科学・政策と社会ニュースクリップ

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指令 熟議カケアイ二投稿セヨ

現在、文部科学省熟議カケアイにて、科学技術政策に関する二つの議論が進行中だ。

一つは

「我が国の研究費を使いにくくしている問題点は何か?」
(回答期間 2010年6月3日〜2010年6月30日)

もう一つは
「国立大学法人の課題やその改善方策は?」
(回答期間 2010年5月27日〜2010年6月17日)

だ。前者には6月14日現在87件のコメントが、後者には162件のコメントが掲載されている。

熟議は、政府が現場の声を取り入れようと始めた取り組みだ。

鈴木寛文部科学副大臣のプレゼンが分かりやすい。

熟議とは
【step1】個々人の本音をぶつけ合い共通課題を発見していく
【step2】共通課題について関係者それぞれの立場や役割を相互理解する
【step3】それぞれが当事者意識を持って議論に関わることによって共通課題についての解決方法を編集・創造する
【step4】ボランタリーに改革アクションが始まる
プロセスであり、ツール

とのことだという。

最初は教育分野で始まったが、次第に科学技術に関連する分野に範囲が広がっている。

私は、熟議を現場の声を政策に反映させる手段として活用すべきだと思う。せっかく開いた政策への小さな穴だ。研究に関わる人たちは是非積極的に意見を言ってほしい。

ところが、残念ながら科学技術に関する熟議が盛り上がっていない。

上で科学の熟議が87件及び162件と述べたが、これは教育の熟議に比較して圧倒的に少ない。

たとえば、「未来の学校」という熟議には、2937件ものコメントが寄せられている。

このほか、「教員になる際につけるべき「力」は?そのつけ方は?」に1137件のコメントが寄せられるなど、どれも科学技術のコメントをはるかに凌駕している。

twitter上で意見を聞いたが、熟議の登録の際に、個人情報を要求されすぎているのがネックになっているという意見が多かった。

また、熟議のコメントには発言者の都道府県名が表示される。教育は分からないが、研究者の場合、●●県でこんな発言をしているのはあのひとだ、と個人を特定されやすい。これが自由闊達な発言を妨げているという。

非常に残念だが、特に若手研究者を中心として、政策などに意見を言うことがマイナスになる状況がある。本来研究者は自由闊達な意見を言うことを旨とすべきなのだが、プロジェクト単位の雇用が強化されるなかで、配下の人間が自由に発言することをよしとしない研究指導者、PIがいるのは事実だ。

twitterではこんな発言があった。

発言したい若手はたくさんいると思います。でも、個人を特定することがすごく怖いんです。万が一この発言が上司にばれたら、教授にばれたら、コミュニティーから弾き出されるかもしれない。職を失うかもしれない。でもそんな気持ち、公務員の方には理解できないですかね?

こんな現実が本当に情けないし、悲しい。

現在改善をお願いしているが、まだどうなるかわからない。

ただ、時間は限られている。表示されるのは都道府県名だけだから、それで構わないという人は、一人でも多く意見を言ってほしい。

一部で「科学技術は熟議に向かないのではないか」という声も聞かれ始めていると聞く。このままではせっかく開いた政策への穴が、広がるどころか閉じてしまう。

事業仕分けには15万件の意見が集まった。科学技術基本計画には1000件以上の意見が集まった。

一人ひとりの小さな声が、うねりのように政策を動かす。

みなさんの行動をお願いしたい。