科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

あの事件を超えられない?シンポ報告

2020年1月7日~2020年1月14日

 2日遅れの巻頭言です。

 発行が遅れて申し訳ありませんでした。インフルエンザに罹患して寝こんでいました。

 1月12日に開催しました「研究不正と歪んだ科学 STAP細胞事件を超えて」
日本評論社 税込 2,530円
https://nippyo.co.jp/shop/book/8178.html

研究不正と歪んだ科学 STAP細胞事件を超えて

研究不正と歪んだ科学 STAP細胞事件を超えて

 の出版記念シンポジウムですが、多数の方々にご参加いただき、盛況のうちに幕を閉じることが出来ました。

 詳しいご報告はまた追って行いたいと思いますが、参加者のみなさまとの交流から、色々な気づきを得ることができました。

 まず、いまだSTAP細胞事件の「謎解き」が多くの人たちを惹きつけているという事実です。

 誰が得をしたとか、黒幕は誰だとか、確かにあれだけ報道が出ると、どうしても素人としても色々類推してしまうのは当然です。

 私たちの書いた本はそれではダメだという問題提起だったわけですが、この本を書いた程度では、社会を揺るがしたあの「事件」を超えることができていないことがよくわかりました。

 もう一つは、研究者コミュニティ内からみた、私たちのような研究公正活動に対する反発です。

 私たちのような活動が、アカデミアから評価されないのは日々感じていました。そういう意味でアカデミア内部から発信している、今回コメンテータをしてくださった京都薬科大学の田中先生のような存在は極めて重要であると思うのですが、そうした活動に対しても批判があることがよくわかりました。

 私たちは決してアカデミアを破壊しようと考えているわけではなく、アカデミアをよくしたいと思っているわけですが、アカデミアに当事者意識を持ってもらうことがいかに困難かを痛感しました。

 しかし、私自身、次第に身の置き場がアカデミアから離れていくなかで、評価もされない活動をやる意義は何か迷ったこともありますが、科学は科学者、アカデミアだけのものではないはずであり、健全な科学は社会にとって必要だと思っているので活動を続けています。

 田中先生含め、ちょっとずつでもアカデミア内部で理念を共有する方との関係を強め、そうした内部の活動を応援することも含めて、地道に活動に取り組んでいきたいと思った次第です。

 私たちの活動に対する批判的なご意見を含めて、とても有意義な意見交換ができた会でした。改めて御礼申し上げます。

 なお、本ですが近々Kindle版が出版されます。詳細決まりましたらお伝えします。

★AIやゲノム念頭、哲学・法学に力 科技振興で法改正へ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54339700T10C20A1PE8000/

政府、科学研究で法学や哲学重視
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO54339700T10C20A1PE8000/

 第6期計画を控え、いわゆるELSIも含めた人文社会科学が重視される方向性が見えてきています。

 人文社会科学系の諸分野は、いわば「加入戦術」を取るのか、独立独歩でいくのか‥

★「Society5.0の国際発信」の開催場所の公募について
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20200107society5_0.html

★J-STAGE運用開始20周年、登載誌数が3,000誌に到達~より多くの日本発の研究成果論文を世界へ~
https://www.jst.go.jp/pr/info/info1415/index.html

 自分の業績をまとめるのに役立っています。

霞が関初の官僚系YouTuber誕生!〜SNS発信プロジェクト「BUZZ MAFF(ばずまふ)」が2020年1月7日(火曜日)発信開始〜
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/koho/200107.html

 官僚系!

沖縄県におけるCSFの患畜の確認(国内52例目)について
https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/200108.html

沖縄県におけるCSFの疑似患畜の確認(国内53例目)について
https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/200108_8.html

沖縄県におけるCSFの疑似患畜の確認(国内53例目の関連農場)について
https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/200111_2.html

沖縄県におけるCSFの疑似患畜の確認(国内54例目)について
https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/200110_2.html

 アグー豚でも知られる沖縄の豚にもCSFが。

★国立大の産学共同研究、学外の会社でOK 規制見直し
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54163770Y0A100C2EE8000/

 利益相反問題には敏感でいて欲しいものです。

東工大が「未来の人類研究センター」新設 科学技術と人の共存探る
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO54116420X00C20A1TCN000/

理系と文系 橋渡し役に
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO54116460X00C20A1TCN000/

 最近注目の取り組みが多い東工大
https://educ.titech.ac.jp/ila/news/2020_01/058424.html

★Predatory-journal papers have little scientific impact
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00031-6

Articles in ‘predatory' journals receive few or no citations
https://www.sciencemag.org/news/2020/01/articles-predatory-journals-receive-few-or-no-citations

 捕食ジャーナル。そうは言ってもそれで地位を確保したり学位を取得する人がいるわけですから無視はできません。

 研究不正でも、いずれ不正論文は淘汰されるからいいではないかという意見がありますが、論文はそうでもポジションに人は残ってしまい、本来能力を発揮すべき人が出したかもしれない業績が無駄になってしまうわけです。放っておけば良いという問題ではありません。

★UK Group Tackles Reproducibility in Research
https://www.the-scientist.com/news-opinion/uk-group-tackles-reproducibility-in-research-66926

 再現性問題も大きな課題です。

★高等教育無償化「多浪生らを排除」 医学部生が批判
https://www.asahi.com/articles/ASN176TC9N17UTIL059.html

