科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

2020年を今週の記事から振り返る

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         No.902 2020年12月29日号 巻頭言
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【巻頭言】
★2020年を振り返る
2020年12月22日~2020年12月29日
カセイケン代表 榎木英介

 2020年最後のメルマガです。

 創刊から17年。900号を超えることができました。これも読者の皆さまがいらっしゃるからです。

 記事の感想のメールなどもいただいていますが、全てにお答えできていません。申し訳ありません。けれど全てに目を通しています。この場を借りて御礼申し上げます。

 厳しいご指摘もありますが、貴重なご意見として受け止めています。

 2020年はいうまでもなく、新型コロナウイルスを抜きに語ることができません。社会のあらゆる部分が影響を受けました。

 中でも科学と社会、科学と政治のあり方が問われることとなりました。

 今週のニュースから、今年を振り返ってみたいと思います。

菅総理は全世界からの外国人新規入国一時停止等について会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1228kaiken.html

菅総理新型コロナウイルス感染症に関する記者会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1225kaiken.html

新型コロナウイルス感染症対策分科会(第19回)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/corona19.pdf

現在直面する3つの課題
新型コロナウイルス感染症対策分科会 令和2年12月23日
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/cyokumen_3tsunokadai.pdf

 専門家の知見を政治にどう届けるのかが大きな問題となりました。

 今年の前半では、専門家たちが全面に立ち、あたかも政策を主導しているかのような状態となり、殺害予告さえ受けるような事態となりました。

 後半では、専門界の意見を政府が受け止めず、感染拡大となりました。

新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの接種について(案)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060201223&Mode=0

 パブリックコメントを受付中です。

 話を戻しますと、科学と政治の問題は日本学術会議に及びましたが、新型コロナウイルスをめぐる専門家と政治の関係と共通の課題があることを知らしめたようにも思います。

第25期日本学術会議会長 梶田隆章 挨拶
http://wwwc.cao.go.jp/lib_011/head/message/kajita-1/kajita-1.html

日本学術会議
第25期 幹事会 記者会見資料
令和2年12月24日(木)16:30~17:00
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo306-kaikenshiryo.pdf

学術会議在り方、検討継続 井上科技相と梶田氏が合意
https://www.chunichi.co.jp/article/175727

学術会議在り方判断、年内見送り 組織形態の検討条件に協議継続
https://www.chunichi.co.jp/article/174830

学術会議の独立、来春以降に判断 議論足りず、先送りに
https://www.asahi.com/articles/ASNDS5R5MNDSULBJ00D.html

学術会議改革案 科技相「来年4月までに」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE249RP0U0A221C2000000/

科学 2020年1月号
https://www.iwanami.co.jp/kagaku/KaMo202101.html

特集
学術会議任命問題と助言の本質

知事からのメッセージ 令和2年12月28日
新型コロナウイルス感染症対策(その47) ‐データの示す急所‐
https://www.pref.wakayama.lg.jp/chiji/message/20201228.html

 今和歌山県の仁坂知事への評価が高まっています。上記の資料が示すように、科学的知見を適切に取り入れて、リーダーシップを発揮し感染対策に当たっています。

 仁坂知事は極めて優れた人だと思います。

 ただ、俗人的に優れた人に頼るのだけではない、科学的助言の仕組み作りが必要だと思います。

 政府は考える政策に都合の良い助言だけが欲しくて、それに合致しない知見はいらない、間違っていると考えているようです。

 そして、自分たちに都合が悪い意見には制裁さえ加える素振りを見せています。

任命拒否巡る国立大学長アンケ、6割超が回答せず 国の「顔色」うかがい沈黙
https://mainichi.jp/articles/20201223/k00/00m/040/297000c

 この素振りで、現場は縮こまりました。

 こうした事態にどう対処すれば良いのでしょうか。

 独立した中間的な団体、すなわちNPOが必要だと思います。

 私たちカセイケンもその一つです。

 私自身も既存の組織などから距離を置くため、フリーランス病理医となりました。もちろんこの世で生活している以上、完全な独立などあり得ないのではありますが。

新型コロナで揺らぐ「科学立国ニッポン」の土台
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20201227-00010000-wedge-soci

 先日放送されたNHKスペシャルのまとめ記事。故有馬朗人氏が死の数日前に出演していました。若手研究者の置かれた状況にスポットライトが当たっていました。

パンデミック 激動の世界 (6)「“科学立国” 再生への道」
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/J9MZXNWK6X/

博士課程の学生に最大290万円…厳しい経済状況に置かれる若手研究者の支援、どうあるべき?
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20201223-00010020-abema-soci

学校基本調査-令和2年度 結果の概要-
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/k_detail/1419591_00003.htm

 若手研究者支援に関しては進展がありました。先週お伝えしたように、大臣が声明を出し、かつ予算も組まれました。

就職氷河期世代支援に関する行動計画2020について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15694.html

 一方で取り残された氷河期世代は厳しい状況のままです。

日本企業で出世する人たち、じつは「超低学歴」ばかりになっていた…!【2020年ベスト記事】
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78870

