科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

フリー研究者の論点

★フリー研究者をめぐる諸問題
2019年11月12日~2019年11月19日

研究不正と歪んだ科学
STAP細胞事件を超えて
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 好評発売中です。ご購入くださった皆様には御礼申し上げます。

 まだ詳細を詰めている段階ですが、2020年1月12日(日)に大阪にて出版記念シンポジウムを開催予定です。追ってご案内いたします。

 今週はフリー研究者について考えさせられました。

近畿大学を退職しました
https://evidence8money.hatenablog.com/entry/2019/11/12/165910

 私(榎木)と同時期に、同じ近畿大学を辞めた方のブログです。研究をしたいから大学を辞めるという方がついに現れたのだ、と思い、Yahoo!ニュース個人に記事を書きました。

「フリー研究者」の時代がやってきた?!その可能性と課題
https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/20191115-00151003/

 Twitter上でこの記事について議論させていただきましたが、いろいろ気づかされました。

 まず、研究機関に所属しないで研究を行う人の存在は、昔からいるということ。

 むしろ職業研究者が現れるまでは、多くの研究が趣味で行われていたということです。そしてその後も人文社会科学系を中心に、在野の研究者の存在感は大きかったわけです。それは理解していましたが、その存在感は分野によっては相当大きいということです。

 そうした分野の方々からみれば、何を今更というご意見が出ても理解できます。

 一方で、私のように「ウェット」な生物学をやってきた人間からすると、バイオハッカーDIYバイオを行う人たちのやっていることは驚きなわけで、新しい時代来たなあと思いました。

 こうした分野間の違いは大きいと思います。

 とはいえ、インターネットの発達やコンピュータの性能の向上などは、あらゆる分野で在野研究を行いやすくしているわけで、軽々と大学辞めますという人が登場したのは新しいなあと思います。

 昔は、在野でいることである種のルサンチマンを感じていたというか、在野にしか居場所がない境遇を忸怩たるものと思っていた人も多かったように思いますが、いまはそういう恨めしさみたいなものもだいぶ軽減しつつあるようにも思います。

 とはいえ、大学がなくなるほど在野研究の質量が高いわけではなく、正規軍とゲリラくらいの差はあります。

 しかし、その差がどんどん縮まってきたときに、大学とは何かが大きく問い直されることになるしょう。

「趣味の歴史修正主義」を憂う
大木毅 / 現代史家
https://synodos.jp/society/23075

 もう一つ、在野の大きな問題は、研究の質です。歴史学など、いっけん参入障壁が低そうにみえる分野で、既存の研究を無視したトンデモや陰謀論を唱える人が絶えないわけですが、こうしたトンデモが既存の研究を無視して広がっていく危険性をどうするかは考えないといけません。

海外の例も参考に独立自営の人の支援を
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52310790Y9A111C1SHF000/

 もう一つ、職業を持って趣味で研究する人は別として、完全にフリーランスになった場合の、社会保障や労働環境をどうするのかという問題もあります。

 すでにフリーランス研究者の仕事サイトなども出てきています。

Hire freelance scientists and researchers
https://www.kolabtree.com/

The rise of the freelance scientist
https://www.editage.com/insights/the-rise-of-the-freelance-scientist

 ともかく、大学教員が軽々と在野に飛び出す時代が間近に迫るいま、いろいろな課題が見えてきました。

 私は在野にいますが、完全なフリーランサーではなく、職を持ちながらこうしたメルマガを作ったり文章を書いたりしているわけですが、現場に身を置いてこの問題を追っていきたいと思います。

★(思考のプリズム)災害復旧のボランティア ハードル下げる発信を 小松理虔
https://www.asahi.com/articles/DA3S14255371.html

 「新復興論」
https://genron.co.jp/books/shinfukkou/

 の小松氏。

課題の「内」が切迫するほど、その緊張感ゆえ、当事者性の低い「外」からの関わりが生まれにくくなる。こうした内と外の問題意識の乖離(かいり)は、原発事故のような特殊な課題領域だけで起こるものではない。

 という指摘は、大学や研究にも当てはまるのかなあと思います。

 在野は黙ってろ!教授になってから物をいえ!という言葉は私自身投げかけられてきました。研究ももうちょっと「外」から語ってもいいと思うのですが…。

★残念ながら大学の非常勤講師の報酬額が安いのは「侮辱」ではない
https://anond.hatelabo.jp/20191117140606

 専業非常勤講師の方々にとっては辛い状況が続いていますが、非常勤講師が専業という状態を考慮しない職である点が問題です。

文化勲章を受章した私が、83歳になっても研究を楽しめる理由
祝・甘利俊一氏受章!研究者人生を語る
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68146

 研究に年齢は関係ない!という思いと、研究を楽しめる環境にない方々が多いことにも思いをはせます。在野で好きな研究ができらたらどれだけよいか。

★異例だった今年のノーベル物理学賞 福岡伸一「地球外生命体の存在という夢に」
連載「福岡伸一の新・生命探検」
https://dot.asahi.com/aera/2019111200018.html

 今年のノーベル物理学賞ポスドクだった研究者が受賞した理由。

男女共同参画社会に関する世論調査
https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-danjo/index.html

★How UniversitiesBecame the NewBattlegroundsin the HongKong Protests
By K.K. Rebecca LaiNov. 18, 2019
https://www.nytimes.com/interactive/2019/11/18/world/asia/hong-kong-protest-universities.html

 ニューヨークタイムズインタラクティブなページに、起こっていることの重大さを感じます。

香港理工大で激しく衝突 警官隊が未明に突入 負傷者多数か
https://www.sankei.com/world/news/191118/wor1911180002-n1.html

香港中文大学で警察が催涙弾2356発 狙いは「国際ネットハブ」との分析も
https://news.nifty.com/article/world/china/12241-465816/

 1968年、日本でもみられた光景に近いのでしょうか。大学がバトルフィールドになったという重大事態を思います。

安倍総理は令和元年第11回経済財政諮問会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201911/13keizaishimon.html

令和元年第11回経済財政諮問会議
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1113/agenda.html

 教育、科学技術政策が議論されています。やっぱり経済財政諮問会議が総合科学技術・イノベーション会議の上なのか、という思いを抱いていしまいますが…。

資料5-1 経済再生・財政健全化の一体的な推進強化に向けて~教育・科学技術政策~(有識者議員提出資料)(PDF形式:277KB)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1113/shiryo_05-1.pdf

資料5-2 経済再生・財政健全化の一体的な推進強化に向けて~教育・科学技術政策~(参考資料)(有識者議員提出資料)(PDF形式:530KB)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1113/shiryo_05-2.pdf

資料6 Society 5.0時代の教育・科学技術の在り方について(萩生田臨時議員提出資料)(PDF形式:654KB)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1113/shiryo_06.pdf

資料7 科学技術・イノベーションによるSociety 5.0実現の加速(竹本臨時議員提出資料)(PDF形式:919KB)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1113/shiryo_07.pdf

★令和元年10月末申請の大学等の設置認可の諮問について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/attach/1422587.htm

 いくつかの大学が誕生しますが、賛否のある大学もあります。

★総合政策特別委員会(第31回) 配付資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu22/siryo/1422091.htm

議題

最新の研究開発動向について
我が国の強みを生かした研究戦略の構築について

★ロボットの社会実装を促進するためのタスクフォースを立ち上げました
https://www.meti.go.jp/press/2019/11/20191112001/20191112001.html