 制度の間で不利益を被る人がいるのを無視はできないはずです。

★Russian journals retract more than 800 papers after ‘bombshell’ investigation
https://www.sciencemag.org/news/2020/01/russian-journals-retract-more-800-papers-after-bombshell-investigation

 絶句‥。

中華人民共和国湖北省武漢市における原因不明肺炎の発生(厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08787.html

 この巻頭言を書いている最中に日本でも関係者が出たとの情報が。人人感染は限定的とのことで、過剰反応は禁物ですが。

★「本当の父は誰?」DNA検査で発見、新たな家族の歴史
https://www.asahi.com/articles/ASN1110R5MD0UHBI02N.html

 ゲノム時代が生んだ新たな領域です。自らのルーツに意外なつながりを見出す可能性が。

SpaceX tests black satellite to reduce ‘megaconstellation’ threat to astronomy
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00041-4

 懸念されていた問題に対するスペースX社の対応。

FDA and NIH let clinical trial sponsors keep results secret and break the law
https://www.sciencemag.org/news/2020/01/fda-and-nih-let-clinical-trial-sponsors-keep-results-secret-and-break-law

 FDAもNIHもやる気ないとScienceが批判。

★New Trump rule would allow government to ignore climate impacts of major projects
https://www.sciencemag.org/news/2020/01/new-trump-rule-would-allow-government-ignore-climate-impacts-major-projects

 トランプ政権下ではもはや驚かない事態。

★遺品の古書が捨てられていく 歴史解き明かす宝を秘めて
https://www.asahi.com/articles/ASMDT73LZMDTUCVL039.html

 個人所有の書籍などは未来の世代にとって貴重な資料のはずですが…。

★科学技術の失速と復活の処方箋を議論 政策研究大学院大がシンポで
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/review/2020/01/20200110_01.html

★吉野彰さん寄付の研究助成、九大准教授に決定
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2020/01/20200110_01.html

倫理に関心が薄い博士、アシモフ生誕100年

2019年12月31日~2020年1月7日

カセイケン代表 榎木英介

 2020年が幕を開けました。今年もどうぞよろしくお願いします。

 思えば10年前、科学界は事業仕分けに揺れていました。事業仕分けには誤解があって、必ずしも科学軽視というわけではありませんでしたが、それでも、日本学術振興会の特別研究員制度が「ポスドク生活保護」などと言われ、納得いかない部分もありました。

 科学界の反応はノーベル賞フィールズ賞受賞者が並んで反対の記者会見をするなど、政策の動かし方がわかっていないあという反応だったけですが、10年経ってもあまり変わっていないように思います。

 その後ノーベル賞受賞者が何人も出て、科学技術政策に意見を言っていますが、意見は言うだけでは不十分です。財務省の神田さんブロック?を突破できた研究者は一人もいないのではないかと思います。

 2020年代、果たして研究者はより効果的に自らの主張を政策に反映させることができるでしょうか。

 さて今週のニュースです。

★博士課程在籍者のキャリアパス意識調査:移転可能スキルへの関心と博士留学生の意識[DISCUSSION PAPER No.176]の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/43565

 日本の博士課程に関するとても重要な調査です。

 オンザジョブトレーニングに偏り、転移可能スキルを学ぶ機会に乏しい現状が明らかになっています。

 特に倫理に関して関心も学ぶ機会も乏しいという点は、大きな問題点として挙げられると思います。以下ちょっと長いですが引用します。

3) 「その他の」能力 「倫理」について、「自分に足りない能力」及び「博士課程等で身に着けたい能力」のいずれにおいても、回答者がほとんどいない。少なくとも回答者の意識の上 では、他の能力に比べて、優先順位が非常に低いことを示していると考えられる。
EU では、「グラント/プロポーザルの書き方」(18.6%)とほぼ同程度の水準で倫理(18.1%)を学んでいるという結果が得られており、我が国の場合、「研究計画書・ プロポーザル作成に関する能力」が高い値を示していることを考えると、少なくと も我が国の博士課程在籍者等の「倫理」に対する意識は、EU における博士課程で の倫理の扱いとは大きく異なっている。

 これが日本の研究不正の発生などに影響を与えている可能性もあるように思います。

 いまの大学には倫理を軽視する雰囲気が漂っているようにも思います。

 私はかつて研究倫理教育に携わっていましたが、私の話には大学院生が数人しか来ないのに、医療統計学の講義には何倍もの院生が出席しているという光景を目の当たりにしました。

 しかし、こうした状況を変えなければなりません。

★総合科学技術・イノベーション会議(第47回)議事次第
https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui047/haihu-047.html

議事

1.特定国立研究開発法人(産業技術総合研究所)の見込評価等に対する総合科学技術・イノベーション会議の意見について

 産総研が取り上げられています。

 その産総研の中鉢理事長の年頭所感

https://www.aist.go.jp/aist_j/news/au20200101.html

★論文の「ひどいチェック」が科学の発展を妨げているという指摘
https://gigazine.net/news/20200104-rude-reviews-pervasive-harmful/

 査読の無茶な要求に萎えるというケースはよく見聞きしますが…。

JST、次期researchmapのリリース日と、それに伴うresearchmapログイン休止期間を発表
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=11715

 ご注意ください。2020年1月21日(火)10:00~2月4日(火)16:00(予定)はログインできないとのこと。

★Grad Student Arrested Trying to Smuggle Specimens to China
https://www.the-scientist.com/news-opinion/grad-student-arrested-trying-to-smuggle-specimens-to-china-66889

