さんが掲げ続けてきたサイエンスコミュニケーションの灯火を消したくない」という思いを共有してくださる方々が何人もおられ、自然発生的に「実行委員会」的グループが立ち上がりました。
 当日が無事に迎えられ、参加されるすべての方々にとって実り豊かなものとなるように、準備を進めているところです。

■2017年11月25日(土)午後、テレコムセンターでお会いしましょう

 当日参加も可能ですが、参加される方々のバックグラウンドやご関心を事前に知っておきたいため、事前申し込みフォームを用意しました。
参加を迷っておられる方は、ぜひ、ご記入ください。

「本音で語るデュアルユース」@サイエンスアゴラ2017 申し込みフォーム
https://goo.gl/forms/jdUGoWe7wOr8KzSe2

 それでは、11月25日午後、テレコムセンターでお会いしましょう。