科学・政策と社会ニュースクリップ

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第3次補正予算 博士重視を鮮明に

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★発行部数 2,568部(12月15日現在)
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     ◆◇◆  Science Communication News ◆◇◆
         No.900 2020年12月15日号 巻頭言
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【巻頭言】
★第3次補正予算 博士重視を鮮明に
2020年12月8日~2020年12月15日
カセイケン代表 榎木英介

 メルマガ本体を出した後に大きなニュースが。

財務省 令和2年度補正予算(第3号)
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/hosei1215.html

 第3次補正予算案が閣議決定されました。

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止策に4兆3,581億円、ポストコロナに向けた経済構造の 転換・好循環の実現に11兆6,766億円、防災・減災、国土強靱化の推進など 安全・安心の確保に3兆1,414億円などです。

 この中で、研究者の育成に関わる予算がつけられています。

文部科学省 補正予算(第3号)(案)
https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420672.htm

世界レベルの研究基盤を構築するための大学ファンドの創設 5,000 億円
大学ファンドを創設し、その運用益を活用することにより、世界に比肩するレベルの 研究開発を行う大学等の共用施設やデータ連携基盤の整備、若手人材育成等を推進する ことで、我が国のイノベーション・エコシステムを構築する。

◆我が国の研究力の抜本的強化に向けた取組の加速 312 億円
若手を中心とした研究者に対する創発的研究支援事業を拡充するとともに、博士課程 学生に対する支援強化のため、自由で挑戦的・融合的な研究を行う博士課程学生を支援する事業の創設及びフェローシップ支援等を開始するために必要な体制の整備を行う。

令和2年度文部科学省 補正予算(第3号)案の概要 (PDF:623KB) PDF
https://www.mext.go.jp/content/20201214-mxt_kaikesou01-100014477-000_1.pdf

より。

科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設準備事業
https://www.mext.go.jp/content/20201214-mxt_kaikesou01-100014477-000_2-1.pdf#page27

に詳細があります。

1 博士課程学生の処遇向上(生活費相当額(180万円以上)の支援を含むフェローシップ)と、2キャリアパスの確保(博士課程修了後のポストへの接続)を、全学的な戦略の下で、一体として実施する大学への新たな補助金を令和3年度に創設すべく、支援機関の早期採択を実施。採択機関において、対象学生の選定や、先行的な体制整備等を令和2年度中に実施し、令和3年度当初からの学生支援を遅滞なく開始する。
キャリアパスの確保は当該大学の研究員ポストや、企業等の外部ポストへの接続が要件。なお、企業・関係機関等と連携し、インターンシップや共同研究等の人材育成プログラムの活用等を想定。

世界レベルの研究基盤を構築するための大学ファンドの創設
(国立研究開発法人科学技術振興機構出資金)
https://www.mext.go.jp/content/20201214-mxt_kaikesou01-100014477-000_2-1.pdf#page25

【事業イメージ・具体例】 10兆円規模の大学ファンドを創設し、その運用益を活用することにより、世界に比肩するレベルの研究開発を行う大学の共用施設やデータ連携
基盤の整備、博士課程学生などの若手人材育成等を推進することで、我が国のイノベーション・エコシステムを構築する。
具体的には、 ○世界に伍する規模のファンドを運用し、その運用益で博士課程学生などの人材育成含む長期的・基盤的な研究開発基盤の構築を支援。
○大学改革を進め、経営体として準備が整った大学が、国内外の「競争環境」下で、経営体として自立し世界に伍する研究大学に成長していくた めの真のイノベーション・エコシステムに変革するための仕組みを構築。

 ファンドについては懸念も。

★10兆円大学基金へ「金」売却 官頼み、苦肉の財源捻出
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODB073BS0X01C20A2000000/

創発的研究の推進
(創発的研究推進基金補助金)
https://www.mext.go.jp/content/20201214-mxt_kaikesou01-100014477-000_2-1.pdf#page26

創発的研究支援事業】
応募要件:大学等における独立した/独立が見込まれる研究者 ※博士号取得後15年以内(育児・出産・介護等のライフイベントへは別途配慮)

採択件数:250件程度/年×3回公募(計850件程度)

支援単価:700万円/年(平均)+間接経費

支援期間:7年間(最長10年間まで延長可)

創発的研究若手挑戦事業】
応募要件:既存の枠組みにとらわれない自由で挑戦的・融合的な研究を実施する博士課程学生が所属する大学
支援人数:博士後期課程学生 6,000人程度
支援規模: 1人当たり290万円程度(人件費240万円程度含む)を想定

 若手研究者支援への取り組みに力が入っているように見えます。

報道
【独自】政府、博士課程1000人に年230万円支援へ…先進分野の研究支援
https://www.yomiuri.co.jp/national/20201215-OYT1T50084/

 さらに、萩生田文科大臣はメッセージを出しました。

博士を目指す学生の皆さんへ(文部科学大臣メッセージ)
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00418.html

 非常に大きな進展だと思います。国が博士号取得者を重視するというメッセージを公にしたわけですから。

 とは言え、繰り返しになりますが、既に若くない人たちは見捨てられたままです。

 その他。

令和2年度第3次補正予算(案)の概要(PDF形式:414KB)内閣府
https://www.cao.go.jp/yosan/soshiki/r02/yosan_r2_hosei_3.pdf

令和2年度第3次補正予算案(経済産業省関連)の概要
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2020/hosei/hosei3.html

令和2年度厚生労働省第三次補正予算案の概要
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/20hosei/03index.html

