科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

JDワトソン博士人種差別、医師の残業、首相の英国訪問

2019年1月8日~2019年1月15日
カセイケン代表 榎木英介

 大物ワトソン博士の人種差別発言。2007年の発言で職を辞しましたが、メディアでの発言で名誉職剥奪に。

★Lab Severs Ties With James Watson, Citing ‘Unsubstantiated and Reckless’ Remarks
https://www.nytimes.com/2019/01/11/science/watson-dna-genetics.html

DNA研究の米ノーベル賞受賞者、人種差別発言で名誉職剥奪
https://www.cnn.co.jp/usa/35131231.html

今月2日に放送されたPBSのドキュメンタリーの中で、白人と黒人の知能検査では、遺伝子に起因する知性の差が出ると発言した。

 DNAの発見という科学史に残る偉業をされた方ですが、ロザリンドフランクリン博士の業績を盗ったという疑惑も含め、非常に問題がある方と言わざるを得ません。

★第16回医師の働き方改革に関する検討会 資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03209.html

 このメルマガの主題ではありませんが、地方の医者は過労死しても仕方ないといわんばかりの方針に議論沸騰です。

医者はなぜ忙しい?残業年2000時間の衝撃 医師の視点
https://news.yahoo.co.jp/byline/nakayamayujiro/20190112-00110967/

医師残業規制で厚労省原案 医師不足地域は「年1900~2000時間」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39816960Z00C19A1EE8000/

クローズアップ2019:残業規制、厚労省案 医師の「献身」に依存 上限2000時間、一般労働者の2倍
https://mainichi.jp/articles/20190113/ddm/003/010/066000c

医師の残業上限「年2000時間」経過措置で適用-厚生労働省が検討会に特例案を提示
https://www.cbnews.jp/news/entry/20190111215550

医師の残業上限、企業の2倍認める 最大で年2千時間
https://www.asahi.com/articles/ASM1C7RHSM1CULBJ00X.html

地方に特例、医師残業上限「年2000時間」案
https://www.yomiuri.co.jp/national/20190109-OYT1T50030.html

 厚労省の資料
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000467709.pdf
では、

地域医療確保暫定特例水準は、休日労働込みの時間外労働について年1,900~2,000時間程度以内で検討、月 100時間未満(月について追加的健康確保措置2が実施される場合の例外あり)としてはどうか。

現状では、病院常勤勤務医の勤務時間を見ると、年間1,920時間を超える医師が約1割、年間2,880時間を超 える医師も約2%存在している。勤務時間が年間1,920時間を超える医師が一人でもいる病院は、全体の約3 割、大学病院の約9割、救急機能を有する病院の約3割(救命救急センター機能を有する病院に限っては約 8割)である。
こうした現状の中、上限水準は「罰則付き」かつ「一人ひとりの医師について絶対に超えてはならない」も のであり、医療機関が上記「1,900~2,000時間程度以内」という水準を遵守するためには、医療にかかる国民の理解も得て、医師の労働時間の短縮策を強力に進める必要がある。

 とあります。

 医師の増員、集約化などを進めると同時に、テクノロジーの活用も当然やっていくべきでしょう。これは科学技術政策に関わることでもあります。

★病理検査にAI活用へ 胃がん判定で正解率8割 日本病理学会
https://mainichi.jp/articles/20190112/k00/00m/040/109000c

★ICU診療、専門医が遠隔支援 集中治療の質向上に期待
https://www.asahi.com/articles/ASM1344W1M13UBQU006.html

 私自身、4月より兵庫県に僻地認定されている病院に勤務する予定であり、他人事ではありません。現場から医療、科学技術政策をしっかりとみていき、実際に活用していいきたいと思います。

★英国訪問
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201901/10uk.html

安倍総理大臣のオランダ及び英国訪問
平成31年1月9日~11日)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/we/page25_001795.html

★英国産牛肉等の輸入手続を再開します
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000178994_00001.html

 Brexitで苦境に立たされているイギリスを安倍総理が訪問。共同声明では科学技術に関することに多く言及されました。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000436826.pdf

