科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

研究成果力強化、学長の研究不正、在野の研究者

2019年5月7日~2019年5月14日

 朝のNHKニュースでかなり最初のほうに取り上げられていました。

JST分析事例「151研究領域におけるTOP10%論文数の国際シェア順位の推移(7か国比較)」
http://www.jst.go.jp/osirase/2019/pdf/Top10papers_20190513.pdf

 日本が首位の分野はありません。1位は米中のみ。

 まあ、もともと1位だった分野は過去にもなかったし、ほかの国も首位を取れていないわけですが、2位だった分野はありました。それはいまや見る影もなく…。

 なお、ドイツはそこまで順位の低下がないそうです。

 そんなドイツですが、研究予算が右肩上がりとのこと。

Germany Announces Continued Increases to Research Funding
https://www.the-scientist.com/news-opinion/germany-announces-continued-increases-to-research-funding-65835

German researchers promised a decade of budget increases
https://science.sciencemag.org/content/364/6440/519.full

 米中という大国に真っ向から張り合おうとするのか、ドイツをモデルに立て直すのか…。

 そんななか、安倍首相も出席して、総合科学技術・イノベーション会議が開催されました。

★総合科学技術・イノベーション会議(第44回)議事次第
https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui044/haihu-044.html

議事

1.研究力強化について
2.ムーンショット型研究開発制度の検討状況について

安倍総理は第44回総合科学技術・イノベーション会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201905/13kagaku.html

研究開発を「出島」で 政府、民間との連携推進に新施策
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019051301002209.html

産学連携強化へ対策検討を指示
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO44721360T10C19A5PP8000/

産学連携へ新法人制度 政府検討
税優遇、資金集めやすく
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO44697800S9A510C1PE8000/

 政府も「研究力」の低下を認識した上で、抜本的改革を行おうとしています。

 「研究力強化の肝は、人材・資金・環境 これまでの取組により一定の成果は得られるものの、抜本的な解決に至らず」(大臣資料 https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui044/siryo1-2.pdf)と、素直に失敗を認めています。

 新しいところでは「バイアウト制の導入(競争的資金等の直接経費から研究以外の業務の代行経費の支出を可能に)」「競争的資金等の直接経費からPI人件費の支出を可能に」(文科省提出資料 https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui044/siryo1-1.pdf)といったところです。

 そして記事の見出しにもあるように、「大学・国研の出島化」(競争領域を中心とした共同研究機能等の外部化)がキーワードどして出てきました(大臣資料)。

 また、文科省資料にもあった分業化ですが、「研究に優れた者について、研究に専念できるポストを創出(教育職との分業化)し、 事務を原則アウトソーシングへ」(大臣資料)ということまで踏み込まれています。

 研究現場が激変するほどのインパクトがある可能性があるこの改革。果たして実行できるのか、そして実行されたとして、どの程度研究を変えることができるのか…。

★追跡
大学システム、世界から遅れ 研究者就職、立場弱く 東大突然、採用取り消し
https://mainichi.jp/articles/20190510/ddm/012/100/125000c

 藤田医科大の宮川教授の件が毎日新聞に取り上げられました。このような雇用の仕組みの問題も含め、大学には大きな問題があります。ここまで踏み込むことができるのか…。

★東北大、学生に経済支援 プログラム拡充
災害科学や人工知能など5分野 大学院生向け環境整備
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO44637590Q9A510C1L01000/

 既報ですが、政府を待たずとも、こうした取り組みを始めている大学もあります。

 いつも言っていますが、私たち自身に何ができるか、自分ごととして考えられるかが、「研究力」にせよ何にせよ必要です。

★研究活動上の不正行為に関する調査結果について
http://www.toyoeiwa.ac.jp/daigaku/news/topics/news_2019051001.html

 驚くべき研究不正が明らかになりました。架空の人の架空の論文…。特定不正行為の捏造と盗用が認定されました。

東洋英和女学院 不正行為に関する調査結果「極めて悪質」 深井智朗院長を懲戒解雇 2019年5月10日
http://www.kirishin.com/2019/05/10/24985/

院長の研究不正認定=著書に捏造、懲戒解雇-東洋英和女学院
https://www.jiji.com/sp/article?k=2019051001108&g=soc

架空の神学者「でっち上げ」 二転三転した前院長の説明
https://www.asahi.com/articles/ASM5B5FV4M5BUCLV00J.html

架空論文に浮かんだ3人のレーフラー 記者が謎に迫った
https://www.asahi.com/articles/ASM59577RM59UCVL014.html

「カール・レーフラー」捏造騒動を報告書から整理してみた。Twitterには実在しない「本人」名乗るアカウントも
https://www.huffingtonpost.jp/entry/carl-loevler_jp_5cd775d0e4b0705e47dd5d00

東洋英和前院長の著書、岩波書店が絶版へ 捏造問題で
https://www.asahi.com/articles/ASM5F6GZMM5FUCVL02B.html

謹告(深井智朗氏『ヴァイマールの聖なる政治的精神』ほかについて)――
https://www.iwanami.co.jp/news/n29826.html

 研究データを捏造するという話はよくありますが、研究者の存在そのものを捏造するとは、考えが及びませんでした。

 そして学長を調査し解雇することができたことも、ある種驚きでした。なぜなら、東北大元学長や岡山大学の事例などでは、研究不正の疑義を訴えだ人たちが逆に処分されているからです。