令和2年度農林水産関係第3次補正予算の概要について
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/yosan/201215.html

令和2年度第3次補正予算(案)の概要(令和2年12月)農水省
https://www.env.go.jp/guide/budget/r02/r02-hos_03-gaiyo.html

 日本学術会議ですが、自民党が提言を出しました。

日本学術会議の改革に向けた提言
2020年12月9日
自由民主党政務調査会
内閣第2部会
政策決定におけるアカデミアの役割に関する検討PT
https://www.jimin.jp/news/policy/200957.html

 トランスサイエンスやブダペスト宣言に触れています。しかし、任命拒否問題には触れていません。

菅総理は第49回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202012/14corona.html

菅総理はGoToトラベルの一時停止及び今年の漢字等について会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1214kaiken02.html

 新型コロナウイルス対策ですが、年末年始にGoToトラベルが一時停止になります。

 しかし、感染者や重症者がすぐには減少するとは考えられず、厳しい状況が続くと予想されます。

第18回資料
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/corona18.pdf

今後の感染の状況を踏まえた対応についての分科会から政府への提言
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/seifu_teigen_18.pdf

忘年会・新年会・成人式等及び帰省についての提言
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/bounenkai_shinnenkai_seijinshiki_teigen_18.pdf

新型コロナウイルス感染症対策本部(第 49 回)
1.開 会
日時:令和2年12月14日(月) 18時20分~18時50分
場所:官邸2階 大ホール
議事次第
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r021214.pdf

西村大臣からのお知らせ
(令和2年12月10日)Vol.92
大阪府の医療提供体制を支援していきます”
https://corona.go.jp/minister/20201210_01.html

第17回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(12月10日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00093.html

学生減に悩む米大学、教授の終身在職権も危うし
コロナ禍による変化が数世紀来の運営モデルを揺るがす
https://jp.wsj.com/articles/SB11337479942064503444304587149883741135096

 新型コロナウイルスは、社会のさまざまな部分に大きな影響を与えています。

★研究資金と成果の関係分析 政府、国立大の競争力向上
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO67228180R11C20A2MM0000/

★議事次第 令和2年12月10日 - 総合科学技術・イノベーション会議 - 内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20201210.html

議題

1.競争的研究費に係る事務負担軽減について

菅総理は令和2年第19回経済財政諮問会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202012/08keizaishimon.html

第19回会議資料 令和2年 会議結果- 経済財政諮問会議 - 内閣府
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/1208/agenda.html

議事

(1) 令和3年度予算編成の基本方針

コロナの状況踏まえてメリハリ付け、21年度予算編成-政府が基本方針決定
https://www.cbnews.jp/news/entry/20201209120735

令和3年度予算編成大綱
2020年12月10日
自由民主党
公明党
https://www.jimin.jp/news/policy/200956.html

★令和3年度税制改正大綱
2020年12月10日
自由民主党
公明党
https://www.jimin.jp/news/policy/200955.html

医療機関の再編、登録免許税率を軽減へ-与党税制改正大綱
https://www.cbnews.jp/news/entry/20201210202443

★第16回会議資料 : 選択する未来2.0 - 内閣府
https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/future2/20201214/agenda.html

議事

(1)ポストコロナの社会について有識者から御講演
(2)意見交換

 村上陽一郎氏がプレゼンしています。

★国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の調査結果に関する萩生田文部科学大臣コメント
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/detail/1422960_00001.htm

国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の調査結果
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/detail/1344312.htm

が出ましたが、課題も浮かび上がっています。

日本の理数学力、トップ水準維持 一部低下も全教科5位以内
https://www.chunichi.co.jp/article/167104

「理科好き」日本の小4、でも得点低下 理数の国際調査
https://www.asahi.com/articles/ASND85RGRND4UTIL054.html

「虫は動物じゃない」という子も 国際調査で浮かぶ課題
https://www.asahi.com/articles/ASND865L1ND7UTIL05P.html

★第11回医師の働き方改革の推進に関する検討会 資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15438.html

第10回医師の働き方改革の推進に関する検討会 議事録
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15327.html

★医療計画の見直し等に関する検討会 外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等に関する報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000146913_00003.html

★2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について
https://www.env.go.jp/press/108734.html

2020年世界CO2排出 コロナで7%減も温暖化止まらず 
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGG116QN0R11C20A2000000/

温暖化ガス2.7%減 19年度、6年連続マイナス
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGG079KX0X01C20A2000000/

パリ協定採択から5年 国連「気候の非常事態」宣言し対策求める
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201213/k10012761431000.html

【独自】「温室ガス2050年までにゼロ」法制化へ…政府、国内外に決意示す
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20201212-OYT1T50306/

★A three-step process for resolving paper disputes
https://www.natureindex.com/news-blog/a-three-step-process-for-resolving-paper-authorship-disputes

★Excitement as outspoken HIV researcher named to lead key US
health agencyhttps://www.nature.com/articles/d41586-020-03495-8

HIV researcher named to lead battered CDC
https://science.sciencemag.org/content/370/6522/1256.full

保健行政に専門家結集
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67133470Y0A201C2FF8000/

 バイデン氏が着々と人事を進めています。

★やっぱり悩み深き『研究者の子育て』 - 高山善
https://webronza.asahi.com/science/articles/2020120200001.html

★産学つなげる「第3の職種」 存在高めるURA
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH094UT0Z01C20A2000000/

