科学・政策と社会ニュースクリップ

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ポスドク問題のゆくえ

このブログと旧ブログ
http://blog.melma.com/00106623/
とで、アクセス数が数日で1000も違ってしまった。多分キーワードの検索でひっかかるので、あちらのブログのほうがアクセス数が多いと考えられる。

皆様、あちらのブログは11月30日に、melma!blogが消滅するのにしたがってなくなります。もし定期的にごらん下さる方がいらっしゃいましたら、ブックマーク等の変更をよろしくお願いいたします。


 さて本題。

 理系白書第三部がはじまった。

理系白書’05:第3部 流動化の時代/1 漂う“ポスドク”1万人
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/rikei/news/20051102ddm016070133000c.html

 関連情報として

●博士研究員:就職支援に5億円 文科、経産省が来年度から
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/news/20051102k0000m040164000c.html

●発信箱:足の裏の飯粒=元村有希子
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/hassinbako/news/20051102ddm002070008000c.html

 理系白書の取材班の方々が本気になってポスドク問題を取り上げようとしている。私はこの試みを全面的に応援したい。


 もちろんさまざまな声があるのは承知している。理系白書の記事でも触れているように、自己責任という声は大きいし、5億円で何をやるんだ、何ができるんだ、という話も出ている。

 けれど、斜に構えて、評論家のようにあれやこれやと言うだけでは変わらない。



 何度も述べてきたが、この問題は、個人だけの問題でも、政府だけの問題でもない。その中間に本質がある。

 後先のことを考えず、今使える安い労働力としてポスドクをとらえている現状を是とすることはできない。また、博士を持った人間を有効活用できないのは、社会にとって損失だ。

 一方で、あえてその道に飛び込んだ人たちの意思は最大限尊重しなければならないし、いやだというものを無理やり別の道に送ることはできない。

 だから、求めるならば再チャレンジのチャンスを与えるようにする、というのが、ポスドク問題の対策、あるいは5億円の使い道としては妥当なのではないか。

 記事ではジョブマッチング的なモデルが例として挙げられている。ジョブマッチングは今までもあったのではないか、という声もあるが、中小企業とポスドクを結びつける大規模はものはまだないように感じている。だから、まったく意味ないというわけではないし、いろいろなジョブマッチングがあってもいいだろう。

 一方で、5億円はあくまで競争的資金なので、ジョブマッチング以外の事業を提案してもよいはずである。産業界とのジョブマッチングが問題だと思うなら、どんな事業ならよいのか、考えてみよう。

 たとえば、産学連携的ジョブマッチングではなく、社学連携、つまり産業界以外のさまざまな職種とのマッチングも考えてもいい。キャリアの転換という人生の節目に、自分がどのような職につけばよいのか、アドバイスする機関を設けるという方法もある。

 また、多彩なメンター、先駆者を紹介して、こんな道もあるという例を示すという方法もある。



 今回の理系白書は賛否両論いろいろな議論を巻き起こすだろう。それはよいことだと思う。ただ、「自己責任」「どうせやったって無駄」「意味ない」「金の無駄遣い」「机上の空論」と批判するのは容易いが、それでは今までの議論となんら変わらない。

 ポスドク自身や当事者予備軍の大学院生、大学の教員や私たちのようなNPO、市民も含めて、一方的な非難合戦や個人的体験の披露だけでなく、何が問題でどうすればよいのか、という建設的な議論が高まることを期待したいし、私たちも、批判を超えて提案をするということを心がけていきたい。