山梨県におけるCSFの患畜の確認(国内49例目)について
http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/191116.html

 名称が変わりCSFとなった豚のコレラ。発生が続いています。

宇宙政策委員会 宇宙産業・科学技術基盤部会 宇宙科学・探査小委員会 第33回会合 議事次第
https://www8.cao.go.jp/space/comittee/27-kagaku/kagaku-dai33/gijisidai.html

米国提案による国際宇宙探査への日本の参画について
宇宙基本計画工程表の改訂について
宇宙基本計画の改定に向けて
その他

★ポスト「はやぶさ」予算の壁
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52146010U9A111C1EA1000/

ポストはやぶさ2、「トランプ氏の月計画」がライバルに
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52106440T11C19A1I00000/

 予算の配分という大きな課題。

★提言「持続可能な生命科学のデータ基盤の整備に向けて」
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t279-1.pdf

提言のポイント
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t279-1-abstract.html

 日本学術会議

★Society 5.0時代の人材育成に向けた義務教育の抜本的ICT化を求める緊急提言
http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/096.html

 経団連

★The art of research
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03460-0

★「これまでに約2000本の不正論文を見つけました」
https://www.editage.jp/insights/i-found-about-2000-problematic-papers-says-dr-elisabeth-bik

 いわゆるネカトハンター。日本にはなかなかいません。

★Elsevier社、OAの対価としてデータを要求か。漏洩文書から明らかに(記事紹介)
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=11627

★多彩な企画で『人間らしさ』考える 『サイエンスアゴラ2019』に5000人が参加し閉幕
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/11/20191118_01.html

 私たちは今年は不参加でした。

★京大のiPS備蓄で自己資金要求 自民調査会、予算減額も
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019111201002215.html

iPS備蓄事業、予算減額案 山中伸弥氏「非常に厳しい」
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO52219680V11C19A1TJM000

iPS研究予算「いきなりゼロは理不尽」 山中伸弥所長
支援継続を政府に求める
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO52033220R11C19A1000000

京大iPS細胞備蓄事業、国支援打ち切りか 年10億円
https://www.asahi.com/articles/ASMBX4DVRMBXULBJ006.html

「iPS細胞」実用化に時間がかかるワケ
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17873

 iPS細胞研究に予算を出さないなんてけしからんという意見がある一方で、冷ややかにみる人たちもいます。

血液クレンジングだけじゃない……“トンデモ医療”で大金を稼ぐ「自由診療クリニック」はなぜ野放しなのか?
https://bunshun.jp/articles/-/15324

 医師たちが情報発信をするというレベルでは止められない状況。医療界がもっと本腰を入れろ、という意見も出ています。

★WHO sticks to 2020 governance plan for human-genome editing
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03474-8

★CRISPR’s unwanted anniversary
https://science.sciencemag.org/content/366/6467/777.full

 ゲノム編集。ゲノム編集ベイビーの問題が発覚して1年。

★GRADUATE STUDENTS PROTEST TRUMP LABOR BOARD’S PROPOSAL TO EXEMPT THEM FROM DEFINITION OF ‘EMPLOYEE’
https://www.newsweek.com/graduate-students-protest-trump-nlrb-proposed-rule-change-employee-definition-1471750

 大学院生を労働者として認めろという抗議。

★More Indigenous and Latin American students are joining US graduate programmes - but overall diversity remains low
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03546-9

SpaceX launch highlights threat to astronomy from ‘megaconstellations’
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03446-y

 衛星が天文学に影響するという懸念。

EPA’s ‘secret science’ plan is back, and critics say it’s worse
https://www.sciencemag.org/news/2019/11/epa-s-secret-science-plan-back-and-critics-say-it-s-worse

E.P.A. to Limit Science Used to Write Public Health Rules
https://www.nytimes.com/2019/11/11/climate/epa-science-trump.html

EPA Plans Modifications to Controversial Transparency Proposal
https://www.the-scientist.com/news-opinion/epa-plans-modifications-to-controversial-transparency-proposal-66707

 EPAが極秘研究をするというプランに批判が。

★More South Korean academics caught naming kids as co-authors
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03371-0

 子供を共著者にするというなんとも言えないやり方。入試の過度な競争が生み出しています。

★Avert catastrophe now in Africa’s Sahel
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03445-z

★Huge study documents gender gap in chemistry publishing
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03438-y

 化学の分野でもジェンダーギャップが。

★Nontenure-track researchers ratify first contract with the University of California
https://www.sciencemag.org/careers/2019/11/nontenure-track-researchers-ratify-first-contract-university-california

 大学と交渉し、権利を勝ち取った非テニュア研究者。

★学費無料のエンジニア養成機関、「42 Tokyo」が設立
https://edtechzine.jp/article/detail/2855

ついに黒船上陸──学費無料の仏発エンジニア養成機関「42」東京校が来春オープン
https://forbesjapan.com/articles/detail/30568

若手研究者支援と就職氷河期支援の陰にあるもの

2019年11月5日~2019年11月12日

 ついに発売になりました。

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 研究不正からみえる日本の研究の様々な問題を、六人の論客が論じました。どうぞよろしくお願いいたします。

 久々に総合科学技術・イノベーション会議が開かれました。

総合科学技術・イノベーション会議(第46回)議事次第
https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui046/haihu-046.html

議事

1.基礎研究と若手研究者支援について~2019ノーベル化学賞受賞を契機として~

安倍総理は第46回総合科学技術・イノベーション会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201911/11kagaku.html

 今年のノーベル化学賞を受賞される吉野彰博士(ここであえて博士と呼ばさせていただきます)が、若手研究者支援策について述べられました。

 吉野博士の資料はこちら。
https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui046/siryo1.pdf

 この資料のなかでは、吉野博士がノーベル賞の対象となった研究を33歳から始められたことか書かれています。

 吉野博士は安倍総理にも面会され、若手研究者の支援について述べられたとのこと。

安倍総理旭化成(あさひかせい)株式会社の吉野彰名誉フェローによる表敬を受けました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201911/11hyokei2.html

ノーベル賞・吉野氏、首相を訪問 若手研究者への支援強化を訴え
https://mainichi.jp/articles/20191112/ddm/005/040/113000c

 総合科学技術・イノベーション会議に戻ります。

 大臣資料
https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui046/siryo1.pdf

【施策の方向性】
優秀な若手研究者のポストの確保、表彰
博士人材のキャリアパス(教員、マネジメント人材、 URA、エンジニア、産業界等) の拡大(有給インターンの拡充等)
研究成果の切れ目ない創出に向け、研究者の多様かつ継続的な挑戦を支援する「競争的研究費の一体的見直し」
若手研究者の自由な発想による、挑戦的研究を

資金
研究成果の切れ目ない創出に向け、研究者の多 様かつ継続的な挑戦を支援する「競争的研究費の一体的見直し」
若手研究者の自由な発想による、挑戦的研究を支援する仕組みの強化
大学等の共同研究機能等の外部化によるオープンイノベーションの活性化

環境
マネジメント人材、URA、エンジニア等のキャリアパス の確立(URAの認定制度等)
研究機器・設備の整備・共用化促進(コアファシリ ティ化)、スマートラボラトリー化の推進等

橋本 和仁議員、上山 隆大議員の資料
https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui046/siryo3.pdf