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.900 2020年12月15日号 巻頭言
【発行者】一般社団法人科学・政策と社会研究室(担当 榎木英介)
【編集者】Science Communication News編集部
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有馬朗人氏の死去と日本版AAAS

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★発行部数 2,565部(12月8日現在)
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     ◆◇◆  Science Communication News ◆◇◆
         No.899 2020年12月8日号 巻頭言
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【巻頭言】
有馬朗人氏の死去と日本版AAAS
2020年12月1日~2020年12月18日
カセイケン代表 榎木英介

 東大の総長や文部大臣等を歴任された有馬朗人氏が亡くなられました。ご冥福をお祈りします。

有馬朗人氏死去 元東大学長・文相、90歳
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG074HG0X01C20A2000000/

豊かな知識、俳句に結晶 有馬朗人さん死去
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67094440X01C20A2CC1000/

東大元学長の有馬朗人さん死去 90歳
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201207/k10012750731000.html

有馬朗人さん死去、90歳 原子核物理学者・元東大総長
https://www.asahi.com/articles/ASND762P4ND7UTIL033.html

 NHKのニュースには、亡くなる数日前に撮影されたインタビューが放映されていました。突然のことだったのでしょう。

亡くなる一週間ほど前の記事では、日本学術会議について発言されていました。

学術会議の人選は身内重視の「インブリーディング」 有馬元文相
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/113000165/

 有馬氏は日本の学術行政、大学行政等では「戦犯」のように思われており、SNS上でも厳しい言葉が出ていました。

 東大総長として大学院重点化を導き、文部大臣としては国立大学の法人化を容認しました。

 晩年は反省の弁も述べていましたが、「今更」というシニカルな声が起こっていました。

国立大学法人化は失敗だった」 有馬朗人元東大総長・文相の悔恨
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00158/051900003/

 90年台から2000年台にかけて、大学院重点化や大学院生を増やす計画等を端緒に、科学技術基本法の制定、ポスドク一万人計画、国立大学法人化など、さまざまな計画が実行されていきました。

 2020年の今、これらは日本の「研究力」を奪い、若手研究者を苦境に陥らせた原因ではないかと厳しい目で見られています。

 こうした政策決定の渦中に有馬氏は身を投じたわけです。

 後年本人にとって、こうした政策に関わったことはあまり良い記憶ではなかったようです。

 有馬氏がこうした政策にどの程度影響を与えたのかについては、検証が必要でしょう。こうした政策の背後には、減少する人口、落ちる国際競争力といった問題があり、決して大学や学術政策だけが突出していたわけではないからです。

 とはいえ、国会議員になり、文部大臣になり、こうした政策の責任を担う立場にいたわけで、有馬氏が無謬などというつもりはありません。

 問題は2020年現在、こうした政策の課題が明らかになっても、方向性が変わることはなく、むしろ「まだ改革が足りない」という捉え方さえあります。

 この政策の渦中に研究者を志し、翻弄された私としては、非常に複雑な思いを抱くと同時に、これからどうするのかが問題だと思っています。

 私たちはまだ生きていかなければならないのですから。

 これからどうするのか。その一つの道が、「日本版AAAS」です。

日本版AAAS設立準備委員会
https://jaas.group/

日本の科学が危機に瀕しています。日本の科学の凋落をくい止め、復活させ、明るい未来の礎を築くためには、科学の振興に意欲を持つ多様な立場の人々が対話・協力し、科学がこれまでに果たしてきた役割を分析・理解し、その理想的なあり方を検討し実現する必要があります。しかしながら、現在、日本にはそのようなことを行うことのできる場や組織が存在しません。私たちは、分野、組織、職種・職階、世代の垣根を超え、科学の振興に意欲を持つすべての人々が参加することのできる組織の設立を提案しています。

 私や仲間は、日本にも分野や立場を問わない科学を考える組織が必要だということをもう20年近く考えてきたわけですが、組織を作ったり、運営したりする難しさに直面し、なかなか実現に向けて動き出せませんでした。

 こうしたなか、若手研究者の中に、全米科学振興協会(AAAS)のような組織を日本でも作りたいという人たちが現れ、かつてあれこれ発言などしていた私達にもお声がかかりました。

 私たちカセイケンのメンバーも準備委員会に入っています。私たちは主に、この組織をNPO法人化し、組織を運営していくという裏方で関わろうと思っています。

 理想は誰でも言えます。評論家には誰でもなれます。

 しかし、組織を立ち上げ、お金を集め、各方面と交渉するなど、泥臭く地味な仕事を誰かが行わないと、利害が錯綜する社会の中で何も動きません。

 この30年、政策の問題を自分ごとと考え、キレイゴトの言葉だけでなく、汚れ仕事を厭わず現実を動かしていこうとする人がほとんど現れなかったことが、今の事態を招いているのではないでしょうか。

河野太郎大臣の行革スピード 迅速さに研究者から絶大な支持
https://www.excite.co.jp/news/article/Jisin_1919755/

 河野氏への研究者の支持は高いですが、一人の政治家に依存するのは危うい気もします。

 有馬氏は功罪ありつつも、選挙(参院比例ですが)に出て大臣をやるなど、少なくとも手を動かし汚名を被ることはしたわけです。晩年後悔したそうですが、後悔する必要はなかったと思っています。

★「学術会議、23年に独立を」自民PT、政府に提言へ
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67093150X01C20A2PP8000/

 日本学術会議の「完全敗北」を見ると、「政治」にコミットする人がいなかったことの大きさを感じます。

 違法状態が完全に無視され、世論すら味方にできませんでした。

菅首相の学術会議つぶしは「計算ずく」だったと言えるワケ
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20201129-00077809-gendaibiz-pol

