科学・政策と社会ニュースクリップ

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研究不正と冤罪

 STAP細胞騒動のさなか、大きなニュースが入ってきました。1966年に一家4人を殺害したとして死刑判決が確定した袴田巌さん(78)の再審が決定し、釈放されたというニュースです。

 私は、袴田さんの釈放がこの時期になったことに、何らかの意味があるのではないかと思えてなりません。

 研究不正と冤罪。両者に共通するものは何か…

 最初に結論ありき。検察のストーリーに合う証拠だけが採用され、証拠や証言が捻じ曲げられ、無実の人を犯人にしたてあげる冤罪。

 最初に結論ありき。仮説にあうデータだけ採用され、写真やグラフが盗用され、ない現象をあるとしてしまう研究不正。

 このなかで、死刑確定後再審を経て無罪になった免田栄さんは、以下のように述べています。

何で冤罪が起きると思いますか?それは警察官に、賞状や賞金が出るからですよ。大きな事件を解決し、有罪にすれば出世もできるとです。事件を解決すれば新聞などが書きたてるとですよ

(P102)

これを研究不正にあてはめたらこうなります。

何で研究不正が起きると思いますか?それは研究者に、ポストや研究費がでるからですよ。大きな研究をし、CNS(注 Cell Nature Science)に載れば出世もできるとです。大きな研究をすれば新聞などが書きたてるとですよ

 警察や検察が冤罪を生み出す構造と、研究者が不正を行う構造に、一部類似点があるのではないかと思ってしまいます。

 捏造が許される構造というのが、日本のいたるところにあるのではないか…STAP細胞問題と袴田さんの釈放によって、そう思わさせられたのです。

 著者の清水潔氏は以下のように述べます。

人はだれでもミスをする。私だってもちろんそうだ。誤りは正せばよい。原因を突き止め、再発を防止することに全力を尽くせばいい。だが、隠蔽しては是正できない。過ちが繰り返されるだけだ。

(P334)

 STAP細胞事件において、理研早稲田大学が果たして包み隠さず原因を突きとめられるか、厳しくみていく必要があります。そして科学コミュニティは、繰り返される研究不正、研究費不正流用に、隠蔽なく対処できるのか、これまた厳しい目にさらされていると言えるでしょう。


 ただ、最後に言っておきたいのは、研究不正と冤罪の違いです。

 研究不正はなんだかんだ言って外から検証され、暴かれます。変な論文は引用されず、消えていきます。一時的に捏造論文で注目を浴びたり、地位や研究費を得たりしても、やがてボロは出ます(権力でもみ消す場合もなきにしもあらずですが)。

 しかし、冤罪では、国家が証拠を隠蔽し、検証ができない場合もあります。無実の人がときに半世紀近く自由を奪われ、そしてその間、真犯人が野放しになります。上記の本で取り上げられた「北関東連続幼女誘拐殺人事件」では、誤認逮捕後に新たな事件が起こっています。

 その違いを無視して同列に報道したり、批判したりすることは、問題が多いようにも思います。