★Pneumonia of unknown cause - China
5 January 2020
https://www.who.int/csr/don/05-january-2020-pneumonia-of-unkown-cause-china/en/

中国・武漢で原因不明の肺炎 海鮮市場の店主ら多数発症
https://www.asahi.com/articles/ASMD06HZZMD0UHBI01Y.html

SARSの可能性否定 肺炎患者59人に 中国・武漢
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200105-00000048-jij-cn

Novel human virus? Pneumonia cases linked to seafood market in China stir concern
https://www.sciencemag.org/news/2020/01/novel-human-virus-pneumonia-cases-linked-seafood-market-china-stir-concern

China pneumonia: Sars ruled out as dozens fall ill in Wuhan
https://bbc.in/2sCQxqV

 中国武漢で発生した原因不明の肺炎。

★Year of the Nurse and the Midwife 2020
https://www.who.int/campaigns/year-of-the-nurse-and-the-midwife-2020

 WHO。看護師、助産師の重要性。

★What CRISPR-baby prison sentences mean for research
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00001-y

Chinese researcher who made CRISPR babies is sentenced to three years in prison
https://www.bmj.com/content/368/bmj.m11

Did Chinese scientist who edited human embryos to prevent HIV really deserve to go to jail?
https://www.rt.com/op-ed/477451-gene-editing-hiv-china-he/

CRISPR babies scientist He Jiankui should not be villainized - or headed to prison
https://www.statnews.com/2020/01/02/crispr-babies-scientist-he-jiankui-should-not-be-villainized/

He Jiankui is going to jail. Would the U.S. criminally prosecute a rogue gene-editing researcher?
https://www.statnews.com/2019/12/31/he-jiankui-jail-prosecute-rogue-gene-editing-researcher/

CHINA CONFIRMS THREE GENE EDITED BABIES WERE BORN THROUGH HE JIANKUI'S EXPERIMENTS
https://www.newsweek.com/china-third-gene-edited-baby-1480020

Scientific community debates gene editing as Jiankui lands in jail
https://www.theweek.in/news/health/2020/01/01/scientific-community-debates-gene-editing-as-jiankui-lands-in-ja.html

Third gene-edited baby born, scientists involved sentenced, China confirms
https://www.foxnews.com/science/three-gene-edited-babies-born-china-scientists

 中国でゲノム編集ベビーを作った研究者への処罰に衝撃と賛否が広がっています。

★数理人材かAI人材か 「数理資本主義」の時代
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53703840T21C19A2000000/

 バイオ系人材がすぐに転身できるものではありませんが、社会のニーズがどこにあるかの感度は高めておかないといけないと思います。

★Clarity in 2020
https://science.sciencemag.org/content/367/6473/5.full

 scienceの編集方針。

★Those We Lost in 2019
https://www.the-scientist.com/news-opinion/those-we-lost-in-2019-66853

 日本にもゆかりが深いシドニー・ブレンナー博士などが取り上げられています。

★From service to science: NIH shifts focus of mentoring network aimed at boosting grantee diversity
https://www.sciencemag.org/news/2020/01/service-science-nih-shifts-focus-mentoring-network-aimed-boosting-grantee-diversity

 メンタリングに関しては、日本の取り組みはまだまだだと感じたりしています。

EPA science advisers slammed the agency for ignoring science. Here is what they said
https://www.sciencemag.org/news/2020/01/epa-science-advisers-slammed-agency-ignoring-science-here-what-they-said

EPA Science Board Criticizes Proposed Regulatory Rollbacks
https://www.the-scientist.com/news-opinion/epa-science-board-criticizes-proposed-regulatory-rollbacks-66907

 EPAに対する批判は止まりません。

★「韓国を輝かせた人物」に選ばれた若き科学者、薄給の研究所辞め自営業に転職
http://www.chosunonline.com/m/svc/article.html?contid=2020010380039

 日本より厳しい状況です。

★Australia fires: How do we know how many animals have died?
https://www.bbc.co.uk/news/50986293

豪森林火災、コアラ保全のカギ握る個体群が半減 野生動物5億匹が焼死か
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200106-00000024-jij_afp-int

 オーストラリアの山火事。深刻化しています。

★I wish I’d taken my mental health more seriously in grad school
https://www.sciencemag.org/careers/2020/01/i-wish-i-d-taken-my-mental-health-more-seriously-grad-school

Strange dreams
https://science.sciencemag.org/content/367/6473/114.full

 院生とメンタルの問題。近年懸念する声が高まっています。

★科学技術立国 人を育てる政策を掲げよ 成果偏重が「失速」を招いた
https://www.sankei.com/column/news/200106/clm2001060002-n1.html

★若い博士が広く活躍できる社会に
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54013110S0A100C2SHF000/

★産業構造の変化捉えた高等教育に
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54013070S0A100C2SHF000/

★次世代に持続可能な国を引き継ごう
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54002710R31C19A2SHF000/

 産経と日経は正月に科学技術に関する社説を載せています。特に日経は博士問題を大きく取り上げています。

★Asimov at 100
https://science.sciencemag.org/content/367/6473/20.full

 アイザックアシモフ氏生誕100年。

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%B6%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%A2%E3%83%95