 どんな分野でも研究不正は起こることを認識し、それが誰であろうと公正な調査ができるようにすることに重要性をあらためて感じました。

大学発ベンチャー調査、大学発ベンチャーデータベースを公表しました
https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190508001/20190508001.html

★総合政策特別委員会(第25回) 配付資料
http://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2019/04/1415374.htm

温室効果ガス排出量を正確に算定する新指針ができた 京都のIPCC総会で合意
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/05/20190513_01.html

★廃プラ:21年に輸出規制 初の国際枠組み 国内処理強化へ
https://mainichi.jp/articles/20190512/ddm/001/040/135000c

海中でプラ分解 官民規格策定へ
国際標準 提案めざす
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO44697880S9A510C1NN1000/

汚れた廃プラ、条約の規制対象に 日本からの輸出、困難
https://www.asahi.com/articles/ASM5B6GNKM5BULBJ01B.html

レジ袋有料化、分別の徹底も 廃プラ規制で変わる生活
https://www.asahi.com/articles/ASM5C4Q1HM5CULBJ00B.html

バーゼル条約で廃プラ輸出規制、国内処理に難題
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44690870R10C19A5EA2000/

 廃プラ問題をどうするか。重要性が増してきました。

★強制では、オープンアクセスへの転換は難しい(記事紹介)
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=11267

★Junior researchers are losing out by ghostwriting peer reviews
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01533-8

Early-career researchers commonly ghostwrite peer reviews. That’s a problem
https://www.sciencemag.org/careers/2019/05/early-career-researchers-commonly-ghostwrite-peer-reviews-s-problem

★Stats: abuse by researchers’ lust for certainty
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01453-7

Stats: multiple experiments test biomedical conclusions
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01454-6

Stats: is this therapy useful?
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01452-8

★Academics Raise Concerns About Predatory Journals on PubMed
https://www.the-scientist.com/news-opinion/academics-raise-concerns-about-predatory-journals-on-pubmed-65856

★How I became easy prey to a predatory publisher
https://www.sciencemag.org/careers/2019/05/how-i-became-easy-prey-predatory-publisher

How I became easy prey
https://science.sciencemag.org/content/364/6440/602.full

 捕食ジャーナルに関する記事がいくつか出ていました。

★Eye for Manipulation: A Profile of Elisabeth Bik

The microbiologist has turned her attention full-time to unearthing problematic figures in papers-for free.
https://www.the-scientist.com/news-opinion/eye-for-manipulation--a-profile-of-elisabeth-bik-65839

 こういう方が日本には足りません。ただ、一部には研究の問題を独立した立場で見つめる人たちが日本にもいます。

★製薬マネー、癌ガイドライン委員に流れる~「平成」が遺した大きな宿題
https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/20190510-00125485/

Facebook opens up to social scientists, carbon mapper launches and South Africa’s publishing trends
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01419-9

★Real change requires experts to collaborate

Like scientific research, good policymaking now needs different perspectives
https://www.ft.com/content/b12c4008-6c14-11e9-80c7-60ee53e6681d

★Building upon foundations for evidence-based policy
https://science.sciencemag.org/content/364/6440/534.full

★US environment agency cuts funding for kids’ health studies
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01491-1

★NIH fears good-government bill would hamper peer review
https://www.sciencemag.org/news/2019/05/nih-fears-good-government-bill-would-hamper-peer-review

★Science support for Belt and Road
https://science.sciencemag.org/content/364/6440/513.full

★授業料減免や奨学金支給 「高等教育無償化」法が成立
https://www.asahi.com/articles/ASM5B5TYZM5BUTIL02N.html

大学無償化、低所得世帯の75万人支援 20年4月から
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44608510Q9A510C1CR0000/

 大学等における修学の支援に関する法律
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/198/meisai/m198080198021.htm

が成立。とはいえ、これで「無償化」はないだろうという声も。

アクセス:「大学無償化」言い過ぎ 厳しい所得制限/中間層支援なし 識者「制度は不十分」
https://mainichi.jp/articles/20190514/ddm/012/100/130000c

大学無償化で中間層に影響か=授業料減免の縮小懸念-支援法成立、来年施行
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019051001317&g=soc

★研究か就活か 悩める理系学生の現実
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44452880X00C19A5XS5000/

仕事は3年1本勝負に ジョブ型採用が変える就業観
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO44519100Y9A500C1000000/

 理系学生にとってジョブ型採用が広がるのはチャンスです。ただ、理系にどうもバイオ系が入っていないようですが…。

 もちろんジョブ型になったからといってバラ色というわけではありません。

★Improving diversity in the physical sciences needs more than data - it needs resolve, too
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01418-w

★Mental health in academia is topic of the week at a sold-out UK meeting
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01468-0

★「平成」時代のブレークスルー:
世界で最も引用された平成時代の日本の論文Top20
https://clarivate.jp/news-releases/2019/Heisei-Breakthrough/

 4月26日公表。

★在野に学問あり 第3回 逆卷しとね
https://www.iwanamishinsho80.com/contents/zaiya1-arakiyuta

 この連載読んでいなかったのですが、非常に面白いです。在野でも学問はできるというのは、私自身が主張してきたことでもあるし、こうして実践する先駆者がいるのは勇気付けられます。