★科学と政治は切り離せない
https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v17/n12/%E7%A7%91%E5%AD%A6%E3%81%A8%E6%94%BF%E6%B2%BB%E3%81%AF%E5%88%87%E3%82%8A%E9%9B%A2%E3%81%9B%E3%81%AA%E3%81%84/105643

菅総理は記者会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1204kaiken.html

 菅総理が会見で、学術会議に言及する際笑っていたことに批判が出ています。しかし、いかに悔しくても、現状では批判以外できない状態です。

 日本版AAASの設立の動きは、日本学術会議の問題の前から進んでいたことですが、まさにこのタイミングでオープンになったことは偶然ではないと思います。

 現場の声などを考慮しない上からの政策が続いた30年間の帰結として、日本学術会議の任命拒否や民間組織化があり、ボトムアップの組織の設立の機運につながったわけです。

 この30年の政策の象徴的存在だった有馬氏の死去と学術会議の問題、そして日本版AAASの動きがほぼ同時期に起こった意味は後世の歴史家が判断することになるでしょう。

 新型コロナウイルスの感染拡大は深刻な事態が続き、私の近隣の病院でもクラスターが発生するなど、厳しい状況です。

★医療従事者をはじめ身近な人に「ありがとう」をSNSで~感染拡大及び差別・偏見防止を図るため、官民が一丸となった対話型情報発信プロジェクト「#広がれありがとうの輪」を12月4日から開始します~
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15257.html

 ありがとうというのならカネをくれという声がSNS上に…。もちろん差別偏見の防止は極めて重要です。

★議事次第 令和2年12月3日 - 総合科学技術・イノベーション会議
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20201203.html

議題

1.米国新政権における科学技術政策動向について

 アメリカの状況がまとまった資料が公開されています。

米国の科学技術政策動向とバイデン新政権
2020年12月3日
国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20201203/siryo1.pdf

TSCトレンド
バイデン次期大統領で変わる米国の 技術イノベーション・気候変動政策
海外技術情報ユニット 技術戦略研究センター 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20201203/siryo2.pdf

菅総理は第5回成長戦略会議に出席しました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202012/01seicho.html

実行計画
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/pdf/jikkoukeikaku_set.pdf

医療・介護分野のデータ利活用など推進-政府、成長戦略実行計画
https://www.cbnews.jp/news/entry/20201201203149

★大学研究、巨額ファンド構想への甘い期待
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66955120T01C20A2EE8000/

★大学の新基金、初年度4.5兆円規模 運用益で研究支援
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE061GR0W0A201C2000000/

 大学のファンドに期待と懸念の声が出ています。

スーパーサイエンスハイスクールSSH)支援事業の今後の方向性等に関する有識者会議 第二次報告書に向けた論点整理
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/gijyutu/031/houkoku/1409229_00001.htm

★令和2(2020)年度科研費等の審査に係る総括について
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/03_shinsa/data/r02/R2_shinsa_soukatsu.pdf

★「日本の気候変動2020」を公表しました
https://www.jma.go.jp/jma/press/2012/04a/ccjapan2020.html?16

★教授社員、企業に知の刺激 人脈も共有し産学連携深く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGG274SX0X21C20A1000000/

 クロスアポイントメント制度。

★eLife、2021年7月より公開されたプレプリントのみを査読対象とすると発表
https://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=12431

In biology publishing shakeup, eLife will require submissions to be posted as preprints
https://www.sciencemag.org/news/2020/12/biology-publishing-shakeup-elife-will-require-submissions-be-posted-preprints

 プレプリントの存在感が増しています。

★9割の人が知らない再現性の危機
https://honeshabri.hatenablog.com/entry/replication_crisis

 よくまとまった資料。

★グーグルがAIの倫理を専門とする研究者を解雇、業界に広がる波紋の理由
https://wired.jp/2020/12/07/prominent-ai-ethics-researcher-says-google-fired-her/

We read the paper that forced Timnit Gebru out of Google. Here’s what it says
https://www.technologyreview.com/2020/12/04/1013294/google-ai-ethics-research-paper-forced-out-timnit-gebru/

 優れた研究者ならすぐにでも職はみつかるとは思いますが、組織と個人の衝突でいかに研究者を守るのかは、大きな課題だと思います。

★Famous Arecibo Radio Telescope in Puerto Rico Collapses
https://www.the-scientist.com/news-opinion/famous-arecibo-radio-telescope-in-puerto-rico-collapses-68219

Arecibo Observatory’s 305-meter telescope suffers collapse
https://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=301737&WT.mc_id=USNSF_51&WT.mc_ev=click

Arecibo telescope collapses, ending 57-year run
https://www.sciencemag.org/news/2020/12/arecibo-telescope-collapses-ending-57-year-run

 ついに崩壊。

★Scientists fear no-deal Brexit as deadline looms
https://science.sciencemag.org/content/370/6521/1146.full
https://www.sciencemag.org/news/2020/12/scientists-fear-no-deal-brexit-deadline-looms

 EU離脱問題。研究への影響は必至のようです。

★やっぱり悩み深き『研究者の子育て』
https://webronza.asahi.com/science/articles/2020120200001.html

★女性教授が指導すると女性研究者は伸びない?
https://webronza.asahi.com/science/articles/2020112900003.html

Paper Recommends Women Avoid Female Mentors, Drawing Outrage
https://www.the-scientist.com/news-opinion/paper-recommends-women-avoid-female-mentors-drawing-outrage-68185

