科学・政策と社会ニュースクリップ

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文部科学省VS財務省 数値目標のゆくえ

 第3期基本計画に数値目標をいれるか否かで、裏でいろいろな動きがあったようだ。 以下昨日発行のメールマガジンから。

●第3期基本計画 投資目標設定へ 小泉総理が前向き発言 総合科学技術会議
2005/12/02 科学新聞

▼小泉総理のしめくくり発言で、数値目標の決定プロセスが明確になったことから、21日の専門調査会開催前にも両大臣での折衝が行われ、結論が出てくる可能性が出てきた。

●科学技術予算増額に「黄信号」 数値目標、財務相が反対
http://www.asahi.com/science/news/TKY200511280354.html

▼上記の記事と正反対の内容。

 大蔵省〜財務省は以前より基本計画の数値目標には反対していたようだ。先に加藤紘一氏の著書

●新しき日本のかたち
加藤 紘一 (著) 価格: ¥1,680 (税込) 出版社: ダイヤモンド社 ; ISBN:
4478180431 ; (2005/11/18)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478180431/nposciencecom-22/

を紹介したが、その中で、

 大蔵省は、「数字を入れられたらたまらない」と言ってきた。幹事長だった私のところに「どうしても尾身さんを押しとどめてくれ」「党でつぶしてくれ」という依頼があったのだ。
 だが、私は何としても尾身氏の考えを実現したかった。「いや、それは正しいこと。応援するつもりだ」というと、大蔵幹部は肩を落として帰っていった。

という記述がある(P188)。10年前の再来ということか。最近でも中川主計官が科学新聞に登場して、科学政策に厳しい注文をつけていたが、それもその流れとも考えられる。

今後の科学技術予算
財務省主計局主計官(文部科学省担当)中川真氏に聞く
http://www.sci-news.co.jp/news/200509/170902.htm#5

 5号館のつぶやき経由で知ったが、財務省の科学技術予算に関する見解は、

平成18年度予算の編成等に関する建議
平成17年11月21日
財政制度等審議会
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/tosin/zaiseia171121/zaiseia171121.htm

に書かれている。

(2)科学技術予算
 「6月建議」でも述べたとおり、近年の厳しい財政事情の中でも科学技術予算が拡充されてきた結果、我が国の政府研究開発投資は、既に対GDP比で欧米主要国に遜色のない水準に達してきており、政府と民間を合わせた研究費総額の対GDP比は、主要国中で群を抜いた水準にある。今後は、官民連携の推進などにより、政府研究開発投資の質的向上を図ることが必要である。
 こうした状況を踏まえれば、第3期科学技術基本計画の検討を進めている総合科学技術会議においては、従来のような官に量的な規模の拡大を求めるという発想を排し、国民に対する説明責任の強化と科学技術投資の重点化に積極的に取り組むことが不可欠である。すなわち、これまでの政府研究開発投資の結果を十分に検証した上で、国民に対してもたらされる成果に着目した目標設定と評価の仕組みを確立するとともに、官民の連携強化の観点と重点化対象領域の一層の絞込みにより、投資効果を最大限に発揮させることが必要である。また、こうした問題意識の下では、官だけに着目したこれまでのような研究開発投資の投入目標を設定すべきでないことは、いうまでもない。
 平成18年度予算においても、このような考え方に立って、科学技術予算といえども聖域扱いすることなく、経費の大胆な選択と集中を推進し、一層の質的向上を図る必要がある。
 なお、研究資金の配分に当たっては、特定研究者への過度の研究資金の集中の排除や、適切な「目利き」が実現するような審査体制の確立等により、研究資金を最大限に有効活用することが求められている。

●第50回総合科学技術会議議事要旨
http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/giji/giji-si50.htm

 によると、各出席議員が数値目標を訴える中、谷垣財務大臣

 科学技術予算が将来の投資であるということは、私も全くそう思っている。ただ、それを総額目標という形で拡充していこうということになると、ほかの分野は投資目標から成果目標というのに大きく移ってきている中で、いわゆる聖域なき改革、あるいは徹底的な歳出改革を図っていくという政府全体の姿勢と矛盾が出てくるんじゃないかという感じがして、私は慎重な検討が必要であると思っている。

と述べている。

 で、小泉総理がどう語ったかというのが、以下に出ている。

議長(内閣総理大臣)しめくくり発言
科学技術の重要性は皆さん御指摘のとおりであります。予算は削減の一方ですが科学技術は数少ない重点的に増やしていかなければならない予算です。今までSABCで努力していただきましたが、みんな増やすばかりの要求ですけれども、減らすべきは減らす、増やすべきは増やす、更に今の皆さん方の御意見を集約して、財務大臣とよく折衝していただいて、大事なところを伸ばしてください。明日への投資ですから。

 科学新聞のいうように、小泉総理が数値目標に積極的なのか、それとも朝日新聞が言うように、数値目標が危うくなったのか、なかなかに分かりにくいが、どうやら科学新聞のほうが正しいらしい。

 例の「加藤の乱」のときに、涙ぐむ加藤氏をなだめていたのが谷垣氏である。その谷垣氏が加藤氏が導入した基本計画の数値案に反対している。裏に何かがあるのだろうか。

 今回の総選挙後に加藤氏は派閥を離脱して、旧加藤派(小里派)が谷垣派に(事実上)なったわけだが、そのあたりは加藤氏の戦略も見え隠れするという。

http://plaza.rakuten.co.jp/kingofartscentre/diary/200509250000/

 科学技術予算は政治的な思惑もはらんでいるのかも知れない。

 いずれにせよ、貴重な国民の税金を使う科学技術政策である。今後の動向に注目していきたい。