我々は,我々の科学担当省庁及び資金提供機関の間の新たな協力の促進メカニ ズムにより 共同研究計画を可能とする。我々は,科学技術協力に関する日英合同委員会を通じ,科学,イノベーション及び成長についての協力分野に関す る特別な措置に係る行動計画を策定する。

★英国人科学者が祖国を脱出した理由
https://mainichi.jp/articles/20190111/mog/00m/030/011000c

 英国を離れる研究者へのインタビュー。Brexit決定後にポスドクや院生の応募がゼロと。

★岐阜大地域科学部、再編白紙 名大との統合専念
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190109-00104251-gifuweb-l21

 反対の声が大きく…。

★5つの出版社が教科書市場を牛耳る。価格高騰により購入を諦める学生も(記事紹介)
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=11006

 日本の話ではないですが、寡占化が学生を直撃しています。

★The MOOC pivot
http://science.sciencemag.org/content/363/6423/130

 鳴り物入りで登場したMOOCの現状。

★Crowdfunding research flips science’s traditional reward model
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00104-1

★女子大が扶桑社に厳重抗議「女性蔑視につながる」
https://mainichi.jp/articles/20190109/k00/00m/040/120000c

「週刊SPA!」に5大学が抗議「女性軽視、女性蔑視」
https://www.asahi.com/articles/ASM195V2XM19UTIL036.html

 週刊SPA!は割とこの手の特集をしますが、もはや許されません。

「ヤレる女子大学生ランキング」批判に戸惑うメディアの人へ
https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20190113-00110991/

★Bipartisan bill on sexual harassment signals strong interest by Congress
https://www.sciencemag.org/news/2019/01/bipartisan-bill-sexual-harassment-signals-strong-interest-congress

★ハワイ固有のカタツムリが絶滅、最後の1匹が死亡
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/011000025/

★日本の突然の国際捕鯨委員会IWC)脱退は、科学をより重視した新たな鯨類保護をスタートさせる良い機会である。
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00076-2

Japan's exit from whaling group may benefit whales
http://science.sciencemag.org/content/363/6423/110

国際捕鯨委員会脱退で得るもの、失うもの(上)
「名」を取って「実」を捨てる日本政府
https://webronza.asahi.com/science/articles/2018122500004.html

 NatureやScienceも社説などで取り上げ始めています。失うものは大きいように思います。

★A father’s fight to help his sons - and fix clinical trials
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00035-x

 当事者が動くことで社会が変わります。

★Science and the shutdown: 5 things to watch as US impasse drags on
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00082-4

Government Shutdown Hits Funding, Resources, and Morale in Science
https://www.the-scientist.com/news-opinion/government-shutdown-hits-funding-resources-and-morale-in-science-65314

U.S. government shutdown starts to take a bite out of science
https://www.sciencemag.org/news/2019/01/us-government-shutdown-starts-take-bite-out-science

Shutdown starts to take a bite out of science
http://science.sciencemag.org/content/363/6423/109

Hubble telescope camera is broken - and US government shutdown could delay repairs
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00094-0

 終わる気配のない政府機関シャットダウン。ハッブル望遠鏡が修理できないなど具体的影響が広がっています。

★米、技術流出規制一段と 中国念頭、日本も対象
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39890530Q9A110C1MM8000/

AIやゲノム、米が輸出規制へ…中国念頭に警戒
https://www.yomiuri.co.jp/world/20190109-OYT1T50125.html

 科学的成果が国のものとされる傾向が強まっています。日本はどうすればよいでしょうか。

★Firings and a Resignation Roil NEON Ecological Observatory
https://www.the-scientist.com/news-opinion/firings-and-resignation-roil-neon-ecological-observatory-65310

NEON ecological observatory in crisis again: Top scientist quits, Battelle fires advisory board and senior managers
https://www.sciencemag.org/news/2019/01/neon-ecological-observatory-crisis-again-top-scientist-quits-battelle-fires-advisory

★Bipartisan bill on sexual harassment signals strong interest by Congress
https://www.sciencemag.org/news/2019/01/bipartisan-bill-sexual-harassment-signals-strong-interest-congress