★昭和の教訓、生かす時代に 新たな研究成果に学ぶ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44529100Y9A500C1TCT000/

一般向けの昭和史本には最新の研究成果を踏まえず、過去の俗説や誤りがそのままになっている書物が氾濫している。

 在野の研究者はあくまで研究者でなければいけません。質が問われるわけです。

貧困ポスドク、生命科学クライシス、一帯一路

2019年4月30日~2019年5月7日

 10連休が明けました。多かれ少なかれ働いていた人は多かったかと思いますが(御多分に洩れず私もですが)、いずれにせよ、通常業務に復帰です。

 官公庁は閉じていて、ニュースは少なめです。

★博士号でも生活困難 非常勤から抜け出せない「貧困ポスドク」の実態
https://www.moneypost.jp/533527

 ポスドクの定義からすると、非常勤講師の方々はポスドクではないのですが、それはともかく、深刻な問題です。

 色々なところで指摘されていますが、非常勤講師の賃金が、他の大学などで職を持っている人たちの謝礼程度しかなく、専業非常勤講師という存在を考えていなかったこと、学部教育の基幹を非常勤講師に頼るという大学の知的衰退、そして新卒一括採用や年功序列といった日本の雇用システムなど様々な要因がこの問題を引き起こしています。

 非常勤講師問題は主に人文社会科学系の問題です。

 人文社会科学系の問題は、「平成」の前半、いやそれどころかオーバードクター問題が深刻化した35年前から指摘されていたことです。

 その頃はまだ、のちにロスジェネ、就職氷河期世代と重なる第二次ベビーブーム世代の教育需要増や好景気がありました。初等中等教育の教員や予備校の講師といった職があり、選ばなければなんとかやっていくということもできました。

 しかし、こうした職は非常勤化していき、先細っていきました。

人文諸学の再興(と、多少はそこで食っていけるはずの人々)のために
http://blog.talktank.net/2019/04/blog-post_21.html

 生命科学には、狭義のポスドク問題があり、他の分野に増して厳しい状況と言われています。そして、それも含めて、生命科学という学問分野自体に大きな問題があります。

★衝撃! ”生命科学クライシス-新薬開発の危ない現場”
https://honz.jp/articles/-/45180

生命科学クライシス リチャード・ハリス
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44129200U9A420C1MY7000/

 激しい競争の中、再現性のない、意味のない研究が行われているという問題です。

 カセイケン代表の榎木も、かつて「嘘と絶望の生命科学」(文春新書 2014年)という本を書いたことがありますが、ポスドク問題や研究不正も含めて、文字通り絶望してしまいそうな状況です。

 ポストや予算を得るための無意味な研究が、国の予算で行われているとしたら、とうてい社会からの信用は得られれないでしょう。

 ポスドク問題も2000年代にはすでに顕在化していました。

 しかし、問題の根本解決には至っていません。問題がどこにあるのかの認識は共有されつつあるように思いますが、道のりは簡単ではないようです。

★日本の科学技術、その復興に向けて 〜「基本問題小委員会」とりまとめ(1)
https://ameblo.jp/japanvisionforum/entry-12457857121.html

 自民党科学技術イノベーション戦略調査会「科学技術基本問題小委員会」(船田元委員長)のとりまとめ文書。

「委員会開催中は、基礎研究の重要性に対し懐疑的な議員から批判的発言や欠席が相次ぐなど、会の存続自体が危ぶまれる時期もありました」

 とのことで、政権与党内でも問題が共有されているわけではなさそうです。

日本の科学技術、その復興に向けて 〜「基本問題小委員会」とりまとめ(2)
https://ameblo.jp/japanvisionforum/entry-12457879490.html

★大学への交付金、膨らむ傾斜配分 財務省「論文費用はドイツの1.8倍」 国立大側は反論
https://www.asahi.com/articles/DA3S14000124.html

国立大研究力低下の背景 教員人件費4割で減少
鎌倉女子大学教授 山本清 外部資金獲得力に差/個別の特性考慮を
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO44408020S9A500C1CK8000/

 各方面からの指摘がありますが、人への投資がおろそかになっていることが諸問題の根幹にあります。予算総額で議論することは問題解決に繋がりません。人への投資が疎かになっているという問題の共有はまだまだのようです。

 結局のところ、非常勤問題やポスドク問題も含めた諸問題が解決しないのは、解決することで損をしてしまう人たちがいるからです。

 メンバーシップ型、ジョブ型の議論にも通じますが、一度メンバーになった人たちは、メンバーであることで得られる特権をそう簡単に手放しません。非常勤講師やポスドクに私の常勤職をあげますから使ってください、などという人はほとんどいませんし、雇い止めができる非常勤講師やポスドクを便利に使ってきた人や組織に、問題を改善しようという意欲はわきません。

 それは私とてそうです。たしかに大学の常勤講師の職を捨てましたが、医師(病理医)であることは捨てていないので、特権を享受していると言われたらその通りです。もちろんジョブ型の仕事である医師ですから、15年やってきた病理診断という武器を手に生き抜いていこうとは思っています。しかし、それは医師という資格を得なければできないので、医師というメンバーのなかのジョブ型という感じです。

 メンバーになった人は、メンバーになるまでの競争を勝ち抜いたという意識はあるでしょう。非常勤講師やポスドクオーバードクターを経て常勤になった人はとくにそう思うでしょう。せっかく苦労して手に入れた地位を手放したくないのは当然ではあります。

