【9】京都議定書の約束を達成し、さらに低エネルギー・低炭素社会への転換を進めます
安倍内閣は「世界全体の温室効果ガス排出量を現状に比して2050年までに半減する」方針を閣議決定し、独ハイリゲンダム・サミットでも、「2050年」に「半減」という長期の目標にかかわる言葉が盛られました。しかし、いま日本は、直近の目標である京都議定書での約束(2012年までに90年比6%削減)を達成する見込みがたたず、二酸化炭素排出は逆に8%も増えています。
京都議定書で公約した「6%削減」の達成に、あらゆる手をつくします……京都議定書の目標達成には、排出量の8割を占める企業・公共部門での削減がカギです。ところが、政府は財界の要求に屈し、日本経団連の「自主」行動計画まかせにしています。また家庭(排出量の2割)でも、電気製品台数の増加や自動車の大型化、単身化による世帯増の影響で、二酸化炭素の排出が増加しています。
──経済界と政府の間で削減協定を締結し、達成責任を公的に裏うちします。
──小規模水力、風力、太陽光・熱、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの開発・活用を抜本的に進めます。
──現行のエネルギー課税を見直し、二酸化炭素の排出量を考慮した環境税の導入をすすめます。
──商品や施設の省エネ促進とともに、二酸化炭素の排出を増やす長時間営業・労働や、都市再生の名による大規模な高層マンション・建物の建設、郊外店の増加などに歯止めをかけ、生活スタイルや経済活動の改善を図ります。
中長期の目標を明らかにして、低エネルギー・低炭素社会への転換をすすめます……科学者やEU、NGOは、気候変動を破局的な危険のレベルに達するまえに抑えるためには、工業化以前に比べて2度未満に気温の上昇を抑えることが必要だと考えています。それには、増え続けている二酸化炭素の排出量を2050年までに50%以下(1990年比)に削減する取り組みが求められ、とくに先進国は60%〜80%という大幅な削減をしなければなりません。
──日本も2020年までに30%、50年には70%削減することを目標に掲げ、それにむけて経済システムや生活スタイルなどを改革して、低エネルギー・低炭素社会へ転換すべきです。
原子力発電所の新増設をやめ、原発から段階的に撤退する……政府と電力会社は、温暖化対策を原発の新増設にたよろうとしています。しかし、原発は、技術的に未確立であり、耐震性を含めた安全性の問題、事故隠し・データねつ造が示す管理能力の欠如、放射性廃棄物の処理など、環境にとって大きな危険をかかえています。原発から計画的・段階的に撤退すべきです。
【7】環境問題
持続可能な経済・社会を実現するため、環境問題に真剣にとりくみます
21世紀の世界を持続可能な経済・社会とするためには、温暖化ガスの大幅削減を実現する対策など地球環境の保全の見通しをたてるとともに、国内のアスベスト対策や大気汚染対策など身の回りの環境対策に真剣にとりくむことが必要です。将来にわたって良好な環境を維持していくために、環境汚染を規制し、生態系を守るとりくみを強化します。そのためにも環境汚染問題の解決には、少なくとも(1)汚染者負担の原則、(2)予防原則、(3) 国民・住民の参加、(4)徹底した情報公開──の視点が欠かせません。その立場で、次のようなとりくみを強めます。
京都議定書の目標を達成し、日本の中長期の温暖化ガスの削減目標を明らかにして、世界の温暖化抑制に貢献します
安倍政権は温暖化ガスの「世界全体の排出量を現状に比して2050年までに半減する」方針を閣議決定し(「21世紀環境立国戦略」)、独ハイリゲンダム・サミットでも、「2050年」に「半減」という長期の目標にかかわる言葉が盛られたと宣伝しています。しかし、いま日本は、直近の目標である京都議定書での約束(2012年までに90年比6%削減)を達成する見込みがたっていません。
京都議定書で公約した「6%削減」の達成に、あらゆる手をつくす……EUはすでに削減目標の達成を見越していますが、日本は削減するどころか、逆に8%も増加しており、現在のままでは期限(2012年)までに目標を達成することは、極めて困難です。
