先にも書いてきたが、私たちの研究テーマは、NPOが科学政策に影響を与えることができるか、ということだ。
繰り返しいろいろな場所に書いてきたことだが、このことを考えるに至った文章が二つある。
ひとつはNatureの2001年の記事「小泉内閣の科学技術政策の基本方針は、基礎研究を失速させると科学者が懸念」だ。
私は以下の記述を読んでショックを受けた。
堀田氏によれば、公開状を提出したのは(日本人の基準からすれば、かなり思い切った行動と言える)科学者の意見を政府に伝える適当な手段がないからだという。多くの科学者が、総合科学技術会議には自分たちの意見が反映されないと不満を訴えている。会議の主なメンバーは閣僚や産業界の代表者で、学界代表が3人では影響力は限られていると科学者たちは言う。
堀田凱樹氏といえば、ハエの発生の分野では著名な研究者だ。その堀田氏をして、「意見を適当に伝える手段がない」とはいったいどういうことなのか…しばし考えさせられた。
そんな折、科学技術白書にある以下の記述に目が止まった。
我が国においても、科学技術にかかわる活動を行うNPOやNGOがその活動を活発化し国民生活に密着した科学技術活動を行っていくことによって、科学技術に対する国民の意見の集約を図り、科学技術行政における意思決定に対してそのような意見を反映させていくことが期待される。(平成12年度科学技術白書 第4節 国民の手にある科学技術より)
この二つの記述に刺激を受け、今まで活動してきたわけだが、具体的にどのような方法で科学技術政策に意見を反映させるのか、見えてこないのが現状だ。
すこしづつ方法を探っていて、既に一度政策勉強会を内輪で開催した。
今後は、若手研究者団体のコンソーシアムを作り、このコンソーシアムをもとに、若手官僚や議員を交えた勉強会、懇談会などをやってみたい。
あと、NPOに関する調査も行う予定だ。
科学に関するNPOの調査報告としては、2001年に科学技術政策研が出した「科学技術と NPO の関係についての調査 」があるが、それ以降はあまり調べられていないようだ。
また、市民科学研究室 の上田昌文さんが「科学技術社会論研究第2号 知の責任 」に書かれた「市民による学習,研究調査,運動の重層的な実践からみえるもの ―市民科学研究室の取り組みを例にして」が貴重な資料だ。
私たちも独自の調査をつうじて、日本の科学NPOが政策に関与できる可能性があるのか、検討していきたい。