科学・政策と社会ニュースクリップ

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注目の総合科学技術会議報告書

 第62回総合科学技術技術会議の中で出された以下の報告書は注目に値する。

科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革について(案)

 いろいろな論点があり、さまざまな報道がなされているが、1点だけ引用する。

?研究者コミュニティにおける理解増進活動の位置付けの向上

理解増進活動を組織的・本格的に展開していくためには、まず、科学技術活動に直接的に関わる研究者コミュニティ自身が、理解増進活動の意義を再認識し、理解増進活動を科学技術活動のシステムの一部として位置付けてこれに取り組むようにすることが重要である。研究活動が科学技術活動の中心であることは言うまでもないが、科学技術振興の政策的な重要性や科学技術と国民生活との関わりはますます高まっており、研究活動を推進し、科学技術を発展させるためには、科学技術に対する国民の理解を得ることが不可欠になっていることを強く認識する必要がある。また、国民の科学技術離れや児童・生徒の学校教育段階における理科離れ、科学技術に関する理解力の低下は、次世代における科学技術離れを加速し、結果として、将来の学術や産業を支えるべき科学技術人材の急速な縮小に直結しかねない問題である。研究者コミュニティとして、このような危機感を持って対応することが重要である。

 このあたりまでは、従来の理解増進運動の説明であり、目新しさはない。

 以下の記述が目を引いた。


また、理解増進活動においては、科学技術のすばらしさ、おもしろさを伝え、子どもたちの興味や学習意欲を喚起することも重要であるが、それだけではなく、科学技術に対する国民の懸念やリスクの側面を含めた科学技術と社会との関わりについて、国民と対話する中で、科学技術のもたらす利便性と現実の課題面についてのバランスの取れた理解や意識を高め、国民自らが科学技術の問題に参画するようにしていくとともに科学的なものの考え方を伝えることが重要である。研究活動に関わる者が、理解増進活動の両面の意義について認識しながら理解増進活動に取り組むことが重要である。また理解増進活動の実施に当たっては、常に受け手の立場に立って科学技術に対する国民の様々な意見を聴きながら双方向的なコミュニケーションを取るとともに、自らの研究活動にフィードバックしていく姿勢を有することが重要である。

 これは私たちが常々言ってきたことで、楽しい科学ばかりではなく、負の側面も含めて議論していこうということを、政府が踏み込んで書いたことを評価したい。

 もちろん「理解増進」という言葉を使いつづけているあたり、やはり上意下達のにおいを感じてしまうが、言葉はともかく、こうしたことを明記したことは大きい。

 私たちの活動も、これを励みにしていきたいと思う。