科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

マニフェスト比較を試みました

 参院選がいよいよはじまります。

 NPO法人サイエンス・コミュニケーションでは、過去2回の選挙において、科学技術政策に関するマニフェスト比較を試みてきました。

2003年総選挙マニフェスト評価集
2005年総選挙マニフェスト評価集

 今回の参院選においても、科学技術政策及び関連政策について比較を試みようと考えています。

 まずは各党の政策を分割してみました。

 間違いや問題点等ありましたら御連絡ください。

以下各党マニフェストへのリンク集
自民党
民主党(7月15日にリンクを変更しました)
公明党
日本共産党
社会民主党
国民新党

15、新たな脅威や多様な緊急事態への対処能力の強化
弾道ミサイル防衛システムの配備を進め、大規模なテロ・ゲリラへの対策、NBC(核、生物・化学)兵器及びサイバー攻撃対策を強化する。

16、技術開発と共同研究の抜本的な改革
防衛技術・生産基盤の維持・強化を行い、わが国の技術レベルの向上に努める。

91、科学技術による地域製造産業再生や地域活性化
  地域産業の再生に資するナノテクノロジー・材料分野などの研究開発を進めるとともに、地域クラスターの形成など地域における科学技術を振興することにより、地域イノベーションを強化し、活力ある地域づくりに貢献する。

98、沖縄振興と沖縄科学技術大学院大学構想の実現
沖縄経済の自立を目指し、産業・科学技術の振興、雇用の創出、情報通信産業の集積、社会資本の整備等に取組み、また、沖縄科学技術大学院大学構想を着実に推進し、世界最高水準の教育・研究を実施する。

イノベーション推進のために>
103、「科学技術創造立国」による国際競争力の強化
  イノベーションの創出を通じてわが国の競争力のより一層の強化を図るため、25兆円の政府研究開発投資を掲げた第3期科学技術基本計画や「イノベーション25」に基づき、科学技術への投資を充実する。

104、基礎科学・基礎研究の振興と国家基幹技術の開発
  研究者の自由で独創的な発想に基づく基礎科学・基礎研究や、重点目標を戦略的に設定した基礎研究を進めることにより、イノベーションの創出につなげる。
H-?Aロケットをはじめとする宇宙輸送システム、世界最高性能の次世代スーパーコンピューター、海洋地球観測探査システム等の研究開発を進め、国家基幹技術の開発を推進する。

105、世界をリードするイノベーション創出人材の育成
  理数好きな子どもの裾野を拡大し、伸びる子をさらに伸ばす理数教育の充実、若手・女性研究者が活躍できる環境の整備等を進めることにより、イノベーション創出を担う人材を育成する。

106、科学技術による環境問題の克服と経済成長の両立
  科学技術と原子力の研究開発を同時に進め、環境・エネルギー問題の克服を目指す。独創的・先端的な基礎研究の充実や、ライフサイエンス、情報通信、ナノテクノロジー・材料等の研究開発を戦略的に進める。

107、地理空間情報を高度に活用する社会
地理空間情報活用推進基本法の成立を受けて、国民生活に深く浸透している衛星測位と地理情報システムの政策連携を強化し、国土空間データ基盤(NSDI)の形成を産学官一体となって推進する。また、登記所備付地図の整備事業を強力に推進する。

108、宇宙基本法の制定と宇宙産業の育成
宇宙基本法(仮称)を制定し、宇宙戦略本部を設置することにより、宇宙開発に関する施策を総合的かつ計画的に推進する。これにより、宇宙の利用・産業化を積極的に進め、国際競争力のある宇宙産業の育成に努める。

114、世界トップクラスのコンテンツ産業の育成、感性価値創造の推進
日本文化を発信するコンテンツ産業の振興を加速的に進める。また、映画、アニメ、ゲーム、音楽、マンガ等の「日本発ポップカルチャー」をさらに進展させるため、わが党独自の基本戦略を本年度中に取りまとめる。さらに、日本人の繊細で創造的な感性を活かし、作り手と使い手が共創するものづくりやサービス活動を推進する。

115、知的財産戦略の展開
民間活力の活用、外国特許庁との協力推進等により、2013年までに世界最高水準の迅速かつ効率的な特許審査を実現する。また、ひとつの発明が世界中で円滑に特許保護される「世界特許」の実現に向けて、「特許審査ハイウェイ」の拡大、特許制度の国際的な調和を目的とした「実体特許法条約」の実現に取り組むとともに、模倣品・海賊版の拡散を防止するため、「模倣品・海賊版拡散防止条約」の早期実現を目指す。

116、ものづくり産業の競争力強化
 ロボット・新世代自動車・航空機・宇宙衛星などの新しいものづくり産業の創造を図るとともに、国内の立地環境整備や技術の適切な管理・強化を推進する。
 「環境・省エネ」技術との組み合わせで、燃費性能等を抜本的に向上させた次世代環境航空機の開発・導入、バイオの自動車燃料や化学製品の開発・普及、省エネ・CO2削減を実現する新しい素材製造技術の確立、街づくりと一体となった新世代自動車社会の構築など環境技術のイノベーションを推進する。
 子どもの安全・安心な生活環境の創出を目指したキッズデザインの推進等を通じて、国民一人ひとりに安全で安心なものづくりを促進する。

118、医薬品・医療機器産業、健康関連産業の育成
 海外の承認薬・医療機器が国内で未承認という、わが国の治験や審査承認の迅速化に努める。
 新しい技術開発に取り組む創薬ベンチャー企業の育成や、日本の優れた基礎研究を実用化につなげる橋渡し研究を重点的に支援する。これにより、革新的な新薬・医療機器が迅速に実用化され、日本国民が世界で最先端の医療を受けられるような環境を作る。
 個人の健康状態を生涯を通じて把握・活用できる情報基盤の整備や、個人・地域・企業が健康増進に積極的に取り組むためのインセンティブ付与などを通じて、科学的根拠に基づいて確実に効果を産み出す健康関連産業の育成や予防を重視した健康づくりを進める。

124、情報通信産業(ICT産業)の国際競争力強化
情報通信産業の国際競争力強化のため、世界初のICTサービスを開発・実証できる特区を創設する(「ユビキタス特区」の創設)。日本の技術が国際標準となり、世界経済でイニシアティブをとるべく技術の開発、標準化、人材育成、ベンチャー支援など、産・学・官一体の総合的な支援策を展開する。

125、ICTを活用した生産性の向上
企業や業種を超えた情報共有の仕組みの構築を支援し、製品安全、環境、化学物質管理など、様々
な社会的課題への対応も可能とするために、2010年度までに、国際的な標準と調和した電子商取引電子タグ利用の共通基盤を利用可能とする。

126、情報通信(ICT)による住みやすい社会の建設
少子高齢化社会での生産性向上の方策として、地域の特産品の生産・受注・販売を、簡単なパソコンとネットワークで繋ぎ地域経済の活性化を図る等、産業、福祉、教育、交通等、生活に密着した分野において、ICT技術を利活用し課題解決を目指す「ユビキタス・コミュニティ構想」等を推進する。ICT基盤整備等の支援策を講じ、いつでも、どこでも、何でも、誰でもICTの恩恵を実感できる社会の構築を目指す。

■「経済成長戦略大綱」の核心であるイノベーションを創出するため、産学官の連携強化による研究
開発投資や人材育成など総合的・一体的な推進を図ります。イノベーションへの民間投資の加速(研究開発、「人財」、IT)などを図ります。また、環境、バイオ、情報通信、ナノテクなどの重点戦略分野への重点投資を行います。特に、ロボット、燃料電池、次世代環境航空機、宇宙利用など、近い将来に実用化が見込まれ人々の暮らしをより良くすることが期待できる研究開発に対して、大規模かつ先行的に集中投資します。

2. 起業を支える国づくり

ベンチャー企業の立ち上げを容易にすると同時に、中小企業等の技術開発を促進する制度を導入し
ます(日本版SBIR制度の改善やSTTR制度の導入*)。資金不足が顕著な研究開発型ベンチャーを支援するため、エンジェル税制**を見直します。ベンチャー企業の株式購入時に投資額の一定割合を税額控除できる制度の導入や、エンジェルネットワークの設立・運営を支援します。また大企業からのスピンアウト(リストラをきっかけとした開業等)に対して「特別融資枠」を設定することを含め、総合的な起業支援策を講じます。これらの施策を通じ、「100万社起業」を達成します。

融資の際に、不動産担保・人的保証に過度に依存することのない資金調達体制の整備、安定的な資金供給を受けられる多様な資金チャンネルを創設するとともに、政府系金融機関については個人保証を撤廃します。また、「地域金融円滑化法」を制定し、金融機関の地域への寄与度や中小企業に対する融資条件、融資状況などを情報公開するルールを制定します。􀀀
   *日本版SBIR制度/STTR制度=いず
    れも中小ハイテク・ベンチャー企業への
    補助金制度。
  **個人投資家ベンチャー企業に投資
    する際の優遇税制。

【15】科学・技術
科学、技術の調和のとれた振興と、大学・研究機関の充実・発展をはかります

 科学、技術は、その多面的な発展をうながす見地から、研究の自由を保障し、長期的視野からのつりあいのとれた振興をはかってこそ、社会の進歩に貢献できます。とりわけ、基礎研究は、ただちに経済的価値を生まなくとも、科学、技術の全体が発展する土台であり、国の十分な支援が必要です。