1.若手研究者の研究環境、キャリアパス 世界をリードする研究者を目指す若手研究者には一定期間(例えば10年間)研究に専念できる環境を用意することが必要。
・自由な発想で挑戦的な研究に取り組む資金を確保する。
・自らの研究に専念できる時間を確保する。
・自らの研究以外の申請書執筆に時間を取らせない。
⇒実績を積んだ研究者は外部資金を積極的に獲得し、そこから生み出した財源をポテン シャルのある若手に循環させる仕組みを大学が構築すべき。
産業界をはじめ様々な分野で活躍できるよう、インターンシップや若手研究者のキャ
リアパスの拡大が必要。 ⇒産業界の研究職、起業家、リサーチアドミニストレーター、エンジニア職なども含めた施策づくり

梶原 ゆみ子議員、小林 喜光議員、篠原 弘道議員の資料
https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui046/siryo4.pdf

(3)若手研究者が研究に専念できる環境作り
若手研究者については、一定期間(例えば 10 年程度)、競争的資金の獲得や次のポストを心配することなく、「自由な発想で挑戦的な研究に集中できる環境」が 必要。大学は、優れた成果(論文やカンファレンス等)を出した研究者が、自立・ステップアップできる仕組みを、前述の自主財源等を活用して提供する。

また、経済的に不安定な博士課程学生に対し、学振、RA、TA、有給インターンシップ等の更なる生活支援を充実させるとともに、女性研究者・外国人研究者も 含めたインクルーシブなキャンパスの実現を目指す。

併せて、大学及び企業は、教員、URA、エンジニア、産業界等へのキャリアパスを確立し、研究者に対し多様な進路の可能性を提供する。

国は、若手を含む意欲のある研究者に対し、短期的な目標にとらわれず、野心的な挑戦を奨励し、多種多様な中長期的テーマに取り組めるよう、裾野の広い富士 山型の研究を支援するための競争的資金を創設する。

 若手の安定性、独立性、多様なキャリアパスがどうやら共通認識のようです。

 経済的支援についても述べられています。

 概ねこうした方向性は、多くの識者なども言っていることで、少なくとも科学技術政策の担当者サイドには伝わっているようです。

★減る博士課程進学 打開策は? 長谷川眞理子さんに聞く
https://www.asahi.com/sp/articles/ASMC75VTYMC7PLBJ004.html

★提言「第6期科学技術基本計画に向けての提言」
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t283-1.pdf

提言のポイント
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t283-1-abstract.html

 日本学術会議の提言でも、同趣のことが述べられています。

提言1 次世代を担う博士課程学生への経済的支援の抜本的拡充、キャリアパスの多様化
日本の研究力低下の最大の要因は博士課程学生数の大幅な減少(社会人・留学生を除く一般学生の博士課程入学者数は、15年間で4割も減少)であり、日本の研究力復興の最優先課題として、欧米並みの博士課程学生への経済的支援が必要である。テニュアトラックポジションの増加、リサーチ・アドミニストレーター(URA)や高度技術職員の採用枠拡大のほか、産業界や政府部門を初め社会の幅広い分野における多様なキャリアパスの提示及びそれを支援する施策も必要である。

 共通認識がここまできたわけですから、実現可能性が高い、と喜ぶのも分かります。

★若手研究者支援・最近のいい話(オンラインニュースまとめ)
https://note.mu/mkepasince2019/n/n2c532d2c36cd

 最近若手研究者のなかで、積極的に自らの意見を述べる人が増えてきました。当事者としての貴重な意見は、政策にも届いたことでしょう。

★U Missouri Grad Students Can Unionize: State Supreme Court
http://bit.ly/32BFb28

 アメリカでは大学院生が組合を作って待遇改善も含めた活動をしています。日本でも様々な団体の息の長い活動がありますが、ウェブやSNSを駆使して動き出す新たな方向性が出てきているように思います。

★教員でも職員でもない「第三の職種」研究者支えるURA
https://www.asahi.com/articles/ASMBT4GRRMBTOIPE011.html

(現場へ!)URAってなんだ:4 専門性と多様性、広がる発信
https://www.asahi.com/sp/articles/DA3S14249941.html

 URAは非常に注目を集めています。記事も増えてきました。旧知の白井さんが時の人になっています。

 とはいえ、この種の問題は総論賛成各論反対に陥りがちです。財務省という果てしなく高い壁があります。自分の分野や自らの利益を超えて、公益のために高い視野から動くことができる研究者がもっと増えなければなりません。

 そして、もう若くない人たちの苦境はそのままです。

★アルバイトで食いつなぎ、論文執筆もままならない日々…“国策“が生んだ、行き場を失う博士たち
https://times.abema.tv/posts/7027584
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191110-00010004-abema-soci

 これは九州朝日放送が制作した「テレメンタリー」で、私もコメントしています。

 就職氷河期世代対象の募集に多数の応募があるなど、話題になっていますが、1つ気になることがあります。

 この支援策が、45歳以下だということです。

氷河期支援「35~44歳」に疑問の声 国「統計上、割り切るしか」
https://mainichi.jp/articles/20191003/k00/00m/040/328000c

 団塊の世代以降最も人数が多い1973年生まれ(200万人以上)やその周辺の200万人前後いる世代が対象から外されているのです。

 今の若手に相当する年代より年数十万人も多い世代を外す意味は何か。

 それは単純で、多すぎるからでしょう。

 若手支援策などが政策課題にあがってきたのは、雇用を死守すべき団塊の世代というボリュームゾーンが引退期をむかえ、かつ、一歳の人数がかなり減ったので、政策課題にしても反発をうけないという、リアルな現実も背景にあるはずです。

https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2018np/index.html
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2018np/pdf/2018np.pdf

 もう遅いのでしょうか…。

なぜ「高学歴」なのに「低収入」になってしまうのか
https://www.shinoby.net/2019/11/16035/

 この記事には世の中の人の感覚が書かれています。つまり、大学院は勉強するところだ、という認識です。大学院は研究するところであるという認識すら社会から持たれていない現実から認識しないといけません。

 しかし、遅いも早いもありません。私は1971年生まれですが、この世代はあと数十年生きていかないといけないわけです。

 繰り返し書いていますが、これから数十年間、若手の活躍を支援しつつ、同世代の生きるすべ、ナリワイを作るべく活動を続ける覚悟です。

メガバンク「2強」 理系トップ誕生か
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52003030Z01C19A1EE9000/

 理系だから云々というわけではありませんが、多様なトップが生まれるのは良い方向だとは思います。

★研究 技術 計画
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jsrpim/list/-char/ja

 第6期科学技術基本計画特集。

★平成30年度決算検査報告の概要
https://www.jbaudit.go.jp/report/new/summary30/index.html

安倍総理会計検査院の森田祐司(ゆうじ)院長から平成30年度決算検査報告を受け取りました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201911/08kaikeikensa.html

★研究者の「働き方改革」と自由な研究時間確保の両立についての日本学術会議幹事会声明
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-kanji-3.pdf

 研究者の働き方改革。研究者の自由が第一ですが、ダイバーシティの観点から、短時間でも効率的に結果が出せる体制の必要性について述べています。

★令和元年度「全国学生調査(試行実施)」について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/11/1421627.htm

大学教育の改善点、学生に聞く 文科省が41万人調査
https://www.asahi.com/sp/articles/ASMC73K1BMC7UTIL00V.html