日本の場合、特に文系だと修士号や博士号を取得していると、逆に出世できなくなるケースすらある。ムラ社会だと修士号や博士号を持っていると「異端」に位置づけられて、「本流」から外されてしまうわけです。

実際に某メガバンクで、土日に頑張って論文を書いて博士号を取得して、そのことを人事部に報告した直後から昇進が止まったという話を聞いたことがあります(笑)。

変化の時代に対応するために思考力を評価して、エリートを選抜しようとすると、それに見合った学力を付けなければいけない。これが、年功序列の仕組みと矛盾するわけです。

 こうした社会の状況がある中、なかなか博士号取得者の居場所が見つからない状態が続きました。

 優遇された若手が若手でなくなったときに、氷河期世代と同じようにならないか危惧されます。

第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~(令和2年12月25日閣議決定) | 内閣府男女共同参画局
https://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/5th/index.html

第4分野 科学技術・学術における男女共同参画の推進
https://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/5th/pdf/2-04.pdf

現在、研究職・技術職に占める女性の割合は増加傾向にあるものの、日本は16.6% と諸外国と比較して低水準にとどまっている。研究者の前段階となる大学・大学院生 における専攻分野別の女性比率を比較すると、理工系学部が低い。研究職・技術職は、 職業人としての専門性を身に付けキャリアアップにつながる職種であり、女性の更な る参画拡大が望まれる。そのためには、分野ごと、地域ごとの課題を精査し、実効性の ある対策実施を促進する必要がある。

私もインポスター症候群だった 女性研究者が道を切り開くまで
https://globe.asahi.com/article/14050099

追い込まれる女性研究者 家事・育児の両立重く
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67707060V21C20A2TJM000/

「医者になる」女性の夢砕いた入試差別 再調査の結果…
https://www.asahi.com/articles/ASNDT72SJNDHUUPI001.html

医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係る調査について
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1409128.htm

国公私立大学医学部医学科の入学者選抜における男女別合格率について
https://www.mext.go.jp/content/20201225-mxt_daigakuc02-100001375_1.pdf

【大学受験】医学部の男女別合格率、文科省が公表
https://resemom.jp/article/2020/12/28/59710.html

【独自】医学部の男女別合格率、毎年公表へ…文科省
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20201225-OYT1T50287/

 女性研究者や女性医師の問題も大きな課題として来年に積み残されました。

国立大学法人の戦略的な経営実現に向けて~社会変革を駆動する真の経営体へ~ 最終とりまとめ(令和2年12月25日)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/105/mext_00001.html

学部解体の断行も、地方国立大学は破壊的改革へ
https://newswitch.jp/p/25215

 大学も変革を要求されています。

令和2年度科学研究費助成事業の配分について
https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/1422129_00001.htm

科研費に関するご意見・ご要望への対応について
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/06_jsps_info/g_201224/index.html

 科研費に対する多様な意見。

デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書『DXレポート2(中間取りまとめ)』を取りまとめました
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004.html

過去50年間で最大の「科学的不正」とは?
https://www.gizmodo.jp/2020/12/worst-scientific-irregularities.html

Horizon 2020 by the numbers: how e60 billion was divided up among Europe’s scientists
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03598-2

 今年でHorizon2020も終わりました。2021年からHorizen Europeが始まり、イギリスが離脱します。

 以上、今年最後のメルマガをお送りしました。

 来年も今年と変わらず地道にウォッチ活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.902 2020年12月29日号 巻頭言
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「大型船」科学政策を動かすには

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★発行部数 2,567部(12月22日現在)
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         No.901 2020年12月22日号 巻頭言
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【巻頭言】
★「大型船」科学政策を動かすには
2020年12月15日~2020年12月22日
カセイケン代表 榎木英介

 若手研究者重視の姿勢はかつてないほど強まっているように見えます。

★井上科学技術政策担当大臣から日本の未来を担う研究者の皆さまへのメッセージ
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20201215.html

文部科学大臣メッセージ(博士を目指す学生の皆さんへ)
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00418.html

 先週予算案決定を受けて、科学技術担当大臣や文科大臣がメッセージを相次いで出しました。

 メッセージくらいなんなんだ、ということではありますが、それでも一つのイシューに対して大臣クラスが公式に発言することには重みがあります。

★令和3年度政府予算案
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2021/seifuan2021/index.html

令和3年度予算(文科省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420672_00002.htm

 博士課程学生の経済的問題は、私自身20年前からいろいろな場で言ってきました。

Japan's funding cuts hit the future of science
Eisuke Enoki
Nature volume 414, page485(2001)
https://www.nature.com/articles/35107230

 このメルマガも2003年から発行し続け900号になりました。上記のNature投書の3年後からやっています。

 そして必ずしも経済問題ばかり言っていたわけではありません。

科学・技術ミーティングin大阪について
【平成22年3月20日
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/syutyo/100320osaka.html