 ところが、自民・公明政権による科学技術政策は、大企業が求める技術開発につながる分野に重点投資し、それ以外の分野、とりわけ基礎科学への支援を弱めてきました。そのため、少なくない分野で学問の継承さえ危ぶまれる事態がうまれています。大学や公的研究機関では、独立行政法人化によって、財政ひっ迫から基盤的な研究費が底をつき、大学間格差もいっそう拡大しています。多くの研究者が、研究費獲得のための業績競争にかりたてられ、自由な、腰をすえた研究にとりくむことが困難になっています。

 安倍内閣の「イノベーション戦略」は、研究現場の深刻な現状を打開するどころか、こうした方向をいっそう強めるものです。大企業の競争力を強めるための新技術にむすびつく研究に競争的資金(評価によって配分する研究費)を倍増するなど、経済効率一辺倒の「大学改革」をはかろうとしています。とりわけ、国立大学の教職員数に応じて配分されている運営費交付金を、競争的資金に変える検討がされていることは重大です。これが具体化されれば、文科省財務省の試算でも6割近い国立大学で運営費交付金が半分以下に減額されるなど、多くの大学で教育研究の基盤が崩れてしまい、財政力の弱い中小の国立大学は消滅しかねません。新しい産業拠点をつくるために大学の大規模な再編統合がくわだてられていることとあわせ、国民にとって重大な問題です。

 日本共産党は、安倍内閣の経済効率優先の科学技術政策を転換し、科学、技術の多面的な発展をうながすための振興と、大学・研究機関の充実・発展のために力をつくします。

1、基礎研究を重視し、科学、技術の調和のとれた発展をはかる総合的な振興計画を確立します
 人文・社会科学の役割を重視するとともに、欧米に比べても弱い国の基礎研究支援を抜本的に強めます。研究の自由と、安定した雇用を保障する制度を確立するなど、研究者の地位を向上させ、権利を保障します。

 技術開発への国の支援は、「公開、自主、民主」の原則にたっておこなうとともに、大企業優遇ではなく、平和と福祉、安全、環境保全、地域振興など、ひろく国民の利益のためになされるべきです。憲法の平和原則に反する科学、技術の軍事利用に反対します。

 科学技術基本計画を政府がトップダウンで策定するやり方をあらため、日本学術会議をはじめひろく学術団体の意見を尊重して、科学、技術の調和のとれた発展をはかる総合的な振興計画を確立します。

5、産学連携の健全な発展をうながします
 産業と学術が連携し、協力しあうことは、互いの発展にとって有益なことです。同時に、大企業の利潤追求に大学が追随するような連携では、大学本来の役割が弱められ、研究成果の秘匿や企業との癒着がうまれるなど、学術の発展にふさわしくない弊害を招きます。

 産学連携の健全な発展を、以下の方向でうながします。

 (1)国からの一方的な産学連携のおしつけでなく、大学の自主性を尊重し、基礎研究や教育など大学の本来の役割が犠牲にされないようにする。(2)企業との共同研究の際、学会などでの研究成果の公開が保障され、だれでもひろく使えるようにする。(3)企業から受け入れた資金は、大学の責任で管理、配分することを原則とし、研究者と企業との金銭上の癒着をつくらない。(4)産学連携を推進する国の事業(共同研究への補助など)は、地域や地場産業の振興にも力を入れ、中小企業の技術力向上への支援を拡充する。

6、国際競争力に富む個性豊かな高等教育の展開
国公私立大学の競争的な環境を整備し、世界的に魅力ある大学院教育や海外有力大学との連携など各大学の改革を支援する。産学や大学間の連携を推進し、大学・高等専門学校を「地域の知の拠点」とする。

7、特色ある私学教育の振興
独自の建学の精神に基づく特色ある教育を展開している私立学校の一層の振興を図り、私学助成の充実に努める。また、多様な教育を展開する専修学校各種学校の振興を図る。

98、沖縄振興と沖縄科学技術大学院大学構想の実現
沖縄経済の自立を目指し、産業・科学技術の振興、雇用の創出、情報通信産業の集積、社会資本の整備等に取組み、また、沖縄科学技術大学院大学構想を着実に推進し、世界最高水準の教育・研究を実施する。

105、世界をリードするイノベーション創出人材の育成
  理数好きな子どもの裾野を拡大し、伸びる子をさらに伸ばす理数教育の充実、若手・女性研究者が活躍できる環境の整備等を進めることにより、イノベーション創出を担う人材を育成する。

(3)学生全員に奨学金を貸与
■有利子奨学金の月額貸与限度額を10万円から12万円に引き上げます。また奨学金返還時には、返還額の利子相当額を税額控除できる制度を創設します。
■現在の奨学金制度について、各大学ごとの採用枠を撤廃し、1次募集の段階ですべての学生に奨学金が貸与できるようにします。
■海外留学を希望する学生への奨学金について、派遣1万人計画等を策定し、抜本的に拡充します。

14. 高校・高等教育の無償化
高等学校は、希望者全入とし、無償化します。
すべての人が、生まれた環境に関わりなく、意欲と能力に応じて高等教育(大学・大学院等)を受けられるよう、国際人権規約に基づき、高等教育の無償化を漸進的に導入し、奨学金制度など
関連諸制度を抜本的に拡充します。
􀀀
15. 希望者全員が生活費も含めて借りられる奨学金制度の創設

大学、大学院等の学生を対象として、希望者全員が、最低限の生活費を含めて貸与を受けられる奨学金制度(借り入れ限度額を年間300万円と想定)を創設します。このことにより、親の仕送りがゼロでも、誰もが大学等で学ぶことができ、さらにいったん社会人となっても意欲があれば大学等で学び直すことができます。また、子どもの教育費負担を抱える40歳代から50歳代の保護者の可処分所得が大幅に増え、消費に回ることから、景気の拡大も期待されます。

2、大学の基盤的経費を充実し、大学間格差をただします
 わが国の大学・大学院は、学術の中心を担い、地域の教育、文化、産業の基盤をささえる役割をはたしています。大学改革への国の支援は、こうした大学の役割にふさわしいものであるべきです。

 国立大学法人独立行政法人研究機関への運営費交付金は、毎年1%削減する方式を廃止し、基盤的経費を十分に保障するように充実します。政府が検討している競争的資金化を中止し、財政力の弱い中小の大学に厚く配分するなど、大学間格差を是正する調整機能をもった算定ルールに改めます。また、大学の地域貢献をきめ細かく支援するとともに、国による一方的な再編・統合に反対します。

 高等教育における私立大学の役割を重視し、経常費の2分の1助成を実現するための年次計画を確立します。定員割れした大学への助成金を削減するペナルティをやめ、定員確保の努力を支援する緊急助成をおこなうなど、私立大学の二極化の是正をめざします。大学の設置審査を厳格な基準でおこなうとともに、まともな教育条件を保障できない株式会社立大学の制度は廃止を検討します。

 学費の漸進的無償化を求めた国際人権A規約13条2項B、Cの留保を撤回し、学費の引き下げと、私立大学生への学費助成や私立大学の学費減免への特別助成をはかります。欧米諸国の半分にすぎない高等教育への公費負担(GDP比0・5%)を大幅に引き上げます。

3、大学・研究機関の国家統制を強める独立行政法人制度と大学間競争を見直します
 独立行政法人制度を根本的に見直し、国が各大学・研究機関の目標を定め、その達成度を評価し、組織を再編するなど、大学・研究機関の国家統制を強めるしくみを廃止して、大学・研究機関の自主性を尊重した制度に改めます。

 トップ30の大学院に数億円の資金を投入する「21世紀COE」など、大学・大学院を単位に国が交付する競争的資金は、国の財政誘導による大学間競争を強めるものであり、大学の自主性を尊重するものへ切り替えます。大学、学術関係者などからなる独立した機関を確立し、配分計画を決めるようにします。

4、業績至上主義をやめ、競争的研究費の民主的改革と研究不正の根絶をはかります
 個々の研究者に対して交付される各種の競争的研究費については、科学研究費補助金の採択率を高めるとともに、次の方向で改革します。(1)特定分野や旧帝大系大学に集中するのでなく幅広く大学・研究機関の研究者に配分する。(2)業績至上主義の審査ではなく、研究計画も十分考慮した審査に改める。(3)そのためにも日本学術会議と連携した専門家による十分な審査体制を確立し、審査内容を公開する。

 研究における不正行為は、科学への社会の信頼を裏切る行為であり、根絶しなければなりません。不正の温床となっている業績至上主義の競争を是正するとともに、大学における外部資金の管理を厳格におこない、科学者としての倫理規範を確立し、研究機関や学術団体が不正防止への自律的機能を強めるよう支援します。

6、大学院生、ポストドクターなど若手研究者への支援を抜本的に強めます
 自民・公明政権が、大学院生を急増させる一方で、大学や研究機関の増員を抑制・削減したために、大学院生やオーバードクター(大学院博士課程を修了しても定職につけない研究者)、ポストドクター(博士号取得後の任期付研究奨励制度をうけている人、略してポスドク)の就職難が深刻化し、「高学歴難民」といわれる人々が急増しています。

 この解決のためにも、大学や研究機関での教員・研究員の増員をはかり、研究者の非正規雇用の拡大を抑えます。オーバードクターへの研究奨励制度の拡充、ポスドクの社会的地位向上、テニュア・トラック制(ポスドク終了後に研究職が保障される制度)の導入を促進します。