★第2回 政策のための科学オープンフォーラム「科学による政策課題解決への挑戦〜たゆまぬ共創・協働〜」の開催について
http://www.mext.go.jp/b_menu/gyouji/detail/1422179.htm

令和2年1月15日(水曜日)13時00分〜18時00分
国立大学法人 政策研究大学院大学 1階 想海樓ホールほか(東京都港区六本木7-22-1)

★World Scientists’ Warning of a Climate Emergency
https://academic.oup.com/bioscience/advance-article/doi/10.1093/biosci/biz088/5610806

気候変動の危機的状況は「明らか」、最新報告書、科学者1.1万人が支持表明
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-50312350

科学者1万1千人が気候変動対策訴え 「計り知れない苦しみ」生じる
https://www.cnn.co.jp/world/35144997.html

More than 11,000 scientists from around the world declare a ‘climate emergency’
https://www.washingtonpost.com/science/2019/11/05/more-than-scientists-around-world-declare-climate-emergency/

 トランプ政権の気候変動軽視、パリ協定離脱など、懐疑論の激しい攻撃の中、科学者たちが最新報告書に支持を表明。

 懐疑論に苦しむ分野がもう一つあります。

★Top Israeli immunologist accused of promoting antivaccine views
https://www.sciencemag.org/news/2019/11/top-israeli-immunologist-accused-promoting-antivaccine-views

Top Israeli immunologist's views on vaccines trigger furor
https://science.sciencemag.org/content/366/6466/675.full

★David Robert Grimes: Vaccines-how can we counter misinformation online?
https://blogs.bmj.com/bmj/2019/11/06/david-robert-grimes-vaccines-how-can-we-counter-misinformation-online/

 反ワクチン運動に関する混乱は続いています。科学を正しく伝えるだけでは対応できない、科学や科学者、医師など体制への反発などもあり、非常に厳しい局面にあります。

 双方向のコミュニケーションを地道にやっていくしかないのでしょうか。

★科学は、この150年間にいくつもの大きな変化を経験してきたが、証拠と透明性がかつてないほど重要になっている。
Nature at 150: evidence in pursuit of truth
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03304-x

★焦点:米の月探査計画に日本参加 巨額負担懸念 科学的意義、不透明
https://mainichi.jp/articles/20191109/ddm/002/010/121000c

 巨費を投じる科学には、批判的な視点でみていくことは重要だと思います。

★金づるにされた入試、知性なき“改革”
https://www.iwanami.co.jp/kagaku/koukaikiji.html

 岩波書店「科学」の記事が公開されました。

★新校舎は大阪城そば、大学統合の勝算 注がれる厳しい目
https://www.asahi.com/articles/ASMC15S10MC1PTIL02L.html

 大阪府大、大阪市大の統合。

ヒアリ国内定着の恐れ、繁殖力高く根絶困難に
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51857220W9A101C1TJN000/

 重大局面にあるヒアリ

★New funds needed to cover open-access costs
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03389-4

★エルピクセル,公正な研究を目指す研究者と研究機関に向けた科学論文の不正画像自動検出システム「ImaChek(イマチェック)」をフルリニューアル
https://www.innervision.co.jp/sp/products/release/20191218

★Trainees Often Ghostwrite PIs’ Peer Reviews: Survey
http://bit.ly/2rsdDiO

 これは「あるある」問題かもしれません。

★貴重なヘリウム、再利用求める 供給危機で物理学会が声明へ
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019110601001779.html

ヘリウムの安定供給求め 関係学会が緊急声明発表へ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191105/k10012164001000.html

★ジェフリー・エプスタインのような高額寄付者は、「科学をむしばむ」危険性をもちあわせている
https://wired.jp/2019/11/10/the-problem-with-rich-people-funding-science/

Beyond vetting donors
https://science.sciencemag.org/content/366/6466/667.full

 幸いか不幸にもか意見が分かれそうですが、日本の研究機関に「タニマチ」のような人はいませんが、よくよく注意する必要があります。

★製薬マネー年2000万円以上受領 医学部教授ら7人 文科省見直しへ
https://mainichi.jp/articles/20191106/k00/00m/040/229000c

文科省が「製薬マネー」2,000万円以上の医師7人を確認
https://www.wasedachronicle.org/articles/docyens/e10/

1,500万円超29人、糖尿病・循環器病の専門医に集中: 文科省調査
https://www.wasedachronicle.org/articles/docyens/e11/

 国会で議論に。利益相反については、新刊の「研究不正と歪んだ科学」でも詳しく論じています。

https://amzn.to/2NEWFVR

★Journal stands by paper facing misconduct allegations, but expresses concern about related images
https://www.sciencemag.org/news/2019/11/journal-stands-paper-facing-misconduct-allegations-expresses-concern-about-related

★Health at a Glance 2019
http://www.oecd.org/health/health-at-a-glance-19991312.htm

医療費の伸びは2030年までにGDP成長率を上回る
https://www.oecd.org/tokyo/newsroom/2030gdp.htm

日本、医学部卒業生が最少 OECD調査
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO51938740Y9A101C1CR0000?s=3

日本の医学部卒業生、人口比最少 35カ国中、OECD調査
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019110701001990.html

日本の医師先細り、卒業生は35カ国中で最少 女性割合も最低 OECD報告
https://mainichi.jp/articles/20191109/k00/00m/040/099000c

 私は医師なので、もっと医師がいないといけないのではないかと思うことが多々あります。ただ、ほかの分野にいけばより社会に貢献できそうな人まで医学部に行く風潮はよいものではないと思っています。

 かつて本にも書きましたが、医師とそれ以外の理工系の分野の格差が大きすぎるという問題でもあると思います。日本の「研究力」にも影響を与えているように思います。

★CRISPR Approach To Fighting Cancer Called 'Promising' In 1st Safety Test
https://www.npr.org/sections/health-shots/2019/11/06/776169331/crispr-approach-to-fighting-cancer-called-promising-in-1st-safety-test

★ゲノム編集食品、有機農産物と認めず 農水省が規格改正方針公表
https://mainichi.jp/articles/20191108/k00/00m/040/215000c

農水省 有機認証からゲノム編集除外で意見公募
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201911091435436

有機農産物の日本農林規格等の一部改正案についての意見・情報の募集について
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550002996&Mode=0

★独学でAIをDIYする愛好家たち──
ホームブリューAIクラブへようこそ
https://wired.jp/membership/2019/11/12/diy-tinkerers-artificial/

 DIYでAI。在野科学。

★A judge said police can search the DNA of 1 million Americans without their consent. What’s next?
https://www.sciencemag.org/news/2019/11/judge-said-police-can-search-dna-millions-americans-without-their-consent-what-s-next

★Contingency plans for elite UK research funder fleshed out
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03444-0

★South Korea clamps down on academics attending ‘weak’ conferences
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03372-z

★Cold-war lessons for European science
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03451-1

★The Science of Effective Mentorship in STEMM
https://www.nap.edu/catalog/25568/the-science-of-effective-mentorship-in-stemm

★Too Little, Too Late
Graduate student's suicide at UW Madison is a devastating cautionary tale about abusive lab environments.
https://www.insidehighered.com/news/2019/11/04/graduate-students-death-uw-madison-devastating-cautionary-tale

★The women who cracked science’s glass ceiling
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03362-1