 本も書きましたし、会議にも出ました。政府に直接意見を言ったこともあります。

 たくさんの人が声をあげ、行動しました。時に悲惨な目に遭うこともありました。

 私自身は学位取得すらままならない状態に追い込まれ、10年前活発に発言していたTJO氏はアカデミアに居場所を失いました。

研究者を辞めた時のこと、そしてその後のこと
https://tjo.hatenablog.com/entry/2019/01/31/190000

 長い時間の間に若手は若手ではなくなっていきました。アカデミアを去り、距離をおいた人たちも数知れず。

NHKスペシャル パンデミック 激動の世界(6)「“科学立国” 再生への道」
https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2020122032575

 20日には若手研究者の苦境が「またも」メディアに取り上げられましたが、こうした苦境は過去何度も放送されてきています。

博士課程学生支援 約7000人対象 1人年間290万円ほど支給へ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201220/k10012774591000.html

 記事の中で若手の公務員の方々が動き出したことが取り上げられています。私も交流があり、大いに期待しています。

 しかし、こうした若手の動きも過去繰り返され、時に「鎮圧」されました。

 日本の政策は大きな船のようなもので、なかなか進路が変わりません。それは多くの人たちの思いが交錯しているからで、台湾やシンガポールなど人口規模の異なる国と比較することはなかなか難しいものがあります。

 だから、たとえ一人が体当たりしても簡単には進路変更しないし、したとして曲がっているようには見えません。

 しかし、繰り返し無数の人たちが思いを伝えた結果今回のような大臣のメッセージに繋がったようにも思います。目には見えなくても確実に曲がっていたのです。

 それはあたかも今流行りの鬼滅の刃のストーリーのようです。

 数百年に渡り剣士たちが闘いに挑み、おびただしい犠牲を払った末に…おっとネタバレなのでこれ以上は言いませんが。

 もちろん、ボリュームゾーン団塊世代の完全引退や少子化、抜き差しならない「研究力」の低下など大きな流れがあってのことではあり、個々の力は微々たるものですが、それでも積み重なった「屍」は無駄ではなかったと信じたいです。

 夜は明ける。思いは不滅…


 しかし、もう少し効果的な方法もあったかもとも思います。

 「屍」と書きましたが、たとえ研究者生命が失われても、人生は続いていきます。

Chemist Nancy Goroff eyes national stage despite losing race for Congress
https://www.sciencemag.org/news/2020/12/chemist-nancy-goroff-eyes-national-stage-despite-losing-race-congress

 アメリカではトランプ政権の誕生で研究者が政治に挑みました。

 議席を得られた人はごく僅かですが、それでもこうした当事者意識をもって何かを変えようと行動する人がいます。

 ロビー活動、アドボカシーも日本よりは積極的で洗練されています。

 日本にもより具体的効果的にアドボカシーを行おうとするグループが誕生しました。

 日本版AAAS準備委員会です。
https://jaas.group/

 私も裏方で関わる予定ですが、ようやく日本にもこうした動きが具体的に出てきたことに希望を感じます。

 科学政策という名の大型船を曲げる方法は、小型船で体当たりするだけではないということです。

 船の乗組員になるという方法もあるし、乗組員に意中の人を選ぶという方法もあります。船の会社と交渉することもあれば、中型船くらいでぶつかっていくという方法もあるでしょう。

 「屍」となった私は、一人乗りボートではなく、もうちょっと大きな船(NPO法人)を仲間と作りました。船員の選び方や船が今どこを航行しているのかはウォッチし続けてきました。

 科学政策という名の船が運んでいるものは、私たち一人一人の国民にとっても重要なものです。その船が目的地につけるようにすることは、誰にとっても重要なのです。

URA、産学つなげる「第3の職種」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67341300V11C20A2TCN000/

有望人材、獲得のチャンス
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67358510V11C20A2TJ1000/

安定雇用など処遇に課題
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67341340V11C20A2TCN000/

 URAも非常に重要な役割を果たす職種ですが、雇用問題は大きいですね。

★科学と政治、問われた1年 語りたい理想 神里達博さん
https://www.asahi.com/articles/ASNDK53YGNDKUPQJ002.html

 神里さんはアメリカの政治学者ペルキーのモデル、政治との距離の4つの分類を紹介しています

 一つは政治と距離を置く「純粋科学者」。二つ目は問われれば応える「科学の権威者」。三つ目が特定の政策を推進する「代弁者」で四つ目が「誠実な仲介者(オネストブローカー)」だ。

 オネストブローカーは「実行可能な複数の選択肢を政治に対して示す」。

「代弁者」と違い、選択肢をむしろ広げる。政治の側は価値の議論を踏まえた上で、複数の可能性から一つの選択肢を選び、政治責任を負うのだ。
 当然、四つ目の助言者こそが科学的助言のあるべき姿だろう。このモデルによれば、専門的知識と、民主的な決定の両方を十全に活用することができるはずだ。象牙の塔にこもることなく、また単なる御用学者でもない。何よりも、政治の側が科学者に責任を押しつけて、判断を放棄することを防止できる。

 まさに今求められている存在だと言えます。

 日本版AAASが果たして代弁者ではなくオネストブローカーになれるかが勝負ですね。

 さて、神里さんの文章の中でも紹介されているバネバーブッシュが「The Endless Frontier」を出して75年。アメリカの科学アカデミー(科学・工学・医学)から文章が出されています。