石炭や石油などの化石燃料を燃やした時点で排出量を計算すると、エネルギー・産業部門が日本の二酸化炭素排出量の65%をしめています。とくに産業部門の割合は主要国のなかで最大となっています。発電所、高炉製鉄所など180の事業所が日本全体の排出量の半分を占めています。日本経団連は、日本の製造業が世界一効率がいいと強調していますが、欧米の先進国と比べ、ほぼ同じか中には日本が劣るものもあります。90年代にエネルギー効率を上げる投資を企業がしなかったことや、火力発電所が増加したことによって、景気が上向けば排出量が増える状況になっており、政府が頼みにしている日本経団連の「自主」行動計画では、総量目標を達成する裏づけにはなりません。
安倍内閣は、こうした問題を放置したまま、二酸化炭素の排出量の「1人1日1キログラム削減」をスローガンに「国民運動」を提唱しています。生活スタイルの見直しは大切ですが、家庭部門の排出量は、全体の5%であり、それを削減の決め手とするのは無理な話です。
やはり日本の排出量の8割を占める企業・公共部門での削減がカギです。政府は日本経団連の「自主」行動計画まかせにせず、経済界と政府の間で削減協定(自主協定)を締結し、達成責任を公的に裏うちすることが大切です。排出権取引を実施し、そのさい各企業の排出状況と実効性のある削減目標を明らかにさせることが重要です。
排出量の多いエネルギー部門では、小規模水力、風力、太陽光・熱、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの開発・活用が決定的です。自然エネルギーの活用を広げるため、目標量を抜本的に引き上げるとともに、電力会社が買い取り価格を引き上げ、固定価格で買い取ることが必要です。既存のエネルギー税制を見直して、温暖化ガスの排出量を考慮した環境税を導入すべきです。
家庭でも、電気製品台数の増加や自動車の大型化によるエネルギー消費の拡大、核家族化・単身化による世帯増の影響で、温暖化ガスの排出が増加しています。また、労働規制の緩和や残業規制の不徹底、深夜労働による長時間営業・労働や帰宅・出勤時間の不規則化、大規模小売店舗法の廃止による大型店の郊外出店による自動車の多用、都市再生の名による大規模な高層マンション・建物の建設促進によるエネルギーの多用なども、エネルギー消費をふやしています。
地域でも路面電車など公共交通機関へのシフトや、パーク・アンド・ライドの推進、ロード・プライシング制の検討などで都市部への自動車流入の抑制をはかります。都市の気温が上昇するヒートアイランドを防止するため、都市の過密化を避け、緑化の促進をはかります。エネルギーのロスを減らし省エネをすすめるためには、廃熱利用、ヒートポンプの普及、エネルギーの“地産地消”、建物の断熱と交通輸送の切り換えや共同化によるまちづくりが重要です。
商品や施設の省エネをすすめ、「省エネ生活」への支援を強めるとともに、生活スタイルや経済活動を変えることが必要です。
中長期の目標を明らかにして、低エネルギー・低炭素社会への転換をすすめる……温暖化対策でいま重要なことは、気候変動が危険なレベルに達しない温度上昇の上限を共通の認識にし、その範囲におさえるために、空気中の温暖化ガス濃度をどう抑えるのか、そのために何が必要かを考えることです。
科学者やEU、NGOは、気候変動を破局的な危険のレベルに達するまえに抑えるためには、工業化以前に比べて2度未満に気温の上昇を抑え、温暖化ガスの濃度は1.7倍以内(480ppm程度)で早期に安定させることが必要だと考えています。それには、増え続けている温暖化ガスの排出量を基準年である1990年比で、2020年までには下回らせ、50年までには50%に削減するとりくみが求められています。
2050年に世界全体で温暖化ガスの排出量を90年比で半分にするには、日本をふくむ先進国が60%〜80%という大幅な削減をしなければなりません。それを見越してEUは2020年までに20%削減する方針を明らかにしており、50年までにフランスは75%、ドイツは80%の削減を検討しており、イギリスは60%の削減を目標にする法案を国会に提出しようとしています。