財務省の科学技術への注文、身の丈発言と刑務所から博士号

2019年10月29日~2019年11月5日

 ご案内です。この度カセイケン代表榎木が編著者となり、研究公正に関する一般書を出版することになりました。

研究不正と歪んだ科学
STAP細胞事件を超えて
日本評論社 税込 2,530円
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8178.html

 Amazonからご購入の場合はこちらを。
https://amzn.to/2NEWFVR

 STAP細胞事件から5年半。いまだなくならない研究不正の問題をどうすべきか、 様々な識者の方に執筆していただきました。

 STAP細胞事件時に理研改革委員だった中村征樹さん(阪大准教授)、STAP細胞事件を実際に取材した、生命倫理に詳しい粥川準二さん(広島県立大学准教授)、学術ジャーナルの編集者だった経歴をお持ちの舘野佐保さん(青山学院大学助手)、生命科学の現場を知り尽くす大隈貞嗣さん、そして、13年前に失敗しない大学院進学ガイドを共に作った片木りゅうじさん。

 それぞれの専門性から、ほかでは読めない多角的な視点でSTAP細胞事件を、そして健全な研究の発展のために何をすべきかを問うています。

 ややお値段はお高いですが、是非手に取ってください。

 書店には11月10日ごろ並ぶとのことです。

 今週のニュースを。

 毎度といいますか、財務省財政制度分科会が科学技術政策に注文を…。

★財政制度分科会(令和元年11月1日開催)提出資料
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20191101.html

議題

社会保障について
文教・科学技術について

文教・科学技術
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20191101/02.pdf

 財務省の主張を見ていきましょう。まず若手研究者対策について。

国立大学では、法人化以降の定年延長等に伴うシニア教員の残留等の結果、教員数が増加する中でも若手が減少。
○ 競争的資金による若手研究者の任期付採用数が増加し、若手研究者の身分の不安定を招いているとされるが、任期付き教員の
割合は、米国も約4割と同程度の水準であり、海外においても、研究者のキャリアパスは任期付きから始まるのが通例。
○ 科学研究費助成事業(科研費)等の競争的資金では若手研究者への支援重点化を進めており、科研費の採択件数に占める 若手研究者の比率が上昇。また、競争的資金の支援期間は、科研費が2〜6年であるなどOECD諸国と同様の長さ。

 シニア研究者が残留するから若手が採用できないという指摘はそうだろうとは思います。

 ただ、諸外国と違ってアカデミア以外になかなか行くことができない状況は考慮されていません。

若手研究者のキャリアパスの多様化、特に民間企業への進出を図る上で、インターンシップ機会の拡充など、産学の自発的な取り組みで改善できる余地があるのではないか。

 これは同意します。

 研究者の事務負担の軽減については以下のように述べます。

研究者の事務負担軽減に向けては、研究現場の実態を把握した上で、大学における学内業務の効率化や研究資金における申請・審査事務等の簡素化・合理化など、多角的に検討を進めていくことが重要ではないか。

 これはもっともな指摘だと思いますが、論点は事務負担を強いる競争的資金への依存だと思うのですが…。

 国立大学については以下の指摘が。

<改革の方向性>
(A:資源配分における評価の在り方)
○ 「共通の成果指標に基づく相対評価」の実効性を引き続き検証しつつ、その枠組を基本に、改革に真摯に取り組む大学への重点支援の在り方を検討すべきではないか。
○ その際、配分額を長期にわたって固定することなく、進行中の改革の成果を毎年度適切に評価していくことが重要ではないか。

(B:多様性を踏まえた配分)
相対評価の母数となる大学数は一定の規模を確保しつつ、大学の特性に応じたスキームを検討することが考えられるか。 ○ 大学の多様性を踏まえつつ、各大学において大学自らの経営判断に基づき学内の資源配分の最適化を図ることが重要。

  • 相対評価の枠組みを通じた、経営判断力向上に向けた環境作りへのインセンティブ付け (例:学部・学科ごとの成果をコストデータと比較して分析し、経営判断に活かす改革を支援)
  • 大学にとって有用であるが競争的資金の獲得が難しい学問分野への学長裁量経費の更なる有効活用 -寄付金等の財源の多様化に向けた取組の更なる推進

 真摯に取り組むの真摯をどう評価するのか。そこに国の関与があるわけで、大学の自由が制限されています。

★'「条件なき大学」の復興のために: なぜ大学改革がイノベーションを破壊するか' (岩波『科学』掲載)公開
http://blog.talktank.net/2019/11/blog-post.html

 春日氏は、大学は「条件なき大学」のときのみ大学であるといいます。

 国民の税金で研究しているのだから、国の方針に従う研究をしろ…。

 今この言葉に納得する人は多いと思います。

 もちろん財務省は研究内容そのものにに口出ししているわけではありません。しかし、「改革」を指標に間接的にコントロールしようとしています。

 確かに大学に問題は多く、財務省が指摘するところの、シニア研究者を優先して若手を採用しないという問題は深刻です。

 しかし、改革が足りないから今の問題が起きているのか、改革しすぎてしまったからこうなったのではないか、という視点も必要のように思います。

 財務省の指摘と組み合って、言うべきところは言い続けていく必要があると思います。

★卒論データ消えた学生も 浸水で日大学生1100人被災
https://www.asahi.com/articles/ASMBS72HLMBSTIPE035.html

 台風の被害は大学にも。

台風19号で「洪水の恐れ」認識、3割のみ 静岡大調査
https://www.asahi.com/articles/ASMBZ46YYMBZULBJ005.html

 ハザードマップも直前の警告も、なかなか伝わっていない状況です。

 伝えたものが受け止められるにはどうすれば良いか…。あらゆる分野の課題です。

★SNSで拡散 危険あおる“不確かな医療情報”
https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2019/10/1030.html

 医療もその問題に直面しています。災害、医療、放射線などは命に関わる問題なので、その成否は重大な問題です。

★「血液クレンジング」はなぜ倫理に反しているか、医師の私の考え
https://gendai.ismedia.jp/articles/amp/68078

 あやしい治療法の危険性を訴えることは重要です。

 しかし、ワクチンの問題も含め、訴訟がからみ、問題を訴える人たちが攻撃されるという問題もあります。

 科学コミュニケーションの中でもかなりハードな部分です。

★Dr.STONEの科学は実現可能か 原作担当が明かす
https://www.asahi.com/articles/ASMBP05RGMBNUTPB00R.html

 マンガも一つの手段ですが…。

★科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合(令和元年度) > 議事次第 令和元年10月24日
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20191024.html

ムーンショット国際シンポジウムに関する有識者プレゼンテーション」について

★大臣メッセージ(英語民間試験について)
http://www.mext.go.jp/a_menu/other/1422381.htm

英語民間試験 来年4月からの実施を見送りへ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191101/k10012159841000.html

 ついに中止に。混乱の責任は重いですが、当事者である高校生たちの訴えも大きな意味があったと思います。当事者が動くことの重要性を感じます。

★萩生田大臣「身の丈」発言を聞いて「教育格差」の研究者が考えたこと
松岡亮二
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68206

 おそらくこのメルマガの読者は、大卒、大学院卒の方々が多いと思いますが、認識しなければならないのは、

戦後日本社会はいつの時代も、「出身家庭」と「出身地域」という、本人が選んだわけではない「生まれ」によって最終学歴が異なる教育格差社会

★Moving from prison to a PhD
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03370-1

 なんと刑務所からPhD。多様性。

元受刑者のコンサルが司法試験合格 「負け犬」から奮起
https://www.sankei.com/smp/affairs/news/191104/afr1911040022-s1.html