 日本共産党は政府に働きかけて、独立行政法人研究所のポスドクの公務員宿舎への入居に道を開きました。非常勤講師の処遇を改善するため、「同一労働同一賃金」の原則の順守や均等待遇にもとづく賃金の引き上げ、社会保険加入の拡大、不当な解雇を許さず安定した雇用を保障することなどをすすめます。

 大学院修了者が産業界も含め広い分野で活躍できるよう大学院教育を充実させるとともに、民間企業が博士号取得者を積極的に採用するような支援策をすすめます。大学院生が経済的理由で研究を断念しなくてすむよう、無利子奨学金の拡充と返還免除枠の拡大、給費制奨学金の導入を実現します。

 女性研究者への昇進差別やセクハラをなくし、出産・育児における休職・復帰支援策の拡充、大学内保育施設の充実など研究者としての能力を十分に発揮できる環境をつくります。大学院生の出産・育児のための休学保障と奨学金制度をつくります。

【19】子ども・子育て
安心して子育てできる社会環境をつくり、経済的保障の充実をはかります

教育費、学費の父母負担の軽減、奨学金制度の拡充をはかります
 「私立の幼稚園の入園料、教育費、高すぎます」「家計が苦しく泣く泣く高校中退」など教育費負担は深刻です。私学助成の拡充をすすめ、私費負担の軽減をはかります。修学旅行費や給食費などの父母負担の軽減措置をとります。削減された就学援助の国庫負担を復活し、実態に見合った拡充をはかるなど、抜本的に増額します。家計急変などの場合の授業料免除や教育資金の無利子貸し付けなどの制度を拡充します。高校や大学、専門学校の学費の値上げを抑えます。無利子奨学金の拡大、返還義務なしの給付制の導入など、奨学金制度の充実をはかります。

【22】若い世代
若い世代が人間らしく働き成長できる社会をめざします
学費負担を軽減し、奨学金制度を拡充します
 高すぎる学費が、学生や父母、子どもたちに重くのしかかっています。貧困と格差が家計をおびやかすなか、誰もがお金の心配なく学び成長できるよう対策が急がれます。

 日本では、初年度納付金が、私立大学で平均130万円、国公立大学で80万円をこえ、国際的にも異常な高さです。ところが政府は、高等教育予算をへらし、学費値上げへの圧力を強めています。この間、学生や大学人らの声と運動が広がり、国立大学では数十年ぶりに学費が値上げされませんでした。学ぶ権利が保障されるよう、いっそう力をつくします。

 高等教育の学費無償化をかかげる国際人権規約の条項は150カ国以上が批准し、OECD諸国の半数は授業料がタダです。日本もこの条項の留保を撤回し、学費負担を軽減します。欧米の半分程度の高等教育予算を大幅にふやし、私立大学では私学助成増額を通じた学費値下げと学費直接助成制度の導入をはかり、国立大学では学費標準額を値下げします。専門学校の職業教育ではたす役割を重視し、学生の経済負担軽減をはかります。

 無利子奨学金枠を拡充し、給付制奨学金を導入します。私立大学での学費減免への助成や国立大学での学費減免制度を拡充します。学生寮を、寮生負担をふやさず拡充します。入学料支払い猶予や融資制度を拡充します。

【教育予算の拡充】
先進国並みの教育費を確保するとともに、教員数を大幅に増やし、きめ細かな学校教育を展開する。
所得に応じた奨学金制度の拡充を図るとともに、学力やスポーツに秀でた青少年・学生に支給する奨学金制度を創設する。
障害者・児が保護者および本人の希望で一般の学校・大学で学べるよう、施設・人員の整備を図り、自立支援を強化する。
子育て支援を先行投資に位置づけ、児童手当の大幅な引き上げおよび支給期間の延長を図る。

50、3Rを通じた持続可能な資源循環
「もったいない」の精神を活かし、「3R」(リデュース、リユース、リサイクル)の取組みを、レジ袋削減をはじめとして、国民運動として展開する。
 新たな循環型社会基本計画の策定、各種リサイクル法の強化等を進め、バイオマスと廃棄物エネルギーの利用を徹底するとともに製品のライフサイクル全体における環境負荷の最小化を推進し、循環型社会の構築を加速する。

<エネルギーや水、食料を確保するために>
129、暮らしの安全を支えるエネルギー・水・食料の戦略的確保
  エネルギー・水・食料は、暮らしの安全・安心を支える大切な資源であり、地球全体の環境保全の観点も考慮しつつ、戦略的に確保していく。
 資源外交や経済協力の戦略的展開により、資源国との総合的な関係強化を図るとともに、国内における安定供給の担い手である石油産業の競争力・経営基盤の強化に取り組む。
 核燃料サイクルの早期確立や高レベル放射性廃棄物処分場の確保に向けた国民の理解獲得、次世代軽水炉の開発、高速増殖炉サイクルの実証・実用化に向けた研究開発等に取り組む。
 原子力施設における改ざん・隠ぺい等の不正の判明を踏まえた対応、原子力施設の耐震安全性の向上に向けた取組み、核燃料の再処理や放射性廃棄物の処分に係る安全性の検討・確認等を進める。
 水・食料は生命の維持に必要不可欠であり、国内農業の食料供給力の強化を図る。

142、バイオマス・ニッポンを目指して
  農林業を21世紀の戦略産業として発展させていくため、バイオマス利活用などの新たな分野にも果敢に挑戦し、農林業の新境地開拓を加速化させる。

京都議定書達成へ低炭素社会をつくる>
144、京都議定書目標の確実な達成に向けた制度等、あらゆる面からの抜本的強化
京都議定書目標を確実に達成するため、産業界の削減努力の確実な実施とさらなる深掘りに加え、排出量の伸びが著しい業務・家庭部門の対策を抜本的に強化する。
  このため、地球温暖化対策推進法を抜本的に見直すとともに、財源の確保を十分に図るなど、政府の行う対策を一層強化する。率先的取組みとして、今年度中に政府公用車にバイオ燃料を完全に導入する。

145、世界に先駆けた「低炭素社会づくり」に向けた国民運動の推進
製品・サービスごとにCO2排出量を表示するなど環境配慮の「見える化」による省エネ行動の徹底、省エネ家電買換促進に向けた地域の新しい取組みへの支援、住宅・建築物の省エネ化、環境にやさしい行動に応じてポイントがたまる「エコポイント」などによる省CO2型製品・サービスの普及、クールビズの定着や「サマータイム」についても国民の理解を得つつその導入について前向きに検討するなど、官民力を合わせてビジネススタイル・ライフスタイルの変革に向けた国民運動を展開し、「1人1日1kg」のCO2削減を目指す。

1. 民主党は「脱地球温暖化戦略」を推進

地球温暖化対策のため、国内外において温室効果ガスの削減が必要です。

世界中で2050年までに50%削減するという中長期目標だけでなく、日本国内においても、中長期の目標設定が必要です。京都議定書温室効果ガス6%削減の達成はもちろん、中期的には2020年までに1990年比20%、長期的には2050年よりも早い時期に50%の温室効果ガス排出量の削減をめざします。その際、人為的排出の削減を優先します。民主党は、「脱地球温暖化戦略〜脱温暖化で、地球と人との共生〜」をとりまとめています。具体的には、①中・長期目標の設定、②京都議定書目標達成のためのキャップ&トレード方式による国内排出権取引市場の創設、③再生可能エネルギー導入の強力な推進、④地球温暖化対策税の導入、⑤省エネルギーの徹底、⑥森林吸収源対策の推進、⑦環境技術開発、環境負荷低減技術・商品の普及促進、⑧環境外交の促進、⑨脱フロンのさらなる推進、⑩二酸化炭素の「見える化」の推進、⑪都市過熱化防止などを図ります。

2008年には、G8サミットが日本で開催されることにかんがみ、ポスト京都議定書に向けた新たな国際的枠組みの構築に取り組みます。わが国は、エネルギー効率化の視点を踏まえ、米国および中国、インド、途上国の参加を促すべく、エネルギー効率化のための技術移転を促進します。また、ODAの環境分野への集中特化など環境外交を展開し、主導的役割を果たします。同時に、酸性雨や黄砂など国境を越えた環境被害に対しても、わが国の環境安全保障の観点から環境外交を強化します。

3. 生物多様性保全

近年、絶滅危惧種の増加、農作物などに影響を及ぼす野生生物の保護管理対策、外来生物対策など、生物多様性保全について、複雑な問題が山積しています。民主党は「ヒトと野生生物との共生」をめざしており、環境基本法の理念を生かし、「野生生物保護基本法」(仮称)を制定します。具体的には、①野生生物の保護に関する基本的な計画(5ヵ年計画)の策定、②生物多様性(野生生物)の保全体制の整備、③影響評価の義務化、④生物多様性に関する教育等の充実、⑤国民への啓蒙、積極的広報、⑥省庁間の連携、⑦法制上及び財政上の措置、⑧国民等の参加を定めます。