日本も、2020年までに30%、50年には70%削減することを目標に掲げ、それにむけて経済システムや生活スタイルなどを変革して、低エネルギー・低炭素社会への転換を目指すべきです。
大気汚染被害者を救済し、自動車メーカーに社会的責任をはたさせます
自動車排ガスと健康被害との因果関係を、あいついで司法が認め、国・都・道路公団に被害者への賠償を命じました。公害健康被害補償法(公健法)で認定されていなかった被害者の健康被害が司法で認められたのですから、国、東京都が救済するのは当然です。原告はメーカーの責任も追及し、判決は、健康被害を予見できたにもかかわらず、乗用車にまでディーゼル化をすすめたことなど、自動車メーカーの対応に社会的責任上、問題があったと指摘しました。メーカーは超低額の解決一時金(賠償金)ではなく、被害者の要求にこたえるべきです。また、企業がいま使用しているディーゼル車の汚染物質(粒子状物質や二酸化窒素など)除去装置の実用化など、メーカーが社会的責任を果たすよう求めます。大都市部への基準不適合車の流入を抑え、幹線道路における汚染状況のひどい地域での走行規制など、汚染対策をすすめます。くるま優先で自動車道路の建設を促進して公害を悪化させる行政の姿勢の転換を求め、行政・メーカーに必要な情報公開を義務づけ、環境・製品アセスメントを強化します。
【8】エネルギー問題
自然エネルギーの開発・利用を広げ、原発依存のエネルギー政策を転換します
エネルギーは食料とともに経済・社会の存立の基盤であるにもかかわらず、日本のエネルギー自給率はわずか6%(2005年度)にすぎません。
イラク、イランなど中東情勢の緊張や、中国やインドなど発展を続ける途上国のエネルギー需要の増加、先物取引などの投機によって、石油や天然ガスの高値が今後も続くとみられています。政府は、灯油などの小売価格の便乗値上げを監視するとともに、備蓄を機動的に使うことや、自治体が冬季に実施している福祉灯油制度への助成を準備するなど、国民生活を守るための対策をとるべきです。
エネルギー問題は、地球の温暖化対策とも密接な関係があります。日本は、京都議定書にもとづいて2010年前後までに二酸化炭素などの温暖化ガスの排出量を、1990年比で6%削減する義務があります。その日本の目標は、達成が危機的状況にあります。政府は原発の新増設を頼みの綱としていますが、原発は安全性に問題があり、原発に依存するのではなく自然エネルギーの導入に本腰を入れるべきです(→温暖化対策全般については、個別・分野別政策の環境の項を参照)。
省エネの徹底やエネルギー効率の引き上げによって低エネルギー社会を目指すとともに、日本の条件にあった自然エネルギーの開発・利用を計画的に拡大することで、エネルギーの受給率の引き上げをはかります。
太陽光・熱、小水力、バイオマスなど自然エネルギーの開発・利用を本格的に促進します
地球の温暖化防止のためにも、エネルギー政策はかなめです。エネルギーの自給率を引き上げ、また地球温暖化対策をすすめるためには、エネルギー効率の徹底した向上とともに、環境に配慮した自然エネルギー源の開発・利用に本格的にとりくむ必要があります。風力や太陽光・熱、地熱、小水力、波力や、あるいは畜産や林業など地域の産業とむすんだバイオマス・エネルギーなどは、まさに地域に固有のエネルギー源です。そこから得られる電気やガスを販売することで地域に新たな収入が生まれます。事業の成果や副産物を地元に還元したり、雇用や技術、資金の流れを地元に生み出すことで、地域経済の活性化に役立ちます。
2020年の一次エネルギーにおける自然エネルギーの割合を15〜20%に引き上げることをめざし、自然エネルギーの開発・利用のとりくみを強めます。導入目標の大幅な引き上げ、固定価格による電力の買い取り制度を導入など、自然エネルギーの普及にとりくんでいる人たちの声を反映させ、意欲の出る制度に改善します。廃棄物発電は、林業の廃材や加工くずなどに限定し、廃プラスチックなどを大量に燃やすやり方は対象外にすることが必要です。小規模・分散型という特徴をもつ自然エネルギーを利用して発電した電力を利用し、既存の電力供給システムに組み込んでいく系統連携のやり方についても、地域での先行的なとりくみをやりやすくするために、制度の改善や財政的支援を自治体や政府に求めます。