The Endless Frontier: The Next 75 Years in Science (2020)
https://www.nap.edu/read/25990/chapter/1

 まだ未読ですが、75年で科学と政治のあり方がどのように「進化(深化)」したでしょうか。

菅総理新型コロナウイルス感染症の現状等について会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1216kaiken.html

「死者の一層の増加を懸念」 新型コロナ専門家組織が医療体制に強い危機感
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20201218_n01/

 新型コロナウイルスはまさに科学的助言、オネストブローカーの働く場であったはずですが…。

★総合科学技術・イノベーション会議 第11回基本計画専門調査会 - 総合科学技術・イノベーション会議 - 内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon6/11kai/11kai.html

議題

(1)科学技術・イノベーション基本計画について(答申素案)
(2)科学技術・イノベーション基本計画の進捗状況の把握・評価について
(3)全国キャラバンの実施状況報告
(4)その他

日本学術会議のより良い役割発揮に向けて (中間報告)
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo305-tyukanhoukoku.pdf

井上科技相、日本学術会議の梶田会長と面会へ…改革の基本方針を伝達
https://www.yomiuri.co.jp/science/20201221-OYT1T50195/

学術会議の「問題」は設置形態ではない - 高橋真理子
https://webronza.asahi.com/science/articles/2020121600007.html

日本におけるアカデミー機能の分散——なぜ日本学術会議日本学士院は分かれているのか
https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/78353/d1beb33aaca23caf715e532569b56971

 日本学術会議問題は、論点がずらされたまま民営化に向かっているようです。来年度の予算に関しては据え置きではありますが…。

 本来ならオネストブローカーの役割を果たす学術会議のこの有様に、科学と政治の関係の難しさが凝集されているように思います。

日本学士院の新会員に吉野彰氏ら10人
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20201216_n01/index.html

 もう一つの科学アカデミー、日本学士院ですが、新会員発表。

「科学技術への顕著な貢献2020(ナイスステップな研究者)」の選定について
https://www.nistep.go.jp/archives/46302

医師の働き方改革の推進に関する検討会 中間とりまとめの公表について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15655.html

宇宙基本計画 - 内閣府
https://www8.cao.go.jp/space/plan/keikaku.html

工程表(令和2年12月15日 宇宙開発戦略本部決定) 
https://www8.cao.go.jp/space/plan/plan2/kaitei_fy02/kaitei_fy02.pdf

オープンサイエンス
専門外から研究に参加
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67477660Y0A211C2MY1000/

市民参加によってイノベーション拠点ドイツを強化
https://crds.jst.go.jp/dw/20201216/2020121625192/

Elsevier社、DORAに署名
https://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=12460

Opinion: Being Scientists Doesn’t Make Us Science Communicators
https://bit.ly/3hbU3x3

もしあなたが科学者で、これらの科学コミュニケーションスキルをまだ磨いていないのであれば、最初の試みとしてツイッターに飛びつくのはやめましょう。それよりも、プロからのフィードバックを受けられるような低ステークス環境で、科学コミュニケーションを実践する機会を探してみてください。

Researchers retract controversial female mentorship paper
https://www.sciencemag.org/news/2020/12/researchers-retract-controversial-female-mentorship-paper

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第3次補正予算 博士重視を鮮明に

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【巻頭言】
★第3次補正予算 博士重視を鮮明に
2020年12月8日~2020年12月15日
カセイケン代表 榎木英介

 メルマガ本体を出した後に大きなニュースが。

財務省 令和2年度補正予算(第3号)
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/hosei1215.html

 第3次補正予算案が閣議決定されました。

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止策に4兆3,581億円、ポストコロナに向けた経済構造の 転換・好循環の実現に11兆6,766億円、防災・減災、国土強靱化の推進など 安全・安心の確保に3兆1,414億円などです。

 この中で、研究者の育成に関わる予算がつけられています。

文部科学省 補正予算(第3号)(案)
https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420672.htm

世界レベルの研究基盤を構築するための大学ファンドの創設 5,000 億円
大学ファンドを創設し、その運用益を活用することにより、世界に比肩するレベルの 研究開発を行う大学等の共用施設やデータ連携基盤の整備、若手人材育成等を推進する ことで、我が国のイノベーション・エコシステムを構築する。

◆我が国の研究力の抜本的強化に向けた取組の加速 312 億円
若手を中心とした研究者に対する創発的研究支援事業を拡充するとともに、博士課程 学生に対する支援強化のため、自由で挑戦的・融合的な研究を行う博士課程学生を支援する事業の創設及びフェローシップ支援等を開始するために必要な体制の整備を行う。

令和2年度文部科学省 補正予算(第3号)案の概要 (PDF:623KB) PDF
https://www.mext.go.jp/content/20201214-mxt_kaikesou01-100014477-000_1.pdf

より。

科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設準備事業
https://www.mext.go.jp/content/20201214-mxt_kaikesou01-100014477-000_2-1.pdf#page27