★US Cancer Death Rate Dropped for 25 Years Starting in 1991
https://www.the-scientist.com/news-opinion/us-cancer-death-rate-dropped-for-25-years-starting-in-1991-65303

★Indian scientists protest against unscientific claims made at conference
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00073-5

★「超ホワイト」理系研究室 残業ゼロで成果アップの秘訣
https://www.asahi.com/articles/ASM194WVXM19PPZB00D.html

 労働集約的な生命科学系でこれは素晴らしいことです。

奨学金、全員から保証料 延滞増加で財務・文科省方針
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO39764670Y9A100C1MM8000

国の奨学金、保証人の廃止を検討 返還できない家庭増え
https://www.asahi.com/articles/ASM1952S6M19UUPI002.html

 もはや「奨学金」と呼ぶことができない学生ローン。

★An academic mother’s wish list: 12 things universities need
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00019-x

★Why earning a PhD is an advantage in today’s industry job market
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00097-x

 そうだと本当にいいのですが…。

★How four winning mentors help to build skills and dispel doubt
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00039-7

 日本ではよいメンターになるインセンティブがあまりないと言えましょう。残念です。

★「科学立国の危機ー失速する日本の研究力」ウラ話の2(論文数とGDP)
https://blog.goo.ne.jp/toyodang/e/5b1b2590040673a7fe9b7f61de5d9747

「若手教員比率」の落とし穴
https://blog.goo.ne.jp/toyodang/e/f47c029716e28055518c6aa2f820d330

 豊田先生の本が待たれます。

科学技術基本法改正へ、九大自死事件

2019年1月2日~2019年1月8日
カセイケン代表 榎木英介

 この号で800号となりました。800週間ちまちまとメルマガ作成しています。次は1000号を目指します。

 毎日新聞のスクープ。

★人文・社会も科学振興の対象に 基本法25年ぶり抜本改正へ
https://mainichi.jp/articles/20190107/k00/00m/040/300000c

解説:科学振興、人文・社会も 生命倫理やAI、文・理不可分
https://mainichi.jp/articles/20190108/ddm/012/040/072000c

 1995年に議員立法で成立した科学技術基本法
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kagaku/kihonkei/kihonhou/mokuji.htm
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=407AC1000000130&openerCode=1

 第一条は以下。

この法律は、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)の振興に関する施策の基本となる事項を定め、科学技術の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、我が国における科学技術の水準の向上を図り、もって我が国の経済社会の発展と国民の福祉の向上に寄与するとともに世界の科学技術の進歩と人類社会の持続的な発展に貢献することを目的とする。

 「人文科学のみに係るものを除く」とされていますから、大きな改正です。

 25年ぶりに改正されるとのこと。与党内に異論があるそうで、今後の議論がどうなるか分かりませんが、方向性としては当然と言えましょう。日本の「科学力」の低下は、人文社会科学系の軽視と、分野の壁によるタコツボ化も影響を与えているでしょう。

★科学、大学の仕組みをどうすればよいのか、考えてみた
https://togetter.com/li/1305616

★「科学立国の危機ー失速する日本の研究力」ウラ話の1
https://blog.goo.ne.jp/toyodang/e/0091a192689ee33bcb0af9767356c9cb

 日本の科学をどうするべきか、議論が続いていますが、概ね方向性ははっきりしているように思います。2月1日発売の豊田長康さんの本は必読だと思います。

科学立国の危機 失速する日本の研究力
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784492223895

 とはいえ、政策に落とし込むという部分は簡単ではなく、提言的なものを出すだけではすまないリアルな政治の部分でもあります。

 政治家などの「トンデモ」発言は、政治家を無見識と馬鹿にするだけでは意味がありません。政治家に分からせる努力をしていないことが如実にあわらわれているわけです。そもそも政治家に会うような研究者はごく限られています。

 時間がかかる地道な活動を行う覚悟と人材が科学コミュニティにあるかということになります。

★Eurodoc Survey on the Structure of Doctorates across Europe
http://eurodoc.net/news/2019/eurodoc-survey-on-the-structure-of-doctorates-across-europe