自然エネルギーの設備設置への補助を手厚くし、発電量に応じた助成の創設を求めます。原子力のために巨費を注ぎ込んでいる電源開発促進税や、石油関係諸税などの税制の見直しを前提に、化石燃料の消費や自動車などがもたらす環境への負荷も考慮し、二酸化炭素の排出量などに着目した環境税の導入によって、自然エネルギー促進のための財源の充実をはかります。
バイオ燃料は、食料と競合しない植物資源を使い、国内産・地域産の資源を優先活用します
近年、原油価格の高騰などを背景に、世界各国でバイオエタノールの生産が急増しています。最大の生産国・アメリカではトウモロコシ原料のエタノール生産が前年比3割増となり、2017年には05年比で10倍にするというブッシュ政権の計画のもと、エタノール工場の建設ラッシュが続いています。
この動きは、トウモロコシの需給をひっ迫させ、国際価格をこの1年で倍近くに高騰させました。それが隣国メキシコでは庶民の食生活を直撃するなど、バイオエタノールの開発が、途上国や低所得者の食料を脅かしています。日本でも、トウモロコシの輸入価格が大幅に上昇し、飼料や多くの食品に影響が出ています。
バイオエタノールは、地球温暖化対策に役立ちますが、原料となるサトウキビ生産の拡大やパーム油生産のためのヤシ農園の建設による熱帯林の破壊が、各国で新たな環境破壊として問題になっています。
日本政府は、エタノールを含むバイオ燃料の利用促進を打ち出していますが、その大部分は輸入を見込んでいます。二酸化炭素の排出削減をいいながら、二酸化炭素の吸収源である森林を破壊するのでは、地球環境にやさしいエネルギー開発とはいえません。
日本共産党は、バイオ燃料の開発・導入を自然エネルギーの重要な柱であると考えています。その具体化にあたっては、食料需要と競合しない植物資源に限定する、国内産・地域産の資源を優先的に活用する(「地産地消」)、生産・加工・流通・消費のすべての段階で環境を悪化させない持続可能な方法を採用するなど、新たな環境破壊をひきおこさないためのガイドラインをもうけるよう政府に要求します。
プルトニウム利用をやめ、原発からの段階的な撤退をすすめます
政府と電力会社が温暖化対策を口実に新増設を図っている原発は、十分な安全の保証がなく技術的に未確立です。磨耗した配管の破裂で死傷者を出した美浜原発の事故(2004年)にひきつづき、冷却用海水温のデータねつ造が明るみにでただけでなく、臨界事故を志賀・福島の各原発が起こしたことを隠していた事実が次々と発覚しました。経済産業省の指示で電力会社が行った調査の結果報告(07年3月)によれば、問題事例が全体で1万件をこえ、うち原子力関係が455件もあるという驚くべき数に上りました。ルール違反の横行とずさんな検査体制や経営・管理の実態は深刻です。さらに東海地震の想定震源域の真上に浜岡原発が存在するような政府・電力会社の原発立地のあり方は、無謀としかいいようがありません。放射性廃棄物の処理と万年単位の管理の問題、莫大な費用がかかる問題など、多くの問題が解決されないままです。
こうした問題を抱えた原発から、計画的に撤退すべきです。原発の危険性を増幅するだけのプルサーマル計画や高速増殖原型炉「もんじゅ」の運転再開計画は撤回し、六ヶ所再処理工場をはじめ核燃料サイクル施設の総点検を実施し計画を中止すべきです。原発の総点検をおこない、老朽原発をはじめ安全が危ぶまれる原発については、運転停止を含めた必要な措置をとらせます。
政府は、自治体にプルサーマル実施の許可や、高レベル放射性廃棄物の最終処分場への応募をうながし、受け入れれば手厚い補助金を出すとしていますが、補助金と引き換えに住民に危険を押しつけるようなやり方はやめるべきです。
安倍内閣は、「原子力立国」をかかげて原発の輸出や核燃料供給を目指していますが、国内外で、安全を軽視した原発の新増設をすすめることはやめるべきです。