に詳細があります。

1 博士課程学生の処遇向上(生活費相当額(180万円以上)の支援を含むフェローシップ)と、2キャリアパスの確保(博士課程修了後のポストへの接続)を、全学的な戦略の下で、一体として実施する大学への新たな補助金を令和3年度に創設すべく、支援機関の早期採択を実施。採択機関において、対象学生の選定や、先行的な体制整備等を令和2年度中に実施し、令和3年度当初からの学生支援を遅滞なく開始する。
キャリアパスの確保は当該大学の研究員ポストや、企業等の外部ポストへの接続が要件。なお、企業・関係機関等と連携し、インターンシップや共同研究等の人材育成プログラムの活用等を想定。

世界レベルの研究基盤を構築するための大学ファンドの創設
(国立研究開発法人科学技術振興機構出資金)
https://www.mext.go.jp/content/20201214-mxt_kaikesou01-100014477-000_2-1.pdf#page25

【事業イメージ・具体例】 10兆円規模の大学ファンドを創設し、その運用益を活用することにより、世界に比肩するレベルの研究開発を行う大学の共用施設やデータ連携
基盤の整備、博士課程学生などの若手人材育成等を推進することで、我が国のイノベーション・エコシステムを構築する。
具体的には、 ○世界に伍する規模のファンドを運用し、その運用益で博士課程学生などの人材育成含む長期的・基盤的な研究開発基盤の構築を支援。
○大学改革を進め、経営体として準備が整った大学が、国内外の「競争環境」下で、経営体として自立し世界に伍する研究大学に成長していくた めの真のイノベーション・エコシステムに変革するための仕組みを構築。

 ファンドについては懸念も。

★10兆円大学基金へ「金」売却 官頼み、苦肉の財源捻出
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODB073BS0X01C20A2000000/

創発的研究の推進
(創発的研究推進基金補助金)
https://www.mext.go.jp/content/20201214-mxt_kaikesou01-100014477-000_2-1.pdf#page26

創発的研究支援事業】
応募要件:大学等における独立した/独立が見込まれる研究者 ※博士号取得後15年以内(育児・出産・介護等のライフイベントへは別途配慮)

採択件数:250件程度/年×3回公募(計850件程度)

支援単価:700万円/年(平均)+間接経費

支援期間:7年間(最長10年間まで延長可)

創発的研究若手挑戦事業】
応募要件:既存の枠組みにとらわれない自由で挑戦的・融合的な研究を実施する博士課程学生が所属する大学
支援人数:博士後期課程学生 6,000人程度
支援規模: 1人当たり290万円程度(人件費240万円程度含む)を想定

 若手研究者支援への取り組みに力が入っているように見えます。

報道
【独自】政府、博士課程1000人に年230万円支援へ…先進分野の研究支援
https://www.yomiuri.co.jp/national/20201215-OYT1T50084/

 さらに、萩生田文科大臣はメッセージを出しました。

博士を目指す学生の皆さんへ(文部科学大臣メッセージ)
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00418.html

 非常に大きな進展だと思います。国が博士号取得者を重視するというメッセージを公にしたわけですから。

 とは言え、繰り返しになりますが、既に若くない人たちは見捨てられたままです。

 その他。

令和2年度第3次補正予算(案)の概要(PDF形式:414KB)内閣府
https://www.cao.go.jp/yosan/soshiki/r02/yosan_r2_hosei_3.pdf

令和2年度第3次補正予算案(経済産業省関連)の概要
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2020/hosei/hosei3.html

令和2年度厚生労働省第三次補正予算案の概要
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/20hosei/03index.html

令和2年度農林水産関係第3次補正予算の概要について
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/yosan/201215.html

令和2年度第3次補正予算(案)の概要(令和2年12月)農水省
https://www.env.go.jp/guide/budget/r02/r02-hos_03-gaiyo.html

 日本学術会議ですが、自民党が提言を出しました。

日本学術会議の改革に向けた提言
2020年12月9日
自由民主党政務調査会
内閣第2部会
政策決定におけるアカデミアの役割に関する検討PT
https://www.jimin.jp/news/policy/200957.html

 トランスサイエンスやブダペスト宣言に触れています。しかし、任命拒否問題には触れていません。

菅総理は第49回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202012/14corona.html

菅総理はGoToトラベルの一時停止及び今年の漢字等について会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1214kaiken02.html

 新型コロナウイルス対策ですが、年末年始にGoToトラベルが一時停止になります。

 しかし、感染者や重症者がすぐには減少するとは考えられず、厳しい状況が続くと予想されます。

第18回資料
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/corona18.pdf

今後の感染の状況を踏まえた対応についての分科会から政府への提言
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/seifu_teigen_18.pdf

忘年会・新年会・成人式等及び帰省についての提言
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/bounenkai_shinnenkai_seijinshiki_teigen_18.pdf

新型コロナウイルス感染症対策本部(第 49 回)
1.開 会
日時:令和2年12月14日(月) 18時20分~18時50分
場所:官邸2階 大ホール
議事次第
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r021214.pdf

西村大臣からのお知らせ
(令和2年12月10日)Vol.92
大阪府の医療提供体制を支援していきます”
https://corona.go.jp/minister/20201210_01.html

第17回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(12月10日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00093.html