★Planning a postdoc before moving to industry? Think again
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03109-3

 この記事と直接関係があるわけではないですが、natureや scienceがこうしたキャリアに関する記事を取り扱う一方、日本では研究以外のキャリアを考えることは悪と思われ、なんらキャリアに関する情報を与えられないまま研究歴のある人たちが労働市場に放り出されています。現状をなんとかしたいと思っています。

★81医学科の男女別合格率、毎年公表へ 文科省が調査
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20201203-00000066-asahi-soci

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.899 2020年12月8日号 巻頭言
【発行者】一般社団法人科学・政策と社会研究室(担当 榎木英介)
【編集者】Science Communication News編集部
【E-Mail】 office@kaseiken.org
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平時と非常時のはざまで メルマガ898号記事抜粋

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★発行部数 2,564部(12月1日現在)
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     ◆◇◆  Science Communication News ◆◇◆
         No.898 2020年12月1日号 巻頭言
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【巻頭言】
★平時と非常時の間で
2020年11月24日~2020年12月1日
カセイケン代表 榎木英介

 新型コロナウイルスの感染は拡大を続け、知人が勤務する病院でもクラスターが発生するなど、だいぶ近づいてきた感じはあります。

 私は在野で、フリーランスの病理医として働く傍ら、このメールマガジンを作っています。さまざまな病院に行って診断をしており、新型コロナウイルスの診断、治療の前線にいるわけではありません。

 いわば後方にいるわけですが、それでも前線の様子は聞こえてきます。

 先週から感じていることは、診断する標本の件数がどうも減っているのではないかということです。

 もちろんあくまで体感であり、単なる感想でしかありません。変動の範疇かもしれません。

 しかし、前回の緊急事態宣言のときのように、患者の受診控え、医療資源が新型コロナウイルス感染症に割かれ、通常の医療が出来なくなるといった事態により、標本数が減っているとしたら…。

 日本は中小規模病院、診療所が多く、多くが民間の機関です。医療資源が分散しています。それゆえ、経営を維持するために病院間の患者の奪い合いといったようなことがあり、人手不足と過剰医療が同時変更で起こっています。

 「ブルシットジョブ」として、患者を作り出して雇用を維持していたのか。流石にそれは言い過ぎかもしれませんが、今回のパンデミックではそれが裏目に出ています。

 医療資源を集約化し、適切に振り分ければいいのは分かります。患者が減っても過剰な部分が減ったにとどめることもできます。

 しかし、民間病院が多いこと、医療に関わる者も生活者として地域に住んでおり、鉢植えのを移し替えるように簡単に地域を移動できないことなど、集約化は簡単ではありません。

 現在進行形の事態に理想を語る余裕はありませんが、平時には問題の解決の機運が起こらないというジレンマを感じます。

 非常時という点では日本学術会議も同じです。

★学術会議「国の機関から切り離し」 井上担当相の提案が波紋
https://mainichi.jp/articles/20201127/k00/00m/010/420000c

★井上科技相、学術会議の国からの切り離し検討を要請 梶田会長との会談で
https://mainichi.jp/articles/20201126/k00/00m/040/319000c

★「分離」提案に会員困惑 学術会議任命拒否、問題棚上げ
https://mainichi.jp/articles/20201128/ddm/002/010/117000c

 日本学術会議の任命拒否問題は解決する目処もなく、棚上げにされた挙句問題が異なる分離を担当大臣から提案されるに至っています。

 しかも諮問など正式な手続きではないようで、5年前の検討も無視されています。

 さすがに露骨です。

 確かに私はかねてより日本学術会議に批判的であり、不満を持っていますが、それはそれです。

#排除する政治~学術会議問題を考える:「まるでモラハラのよう」 矛盾だらけの「改革」論議 名大・隠岐さや香教授
https://mainichi.jp/articles/20201130/k00/00m/010/215000c

★第304回幹事会後に記者会見を開催しました。(令和2年11月26日)

記者会見資料(PDF形式:2,375KB)
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo304-kaikenshiryo.pdf

日本学術会議に関するQ&A(PDF形式:809KB)
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo304-QandA.pdf

 The International Science Council (ISC)からは懸念が示される事態です。

Statement on scientific freedom in Japan
https://council.science/current/news/statement-on-scientific-freedom-in-japan/

 一方で、平時には問題点をどうかしようという動きが一部にとどまっていたのも事実です。

 何か問題が起きないと変わらないというのは、この国で繰り返されてきたことではないか…。

 犠牲、被害が出ないと動かないというのは、災害対策なども含め至る所で見られます。犠牲、被害がないときに予防的に改善することは「過剰」と批判されてしまいます。

 平時に平和的に問題点を改善することができるのか…。非常時になるたびに複雑な気持ちが湧き起こります。

★学術会議任命拒否
「100%デマですやん」 ある日ウィキペディアに自分の名前が載ってしまったら…
https://mainichi.jp/articles/20201127/k00/00m/040/171000c

★消えた中国の海外人材スカウト「千人計画」 その実情は
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66449020Z11C20A1FFE000/