 若手研究者のことに言及するのは、ノーベル賞を受賞し、絶対的に地位が脅かされない研究者たちばかりであって、「並」の常勤研究者たちから、非常勤講師問題やポスドク問題に関する発言をあまり聞かないのは当然と言えるでしょう。

 しかし、競争に参加する資格を得るためには、生まれた家庭環境を含めたさまざまな偶然が作用します。決して完全にフェアな競争ではありません。

平均年収186万円、日本に930万人いる「アンダークラス」とは
https://www.moneypost.jp/531369

 人への投資や研究費の投資が特定のメンバー(常勤のシニア研究者)への投資になってしまえば、メンバーになれなかった非常勤講師、ポスドクにとっては格差が拡大してしまいます。

 メンバーを増やせば解決する部分もあると思いますが、メンバーを無限に増やせるわけではありません。

 結局のところ、さまざまな問題は世代交代を待つしかないのかもしれませんが、それでは遅すぎますし、世代だけでなく同世代のなかにも断裂があるので、なかなか問題が解決しません。

 問題解決が財政破綻という「ハードランディング」でしかできないとしたら、それは悲しいことですが…。

 大学や学術の体制が変わらないのなら、その「外」に出て行くしかありません。

★How China is redrawing the map of world science
https://www.nature.com/immersive/d41586-019-01124-7/index.html

 Nature誌は中国の「一帯一路」政策について特集しています。

 先週記事をピックアップしましたが、中国は日本を含めた世界から人材を集めていますし、さまざまな国の若手研究者を中国で教育し、国に送り返すことで、親中国の意識を持つ研究者を生み出そうとしています。

★幻の科学技術立国:第4部 世界の潮流/4 トップの頭脳、中国へ招致 「千人計画」の実態 任期なく桁違い年俸提示
https://mainichi.jp/articles/20190425/ddm/016/040/025000c

 これは1960年代のアメリカやそれ以前のヨーロッパが行ってきたことで、2000年代にはこうした人材の教育を積極的に行う国がなかったので、基本的に歓迎すべきというのがNatureのスタンスのようです。

 もちろん関係国を債務漬けにするという問題が生じており、手放しで喜べない状況ではありますが、科学の中心がアメリカから中国に移行しようとする流れのなかで、その流れに乗るという戦略はあると思います。

★中国の科学論文シェア急上昇 米国と「2強」に 日本は急落、3位が2領域だけ
https://mainichi.jp/articles/20190505/k00/00m/040/238000c

 「外」は国の外だけではありません。アカデミアの外にも活路はあるはずです。

 無駄で無意味な研究をするアカデミアの生命科学に背を向け、真に関心のあることを在野で行うDIYバイオという方向もあります。バイオだけでなく、さまざまな領域で在野研究、市民科学を行う環境は整いつつあります。そこには競争も年功序列もありません。

 「中」からはなかなか変わらなかった日本。明治維新や敗戦などのハードクラッシュが既得権益を壊しましたが、「外」に出るという「ソフト」な行動でも、変えられる部分はあると思います。

 財政破綻という「ガラガラポン」に備え(期待し?)つつ、「外」に出て新たな道を築いていく…。具体的行動が重要です。

★US science academy leaders approve plan to expel sexual harassers
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01397-y

エボラ出血熱の死者1000人超える、コンゴ民主共和国
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6322412

エボラ出血熱、死者1千人超す 現地は医療施設の襲撃も
https://www.asahi.com/articles/ASM544FGKM54UHBI00X.html

‘The world has never seen anything like this’: WHO chief on battling Ebola in a war zone
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01432-y

 コンゴ民主共和国では、エボラ出血熱などない、と叫ぶ武装勢力が医師などを殺害しているとのこと。感染拡大を防ぐことが困難になりつつあり、危機的な状況です。

★Japan responds: stem-cell therapy justified
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01364-7

 Nature誌が、日本の再生医療の臨床応用が拙速だと批判した件について、厚労省の医薬・生活衛生局 局長、宮本真司氏が反論を書いています。

★Trump’s science adviser on research ethics, immigration and presidential tweets
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01396-z

Analysis: U.S. science adviser has a vision for cutting research red tape, but details are scarce
https://www.sciencemag.org/news/2019/05/analysis-us-science-adviser-has-vision-cutting-research-red-tape-details-are-scarce

 トランプ政権の科学アドバイザー、Kelvin Droegemeier氏。

★Shake-up at NIH: Term limits for important positions would open new opportunities for women, minorities
https://www.sciencemag.org/news/2019/05/shakeup-nih-term-limits-important-positions-would-open-new-opportunities-women

NIH Imposes Term Limits for Lab Chiefs
https://www.the-scientist.com/news-opinion/nih-imposes-term-limits-for-lab-chiefs-65833

 NIHの研究室長の任期が12年に。これにより白人男性に多く割り当てられていたポジションを女性やマイノリティに解放するとのこと。

★Why are Canada’s scientists getting political?
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01244-0

★Thousands of scientists in Argentina strike to protest budget cuts
https://www.sciencemag.org/news/2019/04/thousands-scientists-argentina-strike-protest-budget-cuts

Austerity cuts threaten future of science in Argentina
https://science.sciencemag.org/content/364/6439/419.full