 Eurodocの調査。政策を動かそうと思ったときにやるべきことの一つは、こうした調査でしょう。結局地に足を着け動いていかなければ物事は変えられないわけで…。ただそれをやってしまうと研究時間が削られてしまうわけです。

 現役研究者が時間的になかなか無理なら、引退した研究者や、科学研究歴のある人材、科学研究に理解のある人材を巻き込みながらアクションを起こす組織が必要です。個人プレイでは限界があります。

 いきなり全米科学振興協会(AAAS)のような巨大な組織を作るのは無理にしても、もう少し組織化した動きをしていかないといけないでしょう。

 私たちも、こうしたことを20年間夢見てきましたが、成し遂げられていません。しかし、関心は高まっているように感じます。

 とにかくアクション、アクション、アクションです。

★事件の涙「そして、研究棟の一室で~九州大学 ある研究者の死~」
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/92894/2894212/index.html

 昨年末に放送されたドキュメンタリー。先日録画を見ました。

 実は私も、Yahoo!ニュース個人にこの事件の記事を書いたので、NHKから意見を聞かれました(プレ取材協力という感じでしょうか)。

 さまざまな感想が出ています。

http://b.hatena.ne.jp/entry/s/www.nhk.or.jp/docudocu/program/92894/2894212/index.html
https://blog.goo.ne.jp/applemint1104/e/a81b1fb2cd3c108db0b5c63b8fa8a239
http://naka3-3dsuki.hatenablog.com/entry/2018/12/29/223858
https://togetter.com/li/1302992

 Salyuの「emergency sign」という曲が挿入されるなど、やや情緒的な部分もありましたが、色々考えさせられました。
http://j-lyric.net/artist/a04aaf7/l01fc06.html

 ただ、どうすればよかったのか…。Kさんのような人を救うことために何をすべきなのかのか…。答えは描かれていませんでした。

 それは私たちに投げかけられた宿題といえるでしょう。

 答えはすぐには出ませんが、せめて危機のときにここに連絡しようという、「110番」のようなものが作れないものかと思います。

 カセイケンでも可能な限り、「とっかかり」を作っていくことができればと思います。

★この映像を観てほしい。あなたは間違いなく衝撃を受ける
南海トラフ巨大地震と首都直下地震による被害をシミュレーションした映像。ただ、再生数は驚くほど少ない。
https://www.buzzfeed.com/jp/kensukeseya/movie-jishin

 このメルマガでも南海トラフ巨大地震関連の情報はフォローし続けていますが、まだまだ関心は薄いと思います。

安倍総理は年頭記者会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2019/0104kaiken.html

★Japan’s pioneering detector set to join hunt for gravitational waves
https://www.nature.com/articles/d41586-018-07867-z

★BMC Biology Shares Rejected Papers’ Peer Reviews with Other Journals
https://www.the-scientist.com/news-opinion/bmc-biologyshares-rejected-papers-peer-reviews-with-other-journals-65279

★The world debates open-access mandates
http://science.sciencemag.org/content/363/6422/11

 ScienceにPlanSの記事が出ています。

★病理診断報告書の確認忘れ(医療安全情報 No. 71)
http://www.med-safe.jp/pdf/report_2018_3_R001.pdf

病理診断報告書の確認忘れ、患者「死亡」の報告も-医療機能評価機構が事故情報報告書を公表
https://www.cbnews.jp/news/entry/20190104194631

 私の本業である病理診断に関わるニュース。放射線診断でも起こっているのですが、報告書が読まれないで病態悪化という事例が問題となっています。

 多くの患者をかかえ疲弊する現場のなかで、仕組みをつくっていく必要があります。

★Natureは、今年創刊150周年を迎え、今後さらに科学コミュニティーに貢献できるよう努める。
https://www.nature.com/articles/d41586-018-07844-6

 歴史が違いますね…。日本の先人たちの偉業に思いを馳せながらも、日本が置かれた位置を正しく認識する必要があります。

★Scientists Suffer in Continued Government Shutdown
https://www.the-scientist.com/news-opinion/scientists-suffer-in-continued-government-shutdown-65287

Scientists despair as US government shutdown drags on
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00008-0

National parks face years of damage from government shutdown
https://www.nationalgeographic.com/environment/2019/01/why-national-parks-trashed-during-government-shutdown/