学生減に悩む米大学、教授の終身在職権も危うし
コロナ禍による変化が数世紀来の運営モデルを揺るがす
https://jp.wsj.com/articles/SB11337479942064503444304587149883741135096

 新型コロナウイルスは、社会のさまざまな部分に大きな影響を与えています。

★研究資金と成果の関係分析 政府、国立大の競争力向上
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO67228180R11C20A2MM0000/

★議事次第 令和2年12月10日 - 総合科学技術・イノベーション会議 - 内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20201210.html

議題

1.競争的研究費に係る事務負担軽減について

菅総理は令和2年第19回経済財政諮問会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202012/08keizaishimon.html

第19回会議資料 令和2年 会議結果- 経済財政諮問会議 - 内閣府
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/1208/agenda.html

議事

(1) 令和3年度予算編成の基本方針

コロナの状況踏まえてメリハリ付け、21年度予算編成-政府が基本方針決定
https://www.cbnews.jp/news/entry/20201209120735

令和3年度予算編成大綱
2020年12月10日
自由民主党
公明党
https://www.jimin.jp/news/policy/200956.html

★令和3年度税制改正大綱
2020年12月10日
自由民主党
公明党
https://www.jimin.jp/news/policy/200955.html

医療機関の再編、登録免許税率を軽減へ-与党税制改正大綱
https://www.cbnews.jp/news/entry/20201210202443

★第16回会議資料 : 選択する未来2.0 - 内閣府
https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/future2/20201214/agenda.html

議事

(1)ポストコロナの社会について有識者から御講演
(2)意見交換

 村上陽一郎氏がプレゼンしています。

★国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の調査結果に関する萩生田文部科学大臣コメント
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/detail/1422960_00001.htm

国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の調査結果
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/detail/1344312.htm

が出ましたが、課題も浮かび上がっています。

日本の理数学力、トップ水準維持 一部低下も全教科5位以内
https://www.chunichi.co.jp/article/167104

「理科好き」日本の小4、でも得点低下 理数の国際調査
https://www.asahi.com/articles/ASND85RGRND4UTIL054.html

「虫は動物じゃない」という子も 国際調査で浮かぶ課題
https://www.asahi.com/articles/ASND865L1ND7UTIL05P.html

★第11回医師の働き方改革の推進に関する検討会 資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15438.html

第10回医師の働き方改革の推進に関する検討会 議事録
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15327.html

★医療計画の見直し等に関する検討会 外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等に関する報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000146913_00003.html

★2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について
https://www.env.go.jp/press/108734.html

2020年世界CO2排出 コロナで7%減も温暖化止まらず 
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGG116QN0R11C20A2000000/

温暖化ガス2.7%減 19年度、6年連続マイナス
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGG079KX0X01C20A2000000/

パリ協定採択から5年 国連「気候の非常事態」宣言し対策求める
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201213/k10012761431000.html

【独自】「温室ガス2050年までにゼロ」法制化へ…政府、国内外に決意示す
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20201212-OYT1T50306/

★A three-step process for resolving paper disputes
https://www.natureindex.com/news-blog/a-three-step-process-for-resolving-paper-authorship-disputes

★Excitement as outspoken HIV researcher named to lead key US
health agencyhttps://www.nature.com/articles/d41586-020-03495-8

HIV researcher named to lead battered CDC
https://science.sciencemag.org/content/370/6522/1256.full

保健行政に専門家結集
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67133470Y0A201C2FF8000/

 バイデン氏が着々と人事を進めています。

★やっぱり悩み深き『研究者の子育て』 - 高山善
https://webronza.asahi.com/science/articles/2020120200001.html

★産学つなげる「第3の職種」 存在高めるURA
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH094UT0Z01C20A2000000/

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.900 2020年12月15日号 巻頭言
【発行者】一般社団法人科学・政策と社会研究室(担当 榎木英介)
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有馬朗人氏の死去と日本版AAAS

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         No.899 2020年12月8日号 巻頭言
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【巻頭言】
有馬朗人氏の死去と日本版AAAS
2020年12月1日~2020年12月18日
カセイケン代表 榎木英介

 東大の総長や文部大臣等を歴任された有馬朗人氏が亡くなられました。ご冥福をお祈りします。

有馬朗人氏死去 元東大学長・文相、90歳
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG074HG0X01C20A2000000/

豊かな知識、俳句に結晶 有馬朗人さん死去
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67094440X01C20A2CC1000/

東大元学長の有馬朗人さん死去 90歳
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201207/k10012750731000.html

有馬朗人さん死去、90歳 原子核物理学者・元東大総長
https://www.asahi.com/articles/ASND762P4ND7UTIL033.html

 NHKのニュースには、亡くなる数日前に撮影されたインタビューが放映されていました。突然のことだったのでしょう。

亡くなる一週間ほど前の記事では、日本学術会議について発言されていました。

学術会議の人選は身内重視の「インブリーディング」 有馬元文相
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/113000165/

 有馬氏は日本の学術行政、大学行政等では「戦犯」のように思われており、SNS上でも厳しい言葉が出ていました。

 東大総長として大学院重点化を導き、文部大臣としては国立大学の法人化を容認しました。

 晩年は反省の弁も述べていましたが、「今更」というシニカルな声が起こっていました。

国立大学法人化は失敗だった」 有馬朗人元東大総長・文相の悔恨
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00158/051900003/