 アルゼンチンの研究費カットが大きな問題に。

★Breastfeeding mums are finally getting spaces to pump at some US institutions
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01335-y

 アメリカの大学の94%が授乳室を設置しているという調査。しかし、回答率は低く
改善の余地があるとのこと。

30年で変わったこと

2019年4月23日~2019年4月30日

 「平成」最後のメールマガジンを発行しました。

 歴史の流れは区切りなく、平成時代で区切ることはあまり意味がありませんが、30年前、1989年から今をみると、いろいろ思うところがあります。今週のニュースから30年を振り返ってみます。

 30年前にはポスドク問題はなく、オーバードクター問題がありました。オーバードクターに職を、ということでポスドクが増え始めたのがそのころで、その後ポスドク一万人計画などがあり、今に至ります。

 研究不正で言えば、アメリカで研究公正局ができたのが1992年です。

 研究者が就職難に陥り、任期制が定着。科学技術基本法、基本計画、国立大学法人化などなど、大きな変化がありました。

 「平成」時代に顕在化した諸問題は、「令和」に持ち越しとなりました。

★研究開発の俯瞰報告書 2019年
http://www.jst.go.jp/crds/report/report02/index.html

★日本なぜ低迷? 大学ランキングの「三つの誤解」
「国際化が重要」「論文の数を増やせ」「アジアは不利」は、みんな間違い
https://webronza.asahi.com/science/articles/2019042000002.html

世界大学ランキング、評価法に疑問 活用は半数
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO44301300W9A420C1CK8000

私立大学の国際的なプレゼンス向上のためにー世界大学ランキングの活用と課題
https://www.shidairen.or.jp/files/user/h30sekaiprohokokusoto.pdf

 世界ランキングが意識されたのも「平成」ですが、ちょっと行き過ぎたようです。

★幻の科学技術立国:第4部 世界の潮流/4 トップの頭脳、中国へ招致 「千人計画」の実態 任期なく桁違い年俸提示
https://mainichi.jp/articles/20190425/ddm/016/040/025000c

 人材の流出も深刻化しています。そりゃそうでしょう。人へ投資してこなかったのですから。

★「日本に捨てられ、韓国に救われた」就職氷河期世代の私――ある団塊ジュニアの見た平成
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190429-00011804-bunshun-life

★研究力の回復「かぎは人への投資」 専門家に聞く
https://www.asahi.com/articles/ASM4L7F3XM4LPLBJ006.html

ネイチャー編集長が語る 日本の科学の未来
https://www.nhk.or.jp/d-navi/sci_cul/2019/04/story/special_190409/

若い科学者、日本の生命線
英ネイチャー誌編集長 マグダレーナ・スキッパー
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO44135910U9A420C1KE8000/

 厳しい状況に陥った世代の今後はどうなるのでしょう。ようやく人への投資こそ鍵と言われていますが…。

 なんとかしなければという認識は政府にあるようです。

★研究力向上改革2019
http://www.mext.go.jp/a_menu/other/1416069.htm

若手研究者の任期、原則5年以上に 文科省が改革プラン
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO44071120T20C19A4CR0000

 もちろん政府だけの問題ではありません。

 今起こっている問題は、「平成」だけの問題でもなく、その前の時代から続いているのです。

 へんな回顧で終わるのではなく、今現在、そして未来の問題として、当事者意識をもち、自分ごととして関わっていかなければなりません。

★総合科学技術・イノベーション会議 生命倫理専門調査会『「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」見直し等に係るタスク・フォース報告書(第二次報告)』に対する意見の募集(パブリックコメント)について
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20190425hitohai_kobo.html

★大学の保管するアイヌ遺骨等の出土地域への返還手続について
http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/ainu/1415588.htm

京都大学が盗掘した琉球人骨を返さぬワケ
政府や旧帝大関係者も絶対認めない
https://president.jp/articles/-/28508

★学位・履修履歴、研究データをテーマに、大学・研究機関におけるブロックチェーン技術の適用可能性に関する調査報告を取りまとめました
https://www.meti.go.jp/press/2019/04/20190423002/20190423002.html

科学ジャーナリスト賞2019
https://jastj.jp/jastj_prize/

★粗悪学術誌の論文 4割が別論文の参考文献に 研究ゆがむ可能性
https://mainichi.jp/articles/20190429/k00/00m/040/119000c

 科学ジャーナリスト賞2019に粗悪科学誌問題を追った毎日新聞の鳥井記者が。

★科学の「再現性の危機」に、DARPA人工知能で対抗する
https://wired.jp/2019/04/27/darpa-wants-to-solve-sciences-replication-crisis-with-robots/

★SciLine expands scientific resources offered to U.S. journalists
https://science.sciencemag.org/content/364/6438/344.full

★Evaluation of Pharmaceutical Company Payments and Conflict of Interest Disclosures Among Oncology Clinical Practice Guideline Authors in Japan
Hiroaki Saito, MD; Akihiko Ozaki, MD; Toyoaki Sawano, MD; Yuki Shimada, MD; Tetsuya Tanimoto, MD
JAMA Netw Open. 2019; 2(4):e192834. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2019.2834
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2731682

 マネーと医師という問題も、今後に残された課題です。30年前はもっと乱れてはいましたが、現状もより巧妙化し続いています。

★Sexual harassment is pervasive in US physics programmes
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01303-6

