科学・政策と社会ニュースクリップ

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イノベーション25戦略会議サイトにみる情報発信のあり方

 イノベーション25戦略会議のサイトに、黒川清座長(内閣府特別顧問)が、イノベーションについて連載をしている。

 会議の内容を紹介したり、イノベーションに対するご自身の考え方を表明したりといった日記かブログ風の内容だが、このような公式政府サイトで会長自ら意見を表明していることを評価したい。

 イノベーション25戦略会議の新着情報サイトはRSSフィードを吐き出している。これも新しい試みだ。

 もちろんこの手のことは企業などではとっくにやっているわけで、今となっては新しいわけではない。しかし、他の政府機関に与える影響は大きい。政府機関はRSSをぜひ導入して、情報を得やすくしてほしい。

 第3回イノベーション25戦略会議の資料が公開されているが、その中に、先に行われた産学官連携サミットの際に出た質問、意見が掲載されている

 その中にこんな質問があった。

>>○ 「イノベーション25」の策定に当たり、文科省科学技術政策研究所の「デルファイ調査」は活用されるのか。
CSTPと「イノベーション25」との関係が良く分からない。「イノベーション25」のメンバーは、CSTPや学術会議の会員と重複している。なぜ、CSTP内部で行わないのか。
イノベーション25」と聞いて、基礎研究者で将来を危惧する人がいる。(中小企業)<<

 これは、我々のNPOの仲間でもある立花さんの発言だ。

 3回の会議や産学官連携サミットで、イノベーション25が目指すものがおぼろげながら見えてきた気がする。立花さんの指摘のとおり、デルファイ調査や総合科学技術会議との関係が見えにくいが、デルファイ調査を参考にしながら、総合科学技術会議では議論しにくい中長期目標を、単なる予想にとどまらず、こうありたい、という明確な意思をもって打ち立てるということか。

 背景には、諸外国が数十年をスパンに入れた長期的目標を打ち立てるようになり、日本でも科学技術基本計画の5年のスパンでは見えてこない計画がなければ、諸外国との競争に打ち勝つことができないという危機感があるようだ。

 ただ、まだまだ分かりにくいのは事実だ。

 先の産学官連携サミットでは、高市早苗イノベーション担当大臣が、イノベーションの本質を伝え、市民を巻き込んでいくことが課題だと述べたという。

 私もまだ勉強不足だが、今後も戦略会議の動向を追っていきたいと思う。

 まずは年末が締め切りのパブリックコメントに出すことが必要だろう。

 現在までこんな意見があるそうだ。まだ、驚くようなアイディアは出てないように思う。皆さんもぜひご提出を。

http://www.kantei.go.jp/jp/innovation/dai3/siryou6.pdf


○ 黒川座長の意志を研究者コミュニティー(学術会議に向けてではなく,若手研究者をはじめとする最前線で活躍する現場の研究者の方々)や一般市民を対象に伝える、双方向的な意見交換の場を持つとよいのではないか。


○ 環境問題、格差問題、エネルギー問題などに詳しい「知的ガイド」を養成し、ガイドが互いに知識・知恵を交換することにより、地球環境を維持していく地球市民になれると思う。

○ 総合試験により、真に好成績を収めた者を国籍問わずに国が支援し、学費等を面倒を見る仕組みを設けるべき。

○ 大学の入学試験をなくし、誰もがどこの大学でも自由に学べるようにした上で、卒業するには社会に貢献して実績を上げた者だけに限ることで、大学に入学するためだけの勉強は必要なくなり、本当に社会で必要な勉強ができるのではないか。

○ 大学へ希望者全員を入学させ、奨学金を貸与し、一定の成績に満たない者については強制退学させて奨学金の返済を求める制度を導入すべき。
また、研究においては、申請金額どおりの補助金を貸与のかたちで支給し、研究成果の進捗度に応じて研究補助金の一部または全額の返還を求める制度を導入すべき。

○ 新たな発想を実現しようとする若手研究者に対して、従来の徒弟制度的な古い人事制度を早急に廃止し、公正で透明性の高い、新たな人事制度を別の枠組みとして用意することにより、正当に努力すれば報われる環境を実現することが必要。

○ 現在の大学院は、大学の中でしか通用しない。大学教授に次ぐ助教授のポストを増やし、一人は企業研究者から雇用するなどの改革を行うべき。

○ 特許の請求項の情報を元に、技術的知識情報をDB化することにより、研究開発への応用や教育用ツールの構築に活用すべき。

○ 科学技術基本計画で打ち出された、「ポスドク1万人計画」で大学院生を増やしすぎた結果、就職できず溢れている博士の活用を検討すべき。

○ 博士号取得者が1万人程度(3年任期程度)を主体とする大研究所を政府ファンディングで作り、異なる分野のポストドクの融合イノベーションを図るべき。

○ 学生を早いうちから社会に出すとともに、企業に在席したままの学生を積極的に受け入れ、実業界と学術界の交流を図ることが必要。


○ 国の研究開発投資にあたり、申請時の特許情報や学術論文検索を義務づけし、申請者が行う研究のキーワードのヒット率を、採択の指標に加えて、新規性の高低で採択を検討するシステムを確立することで、重複投資を避けられるのではないか。

○ 一部の大学・研究所・博物館を再編して、リソースと研究を結びつけることが必要。