 日本学術会議問題から広がった千人計画のデマ。やや下火になっていますが、いまだ誤解が漂っています。

★任命拒否問題、若手に懸念 井上科技相が意見交換
https://www.chunichi.co.jp/article/159449

 若手アカデミーの方々が大臣と会われたたのこと。

 若手アカデミーとは関係ないことですが、日本学術会議をめぐる問題では、「政治力」というものを感じざるを得ません。

 非常にあいまいな言葉ですが、利害をまとめ、タフな交渉をし、相手の懐に飛び込む。批判をあびるのを織り込み済みで交渉や「取引」をする。「権力」の扱いに慣れている。

 いわば清濁併せ呑むという感じです。こういう人は毀誉褒貶がある人になるでしょう。

 こういうのは個人的には好きではないのですが、ある程度こういう力がないと、けんもほろろに組織を追い出されたりするのは経験済みです。

 勝手なイメージですが、尾身茂氏には若干そういうところがあるように思います。

 日本学術会議に尾身氏のような人がいたらなあ、と思ったりもします。

★第17回資料
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/corona17.pdf

現在の感染拡大を沈静化させるための分科会から政府への提言
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/seifu_teigen_17.pdf

第15回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(11月24日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00093.html

診療科の全く異なる医師が診療せざる得ない事例も-厚労省、コロナアドバイザリーボードの評価公表
https://www.cbnews.jp/news/entry/20201125133421

★冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法を公表しました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15102.html

菅総理は第48回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202011/27corona.html

新型コロナウイルス感染症対策本部(第 48 回)議事次第
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/sidai_r021127.pdf

菅総理新型コロナウイルス感染症対策等について会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1126kaiken.html

 以上政府関係の発表です。

 二度目の緊急事態宣言があるでしょうか。

★有力42大学「入試を変更」 コロナ拡大なら
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66776480Y0A121C2EA2000/

190大学、年度末に休退学増加を予想 コロナで生活苦
https://www.asahi.com/articles/ASNCX76YTNCSUSPT00K.html

 大学や学生が直面する影響は甚大です。

★How Iceland hammered COVID with science
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03284-3

 規模の違う国との比較は難しいですが、各国の対応をイメージではなく詳細に検討することは重要です。

★科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合(令和2年度) > 議事次第 令和2年11月26日
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20201126.html

議題

1.基本計画について(戦略的な研究開発分野の推進)
2.研究資金配分と論文アウトプットの関係性に係る分析結果について(追加分析)

 e-CSTIの活用によって、データに基づく政策の議論ができるようになってきました。

研究資金配分と論文アウトプットの関係性 に係る分析結果について(追加分析)

  • e-CSTIの活用を通じた分析-

https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20201126/siryo4.pdf

では

国立大学における1千万円当たりのアウトプット(総論文および Top1%論文)は、概ね「運営費交付金等」>「科研費」>「その他競争的資金」となっている一方、研究開発法人においては、 「科研費」の生産性が高く「運営費交付金等」や「その他競争的 資金」の生産性が低い。

1人当たり論文数については、若手研究者においては「任期なし」>「任期あり」となる傾向が見られる。一方、シニア研究 者においては逆に「任期なし」<「任期あり」となる傾向が見 られるが、近年シニアの「任期あり」研究者の論文輩出水準が 低下している。

と言ったことが明らかになっています。

★科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合(令和2年度) > 議事次第 令和2年11月19日
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20201119.html

議題

1.基本計画について(指標)
2.基本計画の評価・モニタリングについて

★総合科学技術・イノベーション会議 第10回 基本計画専門調査会
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon6/10kai/10kai.html

議題

(1)研究力の強化について
(2)次期科学技術・イノベーション基本計画の骨子(案)について

 先週の時点では報道だけでしたが、資料出ました。

★科学技術・学術政策研究所「『博士人材追跡調査』第3次報告書」報告書の公表について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/1422310_00004.htm

『博士人材追跡調査』第3次報告書[NISTEP REPORT No.188]の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/46053

 コホート調査。こちらもデータに基づく議論が必要です。

★科学技術・学術政策研究所「サイエンスマップ2018」報告書の公表について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/1422310_00003.htm

サイエンスマップ2018[NISTEP REPORT No.187]の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/46077

★コロナ禍を経た科学技術の未来(速報版)の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/46169

★令和2(2020)年度科研費等の審査に係る総括について
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/03_shinsa/data/r02/R2_shinsa_soukatsu.pdf

 科研費のデータ。その科研費ですが、

科研費の内定通知2カ月前倒しへ 22年度から、活動後押し
https://www.chunichi.co.jp/article/161256

 とのこと。

★京大霊長研の不正支出 なぜ研究費不正はなくならないのか
https://news.yahoo.co.jp/articles/801977e02b9d35d94f2e48630e49fd141e4dc6bd

 榎木のコメントが出ている記事ですが、年度繰越がやりにくいなど、問題があるからと言って、研究費の不正使用が許されることはありませんので、ご注意ください。

★「生物多様性国家戦略2012-2020の実施状況の点検結果(案)」に対する意見募集(パブリックコメント)について
https://www.env.go.jp/press/108702.html

★学校法人慶應義塾と学校法人東京歯科大学
東京歯科大学の歯学部の慶應義塾大学への統合および法人の合併について協議開始
https://www.keio.ac.jp/ja/news/2020/11/26/27-76457/

「慶大歯学部」誕生へ コロナ、少子化が促す連携・統合
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66778660Y0A121C2NN1000/

 これは大きなニュース。医学部が欲しいがいまだまだ事態が進まない早稲田大学との差が広がった感があります。

★ネイチャー論文を撤回 名大研究チームに不自然なデータ
https://www.asahi.com/articles/ASNCX3R86NCWOIPE012.html

名大チームのネイチャー論文撤回 実験データに誤り
https://www.chunichi.co.jp/article/160798

データに疑義、論文撤回 名古屋大、調査委設置
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66753120X21C20A1CR8000/