Three in four female physics undergrads report sexual harassment
https://www.sciencemag.org/news/2019/04/three-four-female-physics-undergrads-report-sexual-harassment

After ousters, MD Anderson officials try to calm fears of racial profiling
https://www.sciencemag.org/news/2019/04/after-firings-md-anderson-officials-try-calm-fears-racial-profiling

Three Researchers Ousted from MD Anderson
https://www.the-scientist.com/news-opinion/three-researchers-ousted-from-md-anderson-65772

 ハラスメントの当事者が声を上げてきた30年。日本はまだまだ遅れています。

★Bribes, lies, and Photoshop: What science should learn from the college admissions scandal
https://www.sciencemag.org/careers/2019/04/bribes-lies-and-photoshop-what-science-should-learn-college-admissions-scandal

★米名門大学で学生がはしか感染 学生ら100人を一時隔離
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190426/k10011897351000.html

Two Los Angeles Universities Establish Measles Quarantine
https://www.the-scientist.com/news-opinion/two-los-angeles-universities-establish-measles-quarantine-65806

US Measles Cases Break Record Since Returning to Country
https://www.the-scientist.com/news-opinion/us-measles-cases-break-record-since-returning-to-country-65800

 麻疹の拡大含めて感染症の問題は、この30年でより深刻化しました。

★「医療分野におけるデータ利活用促進に関する意見」(平成31年4月24日) (PDF形式:246KB)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/publication/opinion2/310424iryou.pdf

規制改革推進会議 第12回医療・介護ワーキング・グループ 議事次第
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/iryou/20190424/agenda.html

医療分野におけるデータ利活用促進に関する意見について

★旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律の成立を受けての内閣総理大臣の談話
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/discourse/20190424danwa.html

優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律の成立を受けての内閣総理大臣の談話及び厚生労働大臣の談話について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04416.html

強制不妊救済法が成立 320万円、6月にも支給
https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2019042402000264.html

★TED offers funding path, not just stage, for ‘audacious’ ideas
https://science.sciencemag.org/content/364/6438/317.full

Audacious’ science ideas win huge funding boosts after selection by TED group
https://www.sciencemag.org/news/2019/04/audacious-science-ideas-win-huge-funding-boosts-after-selection-ted-group

★Report: NIH bars physicians who criticized sepsis trial from speaking with investigators
https://www.sciencemag.org/news/2019/04/nih-bars-physicians-who-criticized-sepsis-trial-speaking-investigators-wall-street

★USDA Scientists Must Say Published Research Is “Preliminary”
https://www.the-scientist.com/news-opinion/usda-scientists-must-say-published-research-is-preliminary-65771

★Why are Canada’s scientists getting political?
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01244-0

★More than 8,000 Have Joined “Request a Woman Scientist” Database
https://www.the-scientist.com/news-opinion/more-than-8000-have-joined-request-a-woman-scientist-database-65791

★グーグル、日本の1000万人に「デジタルスキル」を指南—習得プログラムを無償提供へ
https://japan.cnet.com/article/35136143/

 30年前にはGAFAのなかであったのはApple社だけでした。

★日本工学アカデミーが2019年緊急提言を公表
政府から独立した政策提言機関として、立法府への働きかけも試行
https://webronza.asahi.com/science/articles/2019042300004.html

緊急提言-我が国の工学と科学技術力の凋落を食い止めるために-
https://www.eaj.or.jp/app-def/S-102/eaj/wp-content/uploads/2019/04/Teigen-20190408_wagakuninokogaku.pdf

 30年前は工学部出身者が大学院に進学せず商社に入るような時代でした。ハイテクの日本企業も今や昔…。

通年採用で何が変わるか、査読を評価せよ、AIと宇宙戦争

★ジョブ型、通年採用で何が変わるか
2019年4月16日~2019年4月22日

 日本の雇用にとって大きな決定です。

★採用と大学教育の未来に関する産学協議会
中間とりまとめと共同提言
http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/037.html

Society 5.0時代の雇用システムや採用のあり方
-ジョブ型を含む複線的なシステムへの移行-
新卒一括採用(メンバーシップ型採用)に加え、ジョブ型雇用を念頭においた採用も含め、 複線的で多様な採用形態に、秩序をもって移行すべき。
学生の学修経験時間(*)の確保を前提に、学生の主体的な選択や学修意欲の向上に資する就職・採用方法と、質の高い大学教育を企業と大学の共通理解によって実現していく。
企業は、ダイバーシティを意識して、外国人留学生や日本人海外留学経験者を積極的に採 用する方向。また、ジョブ型採用の割合が増大し、グローバルな企業活動が拡大する中で、 大学院生を積極的に採用する方向。
学修成果の評価:より高い専門性を重視する傾向となれば、卒業・学位取得に至る全体の成果を重視すべき。卒業要件の厳格化を徹底すべき。

学修時間のみでなく、留学等、多様な体験活

 以下報道です(日経新聞より)。

就活の脱「横並び」合意 経団連・大学、通年採用拡大
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44016780R20C19A4MM0000/

「勉強する学生が欲しい」経団連、通年採用の本音
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43933180Z10C19A4EE8000/

新卒の通年採用、企業に歓迎の声「多様な人材確保できる」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43935710Z10C19A4EAF000/