さらに、豊かな生態系を育む自然環境を国際的に保護するための基金等への拠出を推進し、生物多様性に関する国際的な調査研究をNGOと協力しながら積極的に支援します。

4. エネルギー安全供給体制の確立

エネルギーを安定的に確保する「エネルギー安全保障」の確立は、国家としての責務です。長期的な国家戦略を確立・推進する機関を設置し、一元的に施策を進めます。

地球環境との調和を図り、環境対策技術の開発を推進します。省エネルギー技術をさらに発展させるとともに、天然ガス、石油、石炭、原子力に加え、風力、太陽、バイオマス海洋エネルギーなど再生可能エネルギーや、水素、燃料電池などを中心とした未来型エネルギーの普及開発を図ります。こうして、エネルギー供給源の多様化を促進するにより、総合的なエネルギーのベストミックス戦略を確立します。特に、風力、太陽、バイオマスなど再生可能エネルギーについては、一次エネルギー総供給に占める割合を、EUの導入目標をふまえて大幅に引き上げ、2020年までに10%程度の水準の確保をめざします。

また、現在、日本のエネルギー自給率原子力も含めて16%にすぎず、先進国では最低水準にあることから、自給率の目標を2030年に30%、2100年には50%とします。

1)地球温暖化防止策の推進
京都議定書の6%削減を実現します。
■ポスト京都議定書に関して、米国、中国、インドなどすべての主要排出国が参加する、実効性ある新たな枠組みを構築し、2050年までに温室効果ガス50%削減をめざします。
■国民総がかりで、家庭で簡単に実行できる省エネ対策など、二酸化炭素(CO2)削減のための広範な国民運動を展開します。
■エコ産業の市場規模を70兆円に、雇用を160万人に拡大します。このため環境関連サービス、廃棄物処理・リサイクル産業などの振興に集中投資します。
■省エネで事業費を生み出すESCO事業による余剰資金活用や寄付金優遇制度拡充などを通じ、環境に取り組む中小企業やNPO、学校などを支援する「市民環境基金」(仮称)を設立します。
地域の特性を生かしたESD(持続可能な開発のための教育)推進のための国内環境整備を前進させ、各地でESDの拠点づくりを進めます。
環境保全に有効で、経済性及び効率性に優れた浄化槽(合併浄化槽)の普及を加速します。
■大気汚染規制強化に伴い運送トラック等の適合車買替支援を拡充するなど、中小零細企業の省エネ・環境対策の取り組みへの支援を強化します。
■船舶版アイドリングストップへの支援や、埠頭内オフロード車の電気自動車導入などによるCO2排出減対策を進めます。また、外部電源式アイドリングストップ冷暖房システムによりエコトラックパークを実現します。
(2)化石燃料に拠らないエネルギーの活用
■「バイオマス推進基本法」の早期制定により、バイオエタノール普及などバイオマス活用の仕組みを早急に構築します。
太陽光発電風力発電燃料電池など自然エネルギー普及を拡大するため、支援制度の拡充や日本版RPS(電力会社に一定の割合の新エネルギー使用を義務付け)法等を活用します。
低公害車導入促進アクションプラン」(仮称)を策定し、政府の低公害車導入目標を前倒しします。
エコハウスやエコビルの増加、エコ改修の普及も図ります。

■エネルギー安定供給のため、原子力発電の一層の安全性の徹底を図り適正に推進します。事故情報の迅速な情報開示など安全性向上に向け事業者の体質改善を促します。

【9】京都議定書の約束を達成し、さらに低エネルギー・低炭素社会への転換を進めます
 安倍内閣は「世界全体の温室効果ガス排出量を現状に比して2050年までに半減する」方針を閣議決定し、独ハイリゲンダム・サミットでも、「2050年」に「半減」という長期の目標にかかわる言葉が盛られました。しかし、いま日本は、直近の目標である京都議定書での約束(2012年までに90年比6%削減)を達成する見込みがたたず、二酸化炭素排出は逆に8%も増えています。

 京都議定書で公約した「6%削減」の達成に、あらゆる手をつくします……京都議定書の目標達成には、排出量の8割を占める企業・公共部門での削減がカギです。ところが、政府は財界の要求に屈し、日本経団連の「自主」行動計画まかせにしています。また家庭(排出量の2割)でも、電気製品台数の増加や自動車の大型化、単身化による世帯増の影響で、二酸化炭素の排出が増加しています。

──経済界と政府の間で削減協定を締結し、達成責任を公的に裏うちします。

──小規模水力、風力、太陽光・熱、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの開発・活用を抜本的に進めます。

──現行のエネルギー課税を見直し、二酸化炭素の排出量を考慮した環境税の導入をすすめます。

──商品や施設の省エネ促進とともに、二酸化炭素の排出を増やす長時間営業・労働や、都市再生の名による大規模な高層マンション・建物の建設、郊外店の増加などに歯止めをかけ、生活スタイルや経済活動の改善を図ります。

 中長期の目標を明らかにして、低エネルギー・低炭素社会への転換をすすめます……科学者やEUNGOは、気候変動を破局的な危険のレベルに達するまえに抑えるためには、工業化以前に比べて2度未満に気温の上昇を抑えることが必要だと考えています。それには、増え続けている二酸化炭素の排出量を2050年までに50%以下(1990年比)に削減する取り組みが求められ、とくに先進国は60%〜80%という大幅な削減をしなければなりません。

──日本も2020年までに30%、50年には70%削減することを目標に掲げ、それにむけて経済システムや生活スタイルなどを改革して、低エネルギー・低炭素社会へ転換すべきです。

 原子力発電所の新増設をやめ、原発から段階的に撤退する……政府と電力会社は、温暖化対策を原発の新増設にたよろうとしています。しかし、原発は、技術的に未確立であり、耐震性を含めた安全性の問題、事故隠し・データねつ造が示す管理能力の欠如、放射性廃棄物の処理など、環境にとって大きな危険をかかえています。原発から計画的・段階的に撤退すべきです。

【7】環境問題
持続可能な経済・社会を実現するため、環境問題に真剣にとりくみます

 21世紀の世界を持続可能な経済・社会とするためには、温暖化ガスの大幅削減を実現する対策など地球環境の保全の見通しをたてるとともに、国内のアスベスト対策や大気汚染対策など身の回りの環境対策に真剣にとりくむことが必要です。将来にわたって良好な環境を維持していくために、環境汚染を規制し、生態系を守るとりくみを強化します。そのためにも環境汚染問題の解決には、少なくとも(1)汚染者負担の原則、(2)予防原則、(3) 国民・住民の参加、(4)徹底した情報公開──の視点が欠かせません。その立場で、次のようなとりくみを強めます。

京都議定書の目標を達成し、日本の中長期の温暖化ガスの削減目標を明らかにして、世界の温暖化抑制に貢献します
 安倍政権は温暖化ガスの「世界全体の排出量を現状に比して2050年までに半減する」方針を閣議決定し(「21世紀環境立国戦略」)、独ハイリゲンダム・サミットでも、「2050年」に「半減」という長期の目標にかかわる言葉が盛られたと宣伝しています。しかし、いま日本は、直近の目標である京都議定書での約束(2012年までに90年比6%削減)を達成する見込みがたっていません。

 京都議定書で公約した「6%削減」の達成に、あらゆる手をつくす……EUはすでに削減目標の達成を見越していますが、日本は削減するどころか、逆に8%も増加しており、現在のままでは期限(2012年)までに目標を達成することは、極めて困難です。

 石炭や石油などの化石燃料を燃やした時点で排出量を計算すると、エネルギー・産業部門が日本の二酸化炭素排出量の65%をしめています。とくに産業部門の割合は主要国のなかで最大となっています。発電所、高炉製鉄所など180の事業所が日本全体の排出量の半分を占めています。日本経団連は、日本の製造業が世界一効率がいいと強調していますが、欧米の先進国と比べ、ほぼ同じか中には日本が劣るものもあります。90年代にエネルギー効率を上げる投資を企業がしなかったことや、火力発電所が増加したことによって、景気が上向けば排出量が増える状況になっており、政府が頼みにしている日本経団連の「自主」行動計画では、総量目標を達成する裏づけにはなりません。

 安倍内閣は、こうした問題を放置したまま、二酸化炭素の排出量の「1人1日1キログラム削減」をスローガンに「国民運動」を提唱しています。生活スタイルの見直しは大切ですが、家庭部門の排出量は、全体の5%であり、それを削減の決め手とするのは無理な話です。

 やはり日本の排出量の8割を占める企業・公共部門での削減がカギです。政府は日本経団連の「自主」行動計画まかせにせず、経済界と政府の間で削減協定(自主協定)を締結し、達成責任を公的に裏うちすることが大切です。排出権取引を実施し、そのさい各企業の排出状況と実効性のある削減目標を明らかにさせることが重要です。

 排出量の多いエネルギー部門では、小規模水力、風力、太陽光・熱、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの開発・活用が決定的です。自然エネルギーの活用を広げるため、目標量を抜本的に引き上げるとともに、電力会社が買い取り価格を引き上げ、固定価格で買い取ることが必要です。既存のエネルギー税制を見直して、温暖化ガスの排出量を考慮した環境税を導入すべきです。

 家庭でも、電気製品台数の増加や自動車の大型化によるエネルギー消費の拡大、核家族化・単身化による世帯増の影響で、温暖化ガスの排出が増加しています。また、労働規制の緩和や残業規制の不徹底、深夜労働による長時間営業・労働や帰宅・出勤時間の不規則化、大規模小売店舗法の廃止による大型店の郊外出店による自動車の多用、都市再生の名による大規模な高層マンション・建物の建設促進によるエネルギーの多用なども、エネルギー消費をふやしています。