 結果に影響なければ問題ないということはありません。

★Largest ever research integrity survey flounders as universities refuse to cooperate
https://www.sciencemag.org/news/2020/11/largest-ever-research-integrity-survey-flounders-universities-refuse-cooperate

 重要調査。

★2020 AAAS Fellows approved by the AAAS Council
https://science.sciencemag.org/content/370/6520/1048.full

 日本人も。

★ イラン核科学者暗殺か 外相「イスラエルが関与」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66770790Y0A121C2I00000/

Alarm as execution looms for scientist on death row in Iran
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03396-w

 こういう非合法のことが行われるとは…。過去にもありましたが、軍事研究の現実です。

★German science is thriving, but diversity remains an issue
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03317-x

German science on the world stage: visualized
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03320-2

Asifa Akhtar is a sign of new things to come at the Max Planck Society
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03321-1

Germany’s start-up scene is booming
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03319-9

Clusters of Excellence: the new ‘brains trusts’ of German science
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03322-0

How Germany retains one of the world’s strongest research reputations
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03318-w

 ネイチャーはドイツ特集。

★コロナで変わる世界:<仕事編2>希望退職「35歳以上」 日本型雇用に見直しの波
https://mainichi.jp/articles/20201126/k00/00m/020/112000c

★《JST主催》女性研究者がもっと活躍できるように〜第2回輝く女性研究者賞(ジュン アシダ賞)表彰式&トークセッションより〜
https://scienceportal.jst.go.jp/explore/reports/20201127_e01/index.html

★Why seek a single mentor when you can have three - or more
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03339-5

★Credit where credit is due
https://science.sciencemag.org/content/370/6520/1130.full

Don’t erase undergrad researchers and technicians from author lists
https://www.sciencemag.org/careers/2020/11/don-t-erase-undergrad-researchers-and-technicians-author-lists

 論文のクレジットは適切に。

シュプリンガー・ネイチャーがNature およびNature関連リサーチ誌においてゴールドオープンアクセス出版のオプションを2021年1月より提供開始
https://www.natureasia.com/ja-jp/info/press-releases/detail/8816

 先週にご案内いただきましたこのニュース。値段の高さに批判が出ています。

ネイチャー誌とその姉妹誌、120万円のOA出版オプションを設定
https://rcos.nii.ac.jp/miho/2020/11/20201128/

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.898 2020年12月1日号 巻頭言
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ワンフレーズに逃げない

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         No.897 2020年11月24日号 巻頭言
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【巻頭言】
★ワンフレーズに逃げない
2020年11月17日~2020年11月24日
カセイケン代表 榎木英介

 新型コロナウイルスの急速な感染拡大は、週刊のメルマガでは追いきれません。

 巻頭言以外の記事を出した後にも動きがありました。

“Go Toキャンペーン事業の運用見直しについて”
https://corona.go.jp/minister/20201124_01.html

 連休の行楽地の人手をみると、今後も感染は拡大していくものと思われます。

第16回資料
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/corona16.pdf

私たちの考えー分科会から政府への提言ー
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/seifu_teigen_16.pdf

菅総理は第47回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202011/21corona.html

新型コロナウイルス感染症対策本部(第47回)(令和2年11月21日開催)配付資料
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r021121.pdf

菅総理新型コロナウイルス感染症対策等について会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1121kaiken.html

菅総理新型コロナウイルスの感染状況等について会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1119kaiken.html

 感染の拡大を防止するか、経済を「回す」か、という対立があるように言われていますが、感染を抑えつつ困窮に陥る人を減らすという方法もあるはずです。

 新型コロナウイルスで死ぬ人は他の原因で死ぬ人より少ない、だから対策は必要ないと言った意見を言う人もいます。

 しかし、リスク評価では、安易な数の比較は好ましくないわけで、もどかしさを感じます。

★教職員に対する懲戒処分について(2020年11月24日)
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/events_news/office/soumu/jinji/news/2020/201124_1.html

松沢氏ら2人を懲戒解雇 研究費不正支出で 京都大霊長類研
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66600040U0A121C2AC8000/

 これもメルマガ本体発行後に入った大きなニュース。著名研究者の解雇に衝撃を受けますが、研究費不正使用はたとえ私的な使用がなくても大きな問題です。

 松沢氏は争うようです。

懲戒の知らせを受けて
https://www.tetsuro-matsuzawa.net/

★技術革新取り入れた社会実現へ 政策の基本計画骨子案まとまる
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201118/k10012718901000.html

 第6期科学技術基本計画骨子。まだホームページには情報が出ていません。

温室効果ガスゼロ、「挑戦的研究」に数百億円 支援拡充、3次補正計上へ
https://www.sankei.com/life/news/201119/lif2011190054-n1.html

 こちらは補正予算。見出しの「挑戦的研究」とは「ムーンショット型研究開発制度」のことです。

★「競争的研究費」過大な事務負担で研究現場疲弊 関係省庁、改革で合意
https://sci-news.co.jp/topics/4067/

 科学新聞記事。研究者を疲弊させる事務負担が軽減されるでしょうか。

★Five rules for evidence communication
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03189-1

★Research Square社、プレプリントの投稿数が5万件に達したと発表
https://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=12386

プレプリントは、質の高い科学を提供できるか?(記事紹介)
https://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=12388

