科学・政策と社会ニュースクリップ

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クローディンの物語

 12月に52歳で膵臓がんで亡くなった京大の月田承一郎先生の遺作。

小さな小さなクローディン発見物語―若い研究者へ遺すメッセージ

 現役研究者がつい最近までの研究を振り返るという稀有な本。研究と同時に、人生も振り返っている。灘高のころの話とか、東大理3に入って勉強しすぎた話とか。なんといっても人との出会いがよく描かれている。現役の人なので、知った名前がぽんぽん出てくる。

 現役研究者はこういう感じで近い過去から現在の研究を語ってほしいよなあ。死ぬか引退しないとこういう本って出てこないのかなあ。悲しいなあ。

「あと十五年くらい、これらの方々、また、少しでも日本の科学界に恩返しをしようと思っていたのですが、それも叶いません。無念です。大変申し訳なく思っています。」

 死を覚悟し無念さが漂う言葉が悲痛だ。

 正直言って、月田先生自身がこの本で書かれているように、月田先生は天才じゃなかった。たとえ灘から東大理3に行った秀才だったとしても、ノーベル賞はまず取れないだろう。

 けれど、多くの研究者の目指すレベルは、ここなんじゃないのかと思う。決して大発見ではないけれど、自分の仕事という結果を残したのだから。金メダルは取れないけれど、コンスタントに入賞し続けるような感じかな。

 さぞ無念だったことだろう。合掌。