 トランプ大統領は何年でも続ける覚悟と言っているそうですが、アメリカの科学に与える影響はじわじわと拡大しています。

★U.S. Senate confirms Kelvin Droegemeier to lead White House science office
https://www.sciencemag.org/news/2019/01/us-senate-confirms-kelvin-droegemeier-lead-white-house-science-office

Donald Trump finally has a White House science adviser
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00015-1

 科学アドバイザーとなるKelvin Droegemeier氏の人事が米上院で承認。政権発足すでに2年…。

★米MIT、早期出願合格者に中国人留学生なし
https://news.nifty.com/article/world/12241/12241-158289/

 米中貿易戦争の影響か…。

★Working Scientist podcast: Inside the NIH grant review process
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00016-0

★Falling tuition revenues could pinch US universities
https://www.nature.com/articles/d41586-018-07889-7

★UK universities warn ‘no deal’ Brexit will hit crucial funding streams
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00023-1

 まだもめているBrexit

★これが「複業推奨」の現実!? 並び屋バイトで食いつなぐ社員兼ポスドクの悲哀
https://hbol.jp/182331

 ひさびさにポスドクの悲哀が記事に。

先進国幻想、IWC脱退

2018年12月25日~2019年1月1日
カセイケン代表 榎木英介

 元旦に799号目のメルマガをお送りします。次号は800号です。

 メールマガジンを発行して15年。今年も変わらず科学政策や科学コミュニケーションのニュースをウォッチしていきます。

国際捕鯨取締条約からの脱退について
https://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201812/26_a.html

内閣官房長官談話
https://www.kantei.go.jp/jp/tyokan/98_abe/20181226danwa.html

Japan quits global whaling body, will resume commercial hunt
https://www.sciencemag.org/news/2018/12/japan-quits-global-whaling-body-will-resume-commercial-hunt

商業捕鯨、活路見えず IWC脱退表明
需要減・操業5隻のみ、国の支援頼み続く
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39409090W8A221C1EA2000/

 先週既報通り、政府はIWCからの脱退を表明。さまざまな反応が出ていますが、国際組織からの脱退が今後の日本の諸分野にどのような影響を与えるでしょうか。

安倍内閣総理大臣 平成31年 年頭所感
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2019/0101nentou.html

安倍総理は内閣発足6年についての会見を行いました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201812/25kaiken.html

 安倍政権が発足して6年。科学技術政策に関しては、トップダウン化の推進などが特徴として挙げられます。経済財政諮問会議などさまざまな会議が科学技術政策に影響を与えています。

★異見交論62 国民益にかなう国立大学 塩崎恭久氏(自民党行政改革推進本部長)
http://kyoiku.yomiuri.co.jp/torikumi/jitsuryoku/iken/contents/62ana.php

★幻の科学技術立国:第3部 企業はいま/5 「公費で自動車業界支援」 財務省、産学連携の内閣府事業批判
https://mainichi.jp/articles/20181227/ddm/016/040/004000c

★【新時代・第1部 日本はどこへ向かうのか】科学力 日本人が足りない 研究室は外国人が仕切る。このままではノウハウが消える
https://www.sankei.com/life/news/190101/lif1901010010-n1.html

 決して安倍政権だけの問題ではないのですが、近年日本の科学技術力が低下しているという論調が出ています。

 さまざまな論をみて思うのが、「世界有数の科学大国ニッポン」という自画像と現実が合っていないことによる苛立ちがあるということです。

 たしかに、近年のノーベル賞ラッシュなどを考えると、一時期日本の科学力は高く、また、世界を席巻した製造業の記憶は、技術力も世界をリードした時代があったことを意識せざるを得ません。

 過去よもう一度、ということはよく分かります。いまだ世界3位の経済大国である事実からみたら、まだまだ日本のポテンシャルはこんなものではないと言いたいのはわかります。