時代の変わり目と博士

★時代の変わり目と博士
2019年12月24日~2019年12月31日

カセイケン代表 榎木英介

 2019年最後の日になりました。2010年代も終わりです。

 時間は人が勝手に区切ったものですが、過去から学ぶのは重要です。今週のピックアップ記事を使って振り返ります。

 個人的には、近畿大学を退職し、地方の公立病院に異動し、環境は大きく変わりました。

 この異動には、在野で活動したいという思いがあったわけですが、在野研究は今年大きな話題となりました。

★文系大学院生から、民間企業の研究職になった1年を振り返る。
https://note.com/fujikkko/n/n124df093b697

 研究職以外の仕事をしながらでも研究はできる…。私自身もそれは感じますし、流れが来ているようにも思います。

 こうした流れの背景には、就職氷河期世代を中心とする世代が直面する厳しい現状があると思います。

★40代ロスジェネの年収は10年前のバブル世代より50万円も低い
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/12/401050.php

 もちろん、アカデミアへの就職が難しいから在野というネガティヴな発想は慎むべきで、活躍の場は世の中にたくさんあるというポジティブな発信をしたいとの思いで記事を執筆しました。

 博士号取得者を中心とする高度知識人材に対する見方は、少しずつ変わっきているようにも思います。

★時代の大きな変わり目が来てます
https://chikirin.hatenablog.com/entry/2019/12/25/%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%AA%E5%A4%89%E3%82%8F%E3%82%8A%E7%9B%AE%E3%81%8C%E6%9D%A5%E3%81%A6%E3%81%BE%E3%81%99

 人気ブロガーちきりんさんが見抜いているように、時代が変わりつつある今、博士号取得レベルの専門知を持つことの重要性が高まっています。

★2020年先端IT人材不足の深刻化で博士・ポスドク人材需要が急拡大か!
http://acaric.co.jp/news/2019/12/2019-report/

アカリク、大学院生の採用・展望に関するレポートを発表
https://www.work-master.net/2019175819

 分野にもよるとは思いますが、博士号取得者の需要の拡大も予想されるなど、社会の様々な場で活躍できる可能性が広がっています。

 いまだ博士は使えない云々という人がいますが、そういう人がいたら、その方の所属先の業績などをみたらいいと思います。多くがたとえ大企業であっても革新的な新規事業ができず、業績が低迷しているのではないでしょうか。

 もちろんアカデミアと在野に明確な境界を設けることには意味がありません。そもそも在野という言葉は在朝との対比で語られる言葉なので、境界を含んだ言葉ではありますが、そのような境界は乗り越えて行き来したらいいと思います。

 今年出した本

「研究不正と歪んだ科学 STAP細胞事件を超えて」
日本評論社 税込 2,530円
https://nippyo.co.jp/shop/book/8178.html
https://amzn.to/2NEWFVR

 の共著者である粥川準二さんは、ライターや非常勤講師をご経験ののち、来年開設予定の叡啓大学(仮称)
https://www.pu-hiroshima.ac.jp/site/eikei-univ/

の准教授となられています。ご専門は生命倫理学です。

★遺伝情報による差別をどう防止するか
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00022/122600005/

 在野であらねばならないとか、評価されないことを恨み、アカデミアへ復讐してやるとか、そうした固執は意味がなく、自分のやりたいことをやりやすいのがたまたま在野だった、というような感じがいいなあと思います。

 大学を離れたことであらためて実感しますが、大学というのはサンクチュアリのようなところだなと思います。言論の自由、学問の自由、時間、資料へのアクセスその他様々な利点があります。

 こうした利点は確かに在野では享受することができません。

★図書館、起業の強い味方 専門家の相談会も
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53689750T21C19A2EAC000/

★九州の博物館、シニアの健康守れ 学芸員や医師ら連携
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53719890T21C19A2ACYZ00/

 図書館や博物館が在野の人たちのプラットフォームになればいいと強く思います。

★700万円、10年の若手研究者支援策に望むこと
世界ではとっくに同様の制度あり、何より継続が大事
https://webronza.asahi.com/science/articles/2019121700004.html

 若手支援が大きな政策課題になっています。そうしないともうどうしようもないところまで追い込まれているということかも知れませんが、それでも前向きに評価はしたいと思います。

 ただ、10年支援が終わり、次にアカデミア内でのポストがない、という事態も想定されます。ポスドク後の職がないポストポスドク問題と同じ構造ですね。

 そのためにも、アカデミア以外の活躍の場が重要になります。

 先日、実家の近所にある旧東海道を歩きました。一里塚にはえのきの木が植えられていました。

 そんなことは小学生のときに教わって常識だったのですが、あらためてえのきの木を見上げてハッとなりました。

 旅人に木陰を提供するえのきの木のように、私カセイケン代表榎木も、人生を旅する人が休める木陰を提供することがミッションなのではないか…。

 カセイケンは「知を駆動力とする社会をつくる」ことをミッションに活動しています。そのなかには、知を担う高度知識人材の活躍を支援することも入っています。

 キャリアに迷う人たちが、カセイケンを通じて次の行き先を見つける。

 カセイケンをえのきの木にしたいなと思ったりする年の瀬です。

★2020年度の科学技術振興費は1兆3565億円 共創の場形成支援予算は138億円
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/12/20191225_01.html

東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/20191227.pdf

 ロードマップ改訂版。困難な廃炉作業は次の10年も続いていきます。

★大学入試のあり方に関する検討会議の設置について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00063.html