通年採用拡大、新卒一括のみに限界 就活ルール改革
https://www.asahi.com/articles/ASM4Q4QJ7M4QULFA01K.html

通年採用「実施・検討」が8割 多様な人材確保に期待
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44062770S9A420C1MM8000/

経団連、通年採用へ移行 柔軟な枠組みで大学と合意
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43901930Y9A410C1MM8000/

 先週も書きましたが、40歳人文社会科学系博士が就職できない、ロスジェネ、就職氷河期世代が生まれたのは、新卒一括採用と年功序列、終身雇用がセットになった
メンバーシップ型採用が原因の一つです。

40代研究者の死に涙した心優しい人たちへ
https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/20190418-00122843/

 だから、40代は採用するどころか、コストカットのために首切りということになってしまいます。

★早期退職しない限り面接が続き…「45歳以上クビ切り」横行中
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190422-00010000-flash-peo

 もちろん、戦後の高度成長期にメンバーシップ型採用が果たした役割は否定できません。私の亡き父親もあるメーカーに50代まで勤めていて、そのおかけで私たち家族は安定を得られ、それこそ保養所のようなところに行ったりと、レジャーまで面倒みられていたわけです。

 ただ、その代わりに深夜まで仕事をするなど滅私奉公的な働き方が要求され、60代で亡くなりました…。

 ご職業は?と聞かれて○○社に勤めていますと答えたりとか、何ができますか
聞かれて「部長が出来ます」と答えたりという笑い話?は、メンバーシップ型がどういうことかを如実に示しています。

 しかし、景気後退期では、新卒でメンバーになれなかった場合、ずっとメンバーになれず非正規雇用ということが起きましたし、大学院生やポスドクのような存在は規格外とされ、ポスドク問題が諸外国より深刻化することになります。

 研究の世界はまさにジョブ型で、たとえば化学の教員募集に言語学の人は応募できません。

 医師も同じで、眼科医募集のところに皮膚科医が応募しても採用されないわけです。

 ポスドク問題は、ジョブ型のアカデミアとメンバーシップ型の企業との間の雇用の仕組みの違いによって深刻化したと言えます。

 高度成長期ならメンバーの間で仕事を割り振ればやっていけましたが、長く不況が続き、また世の中が目まぐるしく変化するようになりました。

 企業内のメンバーでは対応仕切れない状況が増えてきましたが、外から新しいメンバーをなかなか雇えず、変化に対応仕切れなくなったというのが、今回の経団連の決定に繋がったのでしょう。

 私はこの決定を歓迎します。

 もちろん、細部を見れば問題も多々あるでしょう。45歳の人文社会科学系の非常勤講師の人達がすぐに救われるなどとは思えず、さらなる取り組みが必要でしょう。

 しかし、研究歴のあるような人たちにとっては、自分の専門領域をやや広く見つめ直せば機会が広がります。

 多様な人材が多彩な活躍の場を見つけられるように、この件についてはウォッチを続けていきたいと思います。

★AI兵器、どう規制するか 国際枠組み内で漸進的に
岩本誠吾 京都産業大学副学長
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO43894170Y9A410C1KE8000/

AI兵器、人間の英知試す なし崩し配備の懸念
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43815170W9A410C1EA1000/

宇宙戦争の危険 アジアで現実味 ブラーマ・チェラニー氏
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO43963430Z10C19A4TCR000/

 AI兵器が現実味を帯びてきて、宇宙での衛星破壊実験などから、宇宙戦争もSFではなくなりつつあります。科学技術の軍事応用がなし崩し的に進んでいくのか、こうした状況に科学コミュニティがどう対処するのか、考え続けていく必要があります。

安倍総理は第43回総合科学技術・イノベーション会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201904/18kagaku.html

総合科学技術・イノベーション会議(第43回)議事次第
https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui043/haihu-043.html

議事

1.AI戦略(人材育成関連)について
2.次期科学技術基本計画について

 久々に開催された総合科学技術・イノベーション会議。やはりAIが議題になっています。

2025年までに全学生(50万人/年規模)が「数理・データサイエンス・AI」の 基礎を習得可能となる大学教育へ改革
AI×専門分野のダブルメジャーの促進等によるAIを応用する基礎力の習得

 以下報道。

AI人材育成、25年までに整備 大学入試や教育を改革
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019041701002283.html

AI重視の大学に交付金
政府が方針
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO43901960Y9A410C1PP8000/

 先週もピックアップしましたが、実現可能性を危惧する声も出ています。

 また、法曹人材やポスドクなどの行き場のない人材を増やすことのないようにしないといけません。

安倍総理は第39回国家戦略特別区域諮問会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201904/17senryaku_tokku.html

第39回 国家戦略特別区域諮問会議 配布資料
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai39/shiryou.html

 スーパーシティが議論されていますが…。

首相要請で規制を緩和 スーパーシティ法案を了承
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43851350X10C19A4PP8000/

スーパーシティ骨抜き 規制特例を閣僚が判断
https://mainichi.jp/articles/20190417/k00/00m/010/250000c

中央教育審議会(第123回) 配付資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/1415607.htm

議題

学校における働き方改革の取組状況について
新しい時代の初等中等教育の在り方について(諮問)
新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(中間まとめ)について

教育制度、多面的見直し 文科相中教審諮問
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO43839930X10C19A4CR8000/