 90年台から2000年台にかけて、大学院重点化や大学院生を増やす計画等を端緒に、科学技術基本法の制定、ポスドク一万人計画、国立大学法人化など、さまざまな計画が実行されていきました。

 2020年の今、これらは日本の「研究力」を奪い、若手研究者を苦境に陥らせた原因ではないかと厳しい目で見られています。

 こうした政策決定の渦中に有馬氏は身を投じたわけです。

 後年本人にとって、こうした政策に関わったことはあまり良い記憶ではなかったようです。

 有馬氏がこうした政策にどの程度影響を与えたのかについては、検証が必要でしょう。こうした政策の背後には、減少する人口、落ちる国際競争力といった問題があり、決して大学や学術政策だけが突出していたわけではないからです。

 とはいえ、国会議員になり、文部大臣になり、こうした政策の責任を担う立場にいたわけで、有馬氏が無謬などというつもりはありません。

 問題は2020年現在、こうした政策の課題が明らかになっても、方向性が変わることはなく、むしろ「まだ改革が足りない」という捉え方さえあります。

 この政策の渦中に研究者を志し、翻弄された私としては、非常に複雑な思いを抱くと同時に、これからどうするのかが問題だと思っています。

 私たちはまだ生きていかなければならないのですから。

 これからどうするのか。その一つの道が、「日本版AAAS」です。

日本版AAAS設立準備委員会
https://jaas.group/

日本の科学が危機に瀕しています。日本の科学の凋落をくい止め、復活させ、明るい未来の礎を築くためには、科学の振興に意欲を持つ多様な立場の人々が対話・協力し、科学がこれまでに果たしてきた役割を分析・理解し、その理想的なあり方を検討し実現する必要があります。しかしながら、現在、日本にはそのようなことを行うことのできる場や組織が存在しません。私たちは、分野、組織、職種・職階、世代の垣根を超え、科学の振興に意欲を持つすべての人々が参加することのできる組織の設立を提案しています。

 私や仲間は、日本にも分野や立場を問わない科学を考える組織が必要だということをもう20年近く考えてきたわけですが、組織を作ったり、運営したりする難しさに直面し、なかなか実現に向けて動き出せませんでした。

 こうしたなか、若手研究者の中に、全米科学振興協会(AAAS)のような組織を日本でも作りたいという人たちが現れ、かつてあれこれ発言などしていた私達にもお声がかかりました。

 私たちカセイケンのメンバーも準備委員会に入っています。私たちは主に、この組織をNPO法人化し、組織を運営していくという裏方で関わろうと思っています。

 理想は誰でも言えます。評論家には誰でもなれます。

 しかし、組織を立ち上げ、お金を集め、各方面と交渉するなど、泥臭く地味な仕事を誰かが行わないと、利害が錯綜する社会の中で何も動きません。

 この30年、政策の問題を自分ごとと考え、キレイゴトの言葉だけでなく、汚れ仕事を厭わず現実を動かしていこうとする人がほとんど現れなかったことが、今の事態を招いているのではないでしょうか。

河野太郎大臣の行革スピード 迅速さに研究者から絶大な支持
https://www.excite.co.jp/news/article/Jisin_1919755/

 河野氏への研究者の支持は高いですが、一人の政治家に依存するのは危うい気もします。

 有馬氏は功罪ありつつも、選挙(参院比例ですが)に出て大臣をやるなど、少なくとも手を動かし汚名を被ることはしたわけです。晩年後悔したそうですが、後悔する必要はなかったと思っています。

★「学術会議、23年に独立を」自民PT、政府に提言へ
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67093150X01C20A2PP8000/

 日本学術会議の「完全敗北」を見ると、「政治」にコミットする人がいなかったことの大きさを感じます。

 違法状態が完全に無視され、世論すら味方にできませんでした。

菅首相の学術会議つぶしは「計算ずく」だったと言えるワケ
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20201129-00077809-gendaibiz-pol

★科学と政治は切り離せない
https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v17/n12/%E7%A7%91%E5%AD%A6%E3%81%A8%E6%94%BF%E6%B2%BB%E3%81%AF%E5%88%87%E3%82%8A%E9%9B%A2%E3%81%9B%E3%81%AA%E3%81%84/105643

菅総理は記者会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1204kaiken.html

 菅総理が会見で、学術会議に言及する際笑っていたことに批判が出ています。しかし、いかに悔しくても、現状では批判以外できない状態です。

 日本版AAASの設立の動きは、日本学術会議の問題の前から進んでいたことですが、まさにこのタイミングでオープンになったことは偶然ではないと思います。

 現場の声などを考慮しない上からの政策が続いた30年間の帰結として、日本学術会議の任命拒否や民間組織化があり、ボトムアップの組織の設立の機運につながったわけです。

 この30年の政策の象徴的存在だった有馬氏の死去と学術会議の問題、そして日本版AAASの動きがほぼ同時期に起こった意味は後世の歴史家が判断することになるでしょう。

 新型コロナウイルスの感染拡大は深刻な事態が続き、私の近隣の病院でもクラスターが発生するなど、厳しい状況です。

★医療従事者をはじめ身近な人に「ありがとう」をSNSで~感染拡大及び差別・偏見防止を図るため、官民が一丸となった対話型情報発信プロジェクト「#広がれありがとうの輪」を12月4日から開始します~
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15257.html