★令和3年度からの大学入試サイトを開設しました
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/index.htm

 大学入試の混乱は2019年の大きな話題でした。身内に高校2年生がいるので、当事者としてこの問題を眺めています。

★大学の保管するアイヌ遺骨等の出土地域への返還に係る他の団体からの申請等の有無の確認について
https://www.mext.go.jp/mext_00085.html

 アイヌ遺骨問題は、大学が直視しなければならない負の歴史です。

★新しい時代の初等中等教育の在り方 論点取りまとめ(令和元年12月 初等中等教育分科会)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/1382996_00003.htm

★大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会第一次報告
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/098/gaiyou/mext_00099.html

★2019年12月25日
「我が国における学術研究課題の最前線(令和元(2019)年度)」を作成しました
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/30_front/index.html

★第16回(令和元年度)日本学術振興会賞の受賞者決定について
https://www.jsps.go.jp/jsps-prize/kettei.html

★「GOVERNANCE INNOVATION: Society5.0の時代における法とアーキテクチャのリ・デザイン」報告書(案)の意見公募手続パブリックコメント)を開始しました
https://www.meti.go.jp/press/2019/12/20191226001/20191226001.html

★応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000581246.pdf

★大学院入試問題の漏えい等及び教員の懲戒処分について
https://www.tmu.ac.jp/extra/download.html?d=assets/files/download/auth/press/press_20191224.pdf

飲み会の場で入試問題漏えい 首都大東京 教授を懲戒解雇
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191224/k10012226761000.html

★当研究所教員による公的研究費の不正使用について
https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20191225.html

当機構教員による公的研究費の不正使用について
https://www.rois.ac.jp/info/20191225.html

極地研助教が研究費など130万円不正使用 懲戒解雇に
https://www.asahi.com/articles/ASMDT5HCBMDTULBJ00L.html

極地研助教を不正受給で懲戒解雇 旅費など132万円
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019122501001646.html

 年末にいくつかの不正事件が明らかになりました。

 極地研の研究者の方は、メディアに出演するなど有名な方だったので、衝撃が広がっています。

★北海道教育大教授 中国帰国し連絡途絶「情報提供を」同僚
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191227/k10012230861000.html

緊急アピール
私たち研究仲間と友人一同は、袁克勤・北海道教育大学教授の中国での安否について憂慮しています
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20191224.pdf

 今年は中国で研究者が拘束されるという事件も目立ちました。

旭川医大教授、製薬会社から不正報酬で停職
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191227-00000193-kyodonews-soci

旭川医大教授が製薬会社から不正報酬 停職12カ月
https://mainichi.jp/articles/20191227/k00/00m/040/434000c

 妻を社長とする会社を立ち上げそこに入金させるという手口でした。

★「人生会議」炎上騒動 その後に何が?
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191225/k10012227761000.html

★ゲノム編集で双子誕生、中国研究者に懲役3年判決…「倫理違反知っていた」と断定
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191230-00050110-yom-hlth

ゲノム編集した子ども誕生 中国の科学者に懲役3年判決
https://www.asahi.com/articles/ASMDZ4WTTMDZUHBI00K.html

Chinese scientist who produced genetically altered babies sentenced to 3 years in jail
https://www.sciencemag.org/news/2019/12/chinese-scientist-who-produced-genetically-altered-babies-sentenced-3-years-jail

 ゲノム編集は2010年代が生み出した大きな成果です。2020年代はどこまで医療や食料増産にこの技術が使われるのかをみていかなければなりません。

★【呼びかけ】ゲノム編集技術の拙速な推進を憂慮する学者声明への賛同お願い
http://nishoren.net/new-information/11685

 急速に広がるゲノム編集に懸念の声も出ています。

 こうした「エマージングテクノロジー」に対して、法的、倫理的、社会的な課題を考えることはELSIと呼ばれます。

ELSIってなに?
http://platform.umin.jp/elsi/elsi.html

 ELSIは在野の人たちが取り組むことができる領域ではないかと思います。

★135以上の米国の組織、米国当局による査読済み論文の即時かつ無償公開を義務化する政策案に強い反対を表明
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=11713

 先週既報です。

 政府にはっきりと意見を言うことは、日本ではあまり活発ではありません。

 ELSIも含めて、なにかの問題点を指摘したり、批判をしたりすることは、研究の邪魔をする、輪を乱すと言われてしまいがちなのが日本の特徴です。

 私が関心があるテーマである研究公正もELSIに含まれると思いますが、批判的な言動を行なっているとみなされがちで、なかなか評価されません。

 もちろん評価を求めてやっている活動ではないので、評価などいらないと思うのですが、研究公正を推進することなどアカデミアは求めていないのではないかと不安に思うことがあります。

 本にも書きましたが、研究公正推進には相互批判が重要です。

 批判を非難ととらえ、批判をする人を排除する組織に未来はありません。

 2020年代には相互批判ができるより風通しのよいアカデミアをみてみたいと心より願います。

★国立大新入生に特例適用せず 修学支援制度で文科相
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53729800U9A221C1CR0000/

信じられない萩生田発言 池上彰さん「報じぬ記者鈍い」
https://www.asahi.com/articles/ASMDV2JNTMDVUPQJ001.html

萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和元年12月23日)
https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/mext_00020.html