 ここでもSociety5.0がキーワードに。

 初等教育では「教科担任制の導入や先端技術の活用など多様な指導形態・方法を踏まえた, 年間授業時数や標準的な授業時間等の在り方を含む教育課程の在り方」、高校では「STEAM 教育の推進」が諮問されました。

 また、

学校以外で勤務してきた経歴や専門的な知識・技能を有する者など,多様な背景を持つ人材によって教職員組織を構成できるようにするための免許制度 や教員の養成・採用・研修・勤務環境の在り方

 も諮問されており、博士号を取得したような人材にも道が広がる可能性があります。

★Society 5.0の実現に向けた「戦略」と「創発」への転換
~政府研究開発投資に関する提言~
http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/034.html

 経団連。「課題や短期目標を設定せず、多様性と融合によって 破壊的イノベーションの創出を目指す創発的研究」について触れています。

★花山宇宙文化財団設立についての記者発表のご案内
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/topics/190417/190417_annai.pdf

一般財団法人花山宇宙文化財
http://kwasan.kyoto

「アマ天文家の聖地」存続へ…現役最古の望遠鏡
https://www.yomiuri.co.jp/science/20190418-OYT1T50105/

存続危機の京都・花山天文台、継続決まる 民間1億円の支援
https://www.sankei.com/life/news/190417/lif1904170035-n1.html

京大花山天文台、運営継続 支援の財団設立
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43853600X10C19A4AC8000/

 存続は良かったと思います。こうした施設の運営のあり方は厳しさを増しており、ノウハウを蓄積し、他の施設にも参考になるデータをご提供いただけたらと思います。

★UNESCO、オープンアクセス学術ジャーナルプラットフォームの世界的アライアンス「Gloall」を発足
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=11233

★就活中のセクハラ被害相次ぐ 企業・大学、対策急ぐ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43993100Q9A420C1CC0000/

 学生たちが被害にあっているなか、大学も動き出しています。

★Universities Crack Down on Love in the Lab
https://www.the-scientist.com/news-opinion/universities-crack-down-on-love-in-the-lab-65766

 プリンストン大学。教員と学生の恋愛は、権力の差があり、自由恋愛にはなりません。

★#MeToo controversy erupts at archaeology meeting
https://science.sciencemag.org/content/364/6437/219

Archaeological society tries to stem continuing controversy over #MeToo scandal
https://www.sciencemag.org/news/2019/04/archaeological-society-tries-stem-continuing-controversy-over-metoo-scandal

Archaeologists Ask Society for Harassment Policy Change
https://www.the-scientist.com/news-opinion/archaeologists-ask-society-for-harassment-policy-change-65745

 セクハラで所属大学に来ることを禁止された研究者が学会の年次大会に参加した
大きな問題になっています。

★我が国の医薬品製造業の研究活動

  • 科学技術週間(4月15日~4月21日)にちなんで- (科学技術研究調査の結果から)

http://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/topics/topics118.html

 科学技術週間にちなんで毎年発表される統計。

★長崎大、喫煙者不採用へ 「学生らの健康守る」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43964980Z10C19A4ACYZ00/

完全禁煙に踏み切れぬ大学の苦悩 近隣の目と法の抜け道
https://www.asahi.com/articles/ASM4N5KG3M43ULBJ00C.html

 長崎大の決定は大きな話題になっています。

★Exclusive: Major U.S. cancer center ousts ‘Asian’ researchers after NIH flags their foreign ties
https://www.sciencemag.org/news/2019/04/exclusive-major-us-cancer-center-ousts-asian-researchers-after-nih-flags-their-foreign

 MDアンダーソン。五人中三人は中国人とのこと。

Brexit: EU conservation suffers too
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01204-8

★英国の合意なきEU離脱に備えて、教育・研究で準備しておくこと
https://crds.jst.go.jp/dw/20190418/2019041818900/

 ひとまず延期されているBrexitEUサイドにももちろん影響があります。

平成31年東京大学学部入学式 祝辞
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message31_03.html

上野千鶴子先生の東大入学式祝辞にアジテートされて
https://nosumi.exblog.jp/27552330/

上野千鶴子先生の東大入学式祝辞にアジテートされて:その2
https://nosumi.exblog.jp/27561559/

上野千鶴子氏の「報われない社会」スピーチで東大は変われるか?
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2019/04/post-1078.php

 上野千鶴子名誉教授の東大でのスピーチは賛否両論を呼びました。

 批判の多くは「内容には賛同するが、祝辞で言うべきではない」というものでしたが、これは批判を黙らせる「トーンポリシング(話し方を取り締まる)」ではないかという指摘があります。

 トーンポリシングについては以下。

「冷静に」なんてなりません!
https://note.mu/erinadinfinitum/n/nbe3646e6835b

★育児は科学界でのキャリアにどのような影響を及ぼすか
https://www.editage.jp/insights/a-new-study-highlights-the-impact-of-parenthood-on-a-career-in-science

 いまだ子供を持つのはやめろなどということをいう研究者もいますが、子供がいても研究できる環境を作りましょう!

★NatureおよびNature関連誌で約3年前から行っている、査読者名公表の試みを通して、多くの科学者が査読者の貢献をもっと認めるべきだと考えていることが分かった。
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01162-1

 査読の貢献をもっと認めるべきという声があがっています。日本でも。

査読歴も研究者評価の対象に
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03308_02