 ちょっと方向性が違いますが日本にも。

 しかし、こうした成功事例を取り上げるには注意する必要があります。

 松岡氏は以下のように述べます。

日本では少子化が進んでいますが、それでも1学年あたり100万人近くいれば、困難を克服し突出した「成功者」は出てくるはずです。そのような特殊な事例にスポットライトを当て、「やっぱり本人の志が大切だ」とするのであれば、政府や文部科学省など公共機関は何もしなくてもよいことになります。

 アメリカだと3億人ですから、刑務所からノーベル賞だって出るかもしれません。

 それを一般化してはならないということです。

★科学技術・学術政策研究所「第11回科学技術予測調査S&T Foresight 2019総合報告書」の公表について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/11/1422310.htm

★第11回科学技術予測調査 S&T Foresight 2019 総合報告書[NISTEP REPORT No.183]の公表について
https://www.nistep.go.jp/archives/42863

文科省研が技術の未来像
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51736200R01C19A1EA3000/

量子計算機・空飛ぶ車… 2040年に実現する未来技術は
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51690940R01C19A1000000/

分野融合し国際競争力
AIと専門家が分類
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51736220R01C19A1EA3000/

★令和元(2019)年度科研費等の審査に係る総括
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/03_shinsa/data/h31/R1_shinsa_soukatsu.pdf

科研費パンフレット2019
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/24_pamph/index.html

★COP25チリ中止 「パリ協定、機運くじく」 関係者に衝撃
https://mainichi.jp/articles/20191101/ddm/012/040/032000c

Chile cancels climate and Apec summits amid mass protests
https://www.bbc.com/news/world-latin-america-50233678

チリ断念のCOP25 スペイン首相が引き受け提案
https://www.asahi.com/articles/ASMC10TR6MB0UHBI05G.html

Unrest in Chile prompts cancellation of U.N. climate conference
https://www.sciencemag.org/news/2019/10/unrest-chile-prompts-cancellation-un-climate-conference

 COP25がスペインに変更に。影響を受けたのは…。

グレタさん、大西洋帰路に救い COP25開催のスペイン政府「歓迎し、喜んで手伝う」
https://mainichi.jp/articles/20191104/ddm/007/030/070000c

LAデモにグレタさん「山火事は気候変動影響」 COP25のスペイン移動へ
https://mainichi.jp/articles/20191102/k00/00m/040/162000c

 飛行機での移動をしないグレタさん。

★Greta Thunberg declined a climate award because the world needs more action, fewer awards
https://edition.cnn.com/2019/10/29/world/greta-thunberg-nordic-award-decline-trnd/index.html

 そのグレタさんは、もう賞などいらない、と言っています。

★Chile - right to free will needs definition
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03295-9

 COP25が中止になったチリでは、AIからの自由を謳う ‘neurorights’ を憲法に取り入れます。

★科学研究が「誤ったシステム」によって悪い方向に進んでいるという指摘
https://gigazine.net/news/20191031-incentivizing-bad-science/

 研究不正より大きな問題と言っても過言ではありません。

★NII、NII Today第85号「フェイクに挑む 不正な情報を見抜くために」を発行
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=11603

★デジタルデータを活用した研究に必要な同意とは
https://go.nature.com/33hFxfF

★「京大霊長類研究所」で研究費の不正が判明 返還額は最大20億円
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191029-00590263-shincho-soci

 Yahoo!ニュースのコメント欄が擁護的な感じですが、公金の不正使用は理由が何であれ重大な問題です。

 研究費が使いにくいから仕方ないという正当化は許されません。

★民間専門家が外部監査、政府統計の不正防止
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51692510R01C19A1EA4000/

民間の専門家を「統計監理官」(仮称)として各府省に派遣し、調査手続きの監査や技術的な助言にあたってもらう。若手研究者の活用を想定している。

 若手の進路として想定しているということでしょうか。

★Academics in Ukraine Fighting Against Rampant Misconduct
https://www.the-scientist.com/news-opinion/academics-in-ukraine-fighting-against-rampant-misconduct-66644

★In decision certain to draw fire, journal will publish heavily criticized paper on gender differences in physics
https://www.sciencemag.org/news/2019/11/decision-certain-draw-fire-journal-will-publish-heavily-criticized-paper-gender

★Contract cheating will erode trust in science
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03265-1

★Ethical research - the long and bumpy road from shirked to shared
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03270-4

★Measles Can Cause ‘Immune Amnesia,’ Increasing Risk of Other Infections
https://www.nytimes.com/2019/10/31/health/measles-vaccine-immune-system.html

Measles erases immune ‘memory’ for other diseases
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03324-7

Measles Leaves the Immune System Vulnerable to Other Diseases
https://www.the-scientist.com/news-opinion/measles-leaves-the-immune-system-vulnerable-to-other-diseases-66661

How measles causes the body to ‘forget’ past infections
https://science.sciencemag.org/content/366/6465/560

 はしかが免疫をリセットしてしまうという大きな問題が明らかに。

★米トランプ政権 「パリ協定」離脱を正式通告
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191105/k10012164241000.html

Paris climate accords: US notifies UN of intention to withdraw
https://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-50297029

 既定路線ではありますが…。

★White House to host closed-door summit on U.S. research enterprise
https://www.sciencemag.org/news/2019/10/white-house-host-closed-door-summit-us-research-enterprise

 何が語られるのか知りたいところです。

★科学工学指標2020:米国の科学・工学における技術労働者の貢献
https://crds.jst.go.jp/dw/20191030/2019103021533/

★HHMI announces Meyerhoff replication effort to boost minorities in science
https://www.sciencemag.org/news/2019/11/hhmi-announces-meyerhoff-replication-effort-boost-minorities-science

Ph.D.-turned-policy insider takes over world’s largest science society
https://www.sciencemag.org/news/2019/10/sudip-parikh-chosen-aaas-ceo

 AAASのトップは46歳。

★[FT]ミレニアル世代からX世代への賛歌
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51527020Z21C19A0000000/

 アメリカでは、大統領を出さない世代になるだろうと言われています。

 日本のロスジェネ世代とも重なりますが、政治や社会よりも別の方向に関心が向いたということ。

★Increase in Academics Leaving the UK Since Brexit Vote
https://www.the-scientist.com/news-opinion/increase-in-academics-leaving-the-uk-since-brexit-vote-66656

Beware the UK government’s Brexit promises
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03263-3

 総選挙になりますが、まだまだ混乱が続きます。

★Europe’s incoming research chief must act to head off budget cuts
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03262-4

★Academics in Ukraine Fighting Against Rampant Misconduct
https://www.the-scientist.com/news-opinion/academics-in-ukraine-fighting-against-rampant-misconduct-66644

★Latin American budget cuts deal massive blow to science
https://www.scidev.net/global/funding/feature/latin-american-budget-cuts-deal-massive-blow-to-science.html

福岡伸一が指摘するノーベル賞の冷徹な現実 「ポスドクの貢献は対象にならない」
連載「福岡伸一の新・生命探検」
https://dot.asahi.com/aera/2019102800057.html

 昔から言われ続けている大問題。

★就職と学位両立を 博士進学増やす制度提案
放送大学学園理事長 有川節夫氏 企業が費用負担/優秀な人材確保
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51736510R01C19A1CK8000/

深刻な博士離れ 競争力低下懸念
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51736580R01C19A1CK8000/

