科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

当事者が動けと言っても

 ポストドクターの問題は、今まで書いてきたとおり根深いものがあり、すぐに解決できるわけではありません。

 そして、当事者が積極的に動かない限り、そう簡単には問題は解決しません。そのことは、以前別ブログにも書きました

 アメリカには、National Postdoctoral Associationというポスドク団体があります。PhDs.orgという、キャリア情報サイトを運営している団体もあります。こういった団体がさまざまな活動をして、自らの権利を主張したりしています。

 近年アメリカで、ポスドクのユニオン化が話題になっているようです。以下の記事など。

 もちろん、順調な例ばかりではなく、いろいろ問題もあるようです。

 ともかく、当事者が動くことが重要になります。

 以下のブログでも動け、と触れられています。

 ただ、動け、と他人事のように言っても、そう簡単に動けるものではないでしょう。

 ただでさえ忙しいポスドクが、組合活動をしている暇などないかもしれないでしょうし、今の段階では、そういう運動をするだけで、目をつけられる可能性は大きいと思います。

 そのようなリスクを犯す人など、そういません。

 だから、ポスドクを取り巻く人たちがサポートする必要があるのではないかと思います。

 全米科学振興協会(AAAS)は、Science Careersというサイトを持つなど、キャリアに対するサポートを行っています。NatureにはNature jobsがあります。

 ここで、AAASのキャリアサポートに関する取り組みをみてみます

 先に挙げたキャリアサイトだけでなく、非常に多彩なフェローシップを実行してみます。ウェブサイトより。

Career Development Resources

  • ScienceCareers.org
  • ScienceCareers.org: Career Development and Advice
  • How-To Guides: Advice on Job Search; Resume Writing and More
  • GrantsNet: Funding Resources
  • Minority Scientists Network
  • ScienceCareers.org Forum: Ask an Expert

Fellowships & Internships

  • Canon National Parks Science Scholars
  • Center for Science, Technology and Congress Internship
  • Center for Science, Technology and Security Policy Internship
  • ENTRY POINT! Internships for Students with Disabilities
  • Mass Media Science and Engineering Fellowship
  • Merck Undergraduate Science Research Scholars
  • Minority Science Writers Internship
  • Science and Human Rights Internships
  • Science & Technology Policy Fellowships
  • Science News Writing Internship
  • Fellowships for Reporters from Developing Regions

Job Search Assistance

  • Employment at AAAS
  • ScienceCareers.org Jobs

Meetings and Events

  • AAAS Annual Meeting Career Workshops
  • Scientific Meetings Calendar


 AAASは科学者のNPOなのですが、科学アカデミーである(つまり、日本の学術会議と同様の機関である)National Academiesも、キャリアに関する取り組みをしています。

http://nationalacademies.org/careerguides.html
http://www.nationalacademies.org/grantprograms.html

 政策提言なども行っているようです(参考:ポスドク問題:National Academyの提言を参考に)。

 まだ完全に調べきれていませんが、その周囲のサポートが日本に比較して手厚いように思います。決して勝手にポスドクが動け、と言っているわけではないようです。

 というわけで、当事者が動けるようにサポートすることが重要です。

 もちろん日本にも、日本物理学会のように、キャリアに関する取り組みを行っている組織があります。大学単位でも取り組むところが増えてきました。

 ただ、学会単位で個別に取り組むには、学会数は多すぎるし、予算や力の差も大きいでしょう。

 だから、日本学術会議が主導的にやってほしいのです。予算がないからできません、というのではあまりに寂しすぎます。

 それが無理なら、男女共同参画学協会連絡会のように学会が連合するということも視野にいれるべきかもしれません。


 ただ、それはそれとして、別の行動も考えるべきでしょう。


 私たちNPO法人サイエンス・コミュニケーションは、以下のようなことをまず行おうと思います。

 まだ申請段階ですが、サイエンスアゴラ2007で、「本音で語るポスドク問題」という会を開こうと思います。

 許可が出ないとどうしようもないのですが、産学官および当事者の方をお呼びして、関係者が忌憚なく本音で語る場を用意しようと思います。

 問題意識を持った人達が直接会うことが、当事者が動くきっかけとして必要なんじゃないかと思います。

 また、日経BTJジャーナルで連載を持つことになりましたので、その場を活用できればと思います。

 そしてポスドク本を書くことも検討中です。

 今アマゾンでポスドクと検索しても一冊の本も出てきません(本当は英語の書き方の本が出てきますが)。それでは社会に問題を認識してもらうことができません。


 以上のような活動に興味がございましたら、もしくは、もっと突っ込んだ意見が言いたい、議論をしたいという人がいましたら、失敗しない大学院進学ガイド読者SNSにお入りいただけませんか?

 一応本の読者向けSNSではありますが、本自体が理工系のキャリア問題を扱っており、ポスドク問題も当然含まれています。

 加入の仕方はこちらをご覧ください。ご招待させていただきます。

 おそらく個々に問題意識を持った方はいらっしゃると思うのですが、周囲に同じ関心を持った人がいなければ、行動も限られてしまいます。

 今私たちにできることは、そうした孤立した関心のある方が出会う場を用意することなのではないかと思います。

 まだまだ不十分な活動しかできませんが、やれることからやっていこうと思います。

 どうぞよろしく御願いいたします。