 地域でも路面電車など公共交通機関へのシフトや、パーク・アンド・ライドの推進、ロード・プライシング制の検討などで都市部への自動車流入の抑制をはかります。都市の気温が上昇するヒートアイランドを防止するため、都市の過密化を避け、緑化の促進をはかります。エネルギーのロスを減らし省エネをすすめるためには、廃熱利用、ヒートポンプの普及、エネルギーの“地産地消”、建物の断熱と交通輸送の切り換えや共同化によるまちづくりが重要です。

 商品や施設の省エネをすすめ、「省エネ生活」への支援を強めるとともに、生活スタイルや経済活動を変えることが必要です。

 中長期の目標を明らかにして、低エネルギー・低炭素社会への転換をすすめる……温暖化対策でいま重要なことは、気候変動が危険なレベルに達しない温度上昇の上限を共通の認識にし、その範囲におさえるために、空気中の温暖化ガス濃度をどう抑えるのか、そのために何が必要かを考えることです。

 科学者やEUNGOは、気候変動を破局的な危険のレベルに達するまえに抑えるためには、工業化以前に比べて2度未満に気温の上昇を抑え、温暖化ガスの濃度は1.7倍以内(480ppm程度)で早期に安定させることが必要だと考えています。それには、増え続けている温暖化ガスの排出量を基準年である1990年比で、2020年までには下回らせ、50年までには50%に削減するとりくみが求められています。

 2050年に世界全体で温暖化ガスの排出量を90年比で半分にするには、日本をふくむ先進国が60%〜80%という大幅な削減をしなければなりません。それを見越してEUは2020年までに20%削減する方針を明らかにしており、50年までにフランスは75%、ドイツは80%の削減を検討しており、イギリスは60%の削減を目標にする法案を国会に提出しようとしています。

 日本も、2020年までに30%、50年には70%削減することを目標に掲げ、それにむけて経済システムや生活スタイルなどを変革して、低エネルギー・低炭素社会への転換を目指すべきです。

大気汚染被害者を救済し、自動車メーカーに社会的責任をはたさせます
 自動車排ガスと健康被害との因果関係を、あいついで司法が認め、国・都・道路公団に被害者への賠償を命じました。公害健康被害補償法(公健法)で認定されていなかった被害者の健康被害が司法で認められたのですから、国、東京都が救済するのは当然です。原告はメーカーの責任も追及し、判決は、健康被害を予見できたにもかかわらず、乗用車にまでディーゼル化をすすめたことなど、自動車メーカーの対応に社会的責任上、問題があったと指摘しました。メーカーは超低額の解決一時金(賠償金)ではなく、被害者の要求にこたえるべきです。また、企業がいま使用しているディーゼル車の汚染物質(粒子状物質や二酸化窒素など)除去装置の実用化など、メーカーが社会的責任を果たすよう求めます。大都市部への基準不適合車の流入を抑え、幹線道路における汚染状況のひどい地域での走行規制など、汚染対策をすすめます。くるま優先で自動車道路の建設を促進して公害を悪化させる行政の姿勢の転換を求め、行政・メーカーに必要な情報公開を義務づけ、環境・製品アセスメントを強化します。

【8】エネルギー問題
自然エネルギーの開発・利用を広げ、原発依存のエネルギー政策を転換します

 エネルギーは食料とともに経済・社会の存立の基盤であるにもかかわらず、日本のエネルギー自給率はわずか6%(2005年度)にすぎません。

 イラク、イランなど中東情勢の緊張や、中国やインドなど発展を続ける途上国のエネルギー需要の増加、先物取引などの投機によって、石油や天然ガスの高値が今後も続くとみられています。政府は、灯油などの小売価格の便乗値上げを監視するとともに、備蓄を機動的に使うことや、自治体が冬季に実施している福祉灯油制度への助成を準備するなど、国民生活を守るための対策をとるべきです。

 エネルギー問題は、地球の温暖化対策とも密接な関係があります。日本は、京都議定書にもとづいて2010年前後までに二酸化炭素などの温暖化ガスの排出量を、1990年比で6%削減する義務があります。その日本の目標は、達成が危機的状況にあります。政府は原発の新増設を頼みの綱としていますが、原発は安全性に問題があり、原発に依存するのではなく自然エネルギーの導入に本腰を入れるべきです(→温暖化対策全般については、個別・分野別政策の環境の項を参照)。

 省エネの徹底やエネルギー効率の引き上げによって低エネルギー社会を目指すとともに、日本の条件にあった自然エネルギーの開発・利用を計画的に拡大することで、エネルギーの受給率の引き上げをはかります。

太陽光・熱、小水力、バイオマスなど自然エネルギーの開発・利用を本格的に促進します
 地球の温暖化防止のためにも、エネルギー政策はかなめです。エネルギーの自給率を引き上げ、また地球温暖化対策をすすめるためには、エネルギー効率の徹底した向上とともに、環境に配慮した自然エネルギー源の開発・利用に本格的にとりくむ必要があります。風力や太陽光・熱、地熱、小水力、波力や、あるいは畜産や林業など地域の産業とむすんだバイオマス・エネルギーなどは、まさに地域に固有のエネルギー源です。そこから得られる電気やガスを販売することで地域に新たな収入が生まれます。事業の成果や副産物を地元に還元したり、雇用や技術、資金の流れを地元に生み出すことで、地域経済の活性化に役立ちます。

 2020年の一次エネルギーにおける自然エネルギーの割合を15〜20%に引き上げることをめざし、自然エネルギーの開発・利用のとりくみを強めます。導入目標の大幅な引き上げ、固定価格による電力の買い取り制度を導入など、自然エネルギーの普及にとりくんでいる人たちの声を反映させ、意欲の出る制度に改善します。廃棄物発電は、林業の廃材や加工くずなどに限定し、廃プラスチックなどを大量に燃やすやり方は対象外にすることが必要です。小規模・分散型という特徴をもつ自然エネルギーを利用して発電した電力を利用し、既存の電力供給システムに組み込んでいく系統連携のやり方についても、地域での先行的なとりくみをやりやすくするために、制度の改善や財政的支援を自治体や政府に求めます。

 自然エネルギーの設備設置への補助を手厚くし、発電量に応じた助成の創設を求めます。原子力のために巨費を注ぎ込んでいる電源開発促進税や、石油関係諸税などの税制の見直しを前提に、化石燃料の消費や自動車などがもたらす環境への負荷も考慮し、二酸化炭素の排出量などに着目した環境税の導入によって、自然エネルギー促進のための財源の充実をはかります。

バイオ燃料は、食料と競合しない植物資源を使い、国内産・地域産の資源を優先活用します
 近年、原油価格の高騰などを背景に、世界各国でバイオエタノールの生産が急増しています。最大の生産国・アメリカではトウモロコシ原料のエタノール生産が前年比3割増となり、2017年には05年比で10倍にするというブッシュ政権の計画のもと、エタノール工場の建設ラッシュが続いています。

 この動きは、トウモロコシの需給をひっ迫させ、国際価格をこの1年で倍近くに高騰させました。それが隣国メキシコでは庶民の食生活を直撃するなど、バイオエタノールの開発が、途上国や低所得者の食料を脅かしています。日本でも、トウモロコシの輸入価格が大幅に上昇し、飼料や多くの食品に影響が出ています。

 バイオエタノールは、地球温暖化対策に役立ちますが、原料となるサトウキビ生産の拡大やパーム油生産のためのヤシ農園の建設による熱帯林の破壊が、各国で新たな環境破壊として問題になっています。

 日本政府は、エタノールを含むバイオ燃料の利用促進を打ち出していますが、その大部分は輸入を見込んでいます。二酸化炭素の排出削減をいいながら、二酸化炭素の吸収源である森林を破壊するのでは、地球環境にやさしいエネルギー開発とはいえません。

 日本共産党は、バイオ燃料の開発・導入を自然エネルギーの重要な柱であると考えています。その具体化にあたっては、食料需要と競合しない植物資源に限定する、国内産・地域産の資源を優先的に活用する(「地産地消」)、生産・加工・流通・消費のすべての段階で環境を悪化させない持続可能な方法を採用するなど、新たな環境破壊をひきおこさないためのガイドラインをもうけるよう政府に要求します。

プルトニウム利用をやめ、原発からの段階的な撤退をすすめます
 政府と電力会社が温暖化対策を口実に新増設を図っている原発は、十分な安全の保証がなく技術的に未確立です。磨耗した配管の破裂で死傷者を出した美浜原発の事故(2004年)にひきつづき、冷却用海水温のデータねつ造が明るみにでただけでなく、臨界事故を志賀・福島の各原発が起こしたことを隠していた事実が次々と発覚しました。経済産業省の指示で電力会社が行った調査の結果報告(07年3月)によれば、問題事例が全体で1万件をこえ、うち原子力関係が455件もあるという驚くべき数に上りました。ルール違反の横行とずさんな検査体制や経営・管理の実態は深刻です。さらに東海地震の想定震源域の真上に浜岡原発が存在するような政府・電力会社の原発立地のあり方は、無謀としかいいようがありません。放射性廃棄物の処理と万年単位の管理の問題、莫大な費用がかかる問題など、多くの問題が解決されないままです。