 萩生田大臣の発言に対して池上彰さんが厳しく批判。問題の発言は

 制度の分かれ目というのは、いつもこういう課題が出てくると思います。国会の中でも私は答弁してまいりましたけれども、真に支援が必要かどうかではなくてあらかじめ各大学が持った予算の中から割り戻して支援をしていたので、本来、他所の大学に行けば支援対象じゃない人も、Aという大学では支援をしていたと、こういうことだったと思いますので、今回、統一基準を作りましたから、これを新たなルールとして是非ご理解いただいて、端境期にたまたまあの先輩はこういう家庭環境でこうだったのに俺はという不満がもしかしたらあるかもしれないです。これは制度の端境期なので是非ご理解いただいて、逆にこう手厚くですね、しっかりやっていきたいなと思っていますので、これは御理解いただくしかないと思っています。

★検証
ヒアリ阻止、正念場 環境省、毒餌4万個を設置/自治体、チラシで注意喚起
https://mainichi.jp/articles/20191231/ddm/012/040/044000c

 今年は女王アリが見つかり、定着の可能性が取り沙汰されました。来年も正念場という意識をもって取り組んでいかなければなりません。

休みなく働く研究者、予算案、HFSP

2019年12月17日~2019年12月24日

カセイケン代表 榎木英介

 いよいよ2019年も終わりが見えてきました。

 今年の終わりは、1年の終わりでもあり、2010年代の終わりでもあります。

 例年のごとく、科学メディアが2019年を振り返っています。

★Cover Story:特集:2019年を振り返る:今年の重要人物10人
https://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/101514

Nature’s 10
Ten people who mattered in science in 2019.
https://www.nature.com/immersive/d41586-019-03749-0/index.html

遺伝子編集から重力波まで、2010年代の科学を形作ってきた画期的出来事を振り返り、2020年代に解決を目指すべき気候変動問題を考える。
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03857-x

2019 Breakthrough of the Year

Darkness made visible
https://science.sciencemag.org/content/366/6472/1434.full

Runners-up
https://science.sciencemag.org/content/366/6472/1436.summary

Breakdowns of the year
https://science.sciencemag.org/content/366/6472/1442

Seeing is believing
https://science.sciencemag.org/content/366/6472/1423.full

ブラックホール撮影がトップに 米科学誌の今年十大成果
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53675750S9A221C1CR8000/

「今年の大発見」にブラックホール撮影
https://www.sankei.com/life/news/191220/lif1912200006-n1.html

科学10大ニュース、1位は「ブラックホール撮影」
https://www.yomiuri.co.jp/science/20191221-OYT1T50240/

★The Top Retractions of 2019
https://www.the-scientist.com/news-opinion/the-top-retractions-of-2019-66852

 今年少なくとも1433の論文が撤回されたそうですが、その中でトップ10が挙げられています。日本に絡むものはありませんでした。

 「日本は研究不正大国だ」というと、いやいやほかの国も酷いよ、という声が聞こえてきます。

 冬休みのシーズンですが、そんなこと言っていられない、という方も多いかもしれません。

★There’s No Winter Break From ‘Publish or Perish’
https://www.nytimes.com/2019/12/18/science/scientists-holiday-work.html

 元記事はBMJ

Working 9 to 5, not the way to make an academic living: observational analysis of manuscript and peer review submissions over time
https://www.bmj.com/content/367/bmj.l6460

 週末や休みに研究者がどれくらい働いているか国別比較しています。中国がトップ。日本も平均以上です。

 その理由は論文投稿と論文査読。重い負担としてのしかかります。

 このメルマガで2019年および2010年代を振り返るのは来週号にしようかと思いますが、本当にさまざまなことがありました。当メルマガは2003年創刊ですので、はじめて全てをお伝えしたディケイドということになります。

 2010年代も当然といえば当然ですが、毎週ニュースは尽きることがなく、さまざまなニュースや問題をお伝えしてきました。

 2020年代も、力の続く限り情報収集と発信を続けていきたいと思います。

★令和2年度予算政府案
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/seifuan2019/index.html

文教・科学技術予算
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/seifuan2019/13.pdf

概要
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/seifuan2019/12.pdf

令和2年度予算
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/fy2020.html

 予算案が決定しました。また、13日には補正予算が決定しています。

令和元年度財務省所管一般会計補正予算(第1号)概算が決まりました
https://www.mof.go.jp/about_mof/mof_budget/budget/fy2019/hosei1_20191213.html

令和元年度補正予算
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2019/hosei1213.html

科学技術関連に関しては、いろいろ論点があります。

 国立大学の運営費交付金については、相対評価による配分が強化、拡充されます。

 総額は164億円減ですが、高等教育の修学支援新制度のうち、 国立大学における授業料等減免相当分が264億円となっており、差し引き微増。

 「現行の授業料減免制度が対象としていた学部学生が高等教育の修学支援新制度に移行するため、関連経費が剥落している。」とのことです。

★国立大新入生から特例なし 修学支援制度で文科相
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53690200T21C19A2CR8000/

 科学技術振興費は1兆3565億円で、前年度より187億円増。

 うち科研費は2,374億円で2億円増。

科学研究費助成事業(科研費)の令和2(2020)年度予算政府案について
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/06_jsps_info/g_191223/index.html