 ありがとうというのならカネをくれという声がSNS上に…。もちろん差別偏見の防止は極めて重要です。

★議事次第 令和2年12月3日 - 総合科学技術・イノベーション会議
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20201203.html

議題

1.米国新政権における科学技術政策動向について

 アメリカの状況がまとまった資料が公開されています。

米国の科学技術政策動向とバイデン新政権
2020年12月3日
国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20201203/siryo1.pdf

TSCトレンド
バイデン次期大統領で変わる米国の 技術イノベーション・気候変動政策
海外技術情報ユニット 技術戦略研究センター 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20201203/siryo2.pdf

菅総理は第5回成長戦略会議に出席しました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202012/01seicho.html

実行計画
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/pdf/jikkoukeikaku_set.pdf

医療・介護分野のデータ利活用など推進-政府、成長戦略実行計画
https://www.cbnews.jp/news/entry/20201201203149

★大学研究、巨額ファンド構想への甘い期待
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66955120T01C20A2EE8000/

★大学の新基金、初年度4.5兆円規模 運用益で研究支援
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE061GR0W0A201C2000000/

 大学のファンドに期待と懸念の声が出ています。

スーパーサイエンスハイスクールSSH)支援事業の今後の方向性等に関する有識者会議 第二次報告書に向けた論点整理
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/gijyutu/031/houkoku/1409229_00001.htm

★令和2(2020)年度科研費等の審査に係る総括について
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/03_shinsa/data/r02/R2_shinsa_soukatsu.pdf

★「日本の気候変動2020」を公表しました
https://www.jma.go.jp/jma/press/2012/04a/ccjapan2020.html?16

★教授社員、企業に知の刺激 人脈も共有し産学連携深く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGG274SX0X21C20A1000000/

 クロスアポイントメント制度。

★eLife、2021年7月より公開されたプレプリントのみを査読対象とすると発表
https://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=12431

In biology publishing shakeup, eLife will require submissions to be posted as preprints
https://www.sciencemag.org/news/2020/12/biology-publishing-shakeup-elife-will-require-submissions-be-posted-preprints

 プレプリントの存在感が増しています。

★9割の人が知らない再現性の危機
https://honeshabri.hatenablog.com/entry/replication_crisis

 よくまとまった資料。

★グーグルがAIの倫理を専門とする研究者を解雇、業界に広がる波紋の理由
https://wired.jp/2020/12/07/prominent-ai-ethics-researcher-says-google-fired-her/

We read the paper that forced Timnit Gebru out of Google. Here’s what it says
https://www.technologyreview.com/2020/12/04/1013294/google-ai-ethics-research-paper-forced-out-timnit-gebru/

 優れた研究者ならすぐにでも職はみつかるとは思いますが、組織と個人の衝突でいかに研究者を守るのかは、大きな課題だと思います。

★Famous Arecibo Radio Telescope in Puerto Rico Collapses
https://www.the-scientist.com/news-opinion/famous-arecibo-radio-telescope-in-puerto-rico-collapses-68219

Arecibo Observatory’s 305-meter telescope suffers collapse
https://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=301737&WT.mc_id=USNSF_51&WT.mc_ev=click

Arecibo telescope collapses, ending 57-year run
https://www.sciencemag.org/news/2020/12/arecibo-telescope-collapses-ending-57-year-run

 ついに崩壊。

★Scientists fear no-deal Brexit as deadline looms
https://science.sciencemag.org/content/370/6521/1146.full
https://www.sciencemag.org/news/2020/12/scientists-fear-no-deal-brexit-deadline-looms

 EU離脱問題。研究への影響は必至のようです。

★やっぱり悩み深き『研究者の子育て』
https://webronza.asahi.com/science/articles/2020120200001.html

★女性教授が指導すると女性研究者は伸びない?
https://webronza.asahi.com/science/articles/2020112900003.html

Paper Recommends Women Avoid Female Mentors, Drawing Outrage
https://www.the-scientist.com/news-opinion/paper-recommends-women-avoid-female-mentors-drawing-outrage-68185

★Planning a postdoc before moving to industry? Think again
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03109-3

 この記事と直接関係があるわけではないですが、natureや scienceがこうしたキャリアに関する記事を取り扱う一方、日本では研究以外のキャリアを考えることは悪と思われ、なんらキャリアに関する情報を与えられないまま研究歴のある人たちが労働市場に放り出されています。現状をなんとかしたいと思っています。

★81医学科の男女別合格率、毎年公表へ 文科省が調査
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20201203-00000066-asahi-soci

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[SciCom News] No.899 2020年12月8日号 巻頭言
【発行者】一般社団法人科学・政策と社会研究室(担当 榎木英介)
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