 しかし、GAFAが出てくる米や、国家主導の中のような大国を今更目指しても無理なのは、多くの人たちが理解していると思います。

 米中になれないことを嘆くのではなく、キラリと輝く中堅国としてやって行くにはどうればよいのか、現実を見据えて考えていくことが必要だと思います。

 じゃあどうすればよいか、というのは難しいところですが、人の活用しかないと思います。失敗込みで研究者に自由にやってもらう…。

 こうした仕組みはすでに具体的提案もあります。

安定性と競争性を担保する 日本版テニュアトラック制度の提案
http://scienceinjapan.org/topics/20130925.html

 失敗してしまった人はどうすればよいか…。そのあたりは一般社団法人カセイケンでも取り組んでいきます。すでに科学・研究キャリアポータル
https://career.kaseiken.info/

 というページを立ち上げ、実験的に情報の収集などを始めています。

 2019年も科学技術政策の動向をウォッチしつつ、できることを地に足をつけてやっていきます。どうぞよろしくお願いいたします。

文部科学省幹部職員の事案等に関する調査・検証
http://www.mext.go.jp/a_menu/other/1408375.htm

ロケット打ち上げ、視察で身内優先 文科省汚職巡り判明
https://www.asahi.com/articles/ASLDX00V4LDWUTIL052.html

 医学部の不正入試まで繋がった文科省汚職。報告書が出ました。

文部科学省未来検討タスクフォース
http://www.mext.go.jp/a_menu/mirai_tf/1412086.htm

 揺れる文科省。若手が忌憚なき意見を述べたとのこと。文科省は変われるでしょうか。

★医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係る緊急調査について
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1409128.htm

医学部医学科の入学者選抜における不適切な事案の自主的公表を受けた今後の対応状況等について

 いまだ尾を引く入試不正。今年の受験生に大きな混乱をもたらしました。

★(大学入試改革)大学入学共通テストの枠組みで行う民間の英語資格・検定試験に関する受検ニーズ調査結果について
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/detail/1412173.htm

 いまの高校一年生が高校三年生になるときにはじまります。もう来年なんです。

★学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/139/houkoku/1412207.htm

★「人生会議」してみませんか
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html

「人生会議」とは、もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組のことです。

 正月休みは一つのきっかけかもしれませんね。

★「労働施策基本方針」が閣議決定されました
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03094.html

★「免疫アレルギー疾患研究戦略検討会報告書 免疫アレルギー疾患研究10か年戦略 ~「見える化」による安心社会の醸成~」について
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000172968_00004.html

国際プラネタリウム協会会長に初の日本人
科学技術館の木村さん
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39383780W8A221C1CR0000/

★住民被曝データ、同意得ず研究利用 福島・伊達市が調査へ
https://www.sankei.com/life/news/181227/lif1812270032-n1.html

★論文の撤回について
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/other/181228-100000.html

京大、ES細胞の論文1本撤回 研究不正の元助教が著者
https://www.asahi.com/articles/ASLDX33LCLDXPLBJ002.html

京大論文不正で別論文も撤回
iPS研発表、記録十分保存せず
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/other/181228-100000.html

★Government Shutdown Affects NSF, FDA, Other Science Agencies
https://www.the-scientist.com/news-opinion/government-shutdown-affects-nsffda—other-science-agencies-65270

 歳をまたいでしまったシャットダウン。

★The Year in #MeToo
https://www.the-scientist.com/news-opinion/the-year-inmetoo-65244

予算案、国立大学教授の年俸制、次世代加速器、IWC脱退

2018年12月18日~2018年12月25日
カセイケン代表 榎木英介

 今年最後のメルマガです。個人的なことですが、現在病理医としての仕事のため、カンボジアプノンペンに来ており、現地でこの文章を書いています。

 北緯11度。クリスマスですが、外気温は32度。雪など降りません。

 wi-fi環境は充実していて、メルマガも作れます。カンボジアの話はこのメルマガの主題ではありませんが、別のところでまたお話しできればと思います。

 公務の間に作っていますので、若干いつもよりは少なめに。

平成31年度予算政府案
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2019/seifuan31/index.html

来年度予算案、101兆4564億円 大台超え決定
増税対策2兆円 税収最高でも借金頼み
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39202650Q8A221C1MM0000/

文部科学省
★平成30年度予算
http://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/h30/1394803.htm