 こうした問題を抱えた原発から、計画的に撤退すべきです。原発の危険性を増幅するだけのプルサーマル計画や高速増殖原型炉「もんじゅ」の運転再開計画は撤回し、六ヶ所再処理工場をはじめ核燃料サイクル施設の総点検を実施し計画を中止すべきです。原発の総点検をおこない、老朽原発をはじめ安全が危ぶまれる原発については、運転停止を含めた必要な措置をとらせます。

 政府は、自治体にプルサーマル実施の許可や、高レベル放射性廃棄物の最終処分場への応募をうながし、受け入れれば手厚い補助金を出すとしていますが、補助金と引き換えに住民に危険を押しつけるようなやり方はやめるべきです。

 安倍内閣は、「原子力立国」をかかげて原発の輸出や核燃料供給を目指していますが、国内外で、安全を軽視した原発の新増設をすすめることはやめるべきです。

みどり
1.京都議定書の目標達成(2008〜2012年)に全力をあげ、世界的な視野をもち中長期の目標として2020年までに30%、2050年までに70%の削減をめざします。

2.全排出量の6割を占める産業部門・発電施設の対策を強めるためCO2削減義務を課すとともに炭素税や大規模排出源の排出量をコントロールする国内排出取引制度を導入します。在日米軍自衛隊など軍事関係のCO2排出量を公開させ、対策を促します。

3.温暖化対策からも脱原発を推進し、原子力関係予算は再生可能エネルギー予算にシフトさせます。自然エネルギーを2020年までに20%にします。

4.森林吸収源3.8%(毎年1300万炭素トン)の目標達成のための、必要予算額である毎年度1330億円の追加的森林整備費を確保します。また、不在村所有者対策を強化します。

5.森林保全・育成のため、林業労働者10万人規模(毎年1万人の新規就業者)の確保と、その定住化対策に取り組むとともに、林業の担い手確保に向けて緑の雇用担い手対策事業の充実と直接所得補償制度を導入します。

6.地域材・国産材の利用を推進し、木材自給率(現在20%)の向上を図ります。公共施設での国産材利用の義務づけや木質バイオマスの利用を推進します。違法な外国産材の流入規制を強化します。

7.拡大生産者責任の導入、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の優先順位を明確化し、廃棄物の発生を抑制します。

8.水俣病の被害実態を明らかにし、被害者救済、全面解決に取り組みます。総合的な「アスベスト対策基本法」を制定します。

9.「戦略型環境アセスメント法」を制定します。環境団体訴訟制度を導入します。「野生生物保護法」を制定します。

46、水俣病、原爆被爆者、アスベスト、公害健康被害者対策の推進
 水俣病問題の解決に向けて、認定基準を満たさないものの救済を必要とする方々の救済策実現の可能性を開く環境整備を行うとともに、認定審査会による認定基準を満たす方々の早急な救済の同時実現を図る。
人類唯一の被爆国であるという事を踏まえ、被爆者の方々への支援策の充実について早急に検討を進める。
さらに、アスベスト、公害健康被害者対策を着実に推進する。

<アスベスト対策>(マニフェスト2005「当面する重要政治課題」から)
公明党は関係機関と連携し、中皮腫アスベスト肺がんなどの患者の実態調査を進め、労災認定による補償を強力に推進していきます。また①時効(遺族補償の申請は5年以内)のために労災認定されない患者やその遺族②アスベストに関係する労働者の家族(家庭内暴露者)③アスベストを扱っていた工場や港湾などの周辺住民(環境暴露者)、など現行制度では救済されない人たちの救済を図ることを主眼にした新法の早期実現をめざしています。
なお新法には、アスベスト使用等の早期完全禁止や現在建物などに使われているアスベストの封じ込めと除去、建物解体時の安全確保、アスベストに関するリスク評価と情報開示、アスベスト関係疾患の早期診断・治療法研究の開発促進、患者のための相談体制強化など、アスベストから国民の命と健康を守るさまざまな施策も盛り込んでいきます。
※進捗状況:2006 年2 月に成立した「アスベスト被害救済法」により、労災認定され
なかった本人だけでなく、アスベストが原因の中皮腫や肺がんと認定されれば、医療
費等の支給が実現。

2. 環境健康被害者の救済のため基本法を制定

環境健康被害の認定基準は行政主導で策定され、科学的知見に過度に依存していることから、多くの被害者が行政救済の対象となっていません。また、認定を求めて訴訟を起こしても裁判が長期化し、迅速な補償・救済を受けられない現状にあります。

民主党は、環境健康被害の回復・軽減の迅速化を図るため、①健康被害者救済に関する基本施策の策定、②原因究明調査・研究を国などに義務付け、③認定基準の緩和、④行政からの独立性を高くした認定機関「環境健康被害等基準策定等委員会」の設置、⑤訴訟関連支援制度(相談窓口の設置、医療専門家・科学者・海外知見等の紹介等を国等に義務付け)の整備、⑥救済給付制度(医療費、療養費、交通費等)の整備――などを定めた「環境健康被害者等救済基本法案」を提出しました。同法の制定によって、これまで解決できなかった公害健康被害者の大多数が迅速に救済されます。特に、水俣病アスベストによる健康被害、東京大気汚染公害訴訟等、代表的な環境健康被害については、同法を適用するとともに、問題点を詳細に検討して、包括的な解決に向け全力で取り組みます。

大気汚染被害者を救済し、自動車メーカーに社会的責任をはたさせます
 自動車排ガスと健康被害との因果関係を、あいついで司法が認め、国・都・道路公団に被害者への賠償を命じました。公害健康被害補償法(公健法)で認定されていなかった被害者の健康被害が司法で認められたのですから、国、東京都が救済するのは当然です。原告はメーカーの責任も追及し、判決は、健康被害を予見できたにもかかわらず、乗用車にまでディーゼル化をすすめたことなど、自動車メーカーの対応に社会的責任上、問題があったと指摘しました。メーカーは超低額の解決一時金(賠償金)ではなく、被害者の要求にこたえるべきです。また、企業がいま使用しているディーゼル車の汚染物質(粒子状物質や二酸化窒素など)除去装置の実用化など、メーカーが社会的責任を果たすよう求めます。大都市部への基準不適合車の流入を抑え、幹線道路における汚染状況のひどい地域での走行規制など、汚染対策をすすめます。くるま優先で自動車道路の建設を促進して公害を悪化させる行政の姿勢の転換を求め、行政・メーカーに必要な情報公開を義務づけ、環境・製品アセスメントを強化します。

水俣病被害者の救済を急ぎます
 公式認定から51年になる水俣病にかんして、最高裁が国の責任と判断基準や認定制度・検診の見直しを認めたこと(2004年10月)をうけ、5200名をこえる被害者が国の認定を求めています。また1200人をこえる被害者が新たに提訴をおこないました。ところが、政府は、認定基準の見直しを拒否し、わずかばかりの「解決金」で患者を切り捨てようとしています。ただちに全容解明の実態調査をおこない、最高裁が示した救済水準に合わせて、すべての水俣病被害者の救済を急ぐべきです。

アスベストの除去や被害者救済を急ぎ、化学物質の有害性に対する規制を強めます
 アスベスト石綿)は、吸いこんでから20〜30年以上も後に悪性腫瘍(がん)をひきおこします。その一種である中皮腫(ちゅうひしゅ)などの被害が続々と明らかになり、その影響は事業者・従業員だけでなく、家族、周辺住民にも及んでいます。政府が、ILO条約の批准を先延ばしにした結果、WHO基準の200倍も緩い基準(76年の通達)を05年まで放置してきました。関連業界と政府の責任は重大です。

 石綿関連企業の労働者や事業所周辺住民などの健康診断調査を継続して実施するために、費用を原因企業と国が負担するよう求めます。アスベスト対策法の施行後も、認定対象が狭く、救済数が余りにも少ないため、被害者の実態に合わせて拡充します。石綿の労災認定も抜本的に見直すとともに、すべての健康被害者を救済し、被害に対する補償水準を引き上げるなど救済制度を早急に改善するよう政府に求めます。石綿の特例使用が認められている分野を含め、早急に全面的な使用禁止を目指すとともに、石綿除去や解体に伴う二次被害を阻止するために、自治体の指導・監督を強め、国の補助の拡充を求めます。

 化学物質による環境汚染がひきおこすとされているアトピー化学物質過敏症ダイオキシンをはじめとする環境ホルモンの悪影響、シックスクールやシックハウスなどへの健康被害の調査と安全対策を強化し、地球環境サミットでも確認された予防原則にたって、遅れている化学物質の有害性にかんする研究と規制を促進します。工場跡地や不法投棄が原因とみられる地下水の汚染などの環境汚染にたいして、住民の健康被害に関する調査と情報公開、新たな被害補償制度などを求めます。

 電磁波による健康への影響については、WHOをはじめさまざまな調査・研究があります。携帯電話用の無線基地の建設をめぐって紛争が起きている場合には、住民の不安にはそれなりの根拠があり、事業者側の責任で不安を軽減するよう対応をすべきです。電磁波の発生源が急増しているなかで、国民の不安にこたえるためにも、電磁波の健康への影響にかんする研究・調査を積極的にすすめるよう求めます。