 企業にある程度の負担を要求する制度。企業側にメリットがないと受け入れられませんが…。

★若手研究者支援の新たな取り組み
https://www.natureasia.com/ja-jp/jp-special-focus/support-for-ecrs

 リサーチアドミニストレーター

★Why scientists should take more coffee breaks
https://www.sciencemag.org/careers/2019/10/why-scientists-should-take-more-coffee-breaks

 労働集約型の研究ではなかなか難しいかもしれませんが、ゆとりはもちたいものです。

★Nobel Committee responds to criticism
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03293-x

 ノーベル賞受賞者に女性が少ないという批判に対するノーベル財団からの反論。

★アートが生殖技術を描くとき 母の視点、娘の視点
https://webronza.asahi.com/science/articles/2019102800004.html

ほ身体の自由/不自由と現代技術 緊張関係の作品化
科学技術と言論とアートを融合させる実験場-あいちトリエンナーレ鑑賞記(2)
粥川準二 / 県立広島大学准教授(社会学
https://webronza.asahi.com/science/articles/2019110100014.html

★「失われた30年&科学先進国陥落」と「小泉・竹中改革」の「深く黒い関係」
https://www.excite.co.jp/news/article/AllReview_00003877/

★Radiation is not a political tool
By Michio Murakami, Atsushi Kumagai, Aleksandr N. Stojarov, Masaharu Tsubokura
Science01 Nov 2019 : 581-582 Restricted Access
https://science.sciencemag.org/content/366/6465/581.2

 サイエンスの投書欄。

研究改革のために

2019年10月22日~2019年10月29日

 台風19号に続き、21号と大雨の被害で多くの方々か亡くなられました。ご冥福をお祈りします。

★Deadly typhoon forces Japan to face its vulnerability to increasingly powerful storms
https://www.sciencemag.org/news/2019/10/deadly-typhoon-forces-japan-face-its-vulnerability-increasingly-powerful-storms

台風19号で被災した川崎市市民ミュージアムへの支援について
http://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/1422192.html

令和元年台風第19号等により被災した学生・生徒等のみなさまへ(被災学生等特別就職相談窓口の設置)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000122602_00002.html

 文化施設も被害を受け、学生にも被害を受けた人がいます。

 災害の発生が常態化しつつあるなか、文化財や図書を守り、学生の安全を確保することが、大学にも求められています。

★科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合(令和元年度) > 議事次第 令和元年10月10日
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20191010.html

議題
「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」(仮称)の検討について

資料

資料1研究力に関するエビデンスデータ(PDF形式:1200KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20191010/siryo1.pdf

資料2競争的研究費の現状と課題に関してのヒアリング結果(PDF形式:411KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20191010/siryo2.pdf

資料3研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ(仮称)の検討について(PDF形式:839KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20191010/siryo3.pdf

参考資料1参考資料(PDF形式:1362KB)
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20191010/sanko1.pdf

 人材、資金、環境の三位一体の改革を謳っています。問題は明らかで、どう改革するかです。

★知識集約型の価値創造に向けた科学技術イノベーション政策の展開 ― Society 5.0の実現で世界をリードする国へ ― 中間取りまとめ
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu22/houkoku/1422095.htm

 次の科学技術基本計画に向けて議論が進んでいます。

★第91回「人文・社会科学と科学技術 ―よりよい連携に向けて」
科学技術振興機構 研究開発戦略センター 科学技術イノベーション政策ユニット フェロー 前田知子 氏
https://scienceportal.jst.go.jp/reports/launchout/20191028_01.html

 第6期計画には、人文社会科学系に関する記載も入れられることになりそうですが、これに対しては賛否両論があるようです。本来政策から距離をおくべき領域まで、政策目標化するのはどうか、という意見です。

★(記者解説)後退する基礎研究 0から1生む力、競争政策で弱まる 大阪科学医療部・嘉幡久敬
https://www.asahi.com/articles/DA3S14233563.html

★第622回「迫るノーベル賞枯渇時代、見えぬ抜本政策転換」
http://dandoweb.com/backno/20191028.htm

★「誰が科学を殺すのか」毎日新聞連載が書籍に 28日から発売
https://mainichi.jp/articles/20191025/k00/00m/040/217000c

 ノーベル賞シーズンに、日本の科学技術政策を分析する記事や本が出る傾向がありますが、これらの記事や本では、日本の「研究力」の低下が語られ、選択と集中が大いに批判されています。

 そして、そこに立ちはだかるのが財務省という構図が見えてきます。その象徴が神田さんですね。

 研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ(仮称)や次の科学技術基本計画などで、問題点が少しでも解消されることを願います。

 しかしながら、現在の大学や研究者の現状に両手をあげて賛成することはできません。

 多くの研究者が、自分の研究領域の利益のための発言、行動しかせず、社会との双方向コミュニケーションに背を向けているからです。

 2000年台半ばごろ、科学技術コミュニケーションの重要性が叫ばれ、科学技術基本計画中にも、社会とのコミュニケーションの重要性が明記されました。

 現在の第5期計画にもそれは引き継がれ、以下のように書かれています(46ページ)。
https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/5honbun.pdf

共創に向けた各ステークホルダーの取組

科学技術においてステークホルダー間の共創を進めるためには、社会側のステークホ ルダーである国民の科学技術リテラシーの向上と共に、研究者の社会リテラシーの向上 が重要である。

 しかし、しかるべきポジションを得ているような研究者に話を聞いても、こうした精神が根付いているとは言えないように感じています。

 もちろん人によるわけで、理解している人もいるとは思うのですが、いまだその意識は啓蒙に留まり、共創とまでは言えない場合が多いのかなと思います。

 社会のどの声を聴くのかというのは、なかなか難しい問題ですが、少なくとも研究成果を出すことだけが社会貢献であるという時代ではないはずです。

 そして聴くべき声は外側だけでなく、内側にもあります。内側も社会であるはずです。

 ノーベル賞受賞者の発言ならば聴くということは、裏を返せばノーベル賞を受賞するまでは何を言っても聴かれないということでもあります。

 研究歴があり、今は科学コミュニティの外側に出ている人間だってステークホルダーなはずですが、そうした声は顧みられることはありません。

 優れた研究者の声しか聴かないということでは、とても社会との共創などできるはずがありません。

 政府、とくに財務省に向かって、自由に研究をさせてほしい、選択と集中を緩めてほしい、というのは重要ですが、政府を維持させている国民に、研究がどのように社会に役割を果たしているか(役に立つというだけでなく)をきちんと明示したうえで、だからこそ、その自由を尊重してほしいというべきなのではないでしょうか。

 自分たちの研究のことしか考えず、エリート主義で排他的な「楽園」を維持させるための余裕はこの国にはないはずです。「研究力」の凋落の原因を外側にだけ求めるのは都合が良すぎです。

 双方向コミュニケーションを訴えてきた私たちの力不足を感じます。どうやったら今の現場の研究者たちに理解してもらえるのか…。

 2009年の事業仕分けのときに声明を出したノーベル賞受賞者に対して、多様な「ノンノーベル」の仲間たちが議論しました。

 その時の思いはいまだ忘れていません。

 ちょっと「エモい」文章になりました…。

★未来を脅かす地球温暖化と、活力を失う日本社会
なぜ日本は環境問題への関心が低いのか、なぜ日本の若者たちは動かないのか
https://webronza.asahi.com/science/articles/2019102200001.html