 若手優遇が謳われており、補正予算でも若手支援として550億円が計上されています。

 その他「Society5.0実現に向けた重点分野への戦略的配分」として

○ 量子技術に対する研究開発の強化(光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP))[32億円](+10億円)
○ スーパーコンピュータ「富岳」の開発 [60億円](+3億円)
※ 令和元年度補正予算においても144億円を計上。

○ 宇宙・航空分野の研究開発の推進〔1,575億円〕(+15億円) ※ 令和元年度補正予算においても317億円を計上。

 などとなっています。

【令和2年度予算案】有人月探査に70億円、iPS備蓄事業は継続
https://www.sankei.com/life/news/191220/lif1912200030-n1.html

★経済見通しと経済財政運営の基本的態度
https://www5.cao.go.jp/keizai1/mitoshi/mitoshi.html

安倍総理は令和元年第14回経済財政諮問会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201912/19keizaishimon.html

令和元年第14回経済財政諮問会議
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1219/agenda.html

議事

(1) 新経済・財政再生計画 改革工程表の改定
(2) 令和2年度の経済見通し

 財務省は厳しい経済・財政状況のなか科学技術予算は増やしている、しかし成果が出ていない、それは研究者や大学の怠惰のせいだ、というわけですが、予算総額のみでみてはいけません。

福島原発事故と科学力失速に見る政府依存報道
http://dandoweb.com/r2/

★iPS細胞の補助金はなぜ打ち切りに…黒幕は“税金で不倫旅行”疑惑の官僚!?
https://nikkan-spa.jp/1630176

 大学と財務省、どちらの立場ではない、中立的な立場で科学技術政策を見ていくことができれば、というのが我々の思いですが、まだまだ力不足です。

 2020年代には解析力をパワーアップし、仲間もふやし、人々のためという立場から、科学技術政策をみていきたいと思っています。

ムーンショット国際シンポジウム開催のお知らせ(更新)
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20191018moonshot.html

科学技術「ムーンショット型研究開発」のシンポジウム 東京
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191217/k10012218391000.html

「日本はアジア一のAIプラットフォームを」とソフトバンクの孫氏 「ムーンショット国際シンポジウム」開催
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/12/20191219_01.html

 ムーンショットシンポジウムが終了しました。このシンポジウムを受けて、やるべきことが絞られていくきます。そもそもムーンショット型研究開発がよいのかという問題もありますが、どのような中身になるのか、みていきたいと思います。

安倍総理は第34回未来投資会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201912/19miraitoushi.html

未来投資会議(第34回) 配布資料
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai34/index.html

新たな成長戦略実行計画策定に関する
中間報告
令和元年 12月19日 未来投資会議
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai34/saisyuu.pdf

 こちらでは、若手を一定の期間安定的に支援する事業などについて言及されています。また、フリーランスの働き方についても言及があります。

 政府が若手研究者を優遇するのは基本的に支持します。

 ただ、繰り返し述べているように、問題は若手ではなくなった40代前後の就職氷河期、ロスジェネ世代の研究歴がある人たちのことです。

★ 年収200万円台、大学非常勤講師の貧困事情。50代独身のつらい日々
https://nikkan-spa.jp/1625634

非常勤講師は年収150万円、学会も自腹…大学教員は超格差社会だった
https://nikkan-spa.jp/1629585

 この世代のなかには、上記記事のように非常勤講師で生きている方々もいらっしゃいます。

就職氷河期世代支援のご検討のお願い
http://www.keidanren.or.jp/announce/2019/1217.html

 経団連が「お願い」をしていますが、いかにも弱い…。

 分野も様々で、一言でああしろこうしろとは言い難いのが辛いところですが…。

 氷河期世代研究者の抱える問題は、まず第一が、生きていくための手段を見つけること、もう一つは研究そのものか、研究に匹敵する生きるミッションを持ってもらうことです。

★1/24
バイオテックMEETUP
https://sites.google.com/cellfiber.jp/124-meetup

 バイオベンチャーなど、人材を求めている企業もあります。

 博士号取得者が持つ課題発見能力をフルに使う職場は少ないかもしれませんが、課題解決能力は横展開できると思っています。

 とはいえ、「ライスワーク」(お金を稼ぐためだけの職)になってしまうと辛いものがあります。

 「ライフワーク」であった研究に匹敵する仕事に就くことができればいいのですが…。

★ITが単純労働を食い散らかした後にやってくること
https://www.orangeitems.com/entry/2019/12/15/085729

 しかし、そのライスワークだって、単純労働だったとしたら、なくなる未来が見えています。非常に厳しい状況です。

★70代起業家、現役バリバリで株式上場へ その活力源は
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53449030X11C19A2X11000/

70歳就労、フリー選択なら「会社は契約を」 厚労省
https://www.asahi.com/articles/ASMDM4V51MDMULFA017.html

 人生100年時代といわれるのですから、70代くらいはまだまだ働きます。自らライフワークを作る人もいます。

 なかなか厳しい時代ですが、同世代の40代には活躍してほしいと思っています。2020年代もそのための情報を提供し続けていきます。

安倍総理は第24回復興推進会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201912/19fukkousuisin.html

第24回復興推進会議[令和元年12月19日]
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat7/sub-cat7-1/20191219093300.html

 復興も2020年代以降続いていく課題です。

★特別インタビュー
政策研究大学院大学 科学技術イノベーション政策研究センター(SciREX センター)顧問 黒田 昌裕 氏インタビュー
科学技術イノベーション政策の未来への期待
歴史認識とEBPMによる検証の必要性-
https://www.nistep.go.jp/activities/sti-horizon%e8%aa%8c/vol-05no-04/stih00194