47、「食育」−食べる・つくる・育む−
 国民の心と体の健康を守り、豊かな人間性を形成し、健全な食生活を実現するため「食育基本法」に基づき「食育」を推進する。「食事バランスガイド」を活用した「日本型食生活」の普及や「教育ファーム」等の農林業体験活動や地産地消を進め、「食育」を国民運動としてさらに展開する。

48、食品の安全確保
 BSE問題、輸入食品の残留農薬問題への対応等、食の安全確保や食品健康影響評価等に万全を期し、リスクコミュニケーションの充実を図る。

142、バイオマス・ニッポンを目指して
 農林業を21世紀の戦略産業として発展させていくため、バイオマス利活用などの新たな分野にも果敢に挑戦し、農林業の新境地開拓を加速化させる。

1. 食の安全・安心の確保

BSEや鳥インフルエンザを目の当たりにして、食の安全・安心は国民にとって最大の関心事のひとつになっています。食品安全行政は現在、内閣府農林水産省厚生労働省に縦割り・分断されており、これを一体化します。また、加工食品や、外食における原料原産地表示を義務化するとともに、食品のトレーサビリティ*を拡充し徹底します。さらに、全国レベルで地産地消(そこでできたものをそこで食べる)、旬産旬消(その時できたものをその時に食べる)を推進します。特に、地域の農林水産業の実情と重要性を子どもたちに教えるためにも、学校給食における実施が重要です。

わが国は、食料の6割を輸入に依存しており、輸入食品についても、相手国が日本と同等の食品安全基準や動植物検疫基準を遵守することを輸入の条件とします。また、主要な輸出国に輸入国の立場から調査を行う国際食品調査官(仮称)を配置します。さらに現在、全国31ヶ所の検疫所にはわずか300人の検査官が配置されているにすぎません。わが国の国境における食品検疫体制は、わずか5%のモニタリング検査を実施しているにすぎず、この体制を大幅に拡充・強化します。

現段階において、米国における牛の月齢管理や飼料規制等の実効性、輸出プログラムの遵守は疑問視されています。米国産牛肉の輸入再開は、国民の食の安全・安心を無視するものであり、今後も中止を求めていきます。また、国民の食の安全・安心を守り、消費者の選択権を保障するため、牛肉やその加工食品等についてBSE検査済の表示と原産地表示の義務化を実現します。さらに、輸入牛肉についても国産牛肉と同様のトレーサビリティを義務づけるため、民主党が提出した「牛海綿状脳症対策特別措置法(BSE対策法)改正案」及び「輸入牛肉に係る情報の管理及び伝達に関する特別措置法案(牛トレーサビリティ法案)」の早期成立をめざします。

   *トレーサビリティ=生産や処理・加工、
    流通・販売等の段階で、食品の仕入先、
    販売先、生産・製造方法などの記録
    をとり、保管し、食品とその情報をさかの
    ぼることができること。食品に問題が
    発生しても、その原因が迅速に把握で
    きるようになる。

 BSEの全頭検査を維持します……牛肉輸入では牛海綿状脳症BSE)対策として、全頭検査、危険部位である脊髄など神経組織の完全な除去、トレーサビリティ(生産・流通の経歴が追跡できる仕組み)が不可欠です。政府が求めた条件でさえ違反を繰り返す米国産牛肉は、輸入すべきではありません。

──全頭検査のうち、生後20カ月以下の牛を対象とする検査への国の補助を来年7月以降も延長すべきです。

──牛肉加工食品の原産地表示を義務付け、消費者の選択権を保障させます。

BSE全頭検査を維持し、安全・安心の食料を確保します
 アメリカのBSE対策のズサンさは、特定危険部位の除去、月齢20ヶ月未満という輸入条件に違反する米国産牛肉が相次いで検出されていることで、いよいよ明白です。ブッシュ政権は、「アメリカの牛肉は安全」と強弁し、輸出条件の緩和を執拗に求め、安倍内閣も、4月の日米首脳会談を前に全箱検査の廃止など条件緩和を約束しています。国民の健康と命より日米関係を最優先して、現在、国内で実施しているBSE対策を緩和することは許せません。

 米国産牛肉の輸入は、対日輸入条件が厳格に守られることが確認されるまで中止すべきです。当面、アメリカ産輸入牛肉の全箱検査を維持します。国内でのBSE「全頭検査」は、厚生労働省の毎年の政策実績評価書のなかでも、BSE感染牛を確実に発見できるとして評価されています。自治体の行なう「全頭検査」への補助金を08年度以降も継続します。

 鳥インフルエンザのまん延防止対策をより実効あるものにするために、鶏の殺処分補償への国の負担割合を3分の2に引き上げるとともに鶏肉加工施設も補償対象に加えます。


1.輸入農畜産物・食品に対する監視を強化し、原料原産地表示を導入します。危険な米国産牛肉の輸入条件緩和に反対、再リスク評価の実施を求めます。全頭検査を継続します。

2.食品衛生法を強化し、食品衛生監視員を増員します。食品への放射線照射に反対します。遺伝子組み換え作物の生産を禁止、食品の表示対象を拡大します。食農教育、地産地消を進めます。

3.命の源泉である水を守る水基本法を制定します。

農林水産業の活性化
水と緑、食糧を守る農林水産業への所得補償制度を創設し、食糧の安定確保を図る。また、自然環境に配慮した生産に対する助成金を創設・拡充する。
食料自給率の目標を50%に設定し、そのための計画を策定する。また、食料自給率の向上や農業の多面的機能の堅持を図るため、WTO農業交渉やEPA交渉における安易な妥協に反対する。
農村・漁村の生活基盤の整備を促進するとともに、後継者・担い手の育成を積極的に支援する。

<日本型社会保障制度を構築するために>
57、医師不足問題への早急な対応・地域医療の再構築
   全国各地の医師不足の声を真剣に受け止め、「地域の医療が改善されたと実感できる」実効性のある緊急医師確保対策を講じる。
 緊急臨時的に医師を派遣する国レベルのシステムを構築し、先に医師不足地域に対して第一陣を派遣したところであるが、今後とも地域からの要請を受け、積極的にこの緊急医師団を派遣していく。
 医師が不足している地域や診療科で勤務する医師の養成増を行う。また、臨床医を養成する医育機関のあり方についても検討する。
 研修医が都市に集中することを是正するため臨床研修病院の定員の見直しを図る。
 病院に勤務する医師の過重労働を解消するための勤務環境の整備を進める。
 女性の医師などが働きやすい職場環境の整備を促進する。
 患者にとって安全・安心な医療の確保や不幸な事故の再発防止に資するために、医療事故の原因調査などの仕組みを創設する。
58、救急医療の拡充
地域医療が国民の安心の基盤としてさらにその機能を発揮できるよう、救命救急センター、ドクターヘリ導入促進事業等に対する助成や小児初期救急センターの整備等、病院や開業医等すべての医療関係者の参加の下で、小児救急医療体制をはじめとする救急医療体制の一層の充実を図る。

59、国民が安心して受けられる医療の確保
国民が安心して良質な医療を受けることができる体制を構築していくため、先般成立した医療制度改革法に基づき、新たな高齢者医療制度の創設など、超高齢社会を展望した医療保険制度体系の見直しを行うとともに、医師確保対策の推進のほか地域における医療の連携体制の構築や医療情報提供体制の充実など、質の高い医療サービスが適切に受けられる体制整備を進める。

63、健康で安心できる国民生活の確保
 わが党の取組みにより、がん対策基本法に基づく総合的な対策が進められている。今後とも「がん対策推進基本計画」に基づき、放射線治療や緩和ケアなどの充実を図る。
 新健康フロンティア戦略を着実に推進し、「メタボリックシンドローム克服」や「がん克服」など、健康寿命を延ばし、生涯現役で充実した人生を送るための施策を進め、「健康国家」の創設に向けた挑戦を続ける。また、生涯を通じた8020運動の推進を行う。
 肝炎の早期発見、早期治療、治療水準の向上を図るため、検査体制の充実、安心して受診できる医療の確保など、総合的な肝炎対策に取り組む。
 新型インフルエンザの脅威から国民を守るため医療体制の確保、抗インフルエンザ薬やワクチンの確保など、万全の対応を講じる。また、予防接種の励行や発生状況の監視、必要なワクチンの確保などを通じて、はしか等の集団発生や感染拡大の防止に努める。
 世界最高水準の医薬品・医療機器を迅速に国民に提供し、関連産業を日本の成長牽引役としていくため、医薬品・医療機器の研究開発から販売・使用に至るまでの一貫した施策を推進する。