2019年度予算
http://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/h31/1408722.htm

 予算案が成立しました。100兆円を始めて超えたこの予算。科学技術関連は以下のようになっています。

文教・科学技術予算(PDF:766KB)
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2019/seifuan31/11.pdf

概要(PDF:347KB)
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2019/seifuan31/12.pdf

≪予算の「使い方」の見直し≫
○ 文教・科学技術分野の真の課題は、予算の「量」ではなく、予算の「使い方」
○ 「単純な配分」から「質の向上に実効性のある配分」へ予算の使い方を見直し

 国立大学法人の運営費交付金は、一部成果に応じた配分を行います。

原則前年同額で固定して配分してきた仕組みから、
評価に基づく配分を 1,000 億円に拡大(うち、700 億円は成果に係る共通指標(※)によ る相対評価に基づく配分、300 億円は既存の重点支援評価に基づく配分)
※ 成果に係る共通指標:若手研究者比率、
運交金等コスト当たりトップ 10%論文数、
教員一人当たり外部資金獲得実績 等

 科研費は若手優先に。既報ですが、2,286 億円から2,372 億円 へ、+3.8%増。

評価に基づき配分される科研費について、大型研究種目から若手研究者向け研究種目 へのシフトや一部種目における若手研究者の積極的採択など、若手研究者への重点化を 進めつつ、充実

 このほか、ポスト「京」の開発として今年の56 億円から99 億円 と、+76.0%)増額。この他、 30 年度 2 次補正予算で 209 億円を計上したとのこと。

★平成30年度補正予算(第2号)
平成 30年12月21日
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2018/hosei301221.html

★総合科学技術・イノベーション会議(第41回)議事次第
https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui041/haihu-041.html

議事

1.大学改革について
2.AIについて
3.ムーンショット型研究開発制度の基本的考え方について(案)

安倍総理は第41回総合科学技術・イノベーション会議を開催しました
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201812/20kagaku.html

国立大教授の年俸制を推進 政府イノベーション会議
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39194240Q8A221C1PP8000/

首相「国立大への交付金、1割は成果に応じ配分」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39173030Q8A221C1EAF000/

AIの専門家を年100人育成 政府、来年夏までに国家戦略策定へ
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2018/12/20181221_01.html

科学技術 AI開発に重点
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39265870R21C18A2M10900/

 総合科学技術・イノベーション会議では、大学改革やAI、話題のムーンショットについて。ムーンショットについては資料をみてみましょう。

ムーンショット型研究開発制度の基本的考え方について(案)
https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui041/siryo3.pdf

未来社会を展望し、困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される 社会課題等を対象として、人々を魅了する野心的な目標(以下「ムーンショット目標」という。)及び構想を掲げ、最先端研究をリードするトップ研究者等の指揮の下、世界中から研究者の英知を結集し、目標の実現を目 指すこと

また、基礎研究段階にある様々な知見やアイデアが驚異的なスピードで産業・社会に応用され、今日、様々な分野において破壊的なイノベーションが生み出されつつある状況に鑑み、我が国の基礎研究力を最大限に引き出す挑戦的研究開発を積極的に推進し、失敗も許容しながら革新的な研究成果を発掘・育成に導くこと

その際のマネージメントの方法についても、進化する世界の研究開発動向を常に意識しながら、関係する研究開発全体を俯瞰して体制や内容を柔軟に見直すことができる形に刷新するとともに、最先端の研究支援システムを構築すること。また、将来の事業化を見据え、オープン・クローズ戦略の徹底を図ること

 などを旨とし、総合科学技術・イノベーション会議が司令塔となり、JSTNEDOが業務を行うそうです。

 ImPACTの問題点を改善するそうですが…。せめてImPACTの二の舞にならないように、人々にとって真に役立つ研究成果を出して欲しいと切に願います。

★日本、IWC脱退へ
政府方針、商業捕鯨の再開めざす
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39220570Q8A221C1MM8000/

IWC脱退、代償大きく
国際非難は必至、捕鯨増も見通せず
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39204040Q8A221C1EA1000/