★「デルファイ調査検索」改訂版(第11回調査結果追加)の公開について
https://www.nistep.go.jp/archives/43481

★平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/18/index.html

 通称「三師調査」と呼ばれるこの調査。

 私の本業である病理診断科勤務の病理医は1993名。2年前より100名増えました。

 しかし年間50名しか増えていないわけです。まだまだ足りません。

 AI時代を目前に、時間をかけて病理医になったところで、その労力が報われないと思う学生、研修医も出てきているようです。

 実はこれはいろいろな分野で起きていることです。

 今ドライバー不足が言われていますが、自動運転時代を目前に、わざわざお金をかけて免許を取ろうとする人が少なくなっていると言われているのです。

「第二種免許の規制緩和」がどうしても必要な理由
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191223-00058450-jbpressz-soci

 この過渡期の人材不足をどうするか…。非常に悩ましいところです。

★From social media to conference social
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03853-1

 Twitterとリアルカンファレンスを融合した「生物学のウッドストック」を企画しているテルアビブ大のOded Rechavi 氏。

★大学のハラスメント講習で語られた「学生の信頼を損なう恐れのある大学教員の25の行動」…これらを避けるための4つのことも提示も
https://togetter.com/li/1445181

★声明「ヘリウムリサイクル社会を目指して」発表記者会見を行いました
https://www.jps.or.jp/information/2019/12/helium.php

ヘリウム不足「深刻」、再利用訴え 日本物理学会など
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53628920Q9A221C1000000/

ディズニーから風船消えた ヘリウムガス、世界的な異変
https://www.asahi.com/articles/ASMDF5DVHMDFULBJ00N.html

 非常に大きな問題です。

★上海の名門大、規約から「思想の自由」を削除 学生反発
https://www.asahi.com/articles/ASMDP4RXLMDPUHBI00K.html

IEEE、49件の論文の撤回を発表
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=11687

★Head of ancient-DNA lab sacked for ‘serious misconduct’
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03932-3

Bullying allegations lead to firing of prominent ancient DNA expert
https://www.sciencemag.org/news/2019/12/bullying-allegations-lead-firing-prominent-ancient-dna-expert

★Howard Hughes Medical Institute faces race, sex bias lawsuits by two Asian American biologists
https://www.sciencemag.org/news/2019/12/howard-hughes-medical-institute-faces-race-sex-bias-lawsuits-two-asian-american

Two Asian American women allege bias by HHMI
https://science.sciencemag.org/content/366/6472/1432

★日本初「病院内ラジオ局」開局 英国発祥、投稿・音楽も
https://www.asahi.com/articles/ASMDL4FZHMDLOIPE01B.html

 サンドイッチマンの「病院ラジオ」
http://www6.nhk.or.jp/nhkpr/tag/index.html?i=15534

を思い起こしますが、よい取り組みだと思います。

★This AI researcher is trying to ward off a reproducibility crisis
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03895-5

★Dispatches from a world in turmoil
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03872-y

 Syria, Bolivia, Sudan, Iran, Chile, Ecuador, Lebanon, Venezuela, Hong Kong and Catalonia…。混乱する社会情勢のなか、科学者たちはどう行動したか…。

OECD Recommendation on Responsible Innovation in Neurotechnology
https://www.oecd.org/sti/emerging-tech/recommendation-on-responsible-innovation-in-neurotechnology.htm

★Trump picks computer scientist to lead National Science Foundation
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03924-3

Trump to nominate Arizona State computer scientist to lead the National Science Foundation
https://www.sciencemag.org/news/2019/12/breaking-news-trump-nominate-arizona-state-computer-scientist-lead-national-science

★A Year After the Midterm Elections, Where Are They Now?
http://bit.ly/2PObDeM

 中間選挙で研究歴のある議員が数名誕生しました。今どうしているのか…。

 日本でもこうしたことをやらなきゃですね。

★2020 U.S. spending bill restricts some animal research, pushes for lab animal retirement
https://www.sciencemag.org/news/2019/12/2020-us-spending-bill-restricts-some-animal-research-pushes-lab-animal-retirement

★Science groups, senator warn Trump administration not to change publishing rules
https://www.sciencemag.org/news/2019/12/science-groups-senator-warn-trump-administration-not-change-publishing-rules

Rumours fly about changes to US government open-access policy
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03926-1

 トランプ政権の論文出版方針に対し異議申し立て。

★Chinese institutes investigate pathogen outbreaks in lab workers
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03863-z

★科学者の説明責任、ますます重要に 欧州のポピュリズム深化に対応
https://scienceportal.jst.go.jp/columns/highlight/20191218_01.html

★「研究に関する男女共同参画ダイバーシティの推進状況に関するアンケート調査(研究者対象)」の実施について(ご協力のお願い)【回答期限 2020年1月10日】
https://www.opened.network/questionary/questionary-0002/

ノーベル賞受賞者を30年で28人輩出 驚異の国際機関
http://bit.ly/2r20Wvj

 仏ストラスブールに拠点を置く国際ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム、HFSPです。今年亡くなった中曽根康弘元総理の提唱で始まったこのプログラム。

 非常に重要な示唆が含まれているインタビュー記事です。