 存在感が増すプレプリント。研究発表のあり方を変えつつあります。

★Worlds collide when three Science reporters-and parents-cover coronavirus and schools
https://www.sciencemag.org/news/2020/11/worlds-collide-when-three-science-reporters-and-parents-cover-coronavirus-and-schools

愛知学院大学における研究活動上の不正行為に関する追加調査結果について
https://bit.ly/3nUZToV

愛知学院大元講師ら 20論文で不正認定 図表を捏造
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66525100R21C20A1CE0000/

論文20編の不正認定 愛院大追加調査、歯学部元講師ら関与
https://www.chunichi.co.jp/article/157813

 大規模研究不正事例発覚。

★トランプ「不正選挙説」、中国「千人計画」デマ…ネット右派が陰謀論にのめり込む理由
https://news.nifty.com/article/item/neta/12113-863687/
https://bunshun.jp/articles/-/41614

★中国への頭脳流出は締め付けを強化しても止められない......「千人計画」の知られざる真実
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20201119-00010005-newsweek-int
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/11/post-95035.php

★研究者の中国流出続く 破格の給与魅力、待遇改善急務
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66471280Q0A121C2TJM000/

★中国ネット 消えた「千人計画」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66449020Z11C20A1FFJ000/

 千人計画に関して冷静な記事が出てきました。破格な待遇というのは少し違うように思いますが…。日経の記事には私のコメントが出ています。

 しかし世間の関心は過ぎ去った感があり、誹謗中傷の言葉のイメージだけ残ったとしたら残念です。

★日本人が即刻捨てるべき「経済大国」という幻想
確実に「小国」になる未来がやってくる
https://toyokeizai.net/articles/-/389896

 この欄でも何度か触れましたが、米中のような大国との違いを冷静に認識できない、あるいはしたくない人が売国奴などと誹謗中傷を言っているように思います。

★中堅以降の研究者に支援十分行き届かず
https://sci-news.co.jp/topics/4070/

 日本に活躍の場がない研究者が中国を含めた外国に活路を見出していく…。それはほんの少し前まで「グローバル化」の名の下に奨励されたことではなかったでしょうか。

★理系の男女格差が縮まらない日本の問題点
教育環境のジェンダー平等を進めてきた欧米に見ならい、小中高の教育の変革を
河野銀子 山形大学教授(教育社会学ジェンダー研究)
https://webronza.asahi.com/science/articles/2020110400003.html

 ジェンダーの問題も優れた才能の活躍の場を閉ざす問題です。

 才能を持った者に活躍の場を提供できない国が大国であるわけはありません。

経団連が学校に喝「人材育成の気概を持て」
https://www.news24.jp/articles/2020/11/22/06766967.html

 これは

Society 5.0に向けて求められる初等中等教育改革 第二次提言
ダイバーシティインクルージョンを重視した初等中等教育の実現-
http://www.keidanren.or.jp/policy/2020/110.html

 のことでして、提言の締めくくりに

「学校の教職員や教育委員会は、未来社会を支える人材を育成しているという気概を持って、変革に取り組むことが重要である。」

 と書かれている部分が見出しになっています。

 必ずしも「気概」だけで問題を解決しろと言っているわけではありませんが、SNSでは批判が多かったように思います。

 とはいえ、売国奴も気概も定義がはっきりしない言葉で、こうした言葉が交わされる議論は非常に雑だと言わざるを得ません。

 ムーンショットもそうかもしれませんが、耳障りの良いワンフレーズに逃げるのではなく、具体的かつ緻密な制度設計や問題把握が必要です。

★学術会議の在り方めぐり 科学技術相 若手会員らと意見交換
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201124/k10012729041000.html

 若手アカデミーの方々が参加。

★How DIY technologies are democratizing science
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03193-5

★COVID-19 disruptions to tech-metals supply are a wake-up call
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03190-8

★The troubling rise of facial recognition technology
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03271-8

What scientists really think about the ethics of facial recognition research
https://www.nature.com/articles/d41586-020-03257-6

 顔認証技術がはらむ倫理的問題。

★幹細胞論文操作の黄禹錫元教授、16年ぶりに大統領賞取り消し…「10日内に賞金3億ウォン返還を」
https://s.japanese.joins.com/JArticle/272457?sectcode=400&servcode=400

16年も経ってからとは。

★When my Ph.D. adviser moved her lab, I had to decide: Do I stay or do I go?
https://www.sciencemag.org/careers/2020/11/when-my-phd-adviser-moved-her-lab-i-had-decide-do-i-stay-or-do-i-go

Should I stay or should I go?
https://science.sciencemag.org/content/370/6519/1006

 研究室は一つの施設にとどまるものではないので、必ず付きまとう問題ですね。

★誤解だらけのジョブ型雇用 名付け親が語る本当の意味
https://www.asahi.com/articles/ASNCN3D9KNCHULFA00F.html

 ジョブ型社員に成果主義を導入することの問題点を指摘しています

★After scalding critiques of study on gender and mentorship, journal says it is reviewing the work
https://www.sciencemag.org/news/2020/11/after-scalding-critiques-study-gender-and-mentorship-journal-says-it-reviewing-work

シュプリンガー・ネイチャーがNature およびNature関連リサーチ誌においてゴールドオープンアクセス出版のオプションを2021年1月より提供開始
https://www.natureasia.com/ja-jp/info/press-releases/detail/8816

 ご案内いただきました。

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“Science Communication News”
[SciCom News] No.897 2020年11月24日号 巻頭言
【発行者】一般社団法人科学・政策と社会研究室(担当 榎木英介)
【編集者】Science Communication News編集部
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