 これはビッグニュース。いつもは異なった意見を出す朝日新聞産経新聞が、社説でこれを批判しています。

IWC脱退へ 翻意して粘り強く説得を
https://www.sankei.com/column/news/181221/clm1812210002-n1.html

IWCと日本 脱退は短慮に過ぎる
https://www.asahi.com/articles/DA3S13824230.html

★回答「国際リニアコライダー計画の見直し案に関する所見」
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-k273.pdf

次世代加速器「支持せず」
国内誘致巡り学術会議
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39165620Z11C18A2CR8000/

Plans for world’s next major particle collider dealt big blow
https://www.nature.com/articles/d41586-018-07833-9

加速器計画に慎重な意見「政府は前向きな意思を」
岩手知事ら
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39155460Z11C18A2L01000/

 日本学術会議文科省への回答。慎重な姿勢となりました。これを受け、政府はどんな対応を取るでしょうか。多くの研究分野が影響を受ける可能性があるわけで、目を離してはなりません。

近未来における加速器ベースの高エネルギー素粒子実験の望ましい進め方として、 エネルギー・フロンティアを追究するハドロンコライダー(現状では LHC 及びその将来計 画)と、これと相補的な役割を担うハイ・ルミノシティのレプトンコライダーを世界のど こかに実現することが考えられている。一方では、人類が持つ有限のリソースに鑑みれば、 高エネルギー物理学に限らず、実験施設の巨大化を前提とする研究スタイルは、いずれは 持続性の限界に達するものと考えられる。ビッグサイエンスの将来の在り方は、学術界全 体で考えなければならない課題である。

★「国立大学の一法人複数大学制度等について(案)」に関する意見募集の実施について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/12/1412074.htm

 岐阜大と名古屋大の経営統合が進んでいますが、意見募集となりました。

 岐阜大ではひとつの学部の廃止に強い反対論が出ています。

岐阜大、96年新設学部「廃止」の大いなる波紋
地域科学部→経営学部、教員や学生は猛反発
https://toyokeizai.net/articles/-/255807

 統合との関連性が取りざたされていますが…。

★“空飛ぶクルマ”の実現に向けたロードマップを取りまとめました
http://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181220007/20181220007.html

★「スタートアップ×知財戦略」のためのポータルサイト“IP KNOWLEDGE BASE for Startup”を開設しました
http://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181219004/20181219004.html

★研究機関における公的研究費の管理・監査について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/kenkyujigyou/kanrikansa/index.html

厚労省

★「勤務間インターバル制度普及促進のための有識者検討会」の報告書を公表します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02924.html

★依存症の理解を深めるための普及啓発事業を実施します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02986.html

★Plan S: The Ambitious Initiative to End the Reign of Paywalls
https://www.the-scientist.com/news-opinion/plan-s-the-ambitious-initiative-to-end-the-reign-of-paywalls-65231

★Plan Sガイダンスの詳細をよく見よ。彼らは譲歩などしていない(記事紹介)
http://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=10980

 相変わらずもめています。

★US science agencies hit by government shutdown
https://www.nature.com/articles/d41586-018-07836-6

U.S. shutdown begins: ‘It’s disheartening... discouraging... deflating’
https://www.sciencemag.org/news/2018/12/us-shutdown-begins-it-s-disheartening-discouraging-deflating

U.S. scientists brace, again, for a government shutdown
https://www.sciencemag.org/news/2018/12/us-scientists-brace-again-government-shutdown

What a partial US-government shutdown would mean for science
https://www.nature.com/articles/d41586-018-07825-9

 米国政府がシャットダウン。プノンペンのホテルでCNNを見ていましたが、シャットダウンまでのカウントダウンとシャットダウンからの時間を表示していました。

★Max Planck Society Ends Elsevier Subscription
https://www.the-scientist.com/news-opinion/max-planck-society-ends-elsevier-subscription-65258

 エルゼビア問題。

★Women can benefit from female-led networks
https://www.nature.com/articles/d41586-018-07878-w

★Make it easier for me to deliver childcare at conferences
https://www.nature.com/articles/d41586-018-07783-2

 Natureのキャリアサイトが、学会に子供を連れて行くことを特集しています。これ以外にも記事があります。