Canadian kids sue government over climate change
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03253-5

 環境問題に関して日本の若者は動かないのはなぜか…。

 もちろん環境の前に雇用、という切羽詰まった状態に置かれているのも理由ですが、動く人間を徹底的に叩くからでしょう。

 意見を言う資格は誰にでもあるはずです。大人になるまで、偉くなるまで何もいうな、と押さえつけるのですから、若者は声など出せるはずがありません。

★環境問題に関する世論調査
https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-kankyou/index.html

弁当小分け容器、飾り、レジ袋、緩衝材…過剰なプラ製品は? 内閣府調査
https://mainichi.jp/articles/20191025/k00/00m/040/267000c

★UCL to Phase Out Single-Use Plastics, Including Pipette Tips
http://bit.ly/32Vqjwx

 大量に消費されるピペットのチップも汚染の原因ですから…。

産学官連携の更なる発展に向けた今後の改善について(とりまとめ)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu16/011/houkoku/1421792.htm

★今後の産学官連携・地域科学技術政策に関する方向性について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu16/houkoku/1422212.htm

★夜盲症の子どもたちに星空を 特殊な眼鏡を盲学校に クラウドファンディング呼び掛け
https://mainichi.jp/articles/20191026/k00/00m/040/034000c

盲学校の生徒に星空を。暗闇で見える暗所視支援眼鏡を届けたい。
https://readyfor.jp/projects/MW10

★Predict science to improve science
https://science.sciencemag.org/content/366/6464/428.full

 経済学や心理学、政治学等に関して、予想研究をシステミックに集約しようという提案。

★Opinion: Boycotting Elsevier Is Not Enough
http://bit.ly/2pbAGhk

 エルゼビア社は科学者のボイコットを乗り切りました。次の手は…。

★米国人大学生の論文をケニアで書く 論文代筆ビジネス、いまやグローバル産業に
https://globe.asahi.com/article/12813245

 ゴーストオーサーです。学生の収入の手段にもなっていて、重い問題です。

安倍総理は令和元年第9回経済財政諮問会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201910/28keizaishimon.html

令和元年第9回経済財政諮問会議
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1028/agenda.html

「官民合わせて約13万床削減」を主張、民間議員-今後3年程度を「集中再編期間」に、諮問会議で
https://www.cbnews.jp/news/entry/20191028203415

首相、病院再編に意欲 民間議員「成果で補助金」 経財諮問会議
https://mainichi.jp/articles/20191029/ddm/008/020/032000c

 病院の再編の問題は私の本業にも関わることです。

 基本的には、早い(アクセス)、うまい(クオリティ)、安い(コスト)は両立できないので、病院を集約化し、医師や医療資源を集めることで質を担保すべきです。

 医療の場合は選択と集中が不可避です…。

★無届けの細胞移植が実施された報道に関する日本再生医療学会声明
https://www.jsrm.jp/news/news-4271/

大阪医大元講師、再生医療を無届け投与  府警、容疑で捜索
https://mainichi.jp/articles/20191026/ddm/041/040/082000c

 生命倫理的に言語道断な事態。処分が下されるはずです。

★「トンデモ医療であると、断言します」 血液クレンジング、医学的に徹底検証してみた
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/blood-cleansing

 明確な法律違反が問えないグレーゾーンの怪しい医療も、大きな問題です。

 先週も書きましたが、怪しげな治療の被害を受けてしまう患者さんや、アンチワクチンなど、は訴訟も飛び交うような厳しい状況にあります。相当に高度なコミュニケーションが必要です。

 正しい知識の普及や一方的な批判だけではだめで、かといって双方向コミュニケーションもそう簡単ではないわけです。

★A livestock-poison-turned-drug might save her from endless cancer surgeries. But if she helps test it, could she afford to keep taking it?
https://www.statnews.com/feature/medicine-hunters/part-1/

日本学術会議・学術フォーラム
ゲノム編集技術の ヒト胚等への応用について考える
http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf2/280-s-1124.pdf

2019年11月24日(日)13:00-17:00(12:30開場) 会場:日本学術会議講堂

★Hello quantum world! Google publishes landmark quantum supremacy claim
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03213-z

グーグルの量子コンピューター発表は、要するに何がすごいのか
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191024-00218455-diamond-sci

 Natureに発表された量子コンピュータの論文が大きな話題となりました。ライト兄弟が飛行したのに匹敵するという声もあれば、そうではないという反論もあります。

 すぐに実用化できるわけではないという点は一致しています。

 ライト兄弟の飛行からロケットができるまで数十年かかったわけですが、ともかくも飛んだのなら大ごとなので、ウォッチし続けていきます。

★Young universities show leadership
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03166-3

NATURE INDEX | 23 OCTOBER 2019
Young Universities 2019
https://www.nature.com/collections/ccghbdhhii

 創設後まもない(といっても50年以内)の大学ランキング。日本からはOISTが29位にランクインしています。ほか、総研大奈良先端大も。

 日本の大学はいまだ旧帝国大学中心の「入れ替え戦のないリーグ戦」の様相を呈していますが、新陳代謝はもっとあってもよいでしょう。

★Trump names seven to revived presidential science advisory panel
https://www.sciencemag.org/news/2019/10/breaking-trump-names-seven-revived-presidential-science-advisory-panel

 実に33ヶ月もたって指名。

★U.S. Travel Ban Disrupts The World’s Largest Brain Science Meeting
https://www.npr.org/sections/health-shots/2019/10/24/773095904/u-s-travel-ban-disrupts-the-worlds-largest-brain-science-meeting

 学会に参加できない研究者続出。これは科学にとってマイナスだといわざるを得ません。

★60の学協会が米国政府機関に安全保障と科学的営為のバランスを取るよう要請
https://crds.jst.go.jp/dw/20191024/2019102421482/

★科学工学指標2020:STEM教育の現状について
https://crds.jst.go.jp/dw/20191028/2019102821471/

★NIH and Gates Foundation lay out ambitious plan to bring gene-based treatments for HIV and sickle cell disease to Africa
https://www.sciencemag.org/news/2019/10/nih-and-gates-foundation-lay-out-ambitious-plan-bring-gene-based-treatments-hiv-and

★U.K. science minister says DARPA-like agency is in the works
https://www.sciencemag.org/news/2019/10/uk-science-minister-says-darpa-agency-works

 日本ではムーンショットが賛否両論ですが、イギリス政府はUK Research and Innovation (UKRI)の外側に独立した機関を立ち上げるとのこと。

 まだ詳細は不明ですが、2050年までに二酸化炭素排出ゼロなどが目標ではないかと言われています。

★「実力ない」悩んだ過去と決別
豪チーフ・ディフェンス・サイエンティスト タニア・モンローさん
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51397760V21C19A0TY5000/

★Canadian scientists relieved as Trudeau ekes out election win
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03208-w

 カナダの総選挙。科学者たちはトルドー首相らの与党勝利でホッとしているとのこと。

★How our daughter’s diagnosis shifted the course of our careers
https://www.sciencemag.org/careers/2019/10/how-our-daughter-s-diagnosis-shifted-course-our-careers

 お子さんに障害があったことで、キャリアにどのような影響があったのか語られています。

★ハワイ巨大望遠鏡計画 有志が文部科学省に見直し嘆願書を提出
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191028/k10012153421000.html

 望遠鏡建設問題は日本が関わる問題です。