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(3)医療―「治療中心から予防重視」へ転換
■「がん対策基本法」に基づき、治療の質や情報の地域格差を是正し、がん登録制度の導入も進めつつ、全国どこでも最適ながん治療を受けられる体制を整備します。
○治療の初期段階からの緩和ケア(痛みをとる)を実施するため、5年以内に、がんを担当する全ての医師に緩和ケアの研修を行います。
放射線治療の普及とともに、放射線療法・抗がん剤療法の専門医の育成を進めます。
○気軽にセカンドオピニオン(別の専門医の診断)が受けられる環境整備を進めます。
○全国のがん医療水準の引き上げ、治療が難しいがん患者の受け入れや、予防・診断体制を推進する一環として、「がん診療連携拠点病院」の整備、がん検診の拡充、新たな治療方法・治療薬の開発、禁煙の推進などに取り組み、がん罹患率、死亡率の低下を実現します。
■80歳になっても自分の歯を、20本以上保つために、歯科健診と自己管理を通じて、健康づくりを行う「8020(ハチマルニイマル)」運動を推進します。
後期高齢者医療制度のスタートに向けた体制整備、生活習慣病対策を中心とする医療費適正化対策等を強力に推進するとともに、在宅を含めた地域における医療提供体制の整備を図ります。
※進捗状況:2006 年6 月がん対策基本法が成立。2007 年6 月には「がん対策推進基
本計画」が策定。
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医療保険者による特定健診の義務付けを踏まえ、メタボリック症候群の予防・減少の取り組みに対
し、関係機関の連携強化を図ります。
■医療や介護に係る自己負担を家族で合算し、負担が高額な場合に軽減を図る新たな高額療養費制度を実施します。
■女性専門外来の全都道府県での開設をめざします。
■生涯を通じた女性の健康支援を充実させます。
骨粗しょう症や貧血、乳がん、子宮疾患等の予防と早期治療のために、成人女性に対する健診の普及と充実を進めます。
乳がん検診の精度向上のため、マンモグラフィー検診に加えて超音波(エコー)検診の導入・併用を進めるとともに、読影医の養成・確保など検診体制の充実・強化、受診率の向上を図ります。
思春期外来における相談や無料健診を実施します。
■アレルギー疾患対策を抜本的に強化します。
国公立病院のアレルギー科の増設、全都道府県における公立・民間のネットワークの強化などを図ります。
■温泉を活用した健康づくりの推進を図ります。
温泉療法医、温泉利用指導者(員)などの人材を確保します。
温泉施設、旅館を「健康増進施設」として活用します。
特定疾患治療研究事業の安定的な運営の確保や対象外疾患の救済策の検討、小児難病対策の充実など、総合的な難病対策の充実を図ります。
■肝炎対策の充実を図るため、地域における専門治療施設の整備など検査・治療体制を強化するとともに、治療費の負担軽減に取り組みます。
(4)医師不足対策等の推進
医師不足地域に対する国レベルでの緊急的な医師派遣システムを構築するとともに、病院勤務医の過重労働を解消するための集約化や交代勤務の推進など、総合的な対策を迅速に進めます。
■新生児から思春期までを対象に保健と医療の包括的な支援体制の充実を図る「小児保健法」を制定します。
■出産分娩等に伴う無過失の医療事故を救済するため「無過失補償制度」を創設するとともに、医療事故の裁判外紛争処理制度の創設を進めます。
育児休業取得や短時間勤務の推進、院内保育所の整備、女性医師バンクの体制強化など、女性医師が働き続けられる環境整備を進めます。

2. 小児科・産科医をはじめ医療従事者不足を解消

日本の医師数は人口10万人あたり200名です。OECD加盟国平均の290名とするためには、約10万人不足しています。特に小児科・産科医不足は深刻です。20代の医師は毎年男性が100人減り、女性は350人増えていますが、小児科・産科の女性医師の半数が妊娠・出産・育児を機に病院勤務をやめざるを得ない状況におかれています。看護師は1病床あたり欧米の3分の1から5分の1の人数しかいません。しかも過酷な労働条件のため、新規就職者の1割近くが1年でやめています。女性医師や看護師が働き続けられる支援策が最優先です。院内保育所の整備や復職のための研修の支援等を進め、女性医師や看護師が仕事を続けやすく、復職しやすくします。

小児科では開業医が地域小児科センターで時間外外来を担当するといった協働作業による集約化をさらにすすめます。産科医は勤務が過酷なだけでなく、訴訟リスクなども高いことから、無過失補償制度と医療事故原因究明のための医療安全委員会を設立します。

特定機能病院では先進・先駆的な医療開発とともに、専門医教育・研究者養成を行います。地域がん診療拠点病院では国立がんセンターと協力しつつ、化学療法専門医・放射線治療専門医を養成します。臨床研修病院ではより専門的な能力を高めるための研修を担い、優秀な臨床医を育成します。

医療費抑制と称して10%削減された医学部定員を元に戻し、地域枠、学士枠、編入枠とします。各診療科の必要医師数を明示し、医療圏ごとの数値目標を提示します。

良質なチーム医療の実現のため、各学会等の認定資格制度等を活用しつつ、看護師や薬剤師などの専門教育を支援します。

3. がん対策の拡充

民主党が主導し、2006年、「がん対策基本法」が成立しました。この法律に基づき、がん患者や家族も加わった「がん対策推進協議会」が民主党の提案で設置され、このほど「がん対策推進基本計画」が策定されました。今後も、どこにいても最善のがん治療が受けられる体制、そしてがん患者への最新のがん関連情報の提供や相談支援体制を充実させます。

4. 医療事故の原因究明と再発防止

医療事故に際して、「真相の究明」、「医療側の誠実な対応」、「事故の再発防止」を実現するため、民主党は以下の3点を提案し、有機的に機
能するよう立法措置を講じます。

①医療メディエーターを養成します。医療事故が発生した場合、早期に患者側に十分な知識・情報を提供し、医療側との対話をサポートし、更に家族に適切な心理的ケアを提供する役割を担い、一定規模以上の医療機関に配置します。

②訴訟以外に、医療事故被害者のニーズに弾力的に応じる「裁判外紛争処理機関」を設置します。相談機能、合意型紛争解決手続、仲裁型紛争解決手続を複合的に備え、全国の主要箇所に配置します。

③国の機関として「医療安全委員会」を設置します。医療機関の管理下における事故の申立を受け、独自の調査と医学的検査(解剖・各種検査とその保全を含む)により事故原因の究明を行い、再発防止策を提案します。

医師不足を解決し、地域医療体制をたてなおします
 地方でも都市でも、医師不足は重大な社会問題です。最大の原因は、「医者が増えると医療費が膨張する」といって医師の養成数を減らし、日本を世界でも異常な「医師不足の国」にしてきた自民党政府の失政です。さらに、診療報酬の削減、国公立病院の統廃合、大幅な病床削減など、公的医療保障を際限なく切り捨てる自公政権の「構造改革」が、地域の「医療崩壊」を加速しています。この間、政府・与党も「医師確保」を言い出しましたが、「医師数抑制」という根本方針に手をふれないなど、解決策にはほど遠いものです。日本共産党は、深刻な医師不足を打開し、安心してかかれる医療提供体制をまもり、拡充するため、力をつくします。

 ──国公立病院の産科・小児科切り捨てをやめ、地域に産科・小児科を確保するための公的支援を強化します。

 ──「医学部定員削減」の閣議決定を撤回し、医師養成数を抜本的にふやします。

 ──勤務医の過重労働を軽減するため、薬剤師、ケースワーカー助産師、スタッフの増員をはかります。院内保育所や産休・育休保障など家庭生活との両立を支援します。

 ──医療の安全・質の向上、医療従事者の労働条件改善、地域医療にかかわる診療報酬を引き上げます。

 ──不足地域・診療科に医師を派遣・確保する国の制度を確立します。

 日本国民の死因の第1位である、がんの予防・治療には、国が総合的な対策をすすめることが必要です。ところが、政府・与党は、窓口負担増、保険証とりあげ、がん検診に対する国庫補助廃止など、がんの予防や早期治療に逆行する施策をとりつづけてきました。がん検診では各地で有料化、対象者選別、検診内容の劣悪化が問題となっています。所得にかかわらず高度な治療・検査が受けられる体制の確立、未承認抗がん剤の治験の迅速化とすみやかな保険適用、研究予算の抜本増と専門医の育成、がん検診への国の支援の復活など、総合的がん対策をすすめます。

 はしか対策をすすめます。国の責任でワクチンを備蓄し、追加接種が必要な人には公費助成をおこなうなど、感染・流行を防ぐ、あらゆる手立てをとります。

 薬害(肝炎、イレッサMMRなど)の解決と被害者救済に全力をあげます。薬害肝炎について、ウィルス検査の公費助成、医療費助成制度の実施、被害者の生活保障などをすすめます。タミフル問題の実態調査と原因究明をすすめ、責任を明らかにします。

 救急体制の確保は、人の生死を左右する課題です。この十年間で救急出動件数が65%も増加しているのに、救急隊員数は9%増にとどまるなど、政府の責任放棄が患者の命を脅かし、救急現場の矛盾を拡大しています。さらに、政府は、救急車の有料化、通報段階で患者の「緊急性」を選別して切り捨てる「トリアージ」(治療の優先順位の選別)の導入など、「命の格差」を拡大する改悪を検討しています。日本共産党は、16年前から国会でドクターヘリの導入を提案するなど、救急体制の充実をいっかんして要求してきました。救急車の有料化、トリアージ導入などの改悪に反対し、救急体制の拡充をすすめます。

充実の医療 ささえあう 福祉
3.小児科、産科等を拠点病院に集める集約化が、地域の医療を後退させています。集約化ではなく、病院と診療所や助産院のネットワークづくりと役割分担をすすめ、地域の医療、お産の場所を守ります。

4.医学部の定員を8300人に戻し、学士入学の枠を広げます。医師の地方勤務を評価する制度を創設します。

9.がん治療水準の向上と均てん化、肝炎や難病への支援強化に取り組みます。リハビリの日数制限を廃止します。

2.就学援助制度奨学金・育英制度を拡充して教育の機会均等をすすめます。高等教育の無償化を目指します。私学助成を拡充し、公私間の学費の格差を縮小させます。