科学・政策と社会ニュースクリップ

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補正予算見直し、本物の若手に配れ

 メールマガジンに以下の文章を書きました。

補正予算見直し、本物の若手に配れ】深島守
 補正予算の見直しは、いまだ全容がわかない状況で、研究者、大学院生の間で不安が広がっている。

 そんな中、こんなニュースが入ってきた。

最先端研究プログラム700億円減額、配分先追加公募
http://scienceportal.jp/news/daily/0910/0910092.html

 記事によれば、最先端研究プログラム2700億円のうち、700億円を減額、その上ですでに選定された30人に1000億円、新たに募集する分に1000億円を配分するという。

 1000億円は若手、女性研究者を中心に配分されるという。

 私たちも以前より、額は低くてもいいから、若手を中心とした研究者に配分してほしいと考えてきた。そういう意味で、若手に配分するという方針は賛成する。

 ただ、単純に若手に配って効果があるかというと、そうとも言い切れない。

 若手と言っても、大きな研究グループの一員として研究している場合は、そのグループの方針に従わざるを得ない。上納とまではいかないが、使い道が限定される可能性がある。それでは、名目上は若手に配っても、そのボスの研究者に配分したものと同じことになってしまう。

 だから、もし若手に配るのならば、上司のいない独立した研究者に配分してほしい。

 もしくは、兼ねてから述べているように、独立とセットにして配分したらよいと思う。

 なぜ若手にこだわるかといえば、たとえばノーベル賞の受賞研究年齢の分布などを見れば、創造的な研究をする年齢が30代に集中しているからだ。

http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa200701/014.htm

 もちろん単純に年齢で切るのではなく、研究歴も考慮に入れるべきだが、いずれにせよ、創造性の高い時期に、他の研究者に干渉されるのではなく、独自に研究してもらう道を作るべきだ。

 JSTのさきがけなどがモデルになるだろう。
http://www.jst.go.jp/kisoken/presto/

 さきがけをさらに発展させて、たとえばプレハブ建てでもいいので、常時研究者が集う貸しラボのようなものを用意し、真に独立をうながすのも面白い。科学飯場とでもいうべきか。

 独立して研究した経験を持てば、研究以外の分野に進出しても、マネジメント能力の高い人材が生まれる可能性がある。

 民主党政権は、あまり科学技術政策に精通した人材がいないような印象を受ける。理系政権というが、実際は工学系中心であり、政権内に科学技術を専門にした人は少ない。

 それゆえ、繰り返しになるが、科学コミュニティが積極的に政権に提案をすることが求められている。そう考えると、「科学者の国会」日本学術会議が一切政権に対し発言をしないのが気になる。

 東大前学長の小宮山宏氏が、政権に入るというニュースも伝わってきている。

小宮山宏・前東大総長「国家戦略室」政策参与就任か
http://scienceportal.jp/news/daily/0910/0910091.html

 真に研究成果を生み出す科学技術政策が生まれるのか、正念場と言える。みなさんも関心を持ち続けてほしい。